※本記事は、ラクオリア創薬の有価証券報告書(第18期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. ラクオリア創薬ってどんな会社?
同社は、先端科学技術を活用して新たな医薬品を生み出し、製薬企業等へ導出する創薬ベンチャー企業です。
■(1) 会社概要
同社は2008年に医薬品の研究開発を目的として設立されました。同年、ファイザー中央研究所の閉鎖に伴い従業員の移籍や設備の譲受を受けて事業を開始し、2011年に株式を上場しました。近年では、2024年にファイメクスを完全子会社化し、2025年にはHK inno.N Corporationと資本業務提携を結んでいます。
現在の従業員数は連結で85名、単体で64名体制です。筆頭株主はKOREA SECURITIES DEPOSITORY-SAMSUNGであり、第2位は同社役員の柿沼佑一氏、第3位は設立時に事業基盤の譲受などで関わりのある事業会社のファイザーとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| KOREA SECURITIES DEPOSITORY-SAMSUNG | 10.61% |
| 柿沼佑一 | 9.75% |
| ファイザー | 3.04% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役は須藤正樹氏が務めており、役員のうち4名が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 須藤正樹 | 代表取締役 | 1996年帝人入社。1999年ファイザー製薬入社。2008年同社入社後、化学研究部長等を歴任。執行役員、取締役を経て2025年より現職。 |
| 宇都克裕 | 取締役 | 2005年日本ベーリンガーインゲルハイム入社。旭化成ファーマ、マルホ等を経て2021年同社入社。執行役員等を歴任し、2022年より現職。 |
社外取締役は、土屋裕弘(元田辺三菱製薬社長)、石井幸佑(石井幸佑会計事務所代表)、柿沼佑一(髙篠・柿沼法律事務所パートナー)、中野貴之(帝人ミッション・エグゼクティブ)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医薬品の研究開発」事業を展開しています。
■(1) 医薬品の研究開発事業
先端科学技術を活用し、医療分野においてニーズの高い疾患領域に対する新たな医薬品を生み出すことを目指す研究開発型の事業です。消化器疾患領域や疼痛疾患領域を中心に、がんと神経疾患を含む幅広い疾患領域で創薬テーマの研究開発に取り組んでおり、世界中の製薬企業各社などを顧客としています。
収益源は、独自に創出した新薬の開発化合物を製薬会社等に導出することによる契約一時金収入、開発の進捗等に応じたマイルストン収入、医薬品の上市後に販売額に応じて受け取るロイヤルティ収入などです。事業の運営は同社および、テムリック、ファイメクスなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、経常利益は一時的に赤字を計上した時期があったものの、直近では黒字へ転換し回復傾向にあります。当期利益についても同様に、赤字局面を乗り越えて再び黒字を確保しており、研究開発投資の成果や導出先からの収益が利益に貢献し始めている状況がうかがえます。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | 8.6億円 | 9.0億円 | -2.9億円 | -3.6億円 | 4.4億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益 | 6.1億円 | 5.8億円 | -4.3億円 | 0.6億円 | 5.0億円 |
■(2) 損益計算書
営業利益は直近2期間で赤字から黒字へと大きく改善しています。事業展開におけるコストコントロールや開発化合物の収益化の進展により、本業の儲けを示す営業利益がプラスに転じたことが確認できます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | -2.1億円 | 4.8億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
■(3) セグメント収益
同社グループは「医薬品の研究開発」およびそれに関連する事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績データは開示されていません。全社のリソースを創薬事業に集中させて収益の最大化を目指しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 医薬品の研究開発 | - | - |
| 連結(合計) | - | - |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナス、投資活動によるキャッシュ・フローがプラス、財務活動によるキャッシュ・フローがプラスとなっています。これは、本業の赤字を資産売却や資金調達で補填している「救済型」の局面にあることを示しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.8億円 | -3.5億円 |
| 投資CF | -36.7億円 | 1.2億円 |
| 財務CF | 29.8億円 | 3.8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.1%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「innovators for life」をスローガンに掲げています。未だ治療薬のない疾病に苦しむ患者に医薬品を届けることを使命とし、病に苦しむ人々のもとへ一日でも早く新薬を届けたいという想いを胸に事業を展開しています。次世代型創薬バリューチェーンの構築を通じて、革新的な新薬の研究開発に取り組むことを社会的意義としています。
■(2) 企業文化
サイエンスを追求し新たな薬を生み出していく文化を大切にしています。プロジェクト型の研究開発体制を採用しており、研究者が主体的に課題設定や意思決定に関与する機会を重視する組織風土があります。また、働き方の多様性を認め合い、社員一人ひとりのワークライフバランスに配慮しながら、持続的な働きがいを感じられる環境の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「中期経営計画2025-2027」において、中期的には3期連続の営業黒字および安定的な収益成長の実現を目標に掲げています。また、導出準備プログラムから毎期1件以上のライセンス契約を獲得することを継続的な目標としているほか、連結子会社が手がける共同研究事業においても、毎期1件以上の新規共同研究契約の獲得を目指して経営を推進しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存技術と新技術の相乗効果によって創薬バリューチェーンを強化し、未開拓の創薬標的に対する医薬品を生み出すことを成長戦略としています。実績ある低分子創薬技術に加えて次世代創薬技術を積極的に活用し、研究開発ポートフォリオを強化します。さらに、成長ドライバーとなる品目への戦略的投資を進め、外部提携先とのアライアンスを強化してプロジェクト価値の向上と早期の収益化を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
高度な専門性を有する研究人材の継続的な育成と、その知見を最大限に引き出す研究環境の整備を重要な経営課題と位置づけています。プロジェクト型の研究開発体制での実践や、大学などのアカデミアとの産学連携を通じた人材交流により、専門性の深化と組織横断的な協働を両立させる人材育成を推進しています。また、多様な人材の確保と働きやすい職場環境の整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 48.1歳 | 10.1年 | 7,557,868円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.6% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 56.7% |
※男性育児休業取得率の「-」は、当事業年度に育児休業取得の対象となる男性労働者がいなかったことを示しています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 医薬品研究開発における不確実性
医薬品の研究開発は、探索研究から承認取得に至るまで長期間と巨額の費用を要する一方で、成功確率は他産業に比べて極めて低いとされています。品質や安全性のデータが十分に得られない場合や、規制変更による承認要件の変更等が発生した場合、開発費用の増大や承認取得の遅延につながるリスクがあります。
■(2) 新薬開発における競合環境の変化
同社の主たる事業である医薬品の研究開発分野においては、多くの製薬会社や創薬ベンチャー企業が活発な研究開発活動を行っています。そのため、競合品の存在や他社の研究開発の進捗状況が、同社の開発化合物の導出活動や将来の収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 製薬会社等へのライセンス導出の成否
同社の収益は、開発化合物を製薬会社等へ導出することに依存しています。しかし、導入に対する評価や判断は製薬会社ごとに異なるため、企図した時期に契約締結に至らない可能性や、契約条件が想定と大きく異なる可能性があり、事業収益に多大な影響を与えるリスクがあります。
■(4) 海外取引に起因する為替変動リスク
同社グループは事業活動をグローバルに展開しており、海外での研究開発活動や海外企業とのライセンス契約において外貨建の取引が多数存在します。そのため、急激な為替相場の変動が生じた場合、為替差損が発生するなど同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。



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