ユカリア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ユカリア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ユカリアはグロース市場に上場し、医療機関への経営支援を軸とした医療経営総合支援事業や介護施設運営等のシニア関連事業、コンタクトレンズの製造販売を展開しています。直近の業績は売上高247億円と増収を達成し、当期利益は23億円と増益となる一方、事業拡大の先行投資等により経常利益は21億円と減益になりました。


※本記事は、株式会社ユカリアの有価証券報告書(第21期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ユカリアってどんな会社?


医療機関の経営支援や介護施設の運営、高度管理医療機器の製造販売を通じてヘルスケア産業の課題解決に取り組んでいます。

(1) 会社概要


2005年2月に医療及び介護施設に対する経営コンサルティング事業への参入を目的に設立されました。2008年にコンタクトレンズ関連事業を譲受し、2011年に高齢者向け介護施設運営サービスへ参入しました。2022年に現在のユカリアへ商号変更し、2024年に東京証券取引所グロース市場へ新規上場を果たしました。

従業員数は連結で1,347名、単体で198名体制で事業を展開しています。筆頭株主は創業者の古川淳氏の資産管理会社であるエクソソームで、第2位は同氏の個人保有、第3位は資産管理業務を行う日本カストディ銀行(信託口)となっています。強固な経営基盤のもと、さらなる事業の拡大を推進しています。

氏名 持株比率
エクソソーム 44.78%
古川淳 12.72%
日本カストディ銀行(信託口) 10.26%

(2) 経営陣


同社の役員は男性3名、女性2名の計5名で構成され、女性役員比率は40.0%です。代表取締役社長は三沢英生氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
三沢英生 代表取締役社長 ゴールドマン・サックス証券等を経てドーム取締役常務執行役員CSOを歴任。2020年同社入社、執行役員等を経て2024年3月より現職。
古川淳 取締役会長 虎ノ門キャピタル代表取締役を経て2005年同社設立、代表取締役に就任。関連会社の役員を歴任し、2025年3月より現職。


社外取締役は、須藤修司(EY新日本有限責任監査法人シニアパートナー等)、杉山文野(ニューキャンバス代表取締役等)、池尻志保(三井法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療経営総合支援事業」「シニア関連事業」「高度管理医療機器事業」および「その他」事業を展開しています。

医療経営総合支援事業


全国の病院等の医療機関向けに、経営管理体制の整備や資金調達、人事労務やDX化支援など、現場重視の徹底した伴走型による経営コンサルティングサービスを提供しています。医療施設の建替支援や事業承継サポートも行い、医療機関が抱える多様な課題を包括的に解決し、地域医療の安定的な継続と発展に貢献しています。

主な収益は、提携医療法人や外部医療機関からのコンサルティング報酬、資金貸付に伴う利息、不動産のセール&リースバック収益などから得ています。事業の運営は主に同社のほか、子会社のメディカル・アドバイザーズやストラクト、ゼロメディカル、リメディカ、エピグノがそれぞれの専門領域を担当しています。

シニア関連事業


要介護者や家族からの相談を受けて最適な入居施設を紹介するサービスや、一都二県における介護付き高級老人ホーム等の運営を行っています。また、訪問看護や居宅介護支援サービスを提供する在宅医療にも取り組み、医療機関や介護施設、自宅をシームレスに移動しながら快適に生活できる地域包括ケアシステムを推進しています。

主な収益源は、介護施設の入居者からの施設利用料や介護報酬、施設紹介による成功報酬、および訪問看護等の提供に伴う介護・医療保険からの給付金などです。事業運営は同社グループのクラーチが施設運営を担い、あいらいふが施設紹介を、メディステップが在宅医療サービスを提供しています。

高度管理医療機器事業


近視人口の増加やカラーコンタクトレンズ市場の拡大を背景に、一般消費者向け高度管理医療機器であるコンタクトレンズの製造および販売を行っています。瞳の酸素不足を防ぐシリコーンハイドロゲル素材を採用した「シンシアSシリーズ」を中心に、多様な消費者ニーズに対応した複数ブランドを展開しています。

収益は、小売店やECサイトを通じたコンタクトレンズの販売代金から得ています。また、製品開発から承認取得、マーケティングまでを手掛けるコンサルティングサービスによる報酬も収益源としています。本事業の運営は、グロース市場に上場している子会社のシンシアとその傘下の関連企業が主体となって行っています。

その他事業


医療機関から提供された匿名加工済みの電子カルテデータを独自のアルゴリズムで解析し、100万件以上の治療経過データを有するデータレイクを構築しています。このデータを活用し、製薬企業のMR向け教育研修ソフトの提供や営業活動の支援を行うほか、MRI装置等の空き時間を活用した検診マッチングサービスも提供しています。

収益モデルは、製薬企業等からのデータ解析や営業活動支援に伴うサービス利用料、および「スマート脳ドック」等の未病予防領域におけるプラットフォーム経由の検診受診料やマッチング手数料から成り立っています。事業の運営は主に同社が行うほか、子会社のDICなどが関連サービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は安定した成長を続け、順調に規模を拡大しています。経常利益はM&A関連費用や事業拡大のための先行投資の影響により直近で減益となりましたが、当期利益は着実に増益基調を維持しています。

