※本記事は、株式会社テラプローブの有価証券報告書(第21期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. テラプローブってどんな会社?
国内外の半導体メーカーからテスト工程を受託する、世界有数のテストソリューション提供企業です。
■(1) 会社概要
テラプローブは2005年に設立され、半導体のウエハテスト事業を開始しました。翌2006年には九州事業所を開設し、ロジック製品のテストへも領域を拡大しています。2010年の上場を経て、2017年に台湾のPowertech Technology Inc.の連結子会社となりました。
同社の従業員数は連結で1127名、単体で308名です。筆頭株主は親会社の力成科技日本合同会社であり、第2位も同じく親会社のPOWERTECH TECHNOLOGY INC.が名を連ねており、強固な資本提携関係にあります。第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 力成科技日本合同会社 | 48.81% |
| POWERTECH TECHNOLOGY INC. | 11.84% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.14% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表執行役社長の横山毅氏をはじめ、3名の社外取締役が選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 横山 毅 | 取締役 代表執行役社長 | 山口日本電気、広島エルピーダメモリ等を経て2005年同社取締役就任。執行役員メモリ事業部長、COOなどを歴任し、2020年3月より現職。 |
| 黒木 陽一 | 取締役 | 吉川セミコンダクタ等を経て2006年同社入社。テスト開発部門長などを経て、2023年3月より現職。 |
| 蔡 篤恭 | 取締役(非常勤)指名委員 | 1999年にPowertech Technology Inc.のCEOに就任。2005年同社取締役就任。2018年11月より同社Chairman。 |
| 謝 永達 | 取締役(非常勤)報酬委員 | Foxconn Electronics等を経てPowertech Technologyに入社。2020年10月より同社CEO。2022年3月より現職。 |
| 沈 俊宏 | 取締役(非常勤)監査委員 | Celxpert Energy等のCFOを経て、2024年11月よりPowertech TechnologyのCFO。2025年3月より現職。 |
社外取締役は、岩間耕二(元東芝執行役常務・報酬委員長)、森直樹(弁護士・指名委員長)、河野通有(元三重富士通セミコンダクター代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体テスト事業」を展開しています。
半導体製造工程におけるウエハテストおよびファイナルテストの受託を主力としています。国内外の半導体メーカーやファブレス企業を顧客とし、ロジック、メモリ、イメージセンサなど幅広い製品の検査を実施し、不良品の判別を行っています。
顧客から支給されたテストプログラムを用いて検査を行い、結果を提供するモデルです。また、親会社のPowertech Technology Inc.等と連携し、後工程まで含めたターンキーサービスも提供しています。運営は主にテラプローブおよび子会社のTeraPower Technology Inc.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な右肩上がりで成長を続けています。経常利益も高い水準を維持しており、20%前後の高収益な利益率を記録するなど、安定的な事業基盤を確立しています。
| 項目 | 第17期 | 第18期 | 第19期 | 第20期 | 第21期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 259億円 | 332億円 | 354億円 | 371億円 | 417億円 |
| 経常利益 | 41億円 | 73億円 | 74億円 | 70億円 | 88億円 |
| 利益率(%) | 15.8% | 22.1% | 20.9% | 18.9% | 21.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 17億円 | 28億円 | 26億円 | 13億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の成長に伴い売上総利益も拡大しており、売上総利益率は28.2%と高い付加価値を生み出しています。営業利益も前年から増加し、収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 第20期 | 第21期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 371億円 | 417億円 |
| 売上総利益 | 96億円 | 118億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.9% | 28.2% |
| 営業利益 | 69億円 | 89億円 |
| 営業利益率(%) | 18.7% | 21.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が7億円(構成比25%)、賞与引当金繰入が4億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は半導体テスト事業の単一セグメントであるため、事業全体が当セグメントに含まれます。サーバーおよびAI関連製品の旺盛な需要やEV向け製品の取引拡大により、売上高は前期比で伸長しています。
| 区分 | 売上(第20期) | 売上(第21期) |
|---|---|---|
| 半導体テスト事業 | 371億円 | 417億円 |
| 連結(合計) | 371億円 | 417億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 第20期 | 第21期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 175億円 | 201億円 |
| 投資CF | -146億円 | -287億円 |
| 財務CF | -36億円 | 118億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「常に、チャレンジ精神と誇りをもってビジネスに取り組み、技術を磨き、生産の効率化を進め、世界中のお客様が心から満足し信頼できるパートナーとして、新たな価値創造に貢献する」ことを経営理念に掲げています。この理念のもと、社会のあらゆる場面で使用される製品の品質と信頼性を支え、安全で快適な社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、従業員が成長できる企業グループを目指し、「テクノロジーの進化とともに、日本、台湾から世界中へテストソリューションを届け、お客様と従業員が成長し続ける会社を目指す」というビジョンを掲げています。また、行動規範である「Tera Probe Code of Conduct」にサステナビリティや人権尊重を定め、働きやすい職場環境づくりを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は高い収益性の確保と企業価値の向上を目指し、以下の指標を目標として掲げています。
* 売上高営業利益率:20%台前半の水準を安定的に維持・向上
* ROE(自己資本利益率):株主資本コストを上回る水準の維持
* ROIC(投下資本利益率):加重平均資本コスト(WACC)を上回る水準の維持
■(4) 成長戦略と重点施策
AIおよび先端デバイス分野を中心とした高付加価値領域での需要拡大を成長機会と捉え、これらの分野におけるビジネス獲得を積極的に進めています。また、サプライチェーン再編の動きに対応し、付加価値サービスの提供を通じて新たな需要を取り込む方針です。さらに、スマートファクトリー化の推進によりデータ活用やAI技術を導入し、品質向上と生産能力の最大化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
半導体業界で人材不足が続く中、エンジニアを中心とした専門人材の確保と育成を成長戦略を支える重要課題と位置づけています。計画的な教育プログラムの拡充や若手エンジニアの早期戦力化を進めるとともに、国籍や性別にとらわれない多様な人材が能力を最大限に発揮できる職場環境の整備を推進し、人材の定着を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 第21期 | 41.2歳 | 7.9年 | 6,376,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.2% |
| 男性育児休業取得率 | 42.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 68.1% |
※パート・有期労働者の男女賃金差異は女性の該当者がいないため省略しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性技術者数(20名)、年次有給休暇取得日数(12.91日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定顧客への依存
同社が業務を受託している大手顧客からの委託量が大きく減少した場合や、顧客の事業環境に大きな変化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、新規顧客の開拓やスマートファクトリー化による生産性向上を図り、付加価値を高めることで顧客との中長期的な取引関係の深化に努めています。
■(2) 台湾拠点の事業環境変化
売上高の約75%を占める台湾子会社において、保護主義の進展や地域紛争、法令・規制の変更等が生じた場合、事業活動に支障が生じる可能性があります。対策として、テストプラットフォームの共通化を進め、生産停止等の事態には日本国内の九州事業所で受託可能な体制を整備し、事業継続マネジメントを強化しています。
■(3) 人材の確保競争激化
半導体関連投資の拡大により人材需給が逼迫しており、必要な専門人材を計画通り確保できない場合、事業展開に影響を及ぼす可能性があります。特に日本拠点がある熊本県では人材獲得競争が激化しているため、外国籍従業員を含む多様な人材の積極採用や教育研修の充実、働きやすい環境づくりで定着を図っています。



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