enish 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

enish 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

enishはスタンダード市場に上場し、モバイルゲームの企画・開発・提供を主力事業として展開しています。直近の業績は、既存タイトルの売上減少などにより減収となっており、継続的なコスト削減を進めているものの赤字が継続しています。今後は新規タイトルの開発とIP活用により収益改善を目指しています。


※本記事は、株式会社enishの有価証券報告書(第17期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. enishってどんな会社?


モバイルゲームの企画・開発・提供を行い、多彩なIPタイトルを展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は2009年に設立され、独自タイトルの提供を皮切りに国内モバイルゲーム市場に参入しました。2010年に「ぼくのレストランⅡ」や「ガルショ☆」などの人気タイトルを公開し、事業を拡大させました。2012年に東京証券取引所マザーズに上場し、2013年には市場第一部へ市場変更、その後2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しています。近年は人気アニメIPを活用したゲームアプリの開発やグローバル展開にも注力しています。

同社(単体)の従業員数は82名です。筆頭株主は外資系金融機関のBNP PARIBAS LONDON BRANCH FOR PRIME BROKERAGE CLEARANCE ACC FORTHIRD PARTYで、第2位は役員の公文善之氏、第3位は金融商品取引業者のSBI証券となっています。

氏名 持株比率
BNP PARIBAS LONDON BRANCH FOR PRIME BROKERAGE CLEARANCE ACC FORTHIRD PARTY 2.77%
公文善之 2.74%
SBI証券 2.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は安徳孝平氏が務めています。社外取締役比率は14.3%です。

氏名 役職 主な経歴
安徳孝平 代表取締役社長 元LINEヤフー。2009年同社代表取締役就任。2011年取締役就任等を経て、2014年より現職。
公文善之 取締役執行役員プロダクト1本部長兼プラットフォーム開発本部長兼ビジネス開発本部長 元LINEヤフー。2009年同社代表取締役就任。2011年より取締役。2026年より現職。
川平一人 取締役執行役員 元ゲームアーツ。2015年同社入社。2016年執行役員就任。2018年より現職。


社外取締役は、安川新一郎(グレートジャーニー合同会社代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エンターテインメント事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) エンターテインメント事業


モバイルゲームの企画・開発・提供を主力としています。主にアプリストアを通じたネイティブアプリの配信や、プラットフォームを通じたブラウザゲームを提供しており、女性向け経営シミュレーションゲームや人気アニメのIPを活用したパズルゲーム、RPGなど幅広いジャンルのタイトルを展開しています。

収益の柱は、ユーザーからのゲーム内アイテム課金収入です。また、他社からの受託によるゲーム開発収入も得ています。決済手数料やシステム利用料をプラットフォーム事業者に支払うモデルとなっており、事業の運営は同社やベトナム等の子会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の売上高は減少傾向にあり、直近では21.7億円となっています。利益面ではすべての期間で経常赤字が継続しており、特に直近2期間は8億円を超える赤字を計上するなど、厳しい事業環境が続いています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 38.9億円 41.2億円 35.1億円 33.2億円 21.7億円
経常利益 -2.7億円 -3.8億円 -12.7億円 -8.6億円 -8.3億円
利益率(%) -6.9% -9.1% -36.1% -26.0% -38.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -2.8億円 -4.2億円 -13.7億円 -8.8億円 -11.5億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の減少に伴い売上総利益が赤字に転落しています。運営体制の見直し等によりコスト削減を進めたものの、営業赤字幅が拡大する結果となりました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 33.2億円 21.7億円
売上総利益 0.3億円 -3.2億円
売上総利益率(%) 0.9% -14.9%
営業利益 -8.2億円 -8.6億円
営業利益率(%) -24.6% -39.5%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が1.1億円(構成比21%)、支払手数料が1.0億円(同19%)、給料手当及び賞与が0.9億円(同17%)を占めています。また、売上原価のうち、支払手数料等の経費が18.8億円(構成比75%)、労務費が6.1億円(同25%)となっています。

(3) セグメント収益


エンターテインメント事業の単一セグメントですが、既存タイトルの一部で売上高の低減がみられ、前事業年度と比較して減収となりました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
連結(合計) 33.2億円 21.7億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業は赤字ですが、将来成長のため借入等で資金調達を行い投資を継続する「勝負型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -9.7億円 -8.7億円
投資CF -1.2億円 -1.1億円
財務CF 11.5億円 10.2億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.8%で、市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「Link with Fun」というスローガンのもと、「世界中にenishファンを作り出す」ことをミッションとして掲げています。より多くの顧客に楽しんでもらえるよう、独自性があり魅力的なサービスの提供を通じて、継続的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、個々の専門性を最大限に発揮できる少数精鋭の組織体制を重視しています。AI技術の活用による業務効率化やプロセスの高度化を推進し、創出されたリソースを付加価値の高い業務へ重点的に配分することで、従業員が安心して柔軟な働き方を実現できる環境づくりに取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営上の目標達成を判断するための客観的な指標として、売上高および営業利益を重視しています。これらの指標を継続的に成長させることで、企業価値の向上を図る方針です。なお、具体的な数値目標は設定されていません。

(4) 成長戦略と重点施策


既存タイトルの運営方針見直しによる収益性改善と、魅力的なIPを活用した高品質な新規ゲーム開発に注力します。また、開発基盤の強化やAIの活用、オフショア拠点の活用により開発費を抑制するとともに、規模及び成長性が大きい海外のモバイルゲーム市場への参入を重要な成長戦略と位置づけ、グローバル展開を積極的に推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な事業成長と企業価値の向上を実現するため、事業戦略を担う高い専門性と主体性を備えた人材の確保および育成を重要視しています。多様なバックグラウンドを持つ人材が能力を発揮できる柔軟な就業制度や福利厚生の充実を図るとともに、職種や役割に応じた教育機会の提供を通じて、一人ひとりの専門性の向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 38.0歳 7.6年 6,021,667円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(パート・有期労働者) -

※同社は公表義務の対象ではないため、男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異については、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) モバイルゲーム市場の競争激化


モバイルゲーム市場は顧客ニーズの変化や技術革新の速度が極めて速く、競合他社が多数存在しています。パソコンや専用端末のゲームメーカーとの競争環境の更なる激化や技術革新への対応の遅れ、市場全体の成長の鈍化などが生じた場合、事業および業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 大手プラットフォーム運営事業者への依存


同社のモバイルゲーム事業は、Apple Inc.やGoogle Inc.など特定の大手プラットフォーム事業者への収益依存度が高くなっています。これら事業者の事業戦略の転換や動向により、手数料率の変動などがあった場合、収益性に重大な影響を与える可能性があります。

(3) 継続企業の前提に関する重要な疑義


同社は継続して営業赤字および当期純損失を計上しており、継続企業の前提に重要な疑義が生じています。既存タイトルのコスト削減や新規タイトルの開発、資金調達など事業および財務基盤の安定化策を講じていますが、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。