※本記事は、オンコリスバイオファーマ株式会社の有価証券報告書(第22期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オンコリスバイオファーマってどんな会社?
同社は、がんのウイルス療法や重症ウイルス感染症治療薬の開発と事業化を推進するウイルス創薬企業です。
■(1) 会社概要
2004年に腫瘍溶解ウイルスの研究開発等を目的に設立されました。2006年に米国で主力パイプラインOBP-301の臨床試験を開始し、2013年に東京証券取引所マザーズへ上場、2022年にグロース市場へ移行しました。2025年には日本国内でOBP-301の製造販売承認申請を実施しています。
現在の従業員数は単体で38名です。筆頭株主は事業提携先でもあるアステラス製薬で、第2位はモルガン・スタンレーMUFG証券、第3位には代表取締役社長の浦田泰生氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アステラス製薬 | 2.48% |
| モルガン・スタンレーMUFG証券 | 2.23% |
| 浦田泰生 | 1.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は浦田泰生氏が務めており、取締役における社外取締役比率は40.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 浦田泰生 | 代表取締役社長 | 小野薬品工業、日本たばこ産業を経て、2004年に同社設立し代表取締役社長に就任。OPA Therapeutics Inc. CEO等を歴任し、2025年より現職。 |
| 樫原康成 | 常務取締役事業開発・リスク管理担当 | 日本チバガイギー、参天製薬等を経て、2007年同社入社。Oncolys USA Inc.取締役等を経て、2024年より現職。 |
| 原野修 | 取締役 | キリンビール等で経理・財務を歴任し、キリンビバレッジ経営企画部長等を経験。協和発酵バイオ常勤監査役を経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、斎藤泰氏(元建デポ社長)、飯野直子氏(元クオリプス社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「創薬事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) がんのウイルス療法領域
腫瘍溶解ウイルスOBP-301(食道がん等の固形がん対象)や次世代腫瘍溶解ウイルスOBP-702等の開発を行っています。テロメラーゼ活性が高いがん細胞で特異的に増殖し、がん細胞を破壊する新しい治療法を提供しています。
従来は製薬企業へライセンスを許諾し契約一時金等を得るモデルでしたが、現在は自社で製造販売承認を得る製薬会社型モデルとのハイブリッドへ移行中です。国内販売は富士フイルム富山化学と提携し、同社が承認取得や販売等のマイルストーンを受領する仕組みです。
■(2) 重症ウイルス感染症・その他の領域
ウイルス感染症治療薬OBP-2011の開発や、HIV感染症治療薬のメカニズムを活かし神経難病治療薬へ応用を拡大したLINE-1阻害剤OBP-601(censavudine)などの研究開発を推進しています。
OBP-601についてはTransposon Therapeutics社とライセンス契約を締結しており、同社の全額費用負担により臨床試験が実施されています。開発の進捗に伴うマイルストーン収入などを同社が受領する収益モデルとなっています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、ライセンス収入の有無により売上高が大きく変動しています。数期前はマイルストーン収入等により数億円規模の売上を計上していましたが、直近2期は数千万円規模にとどまっています。研究開発への先行投資が継続しているため、各期とも経常赤字が続く傾向にあります。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6.4億円 | 9.8億円 | 0.6億円 | 0.3億円 | 0.3億円 |
| 経常利益 | -15.0億円 | -11.6億円 | -19.1億円 | -16.6億円 | -20.5億円 |
| 利益率(%) | -233.6% | -119.1% | -3036.0% | -5301.8% | -7185.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -16.2億円 | -11.5億円 | -19.4億円 | -16.8億円 | -20.6億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益状況を見ると、売上高は横ばいで推移していますが、研究開発活動の進展に伴う費用の増加により、営業赤字の幅が拡大しています。売上原価は発生しておらず、売上総利益率は100%となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 0.3億円 | 0.3億円 |
| 売上総利益 | 0.3億円 | 0.3億円 |
| 売上総利益率(%) | 100.0% | 100.0% |
| 営業利益 | -16.8億円 | -20.2億円 |
| 営業利益率(%) | -5357.5% | -7090.5% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が14.7億円(構成比72%)、給与手当が2.0億円(同10%)を占めています。売上原価は発生していません。
■(3) セグメント収益
同社は創薬事業の単一セグメントであるため、全社の売上高がそのまま当セグメントの売上高となっています。ライセンス先からの収入等で構成されていますが、当期は前期比で若干の減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 創薬事業 | 0.3億円 | 0.3億円 |
| 連結(合計) | 0.3億円 | 0.3億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業は赤字ですが、将来成長のための借入や資金調達で投資を継続する「勝負型」の状態です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -20.2億円 | -19.4億円 |
| 投資CF | -0.0億円 | -0.1億円 |
| 財務CF | 28.8億円 | 32.2億円 |
財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.6%で市場平均を上回っています。なお、ROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されていません。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「未来のがん治療に新たな選択肢を与え、その実績でがん治療の歴史に私たちの足跡を残してゆくこと」をビジョンに掲げています。また、「オンコリスなしでは医療現場が、ひいては患者様が困る」ような存在感ある創薬を展開し、いち早く医療現場の課題解決に貢献することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
医療の「イノベーション」を追求し、普段からの医学研鑽を惜しまない文化があります。「少人数で大きな仕事を成し遂げてこそ、アドベンチャー」と捉え、大企業にできないことを目標としています。また、利益先行ではなく「どれだけの人を救えるか」に価値観を持ち、社会貢献とコンプライアンスの遵守を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
経営上の具体的な数値目標は設定されていませんが、これまでのライセンス依存からの脱却を図り、製品販売収入を拡大することを目指しています。特に2026年には主力パイプラインであるOBP-301の国内販売を開始し、自社で製造販売承認を得る製薬会社型事業モデルの展開を具体化することを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
従来のライセンス型事業モデルに加え、自社で製造販売承認を得る「製薬会社型事業モデル」を組み合わせた「ハイブリッド型事業モデル」への移行を推進しています。研究開発の効率化に向けては、外部委託(CROやCDMO)を積極的に活用しつつ、厚生労働省との薬事対応や信頼性保証業務といった内部体制の強化を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
役職員個々の自発的な成長が企業の成長を支えるとの考えから、人材の採用と育成を積極的に推進しています。グローバルに事業を展開するため、国際的視野と英語能力を持つ人材の育成を重視しています。また、フレックスタイム制などのワークライフバランスを支える制度や、株式報酬制度を整備し、人材の定着を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 49.4歳 | 4.7年 | 10,744,197円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 研究開発投資にかかる負担リスク
医薬品や検査薬の研究開発は長期にわたり高額なコストを要します。通常はライセンス先が後期開発費用を負担しますが、自社で上市まで開発する場合は多大な研究開発費が業績を圧迫し、開発の遅れや中止に繋がる可能性があります。
■(2) パイプラインの安全性・有効性に関するリスク
開発中のパイプラインで予期せぬ副作用や安全性・有効性の問題が発見された場合、開発が大幅に遅延または中止されるリスクがあります。国内外の監督官庁の承認が得られない事態となれば、同社の事業や業績に重大な影響を及ぼします。
■(3) アライアンス戦略への依存リスク
現在の収益構造は、製薬企業等とのライセンス契約や販売提携に大きく依存しています。導出先候補のニーズを満たせず契約締結が遅れる場合や、導出先企業の戦略変更により開発中止・契約解消が決定された場合、収益の確保に支障をきたす恐れがあります。



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