※本記事は、K&Oエナジーグループの有価証券報告書(第12期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. K&Oエナジーグループってどんな会社?
ガス事業とヨウ素事業を両輪とし、千葉県を中心に国産エネルギー資源の開発から供給までを一貫して手掛ける企業です。
■(1) 会社概要
1931年に天然ガス事業へ進出した関東天然瓦斯開発と、1956年設立の大多喜ガスが、2014年1月に共同株式移転を行い、持株会社としてK&Oエナジーグループを設立しました。同年、東京証券取引所第一部に上場し、現在はグループ一体となって総合エネルギー事業およびヨウ素事業を展開しています。
現在の従業員数は連結で691名、単体で54名です。大株主については、筆頭株主がエネルギー・化学事業を展開する合同資源であり、第2位も同じく産業ガス事業等を手掛けるエア・ウォーターが名を連ねており、事業会社を中心とした安定的な資本関係が構築されています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 合同資源 | 18.30% |
| エア・ウォーター | 17.10% |
| 京葉瓦斯 | 13.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長執行役員を緑川昭夫氏が務めており、取締役における社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 緑川昭夫 | 代表取締役社長執行役員情報システム部担当 | 1981年大多喜ガス入社。同社取締役供給部長等を経て、2018年同社代表取締役社長に就任。2020年より現職。 |
| 森武 | 代表取締役専務執行役員経営企画部・人事部担当 | 1983年大多喜ガス入社。関東天然瓦斯開発取締役、同社代表取締役社長等を経て、2026年より現職。 |
| 八代伸彦 | 取締役執行役員経理部長 | 1988年大多喜ガス入社。同社経理部長を経て、2020年執行役員経理部長に就任。2023年より現職。 |
| 城久尚 | 取締役 | 1993年大同ほくさん入社。エア・ウォーターでの研究等を経て、ミサワ医科工業代表取締役社長等を歴任。2026年より現職。 |
社外取締役は、菊池節(南悠商社代表取締役社長)、石塚達郎(元日立製作所副社長)、小林貞代(元資生堂未来創造局長)、森本芳之(元ブリヂストン専務)、増田由美子(消費者の声研究所代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ガス事業」「ヨウ素事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ガス事業
同事業は、天然ガスの開発・採取から、都市ガスやLPガス、圧縮天然ガスの供給・販売までを一貫して手掛けています。主な顧客は千葉県内の家庭や工場などの需要家であり、化石燃料の中でも温室効果ガス排出が少ないクリーンな国産エネルギーとして、地域の安定的なエネルギーインフラを支えています。
収益は、需要家からのガス販売代金によって構成されています。事業の運営は、主に関東天然瓦斯開発が天然ガスの開発・採取・販売を担い、大多喜ガスが都市ガスやLPガスの供給・販売を担当するという体制で連携して行われています。
■(2) ヨウ素事業
同事業は、天然ガスの生産時に付随して汲み上げられるかん水を利用し、医療分野から電子産業分野まで幅広く利用されるヨウ素およびヨウ素化合物の製造・販売を手掛けています。世界的に希少な資源であるヨウ素を安定的に供給し、持続可能な社会の実装に向けた新技術の原料としても展開しています。
収益は、国内外の顧客に対するヨウ素およびヨウ素化合物の販売代金から得られています。事業の運営は、主に関東天然瓦斯開発が原料となるかん水を採取・販売し、K&Oヨウ素がそのかん水を用いてヨウ素製品の製造・販売を行う形で進められています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれないその他の事業として、電力事業、建設事業、ガス機器等の販売、さらには地熱井等の掘削事業や調査事業などを多角的に展開しています。長年培ってきた地下資源開発力を活かした再生可能エネルギー関連事業の開発に注力し、新たな事業の柱として推進しています。
収益は、電気料金や工事の請負代金、機器販売代金などから構成されています。事業の運営は、関東天然瓦斯開発や大多喜ガスに加え、地熱井掘削を手掛けるWELMAなどのグループ各社がそれぞれの専門領域を担当して行われています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期の業績を見ると、売上高は2022年12月期に1,000億円を突破したものの、直近では900億円台で安定的に推移しています。一方で利益面は着実に成長しており、経常利益率は6%台から12%台へと大幅な改善を見せ、収益性の向上が伺えます。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 661億円 | 1,062億円 | 963億円 | 924億円 | 914億円 |
| 経常利益 | 44億円 | 79億円 | 104億円 | 98億円 | 117億円 |
| 利益率(%) | 6.7% | 7.5% | 10.8% | 10.6% | 12.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 11億円 | 17億円 | 19億円 | 19億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年比で微減となったものの、売上原価の減少により売上総利益は増加しています。また、販売費及び一般管理費を前年と同水準に抑えたことで、営業利益および営業利益率ともに向上し、堅調な利益体質を示しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 924億円 | 914億円 |
| 売上総利益 | 202億円 | 218億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.8% | 23.8% |
| 営業利益 | 88億円 | 106億円 |
