※本記事は、インテグラル株式会社の有価証券報告書(第20期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. インテグラルってどんな会社?
PEファンドの運営と自己資金による投資を通じ、企業の長期的な価値向上を支援する独立系投資会社です。
■(1) 会社概要
インテグラルは2006年に設立され、PE投資事業を主たる目的として創業しました。2008年に第1号ファンドを組成して以降、長期的視野に立ったハイブリッド投資により規模を拡大しています。2023年に東京証券取引所グロース市場への上場を果たし、2024年には不動産投資ファンド事業を開始しました。
現在、同社は連結で98名、単体で93名の従業員を擁しています。筆頭株主は代表取締役パートナーの山本礼二郎氏で、第2位は同社パートナーの佐山展生氏です。また、第3位には取締役パートナーの水谷謙作氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山本礼二郎 | 28.61% |
| 佐山展生 | 23.86% |
| 水谷謙作 | 7.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役パートナーの山本礼二郎氏がトップを務めています。社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山本礼二郎 | 代表取締役パートナー | 三井銀行に入行後、ユニゾン・キャピタル等を経て、2006年1月より現職。 |
| 辺見芳弘 | 取締役パートナー | 三井物産に入社後、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、2007年9月より現職。 |
| 水谷謙作 | 取締役パートナー | 三菱商事に入社後、モルガン・スタンレー証券等を経て、2007年12月より現職。 |
| 仲田真紀子 | 取締役パートナー | さくら銀行に入行後、大和証券エスエムビーシー等を経て、2024年3月より現職。 |
社外取締役は、竹内弘高(一橋大学名誉教授)、冨田勝(慶應義塾大学名誉教授)、櫛田正昭(元横浜ゴム常任監査役)、三橋優隆(三橋優隆公認会計士事務所代表)、菊地伸(外苑法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「PE投資事業」および「不動産投資事業」の報告セグメントと、「その他」事業を展開しています。
■PE投資事業
主に未公開企業への投資を目的としたファンドを組成・運用し、経営支援や自己資金によるプリンシパル投資を組み合わせて企業価値を高める事業を展開しています。事業承継、非公開化、カーブアウトなど幅広いニーズに対応し、専門人材による常駐型の経営支援を提供しています。
収益は、ファンドの運用残高に応じた管理報酬、投資先企業からの経営支援料のほか、ファンドの運用成績に基づくキャリードインタレストから構成されます。本事業の運営は、インテグラルパートナーズなどが主体となって行っています。
■不動産投資事業
オフィス、住宅、商業施設など多様な不動産アセットに投資するバリューアッド型のファンドを組成・運用しています。既存の物件に対してリノベーションや用途変更などの施策を講じ、不動産価値やキャッシュフローの最大化を図る事業を展開しています。
収益は、ファンド運営の対価としての管理報酬や、資産価値向上後の売却に伴うキャピタルゲイン、運用成績に応じたキャリードインタレストによって得られます。本事業の運営は主にインテグラルリアルエステートが行っています。
■その他
同社は2025年3月より、新たな事業としてグローバルテック・グロース投資事業を開始しました。日本・アジア・米国等のグロース企業への投資および経営支援を行うファンドを、海外企業等と共同で設立・運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、第18期から第19期にかけてファンドの投資回収が進み大幅な増収増益を記録しましたが、当期はキャリードインタレストなどの計上が一服したことで、一転して大幅な減収減益となっています。一方で、各期の利益率は一貫して高い水準を維持しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 39億円 | 54億円 | 141億円 | 312億円 | 137億円 |
| 税引前利益 | 17億円 | 29億円 | 109億円 | 260億円 | 93億円 |
| 利益率(%) | 43.5% | 53.6% | 77.5% | 83.2% | 67.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 20億円 | 76億円 | 181億円 | 61億円 |
■(2) 損益計算書
前期の大型Exitによる収益計上が一段落したことで、当期は売上高、利益ともに減少しています。ファンドの運用益や管理報酬が中心であるため原価率は低く、売上総利益率および営業利益率はいずれも高い水準で推移しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 312億円 | 137億円 |
| 売上総利益 | 188億円 | 68億円 |
| 売上総利益率(%) | 60.2% | 49.6% |
| 営業利益 | 260億円 | 93億円 |
