バリューHR 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

バリューHR 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

バリューHRは東京証券取引所プライム市場に上場し、自社開発のシステムを活用した健康管理・増進サービスや健康保険組合の運営支援を展開しています。直近の業績では、新規顧客の獲得等により売上高が順調に拡大する一方で、体制強化への先行投資により減益となりました。


記事タイトル:「バリューHR転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」

※本記事は、株式会社バリューHRの有価証券報告書(第25期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. バリューHRってどんな会社?


バリューHRは、健康情報のデジタル化と健康管理のインフラとして、健康支援プラットフォームを提供しています。

(1) 会社概要


同社は2001年7月に健康保険組合の設立支援アウトソーサーとして設立され、同年11月にカフェテリアプランの提供を開始しました。その後、健診予約システムや健診結果管理システムなどを順次立ち上げ、2013年にJASDAQに上場しました。近年はオンライン診療支援サービスなども展開し、事業領域を拡大しています。

従業員数は連結で970名、単体で961名です。筆頭株主は創業者の藤田美智雄氏で、第2位は日本生命保険相互会社、第3位は大同生命保険と続いており、生命保険会社などの事業会社と資本提携を通じた関係強化を図っていることが伺えます。

氏名 持株比率
藤田美智雄 15.49%
日本生命保険相互会社 8.10%
大同生命保険 7.04%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は藤田美智雄氏が務めています。また、取締役9名中5名が社外取締役であり、社外取締役の比率は55.6%となっています。

氏名 役職 主な経歴
藤田美智雄 代表取締役社長カフェテリア事業本部長兼事業企画室管掌兼フレンドシップ事業本部管掌兼人事本部管掌兼女性活躍推進室管掌 メリルリンチ証券会社、青山監査法人等を経て2001年に同社を設立し代表取締役社長に就任。現在は各種事業本部長等も兼務し同社グループを牽引。
藤田源太郎 代表取締役副社長経営管理本部管掌兼HRマネジメント事業本部管掌兼情報システム本部管掌兼健康経営&データヘルス推進室管掌 2008年に同社へ入社。社長室長やカフェテリア事業推進本部長を経て2014年に取締役に就任。2021年より代表取締役副社長として各事業を幅広く管掌。
飯塚功 取締役副社長ヘルスケア事業本部管掌兼営業本部管掌 日本がん知識普及協会を経て2005年に同社へ入社。健康管理事業本部長等を歴任し、2008年に取締役に就任。2019年より取締役副社長としてヘルスケア等領域を管掌。
大村祐司 常務取締役CIO情報セキュリティ・コンプライアンス室長 ソフトウエアエンジニアを経て2001年に同社取締役に就任。情報システム本部長や企画室長等を歴任し、2022年より常務取締役CIOおよびコンプライアンス室長。


社外取締役は、柳澤彰子(駐日英国大使館国際通商部主席商務官)、山本麻里(厚生労働省社会・援護局長)、吉益裕二(吉益公認会計士事務所代表)、吉成外史(吉成・城内法律事務所開設)、唐澤剛(厚生労働省保険局長)です。

2. 事業内容


同社グループは、バリューカフェテリア事業およびHRマネジメント事業を展開しています。

バリューカフェテリア事業


自社開発のプラットフォーム「バリューカフェテリアシステム」を活用し、健康保険組合や企業向けに健康管理支援や福利厚生の省力化サービスを提供しています。あわせて、健診予約や健診結果管理などのヘルスケア関連サービスも包括的に展開し、利用者の健康増進を支援しています。

収益源は、システム利用料やカフェテリアプランの利用に伴う手数料、健診業務の事務代行料などです。月額利用料などのストック型収益と業務完了時のフロー型収益で構成され、運営は同社を中心にバリューヘルスケア、バリューネットワークスなどの子会社が共同で行っています。

HRマネジメント事業


健康保険組合の新規設立や分割、合併の支援を行うコンサルティングサービスと、設立後の業務支援を担うBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービス、および人材派遣サービスなどを提供しています。

