大幸薬品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大幸薬品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大幸薬品は東京証券取引所プライム市場に上場し、「正露丸」を中心とした医薬品事業と「クレベリン」を展開する感染管理事業を主力とする企業です。直近の業績では、感染管理事業の増収により売上高は前期比で微増となりましたが、医薬品事業の原価上昇などの影響を受けて営業利益および経常利益は減益となっています。


※本記事は、大幸薬品の有価証券報告書(第80期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大幸薬品ってどんな会社?


同社は120年以上の歴史を持つ「正露丸」をはじめとする一般用医薬品や、衛生管理製品の製造販売を手掛けています。

(1) 会社概要


1946年に設立され、忠勇征露丸(現在の「正露丸」)の販売を開始しました。2005年には衛生管理製品「クレベリン」を発売し、事業を拡大しています。2009年に東京証券取引所市場第二部へ上場、翌2010年には同市場第一部へ指定されました。2015年には京都工場・研究開発センターを新設しています。

現在の従業員数は連結で220名、単体で193名です。筆頭株主は海外金融機関の顧客口座で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位には同社の代表取締役社長である柴田高が名を連ねています。

氏名 持株比率
ROYAL BANK OF CANADA SINGAPORE BRANCH-CLIENT’S A/C 7.67%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.82%
柴田高 6.63%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は柴田高が務めています。全役員のうち、50.0%が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
柴田仁 代表取締役会長 1974年日本アイ・ビー・エム入社。1977年に同社入社後、取締役社長室長等を経て1987年に代表取締役社長就任。2010年より現職。
柴田高 代表取締役社長 1981年大阪大学医学部第2外科入局。各病院の外科医長等を経て1998年同社取締役就任。代表取締役副社長を経て2010年より現職。
橋本昌司 専務取締役 2000年弁護士登録。国内外の法律事務所での経験を経て、2020年同社社外取締役(監査等委員)に就任。2024年より現職。


社外取締役は、富永俊秀(元パナソニックホールディングス常任監査役)、土居健人(オフィス・ケント・ドイ代表取締役)、三輪哲生(元武田薬品工業製薬本部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品事業」、「感染管理事業」および「その他事業」を展開しています。

(1) 医薬品事業


軟便や下痢などに有効に作用する「正露丸」「セイロガン糖衣A」「正露丸クイックC」等の一般用医薬品を製造・販売しています。薬局やドラッグストアなどを通じて国内の一般消費者へ供給するほか、香港や台湾、中国本土などの海外市場へも展開し、国内外で幅広い顧客層に製品を提供しています。

収益源は一般消費者向けおよび代理店経由の医薬品販売代金です。国内での主成分の製造は大幸TECに委託し、国内販売は同社が行っています。海外市場については、大幸薬品(亞洲太平洋)有限公司や台湾大幸薬品股份有限公司などの海外子会社を通じた販売や、同社からの代理店経由での輸出販売を行っています。

(2) 感染管理事業


二酸化塩素の特許技術を応用した「クレベリン」ブランドを中心とする衛生管理製品の企画・開発・販売を行っています。感染症に対する予防意識の高まりを背景に、一般消費者に加え、公共機関やホテル、医療・介護施設、外食産業、ビルメンテナンス事業者などの幅広い業務用の顧客をターゲットに製品を提供しています。

主な収益源は、一般消費者向けおよび業務用製品の卸売業者や代理店に対する販売代金です。一般消費者向け製品は同社がドラッグストア等の小売店へ供給し、業務用製品も卸売業者を通じてユーザーに提供しています。海外販売は同社および大幸薬品(亞洲太平洋)有限公司等の海外子会社が代理店経由で行っています。

(3) その他事業


「正露丸」等の主成分である日局木クレオソートを精製する際に副産物として生産される木酢液を使用した製品を展開しています。植物の生育を促進し、消臭効果等を持つ木酢液の特性を活かし、入浴液や園芸用木酢液などの製造および販売を行っています。

製品の販売代金が主な収益源となります。主成分の製造委託先から得られる副産物を有効活用する事業として位置づけられており、同社および関連する子会社において製品の製造と販売を実施しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は過去5期の中で一時半減しましたが、直近では緩やかな回復傾向にあります。経常利益は大幅な赤字が続いていましたが、前期に黒字転換を果たし、当期も黒字を維持しています。利益率は前期からやや低下したものの、親会社に帰属する当期純利益は安定して推移しており、業績の立て直しが進んでいることが伺えます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 113億円 50億円 61億円 63億円 64億円
経常利益 -61億円 -34億円 -12億円 7億円 5億円
利益率(%) -54.3% -66.5% -20.4% 10.9% 7.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -93億円 -50億円 -36億円 9億円 9億円