| 営業利益率(%) | 83.3% | 67.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が7億円(構成比30%)、賞与が3億円(同12%)、租税公課が2億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力であるPE投資事業は、前期に獲得した多額のキャリードインタレストの反動減により、当期は大幅な減収減益となっています。また、当期より不動産投資事業が報告セグメントとして追加されています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| PE投資事業 | 312億円 | 133億円 | 275億円 | 109億円 | 81.5% |
| 不動産投資事業 | - | 3億円 | - | -1億円 | -20.2% |
| 連結(合計) | 312億円 | 137億円 | 260億円 | 93億円 | 67.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
インテグラルは、営業活動によるキャッシュ・フローが減少したものの、投資活動では有形固定資産の取得による支出に留まりました。財務活動では、子会社からの借入れ収入と借入金の返済、配当金の支払いが発生しました。これらの結果、現金及び現金同等物は減少しました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 58億円 | -14億円 |
| 投資CF | -1億円 | -1億円 |
| 財務CF | -25億円 | -14億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「Trusted Investor=信頼できる資本家」を目指し、世界に通用する日本型企業改革の実現に貢献することをミッションとして掲げています。資本家たるファンドと経営者が強い信頼関係の下に協力し合うことで、企業を発展に導くことを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、企業は人であるという考えのもと「ハートのある信頼関係」を事業すべての基礎としています。「長期的な企業価値の向上を愚直に追求」し、経営陣と同じ目線に立ち挑戦し続けること、また「最高の英知を結集し、『新しい何か』の創造に挑戦」することを行動規範として定めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、各アセットクラスにおいて投資先企業および投資アセットの価値を増大させることで、AUM(運用資産残高)を中長期的に拡大させること、キャリードインタレストの最大化を図ること、およびプリンシパル投資の公正価値を継続的に成長させることを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、日本市場特有のニーズを捉えた投資スタイルの確立に加え、今後はアセットクラスや展開地域の拡大を通じたさらなる運用資産残高の成長を企図しています。不動産投資やグロース投資のほか、インフラ、クレジット等への領域拡大も目指すとともに、DX推進やAI活用による積極的な業務効率化と投資先支援に取り組んでいきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本の強化に向けて「One Teamで英知を結集する」というコンセプトを掲げています。単なる投資家ではなく事業の構想段階から経営に関与していく人材の育成を重視し、「インテグラル道場」という独自プログラムを通じたOJTや、柔軟な働き方の推進による職場環境整備に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 39.5歳 | 4.9年 | 21,356,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、Scope 1(0t-CO2e)、Scope 2(174.0t-CO2e)、Scope 3(60,008.6t-CO2e)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経営環境の悪化とファンド運営への影響
同社グループが運用するファンドのパフォーマンスは、景気減速、金利変動、地政学リスクなどの経済・政治情勢に影響を受けます。世界経済が不況に陥った場合や、日本経済の成長が想定を下回った場合には、投資先企業の業績不振やファンド資金の募集難を招き、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競合の激化と投資機会の喪失
投資業界では他ファンドや金融機関、事業会社との間で有望な企業への投資案件の獲得競争が激化しています。競合他社が有利な条件を提示することで、投資先やファンド資金の獲得競争で劣後する可能性があり、その結果、現在の管理報酬水準や投資機会を維持できなくなるリスクがあります。
■(3) プリンシパル投資と利益相反リスク
自己資金を用いたプリンシパル投資は、ファンド投資の基盤構築に寄与する一方、ファンド投資家との間で潜在的な利益相反が生じる恐れがあります。利益相反関係が適切に管理されず紛争等に発展した場合、同社のレピュテーションが低下し、将来のファンド組成や事業運営に深刻な影響を与える可能性があります。



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