ペプチドリーム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ペプチドリーム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

プライム市場に上場するペプチドリームは、独自の創薬プラットフォームを活用した創薬開発事業と、子会社を通じた放射性医薬品事業を柱としています。当期業績は、一部契約の期ずれ等により売上収益が減少し、営業損失および当期損失を計上する大幅な減収減益となりました。


※本記事は、ペプチドリームの有価証券報告書(第20期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ペプチドリームってどんな会社?


同社は独自のペプチド創薬プラットフォームを活用した新薬開発と放射性医薬品事業を展開するバイオ企業です。

(1) 会社概要


同社は2006年に設立され、東京大学から創薬プラットフォームシステムPDPSの包括的な独占的通常実施権を取得しました。2013年にマザーズへ上場し、2015年に東証一部へ市場変更しました。2022年にはPDRファーマを子会社化して放射性医薬品事業に参入し、現在の事業体制を確立しています。

現在の従業員数は連結で645名、単体で169名体制です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行となっています。第2位株主は創業メンバーであり元取締役会長の窪田規一氏、第3位株主は同じく創業メンバーの菅裕明氏となっており、創業者が引き続き上位株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.53%
窪田規一 9.50%
菅裕明 9.18%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長CEOはリード・パトリック氏が務めており、社外取締役比率は約66.7%となっています。

氏名 役職 主な経歴
リード・パトリック 代表取締役社長CEO 2007年入社。取締役研究開発部長等を経て2017年に代表取締役社長、2022年より現職。ペプチスター等の取締役を兼務。
金城 聖文 取締役副社長CFO ボストン・コンサルティング・グループを経て2018年入社。取締役副社長等を経て2022年より現職。PDRファーマ常務取締役等を兼務。


社外取締役は、神谷紀一郎氏(元JSRライフサイエンス取締役社長・常勤監査等委員)、花房幸範氏(アカウンティングワークス代表取締役)、宇都宮純子氏(宇都宮・清水・陽来法律事務所代表パートナー)、西山潤子氏(元ライオンCSR推進部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「創薬開発事業」および「放射性医薬品事業」を展開しています。

(1) 創薬開発事業


独自の創薬プラットフォームシステムPDPSを中核とした創薬基盤技術を活用し、創薬共同研究開発、PDPSの技術ライセンス、戦略的提携による自社パイプラインの拡充を行っています。国内外の大手製薬企業等を顧客としています。

主な収益源は、PDPSライセンスに係る契約一時金、マイルストーンフィー、売上高ベースのロイヤルティー、および研究開発業務提供に係る研究開発支援金です。事業の運営は同社が行っています。

(2) 放射性医薬品事業


がんや脳の異常蓄積等の病変を画像で検査する診断用放射性医薬品、およびがん領域を中心とするアンメットメディカルニーズに対応する治療用放射性医薬品の研究開発、製造販売を行っています。医療機関や関連施設が主な顧客となります。

主な収益源は、診断用放射性医薬品(SPECT用診断薬、PET用診断薬)および治療用放射性医薬品等の製品の販売代金です。事業の運営は同社の完全子会社であるPDRファーマが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は第19期に大型契約等により大きく拡大しましたが、第20期は契約の期ずれ等により減少に転じています。利益面でも第19期までは高い利益水準を維持していましたが、当期は減収の影響が大きく、各利益段階で損失を計上する結果となりました。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 94億円 269億円 287億円 467億円 185億円
税引前利益 38億円 67億円 44億円 209億円 -53億円
利益率(%) 40.4% 24.8% 15.2% 44.8% -28.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 26億円 76億円 30億円 150億円 -37億円

(2) 損益計算書


売上収益の減少に伴い、売上総利益も前期間比で大幅に減少しました。一方で研究開発費等を含む販売費及び一般管理費は一定水準を要するため、利益率が大きく低下し、営業損失を計上しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 467億円 185億円
売上総利益 279億円 5億円
売上総利益率(%) 59.7% 2.5%
営業利益 211億円 -50億円
営業利益率(%) 45.2% -27.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が30億円(構成比40%)、荷造運賃が19億円(同25%)を占めています。