項目 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 166億円 181億円 198億円 247億円
経常利益 8億円 19億円 28億円 21億円
利益率(%) 4.7% 10.3% 14.1% 8.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 7億円 18億円 23億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率は42.6%と前年とほぼ同水準を維持しています。一方、営業利益はわずかに増益となったものの、事業拡大に向けた人材投資等により営業利益率は低下しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 198億円 247億円
売上総利益 87億円 105億円
売上総利益率(%) 43.8% 42.6%
営業利益 23億円 24億円
営業利益率(%) 11.6% 9.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が26億円(構成比32%)、賞与引当金繰入額が3.0億円(同4%)を占めています。売上原価は142億円で、売上原価合計に対する構成比は57%となっています。

(3) セグメント収益


医療経営総合支援事業とシニア関連事業が売上の大部分を占めています。各事業において新規提携施設の増加や既存施設の稼働率向上、M&Aによる事業領域の拡大が寄与し、全てのセグメントで前年を上回る増収を達成しました。特にその他事業は大型案件の受注により大幅な売上成長を遂げています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
医療経営総合支援事業 64億円 77億円
シニア関連事業 69億円 89億円
高度管理医療機器事業 65億円 75億円
その他 0.6億円 6.6億円
連結(合計) 198億円 247億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業のキャッシュ・フローはマイナスですが、将来の成長に向けた事業投資を借入等の資金調達で継続する勝負型の局面となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 13億円 -19億円
投資CF -0.4億円 -23億円
財務CF 35億円 18億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、患者にとっての価値基準を重視する「Value Based Healthcare(VBHC)」の考え方に基づき、「患者価値を最大化」することを最優先事項としています。医療や介護のステークホルダー間の利害衝突を解消して全体最適を実現するため、「変革を通じて医療・介護のあるべき姿を実現する」というミッションを掲げています。また、関係者が持続可能な好循環を生み出す「ヘルスケアの産業化」をビジョンとしています。

(2) 企業文化


同社は、ビジョン・ミッションの実現に向けた行動指針として「オーナーシップを持つ」「本質を見極める」「伝える・受け入れる」の3点を定めています。これらの行動指針は採用基準や入社研修、人事評価等のプロセスにも組み込まれ、実践が重視されています。また、従業員主体のVMVC(Vision・Mission・Value・Culture)プロジェクト等を通じて、一人ひとりが自律的に価値観を共有し、組織全体のエンゲージメント向上を図る文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


同社は事業規模と収益性を測るため、企業規模を示す売上高、総合的な収益力を示す当期純利益、および経営効率を示すROE(自己資本利益率)を重要な経営指標と位置づけ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を推進しています。また、各事業の進捗をモニタリングする独自の指標も設定しています。

* 提携医療法人(病院)数
* 入居斡旋件数、入居率

(4) 成長戦略と重点施策


既存セグメントの自律的成長に加え、「仲間づくり」を目的としたM&Aや資本業務提携を積極的に実施し、グループ全体の事業成長を加速させる方針です。医療機関向けの現場重視の伴走型支援や各種コンサルティングの提供先を拡大し、自社開発のシステムや他社とのアライアンスを通じたDX化支援を推進します。さらに、シニア関連事業では未出店エリアへの展開とサービス拡充を進め、ヘルスケアバリューチェーン全体の最適化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業規模を持続的に拡大するため、医療経営コンサルタントやデータ解析の専門家、介護従事者など専門性の高い人材の確保と育成を重要課題としています。リファーラル採用や新卒採用の強化に加え、社内研修やナレッジ共有カンファレンスの開催、資格取得支援を通じて従業員の専門性向上を図っています。また、エンゲージメントスコアの測定やピアボーナス制度の導入により、従業員満足度の向上と定着率の改善に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 39.7歳 3.0年 7,514,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.2%
男性育児休業取得率 67.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(パート・有期労働者) -


同社は公表義務の対象ではないため、有報には男女賃金差異の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材の確保に関するリスク


労働市場の変化による退職率の高まりや慢性的な人材不足等の影響により、優秀な専門人材を採用・維持できないリスクがあります。人材の確保が予定通り進まない場合や賃金水準の急激な高騰で人件費の負担増が発生した場合、サービスの質の低下や業績の悪化を招く可能性があります。

(2) 貸倒リスクについて


同社グループは提携医療法人等に対して運転資金の融資を行っています。担保不動産の価値下落による担保不足の発生や、提携医療法人の返済能力の低下により貸し倒れが生じた場合、財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、経営状況のモニタリング等を通じたリスク管理を実施しています。

(3) 有利子負債への依存について


提携医療法人の財務改善のための不動産取得や融資資金の確保、M&A資金の一部を金融機関からの借入金により調達しているため、総資産に占める有利子負債依存度が高くなっています。外部調達の金利水準の変動や計画通りの資金調達が困難になった場合、キャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。