収益源は、契約期間に応じたコンサルティング料や、業務提供に伴うBPOサービス料、人材派遣料などです。健康保険組合の設立から運営までの一貫したサポート業務を通じ、同社が主体となって企業や団体の人事課題解決に向けたサービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は年々増加傾向にあり、順調な事業拡大が伺えます。一方で経常利益や当期利益は、体制強化への先行投資などにより直近では減少に転じており、将来のさらなる成長に向けた積極的な投資フェーズにあると言えます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 55億円 62億円 71億円 84億円 101億円
経常利益 10億円 13億円 15億円 12億円 10億円
利益率(%) 17.9% 21.3% 20.6% 14.1% 9.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 8億円 9億円 7億円 9億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に対して売上原価の増加幅が大きく、売上総利益率は低下しています。また、販売費及び一般管理費も増加傾向にあり、営業利益率は前年度と比較して低下しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 84億円 101億円
売上総利益 29億円 29億円
売上総利益率(%) 34.9% 28.9%
営業利益 11億円 9億円
営業利益率(%) 13.3% 8.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が7億円(構成比33%)、役員報酬が3億円(同13%)を占めています。売上原価は72億円で、売上高に対する構成比は71%となっています。

(3) セグメント収益


主力のバリューカフェテリア事業は、新規顧客の獲得と既存顧客の利用拡大により大幅な増収を達成しましたが、システム改修等の先行投資により減益となりました。HRマネジメント事業は健保設立支援等の受注が伸び、増収増益となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
バリューカフェテリア事業 67億円 83億円 19億円 17億円 20.8%
HRマネジメント事業 16億円 18億円 3億円 3億円 17.7%
連結(合計) 84億円 101億円 11億円 9億円 8.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「バリューHRクレド」の実践を通じて、すべてのステークホルダーに満足される企業活動を推進し、持続的な成長と企業価値の向上を図ることを基本方針としています。また、「健康寿命が延伸する社会の実現」に貢献し、「健康情報のデジタル化と健康管理のインフラ企業」を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、事業活動を通じて社会課題の解決に寄与し、あらゆる人が生き生きと活動できるサステナブルな社会の実現を目指す文化を持っています。自社開発の健康支援サービスを通じた健康経営の推奨に加え、自社で働く社員の健康維持・増進を積極的に支援し、働きやすい職場環境の提供を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、継続的な事業拡大と安定的なキャッシュ・フローの創出を重視し、株主資本の効率化を追求することで企業価値の最大化を図ることを目標としています。収益指標としては売上高営業利益率を重要な経営指標に位置付け、中長期的には以下の業績目標を掲げています。

* 2026年12月期 売上高:110億円
* 2026年12月期 営業利益:16.5億円
* 2026年12月期 売上高営業利益率:15.0%

(4) 成長戦略と重点施策


顧客需要を優先に考えたシステムの強化と、健診機関とのデータ連携などのDXを推進し、業務効率と品質の向上を図ります。また、採用と育成による内製化を進めて組織の業務処理能力を高め、高品質なサービス提供と顧客満足度の持続的向上を通じて企業価値の向上に取り組む方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は社員を最も重要な資産と考え、社員一人ひとりの成長と健康維持・増進を図り、働きやすい職場環境を創出することが企業価値を高める重要な要素と位置付けています。多様性を尊重した採用、研修やジョブローテーションを活用した人材育成、ワークライフバランスの改善を通じたエンゲージメント向上を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 39.4歳 4.4年 3,996,909円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 27.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 56.5%
男女賃金差異(正規雇用) 55.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 36.9%


※正規雇用労働者における男女間の差異が生じている主な要因は、営業職・専門職と事務職の賃金差と、管理職の女性比率が27.0%に留まっているためであります。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(85.5%)、ストレスチェック受検率(98%)、健診受診率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自社開発システムへの高い依存度


同社はバリューカフェテリアシステムなどの自社開発システムに強く依存しており、システム開発のコストが多額になる可能性があります。システムの利用が期待通り増加しない場合や、効率的なシステム開発ができない場合には、同社の業績や採算性に多大な影響を及ぼすリスクがあります。

(2) システム上の問題とセキュリティ


インターネットを通じてサービスを提供しているため、自然災害やサイバー攻撃などによるシステムダウンのリスクが存在します。また、不正アクセス等により個人情報が漏洩した場合には、損害賠償請求や社会的信用の失墜により、事業および経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 個人情報の保護とコンプライアンス


同社は個人情報取扱事業者として、健康情報を含む機密性の高いデータを大量に扱っています。プライバシーマーク等を取得し厳重な管理体制を敷いていますが、管理体制に不備が生じ、情報漏洩や不正利用などの問題が発生した場合には、企業の存続に関わる重大な影響を受けるリスクがあります。

(4) 健診等の代行業務に関する許認可リスク


同社は特定健康診査や特定保健指導の実施において代行機関番号を取得し業務を行っています。申告した管理体制が遵守できず、代行機関番号の取り下げを余儀なくされた場合、代行業務の遂行に支障を来たし、結果として業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。