| 営業利益率(%) | 9.5% | 11.6% |
販売費及び一般管理費(112億円)のうち、給料手当が31億円(構成比28%)、減価償却費が20億円(同17%)を占めています。売上原価(696億円)の内訳データはありません。
■(3) セグメント収益
主力であるガス事業は販売価格の低下により減収減益となりましたが、ヨウ素事業が販売価格の上昇と販売量の増加により大幅な増収増益を記録し、連結全体の利益増を力強く牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率(2025年12月期) |
|---|---|---|---|---|---|
| ガス事業 | 721億円 | 677億円 | 51億円 | 50億円 | 7.3% |
| ヨウ素事業 | 135億円 | 151億円 | 76億円 | 88億円 | 58.1% |
| その他 | 68億円 | 86億円 | 5億円 | 8億円 | 9.2% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | △43億円 | △39億円 | -% |
| 連結(合計) | 924億円 | 914億円 | 88億円 | 106億円 | 11.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスであり、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 138億円 | 159億円 |
| 投資CF | △60億円 | △133億円 |
| 財務CF | △15億円 | △16億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.3%でプライム市場の平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.4%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「エネルギーとヨウ素の開発・生産・販売を通じ、快適で豊かな生活と持続可能な社会の実現に貢献します」という経営理念を掲げています。総合エネルギー事業と世界的に希少なヨウ素の販売を通じて、地域社会と共生しながら事業を展開し、持続可能な社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「環境と調和し、地域社会と共生する事業を展開する」ことや、「安全・安心とお客さま満足を追求し、多様なサービスを創出・提供する」ことを重視しています。また、社員一人ひとりが積極的に能力を開発・発揮し、高い目標に向かって挑戦する企業風土の実現を行動様式として大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2030年に向けた長期経営ビジョンを踏まえ、「中期経営計画(中計2027)」を推進しています。単年度実行計画を着実に達成することでマテリアリティを解決し、地域社会の発展および持続可能な成長を目指しており、財務目標として以下の数値を掲げています。
* 2027年目標 経常利益:75億円
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の注力領域として、コア事業戦略と未来事業戦略を掲げています。水溶性天然ガスの開発とヨウ素の増産を進める一方、地熱や洋上風力などの再生可能エネルギー事業への投資拡大や、カーボンニュートラルに向けたCCS事業・森林保全事業への参画を推進しています。
* 再エネ事業への投資:30億円以上
* 脱炭素関連開発件数:12件(2027年目標)
* ヨウ素販売量(ヨウ化カリウムを含む):1,900トン/年(2027年目標)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「社員一人ひとりが積極的に能力を開発・発揮し、高い目標に向かって挑戦する企業風土」の実現を目指し、人材力の強化に取り組んでいます。属性によらない人物本位の採用・評価・登用を徹底し、公平な人事処遇制度や全社的な教育体系、働きやすい労働環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.6歳 | 16.4年 | 7,545,332円 |
※平均年間給与は税込で賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | -% |
| 男性育児休業取得率 | 88.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 44.3% |
| 男女賃金差異(正規労働者) | 71.0% |
| 男女賃金差異(非正規労働者) | 63.9% |
※女性管理職比率をはじめとする一部の項目については、提出会社が公表義務の対象ではないため、有報には記載がありません。なお、男性育児休業取得率および男女賃金差異の数値は、常時雇用する労働者が301名以上である連結子会社の大多喜ガスのデータを記載しています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事故・災害等による操業停止リスク
ガス・ヨウ素設備の大規模な漏洩や爆発事故、災害による設備損害が発生した場合、生産・供給の支障や信用失墜、損害賠償責任が生じるリスクがあります。これに対し、ガス導管設備の耐震化や主要設備の予備電源化などの予防対策を講じています。
■(2) 需要環境とカーボンニュートラル対応リスク
「2050年カーボンニュートラル」に向けた社会状況の変化や他エネルギー企業との競合激化により、ガス販売量が減少するリスクがあります。また、設備の新設・増強に伴うコスト負担が生じる可能性があり、再生可能エネルギーの開発などを通じた多様なアプローチで対応を進めています。
■(3) 環境規制に伴う生産制限リスク
天然ガスおよびヨウ素の生産時には、地下から汲み上げたかん水の排水に関する水質規制や、地盤沈下防止協定に基づく排水限度量の制限を受けるため、生産量が制約されるリスクがあります。かん水の地下還元や適切な水質管理により、環境負荷低減と生産の両立を図っています。



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