やまびこ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

やまびこ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

やまびこは東京証券取引所プライム市場に上場し、小型屋外作業機械、農業用管理機械、一般産業用機械の製造・販売をグローバルに展開する企業です。直近の業績トレンドでは、北米での屋外作業機械の好調や国内の農業機需要の回復により増収を達成した一方で、為替差損等の影響により経常減益となっています。


※本記事は、株式会社やまびこの有価証券報告書(第18期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. やまびこってどんな会社?


小型屋外作業機械や農業用管理機械などの製造・販売を手掛けるグローバルメーカーです。

(1) 会社概要


同社は2008年に共立と新ダイワ工業が株式移転により経営統合し、共同持株会社として設立され、東京証券取引所市場第一部に上場しました。2009年に両社を吸収合併し事業会社へと移行しました。その後も、2014年にベルギーのベルロボティクス(現やまびこヨーロッパ)を連結子会社化するなど事業を拡大しています。

従業員数は連結で2,945名、単体で1,085名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位および第3位の株主も信託銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.24%
日本カストディ銀行(信託口) 5.04%
みずほ信託銀行退職給付信託みずほ銀行口再信託受託者日本カストディ銀行 4.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長執行役員は久保浩氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
久保浩 代表取締役社長執行役員エコー・インコーポレイテッド会長 1986年三井物産入社。2019年同社入社、専務執行役員経営企画担当等を経て2021年より現職。
倉田伸也 取締役常務執行役員開発本部長兼パワーソリューション推進室長兼開発第三部長 1983年新ダイワ工業入社。同社執行役員産業機械本部長等を経て2025年より現職。
西正信 取締役やまびこジャパン取締役会長 1984年共立エコー物産入社。同社執行役員管理本部長等を経て2026年より現職。
野中匠 取締役執行役員サービス推進本部長 1990年ザマ・ジャパン入社。2015年同社入社、生産本部横須賀事業所長等を経て2025年より現職。
ティモシードロシー 取締役 2014年エコー・インコーポレイテッド社長。同社執行役員エコー・インコーポレイテッド社長等を経て2025年より現職。


社外取締役は、亀山晴信(弁護士)、大高美樹(富士フイルムビジネスイノベーション出身)、行本閑人(元オムロン執行役員常務)、赤塚孝江(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「小型屋外作業機械」「農業用管理機械」「一般産業用機械」および「その他」事業を展開しています。

