※本記事は、株式会社小田原機器の有価証券報告書(第47期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 小田原機器ってどんな会社?
路線バス用の運賃収受機器および社会インフラ系のシステム開発を展開する車載機器メーカーです。
■(1) 会社概要
1950年設立の小田原鉄工所を前身とし、1979年に分社化して設立されました。1960年代後半からワンマンバス機器の開発を開始し、1977年には業界初の紙幣自動両替機付き運賃箱を発売するなど、運賃収受システムの発展を支えてきました。2009年にジャスダックに上場し、現在はスタンダード市場に上場しています。
従業員数は連結で224名、単体で137名です。筆頭株主は創業家とみられる津川直樹氏で、第2位は津川佳代子氏および正英です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 津川 直樹 | 26.16% |
| 津川 佳代子 | 11.22% |
| 正英 | 11.22% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は津川直樹氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 津川 直樹 | 代表取締役社長営業部兼技術部兼新規事業推進部兼鉄道事業統括部担当 | 2007年入社。総務部長等を経て、2022年取締役およびソタシステム代表取締役社長に就任。オーバルテック取締役等を経て、2025年10月より現職。 |
| 佐藤 健一 | 専務取締役管理部長兼品質保証部長製造部担当 | 1984年入社。総務部グループ長等を経て、2019年オーバルテック代表取締役社長に就任。管理部長等を歴任し、2025年6月より現職。 |
| 横地 一彦 | 取締役グループ経営企画部長 | 1983年オムロン入社。同社交通ソリューション事業統括部長等を歴任後、2020年入社。グループ経営企画室長等を経て、2025年3月より現職。 |
| 金子 義浩 | 取締役監査等委員 | 1984年三菱銀行入行。同行支店長等を歴任後、2014年入社。営業部長等を経て、2022年オーバルテック取締役に就任。2024年3月より現職。 |
社外取締役は、市川公雄(元横浜シティ証券企画総務部長)、熊谷輝美(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「運賃収受機器事業」および「システム開発事業」を展開しています。
■運賃収受機器事業
路線バスやワンマン鉄道向けの運賃収受機器の開発、製造、販売、メンテナンスサービスを提供しています。主にバス事業者を顧客とし、即時計数式運賃箱やマルチ決済端末、営業所向けの精算装置など、車載・地上機器を幅広く展開しています。
収益は、機器の販売代金やアフターサービスとしての保守・修理費用などをバス事業者等から受け取ります。運営は主に小田原機器および子会社のオーバルテックが行っています。
■システム開発事業
公共性の高い社会インフラシステムの開発案件に携わっており、ETCシステムや道路交通情報通信システムなどの開発・製造を行っています。また、各種無線通信モジュールを用いた組み込みシステムなども展開し、主にインフラ関連企業などを顧客としています。
収益は、システム開発やエンジニアリング、ソフトウェア設計などの対価として受け取ります。運営は子会社のソタシステムおよびアズマが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は大型更新需要などを背景に拡大傾向にあり、直近5年間で大幅な増収を達成しています。経常利益は特需の有無やシステム開発費用の影響を受けやすく、年度によって利益率にばらつきが見られます。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 36億円 | 47億円 | 39億円 | 61億円 | 77億円 |
| 経常利益 | 2億円 | 0.3億円 | 2億円 | 4億円 | 2億円 |
| 利益率(%) | 5.3% | 0.7% | 5.6% | 6.3% | 2.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.7億円 | -0.7億円 | 1.7億円 | 1.0億円 | -0.1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は堅調に推移しているものの、新紙幣対応などの特需が一服した影響により、売上総利益率は前年から低下しています。結果として営業利益も減少傾向にあります。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 61億円 | 77億円 |
| 売上総利益 | 21億円 | 19億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.8% | 24.2% |
| 営業利益 | 4億円 | 2億円 |
| 営業利益率(%) | 6.4% | 2.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が4億円(構成比26%)、支払手数料が2億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
運賃収受機器事業は運賃箱の大型案件完遂やマルチ決済端末の好調により大幅な増収となりました。一方、システム開発事業はグループ内売上の減少等により減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 運賃収受機器事業 | 55億円 | 70億円 |
| システム開発事業 | 6億円 | 6億円 |
| 連結(合計) | 61億円 | 77億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -11億円 | 15億円 |
| 投資CF | -1億円 | -0.3億円 |
| 財務CF | 15億円 | -25億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.0%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
社是として「開拓の精神で社会に貢献する」を掲げています。常に世の中に新しい商品とサービスを提供し、事業活動を通じて持続可能な社会づくりに貢献するという企業理念に基づき事業を展開しています。
■(2) 企業文化
多様な人材によって活性化した組織風土の構築を目指しています。性別等に関係なく、社員一人ひとりがエンゲージメントを高めつつ、生活の充実や働きやすさと仕事の成果をバランスさせるための環境整備や制度設計を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2026年度から2030年度までの5年間を対象とした新たな中期経営計画「ONG2030」を策定し、持続的な成長を目指しています。「稼ぐ力を高める」「稼いだ利益を原資にして成長投資を実行する」「売上成長を実現する」という成長サイクルを回すことを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
基盤領域では運賃収受機器やマルチ決済端末の品揃えを強化し、首都圏の大型更新需要の受注によるシェア拡大を図ります。同時に、事業仮説を立案・検証しながら「データサービスソリューション」などの新たな事業領域を創出し、早期の事業化を目指す戦略を掲げています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「成長事業を創出する人材の確保」「経営・マネジメント人材の確保」を掲げ、社員の自律的・計画的なキャリア開発を促す施策を進めています。社員が会社と共に成長するモチベーションとチャレンジマインドを高めるため、エンゲージメント施策や人事制度の見直しにも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 41.6歳 | 8.9年 | 6,463,003円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.1% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 85.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 30.4% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品の品質担保に関するリスク
運賃収受機器は高い信頼性が求められるため品質管理を徹底していますが、予期しない不具合が発生した場合、改修費用の発生等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特需による業績の変動
新紙幣・新硬貨の流通や消費税率変更、システムの一斉導入・更新等により特需が発生することがあり、特需の発生前と終束後で業績や財務状況が大きく変動する可能性があります。
■(3) 価格競争の激化と入札環境
公営バス事業者からの受注は競争入札で行われるため、入札価格の低下や競合他社の落札、さらに民間事業者との価格競争激化により、売上高が減少し業績に影響を及ぼす可能性があります。



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