(2) 損益計算書


売上は微増となった一方で、売上総利益は減少しており、売上総利益率も低下傾向にあります。これは医薬品事業における原価上昇などが影響しています。その結果、営業利益も減益となり、営業利益率は前期から低下する結果となりました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 63億円 64億円
売上総利益 37億円 35億円
売上総利益率(%) 58.3% 54.4%
営業利益 6億円 5億円
営業利益率(%) 10.0% 7.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が7億円(構成比23.6%)、広告宣伝費が7億円(同21.6%)、支払手数料が3億円(同10.5%)を占めています。

(3) セグメント収益


売上規模が最も大きい医薬品事業は安定した収益基盤として機能していますが、原価上昇などの影響で利益は減少しています。一方、感染管理事業はマーケティングの強化や効果的な費用投下などによって増収となり、赤字幅も大きく縮小しました。その他事業は規模が小さく、少額の損失を計上しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
医薬品事業 58億円 58億円 19億円 16億円 27.3%
感染管理事業 5億円 6億円 -5億円 -3億円 -41.0%
その他事業 0.1億円 0.1億円 -0.1億円 -0.2億円 -440.0%
調整額 - - -8億円 -8億円 -
連結(合計) 63億円 64億円 6億円 5億円 7.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

大幸薬品は、営業活動により多くの資金を獲得し、事業活動の基盤を強化しています。投資活動では、有形固定資産の取得と投資有価証券の売却をバランス良く実施し、将来の成長に向けた投資を行いました。財務活動では、長期借入金の返済を進め、財務基盤の安定化を図っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 4億円 8億円
投資CF -0.1億円 1億円
財務CF -12億円 -12億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「大幸薬品は『自立』『共生』『創造』を基本理念とし、世界のお客様に健康という大きな幸せを提供します。」という企業理念を掲げています。この理念を実現するために、「健康社会の『ないと困る』を追求する。」をスローガンとし、すべての企業活動の指針として社会課題の解決や人々の健康に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


基本理念である『自立』『共生』『創造』の考え方に則り、従業員が自ら考え、目標を達成するために他者と協力し、新しい価値を生み出していける人材となることを重視しています。多様な背景を持つ人材の活躍を推進するとともに、教育プログラムを通じて挑戦する組織文化の醸成や働きやすさの向上に取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標


2026年度から2028年度の3カ年を対象とする中期経営計画において、構造改革からグローバル成長を目指すための戦略転換を掲げています。最終年度である2028年度には以下の業績目標の達成を目指しています。

* 売上高:85億円
* 営業利益:10億円
* ROE:10〜11%以上

(4) 成長戦略と重点施策


医薬品事業では設備更新等の積極化により安定稼働を実現し、国内外における「正露丸」ブランドのエクイティ強化に向けた投資を行って顧客基盤の拡大を図ります。感染管理事業ではエビデンス強化による信頼回復と、業務用領域を中心とした収益基盤の強化に取り組みます。また、次期中期経営計画に向けて新製品・新規事業の開発体制を強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「健康社会の『ないと困る』を追求する」というスローガンを実践できる人材、すなわち自分で考え、他者と協力して新しい価値を生み出せる人材の育成を重視しています。体系的な教育プログラムによる能力開発や、多様な人材が活躍できる組織基盤作り、働きやすさの向上を目的とした社内環境の整備を戦略の柱として推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 41.8歳 10.2年 7,382,753円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 70.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育児休業からの復職率(100%)、有休取得率(83%)、残業時間(月平均11.0時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定製品・取引先への依存リスク


売上高の大半が「正露丸」や「クレベリン 置き型」などの特定製品に依存しており、品質問題による回収等が発生した場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。また、売上の多くを特定の大手卸売業者などに依存しているため、取引方針の変化による販売機会の喪失リスクへの対策として新規開拓を進めています。

(2) 海外事業展開に伴うカントリーリスク


中国本土や香港、台湾を中心とする海外市場への事業展開においては、各地域の政治、経済、法律、文化、ビジネス慣習、為替などのカントリーリスクが存在します。これらによる予想し得ない事象が発生した場合には業績に影響を及ぼす可能性があるため、リスク情報を継続的に収集し、慎重な事業展開を行っています。

(3) 急激な需要変化と原材料調達リスク


感染管理事業は新たな感染症の流行や予防意識の動向によって製品需要が急激に変化しやすく、供給不足や過剰在庫に陥るリスクがあります。また、原材料価格の急激な高騰や調達先からの供給停滞が生じた場合には利益率が悪化する可能性があるため、複数の仕入先確保などによるサプライチェーンの強化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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