MRT 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

MRT 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

MRTは東京証券取引所グロース市場に上場しており、医療情報プラットフォーム事業を展開しています。医師や医療従事者向けの非常勤・常勤人材紹介サービスを中心に、オンライン診療等も手掛けます。直近の業績は、主力の人材紹介サービスが伸長し、増収ならびに各利益段階での黒字転換を達成して回復基調にあります。


※本記事は、MRT株式会社の有価証券報告書(第27期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. MRTってどんな会社?


同社は医療分野の人材ネットワークを強みとし、医療情報プラットフォーム事業を展開しています。

(1) 会社概要


2000年1月に東京大学医学部附属病院の医師の互助組織を母体として設立されました。同年5月に有料職業紹介事業の許可を取得し、インターネット技術を活用した医師紹介ビジネスを開始しています。2014年12月に株式を上場し、2022年4月にグロース市場へ移行しました。直近では海外展開も積極的に推進しています。

従業員数は連結307名、単体238名です。筆頭株主は冨田医療研究所で、第2位は創業者の冨田兵衛氏、第3位は冨田留美氏となっています。

氏名 持株比率
冨田医療研究所 21.69%
冨田 兵衛 16.36%
冨田 留美 8.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は小川智也氏が務めています。取締役7名中3名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
小川 智也 代表取締役社長メディカル・ヘルスケア本部長 2002年医師国家試験合格。大阪府立千里救命救急センター等を経て、2011年同社取締役就任。2019年より現職。
冨田 兵衛 取締役会長 1993年医師国家試験合格。虎ノ門病院等を経て、2000年同社設立代表取締役。2012年より現職。
西岡 哲也 取締役コーポレート本部長兼事業推進室長 2000年朝日監査法人入所。鳥飼総合法律事務所等を経て、2013年同社入社。2015年より現職。
加藤 修孝 取締役グローバル事業管掌 2009年ワールドストアパートナーズ入社。グルーポン・ジャパン等を経て、2017年同社入社。2025年より現職。


社外取締役は、雨宮玲於奈(現スマートエージェンシー社長)、青山綾子(現ARIA社長)、富樫泰良(現オール・ニッポン・レノベーション代表理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療人材サービス」および「その他のサービス」を展開しています。

医療人材サービス


同社は医師や看護師、薬剤師などのコメディカルを対象とした人材紹介サービスおよび紹介予定派遣等を提供しています。インターネットを活用したプラットフォームを通じ、非常勤のアルバイトや常勤の転職を希望する医療従事者と、人材を求める医療機関とのマッチングを効率的に行っています。

収益は、紹介した医療人材が医療機関で勤務を開始した際に、求人側の医療機関から受け取る紹介手数料によって構成されています。これらのプラットフォーム運営や各種紹介サービスは、主に同社および子会社の医師のとも、MRTメディアパートナーズなどが分担して担当しています。

その他のサービス


医局業務をサポートするグループウェアの無償提供や、オンライン診療・健康相談サービスなどを展開しています。さらに、医療機関向けのバックオフィス業務受託や診療報酬ファクタリングといった経営支援、病気と治療の解説書の出版、医師による商品開発の監修など多様なサービスを提供しています。