(1) 小型屋外作業機械


刈払機、チェンソー、パワーブロワなどの小型屋外作業機械を製造し、国内外の一般顧客やプロフェッショナル向けに提供しています。

顧客への製品販売による収益を主な収入源としています。運営は同社や米国のエコー・インコーポレイテッド、やまびこジャパンなどが担当しています。

(2) 農業用管理機械


モア、畦草刈機、防除機などの農業用管理機械を製造し、主に国内の農業従事者や海外市場向けに販売しています。

製品の販売代金から収益を得ています。運営は同社および米国のクレイリー・インダストリーズ、やまびこジャパンなどが担当しています。

(3) 一般産業用機械


発電機、溶接機、投光機などの一般産業用機械を製造し、建築・土木現場などで使用する事業者向けに提供しています。

顧客への製品販売を通じて収益をあげています。運営は同社やエコー・インコーポレイテッド、やまびこジャパンなどが担っています。

(4) その他


主要な3セグメントに含まれない事業として、自動車や産業機械向けの試作用部品の製造・販売、物流業務の請負などを手掛けています。

製品の販売やサービス提供への対価として収益を得ています。運営はやまびこジャパン、ニューテック、エコー産業などが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向が続いており、直近では1,740億円まで拡大しています。経常利益は209億円まで増加した後に当期は195億円とわずかに減益となりましたが、利益率は直近で11.2%と安定した2桁水準を維持しており、強固な収益基盤を確保しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,423億円 1,562億円 1,514億円 1,648億円 1,740億円
経常利益 99億円 92億円 141億円 209億円 195億円
利益率(%) 7.0% 5.9% 9.3% 12.7% 11.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 41億円 53億円 41億円 101億円 76億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大していますが、売上総利益率は約34%台で安定しています。営業利益は前年と同水準を維持しており、コスト上昇への対応や価格転嫁が適切に行われていることがうかがえます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,648億円 1,740億円
売上総利益 567億円 583億円
売上総利益率(%) 34.4% 33.5%
営業利益 196億円 197億円
営業利益率(%) 11.9% 11.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が110億円(構成比29%)、研究開発費が64億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の小型屋外作業機械は、北米や欧州市場での好調が牽引し売上が順調に拡大しています。一方で、農業用管理機械と一般産業用機械は売上がやや減少傾向にあり、その他事業は小幅な増収にとどまっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
小型屋外作業機械 1,214億円 1,320億円
農業用管理機械 247億円 241億円
一般産業用機械 167億円 156億円
その他 21億円 23億円
連結(合計) 1,648億円 1,740億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のパターンを示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 140億円 89億円
投資CF -34億円 -45億円
財務CF -76億円 -35億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.7%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も70.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人と自然と未来をつなぐ」を企業理念と定めています。世界中の自然環境と、共に歩む全ての人々の美しい未来の実現に向け、小型屋外作業機械、農業用管理機械ならびに一般産業用機械の3事業の発展に取り組み、企業価値の最大化と社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、環境負荷低減や安全性向上、労働力不足といった社会的課題の解決に継続して取り組む文化を大切にしています。従来の「屋外作業機器の総合メーカー」という枠組みにとどまらず、常にお客様の視点に立ち、屋外作業の現場に新たな価値を創出し続ける企業へと進化していく姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2026年度から2028年度までの3ヵ年を対象とする「中期経営計画2028」を策定し、既存事業の深化と成長領域への投資を通じた利益成長を目指しています。2030年度には売上高2,500億円規模を目指しており、2028年12月期の具体的な数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:2,100億円
* 営業利益率:13.0%
* ROE:14.0%

(4) 成長戦略と重点施策


売上の拡大、収益性の改善、経営基盤の強化を重点施策としています。米国市場の需要を着実に取り込むとともに、欧州事業の拡大やロボット事業、エネルギーマネジメントシステム分野への取り組みを進めます。また、高付加価値製品の販売比率向上やDXの活用による生産性の向上を図り、専門人材の確保で組織力を強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、社員一人ひとりの成長がグループの成長であると考え、人的資本投資を推進しています。経営戦略に基づく人材戦略を実践し、女性活躍推進や男性育児休業取得促進など多様性確保に向けた環境整備に取り組んでいます。全ての従業員が活き活きと働ける環境を作り、個々の能力を最大限に引き出す方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 44.1歳 18.4年 8,060,774円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.7%
男性育児休業取得率 88.2%
男女賃金差異(全労働者) 66.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 88.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 80.2%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒・キャリア採用における女性採用比率(16.0%)、育児休業を2週間以上取得した男性社員の割合(79.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内外の社会情勢等による市場変動リスク


同社グループは全世界で事業を展開しているため、各地域の政治・経済情勢や政策の変化、紛争、為替や税制等の各種規制の動向が業績に影響を及ぼす可能性があります。特に主要市場である日本、米国、欧州における経済状況の変化は事業に大きな影響をもたらします。

(2) 市場環境や政策変化による需要変動リスク


日本や海外のグリーンメンテナンス市場、農林業、建設・土木業界における政策や公共投資、産業構造の変化、設備投資動向などに大きく依存しています。異常気象などによる需要低迷を含め、これらの需給動向が急激に変化した場合、製品の販売に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 新製品開発・価格競争による競合リスク


各事業分野において、新製品の開発や低価格化、アフターサービスの充実をめぐる他社との競争が激化しています。同社グループが品質や取引条件などで他社に劣位した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。これに対し、高付加価値製品の提供により顧客満足度を高める方針です。

(4) 外国為替相場・金融市場の変動リスク


売上の半分以上が米ドルを中心とする外貨建てであるため、為替相場の変動が業績に直接影響します。円高はマイナス要因となり、同一市場での競合製品との相対的な価格や部品調達コストにも影響を与えるため、グローバルな生産拠点の配置やヘッジ取引によってリスク軽減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。