デ・ウエスタン・セラピテクス研究所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

デ・ウエスタン・セラピテクス研究所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

デ・ウエスタン・セラピテクス研究所は東京証券取引所グロース市場に上場し、プロテインキナーゼ阻害剤を中心とした新薬の研究開発を行う創薬事業を展開しています。業績については、当期の売上高は3.9億円と前期比で減収となったものの、経常損失は6.3億円となり前期から赤字幅が縮小する結果となりました。


※本記事は、株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所の有価証券報告書(第28期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. デ・ウエスタン・セラピテクス研究所ってどんな会社?


プロテインキナーゼ阻害剤を中心とした新薬の研究開発とライセンスアウト事業を展開しています。

(1) 会社概要


1999年に医薬品研究開発を目的に設立されました。2009年にジャスダック証券取引所NEOに上場し、2014年には緑内障・高眼圧症治療薬の国内上市を達成しています。2015年に日本革新創薬を連結子会社化し、2022年に東京証券取引所グロース市場へ移行しました。

従業員数は連結19名、単体19名です。筆頭株主は創業者の日高有一氏で、第2位は楽天証券共有口となっています。

氏名 持株比率
日高有一 9.49%
楽天証券共有口 4.26%
MSIP CLIENT SECURITIES(常任代理人 モルガン・スタンレーMUFG証券) 2.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は日高有一氏が務めています。社外取締役は3名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
日高有一 代表取締役社長 三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行後、同社総務管理部長を経て、2008年より現職。
松原さや子 取締役 経営共創基盤、海外需要開拓支援機構、花王等を経て、2022年に同社入社。2023年より現職。
中村和史 取締役(監査等委員) ヤンセンファーマ、参天製薬等を経て日本革新創薬入社。三井物産の子会社を経て、2025年より現職。


社外取締役は、山田富士雄(元エディオン執行役員財務経理統括部長)、山川善之(元そーせい代表取締役副社長CFO)、中村栄作(元ベレブノ代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、創薬事業を展開しています。

プロテインキナーゼ阻害剤を中心とした医薬品の研究開発を行っています。特に眼科関連疾患に注力しており、開発品を製薬会社等にライセンスアウトすることによって収益を獲得する創薬事業を展開しています。比較的早期の開発段階で製薬会社等へライセンスアウトすることで、低コストでの開発体制を維持しています。

収益源は、製薬会社等から受領するライセンスアウト時のフロントマネー収入、臨床開発の進捗に伴うマイルストーン収入、製品上市後販売額の一定比率を受領するロイヤリティ収入等です。運営は同社および連結子会社の日本革新創薬が担い、次なる新規開発品の開発を進めています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は3.9億円から4.7億円の範囲で推移しています。一方で、先行投資型の研究開発活動を継続しているため経常損失が続いており、当期は6.3億円の経常損失、6.3億円の親会社株主に帰属する当期純損失を計上しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 4.1億円 4.5億円 4.3億円 4.7億円 3.9億円
経常利益 -1.6億円 -3.0億円 -8.0億円 -12.3億円 -6.3億円
利益率(%) -38.5% -66.0% -185.9% -260.4% -162.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.5億円 -4.3億円 -8.1億円 -12.9億円 -6.3億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少したものの、研究開発費の削減等により営業損失は縮小しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 4.7億円 3.9億円
売上総利益 4.2億円 3.5億円
売上総利益率(%) 90.1% 90.0%
営業利益 -12.1億円 -6.2億円
営業利益率(%) -256.5% -159.9%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が6.7億円(構成比69.1%)、その他が3.0億円(同30.9%)を占めています。売上原価は0.4億円で構成比100%がロイヤリティ等に関する費用です。

(3) セグメント収益


同社は創薬事業の単一セグメントであり、当期の売上高は3.9億円となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
創薬事業 4.7億円 3.9億円
連結(合計) 4.7億円 3.9億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュフローはマイナスですが、借入や新株予約権の行使等により財務活動によるキャッシュフローがプラスとなっており、将来の成長に向けた研究開発投資を継続する勝負型の状態です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -13.0億円 -4.9億円
投資CF -0.1億円 -244万円
財務CF 5.7億円 10.8億円


企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「日本発の画期的な新薬を世界へ」というビジョンを掲げています。設立以降プロテインキナーゼ阻害剤研究の知見から得た独自の科学技術を基に医薬品の研究開発を行い、従来に比してより有用な医薬品を早期に患者に提供することを目的に事業を推進しています。新薬開発の上流である基礎研究から臨床開発までに経営資源を集中させ、創薬バイオベンチャーの先導企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、自社技術を基とした研究型の事業を行うとともに、これらの研究の成果の価値を高めるため、研究のみではなく開発も行う研究・開発型へとシフトする文化を持っています。自社新薬の継続的な研究開発以外にも他社からのインライセンスを積極的に進め、開発パイプラインの拡充に取り組むことで、収益の最大化を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループの事業である医薬品の開発は、基礎研究から上市に至るまでの期間が長期間にわたり、先行投資型のビジネスモデルであるため、財務諸表などの一般的な経営指標の設定は適さないと考えています。そのため、開発パイプラインの進捗状況を経営指標として設定しています。収益力の高い新薬候補化合物の創製やインライセンス、臨床開発の推進に取り組むことで開発パイプラインの拡充を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は優先的に対処すべき課題として、以下の施策を推進しています。開発パイプラインの拡充と推進によるリスク分散を図りつつ、ライセンスアウト時の収益性向上を目指した非臨床試験以降の自社開発の取り組みによって事業領域の拡大を進めています。また、独自の基盤技術であるプロテインキナーゼ阻害剤の創製と応用領域の適応拡大に取り組み、これらの開発を進めるための財務基盤の充実を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、従業員は事業の成長を支える重要な存在であるとし、個人の人権と人格を尊重しています。「日本発の画期的な新薬を世界へ」というビジョンを実現するため、ワークライフバランスの充実、働きやすくやりがいのある職場環境を提供することで、従業員の成長を促すことを目指しています。各種相談窓口の設置やインフルエンザ予防接種の費用負担等、安全と健康に配慮した環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 50.8歳 10.3年 6,668,000円

※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 研究開発の不確実性


医薬品の研究開発期間は基礎研究段階から承認取得に至るまで長期間を要し、相当規模の投資が必要となります。さらに成功の可能性が低いため、医薬品としての安全性・有効性が確認され上市に至るかどうかは不確定であり、開発が想定通り進まない場合、業績に重大な影響が及ぶ可能性があります。

(2) ライセンスアウトに伴う収益変動


同社は開発品のライセンスアウトに伴う収入を収益基盤としています。開発スケジュールの変更や開発の中断・中止、あるいは販売計画の未達等により、ライセンスアウトによる収入が想定通り得られない場合、財政状態や経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 大学等との提携関係への依存


同社は研究開発の各段階において広範な提携関係を構築しており、特に三重大学との間で行っている共同研究が事業基盤となっています。予期せぬ事故や自然災害等でこれらの提携関係が構築・維持できなくなった場合、事業活動に重大な影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。