(3) セグメント収益


創薬開発事業は前期の大型契約による一時金収入の反動や今期契約の期ずれ等により大幅な減収となりました。一方、放射性医薬品事業は新製品の販売や適応追加等により堅調に推移し増収となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
創薬開発事業 313億円 28億円
放射性医薬品事業 161億円 169億円
調整額 -7億円 -12億円
連結(合計) 467億円 185億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは「末期型」の傾向を示しています。これは本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的となる状態を意味します。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 238億円 -133億円
投資CF 84億円 -21億円
財務CF -30億円 -41億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「医療のあり方や患者さんの人生に変革をもたらす次世代医薬品の創出」をミッションとして掲げています。世界最先端の独自創薬プラットフォームシステムである「PDPS」を基盤に革新的医薬品の研究開発を主導し、子会社が持つ放射性医薬品分野の専門知識と統合することで、グローバルヘルスケアおよび医療技術の発展に寄寄することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「高い専門性・情熱・誠実」の3つのバリューを柱とする10の行動指針を全役職員で共有し、これらが根付いたコーポレートカルチャーの実現を目指しています。専門性を引き出し合い協働する先にイノベーションの創出があり、互いの仕事を尊重し一人ひとりがオーナーシップを持って取り組む「誠実さ」を重要な基盤としています。

(3) 経営計画・目標


同社は収益性の向上を目指しており、経営指標として売上収益、Core営業利益およびCore営業利益率を重視しています。中短期的な目標として、2026年12月期において以下の数値を掲げています。

* 売上収益:320億円
* Core営業利益:46億円
* 売上収益Core営業利益率:14.4%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は将来的に「グローバル製薬企業」へと変革する長期ビジョンを掲げ、創薬と開発を一体で推進する「ディスカバリー&ディベロップメント」モデルへの移行を進めています。自社の優位性を活かせる5つの重点領域へ研究開発資源を戦略的に集中させ、高付加価値プログラムの開発を加速することで臨床開発パイプラインを大きく拡充させていく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


創薬開発のグローバルハブとしてのポジションを強化するため、国内外の最先端研究チームと協働できる高度専門家や海外勤務経験者の採用を推進しています。また、多様な人材が活躍できるよう、フレックスタイム制や年2回の長期休暇を組み込んだメリハリある働き方を推奨し、エキスパート・キャリアトラックの整備や能力開発サポートを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.2歳 5.4年 9,519,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 29.0%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) -


※パート・有期労働者には男性社員がいないため「-」としています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中核人材における博士号取得者の比率(42.4%)、外国籍又は海外勤務経験者の比率(34.8%)、エンゲージメントサーベイの総合スコア(69.5)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医薬品開発・薬事承認の不確実性

同社は創薬プラットフォームを活用した新薬開発を行っていますが、一般に医薬品開発には多額の投資と長期の年月を要します。臨床試験等の結果によって開発の延長や中止を余儀なくされる可能性や、規制当局による承認が得られない可能性があり、これらが同社の事業戦略や業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 副作用や製造物責任に関するリスク

医薬品には予期せぬ副作用が発現するリスクが伴います。同社グループでは製品の安全性・品質に関する取り組みを強化し、リスク軽減に努めていますが、万が一副作用等による製造販売の中止、製品の回収、薬害訴訟等が提起された場合、同社の業績や社会的信用に影響を与える可能性があります。

(3) 放射性核種の安定供給に関するリスク

放射性医薬品の核となる放射性核種は、特殊な設備を用いて希少な原料から製造されるため、海外サプライヤーを中心とする特定の供給元に依存しています。自然災害やインフラ障害、国際情勢の悪化等により供給元の施設損壊や事業活動の停滞が生じた場合、安定供給に支障をきたし業績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。