収益源は、オンライン診療のシステム利用料、受託業務にかかる業務委託料、ファクタリングのサービス手数料など多岐にわたります。これらの事業運営は、同社に加え、anew、バリューメディカル、メディアルトなどのグループ各社がそれぞれ担当して行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、新型コロナウイルス関連の特需等により一時期急拡大しましたが、その後は特需の反動減等により売上・利益ともに減少傾向にありました。しかし、直近の事業年度では主力の人材紹介サービスが堅調に推移し、増収ならびに各利益段階での黒字転換を達成して回復基調にあります。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 45億円 87億円 54億円 42億円 42億円
税引前利益 13億円 29億円 9億円 -3.3億円 1.1億円
利益率(%) 28.1% 33.6% 15.9% -8.0% 2.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 22億円 5億円 -3.1億円 0.6億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で微増となりましたが、自治体関連の受託業務の一部終了に伴い運営コストが減少したことで、売上総利益率は改善しています。また、人件費や採用広告費などの販売費及び一般管理費も減少した結果、営業利益は黒字へと転換を果たしました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 42億円 42億円
売上総利益 18億円 18億円
売上総利益率(%) 42.2% 43.2%
営業利益 -1.2億円 1.0億円
営業利益率(%) -2.9% 2.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付が11億円(構成比39%)、広告宣伝費及び販売促進費が5億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は医療情報プラットフォーム事業の単一セグメントですが、提供するサービス全体での収益構造に変化が見られます。自治体からの受託業務が終了したことで関連収益は減少しましたが、主力である医療人材の常勤・非常勤紹介が堅調に推移し、全体の増収増益を牽引しました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
連結(合計) 42億円 42億円 -1.2億円 1.0億円 2.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、医療人材サービスを中心に事業を展開し、営業活動により資金を獲得しています。投資活動では、安全性の高い金融商品の取得や無形資産の取得に資金を使用しました。財務活動では、借入金の返済や自己株式の取得により資金が減少しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 5億円 4億円
投資CF -18億円 -6億円
財務CF 2億円 -7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「医療を想い、社会に貢献する。」を経営理念として掲げています。医療現場の主役である医師同士のつながりと、そのQOL(生活の質)向上が豊かな医療の創造を実現させるという信念のもと、医療情報のプラットフォームを提供することで、社会課題の解決と豊かな医療環境の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、行動指針として「医療に関わる全ての人のために」「上品に」「合理的に」の3つのコアバリューを掲げています。これらの価値観を共有したメンバーが集う医療のプロフェッショナル集団として、公共性の高い事業の中で自らを律し、コンプライアンスやコーポレート・ガバナンスの意識を高める文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、持続的な成長を目指し、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、売上収益、営業利益、親会社の所有者に帰属する当期利益の対前年度比を重視しています。サービスの多様化と付加価値の向上を通じた収益基盤の拡充を図りながら、企業価値の最大化を目指して経営を行っています。

(4) 成長戦略と重点施策


「医療・ヘルスケアの革新的なマーケットプレイスを創る」というビジョンに向け、医師および医療機関の会員登録数の増加を最重要課題としています。大学医局向けサービスの拡充や地方自治体との連携によるエリア拡大を進めるほか、東南アジアを中心とした海外展開による新たな市場開拓や、M&Aによるサービス提供の期間短縮・営業基盤の獲得にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、企業理念に共感し、コアバリューを体現できる優秀な人材の採用と育成が持続的な成長に不可欠と考えています。国籍や年齢、性別にとらわれない多様性を重んじた人材登用を進めるほか、育児・介護関連の制度整備やリモートワーク等による柔軟な働き方の支援など、従業員がやりがいを感じながら長く働ける環境作りに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 32.7歳 5.3年 4,506,398円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 33.3%
男性育児休業取得率 1.3%
男女賃金差異(全労働者) 73.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 102.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネット関連市場および法的規制の変化


主力の医療分野向け人材紹介事業はインターネットを活用しているため、新たな利用規制の導入や技術革新への対応遅れが生じた場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。また、「職業安定法」や「労働者派遣法」等の関連法規による許認可を受けており、法規制の改正や許可の取り消しが発生した場合、事業活動が制限されるリスクがあります。

(2) 人材紹介の取引慣行やシステムトラブル


常勤医師等の紹介において、求職者が早期に自己都合退職した場合、医療機関へ紹介手数料を返金する取り決めがあり、想定以上の返金が発生すると業績を圧迫する恐れがあります。また、ウェブシステムやアプリによるサービス提供に依存しているため、自然災害や急激なアクセス増等によるシステム障害が発生した場合、事業運営に支障をきたす可能性があります。

(3) 海外事業展開と為替変動リスク


東南アジア圏等への事業拡大を推進していますが、進出国における想定外の法規制の変更や政情不安、労働紛争等が発生した場合、サービスの安定供給が困難になるリスクがあります。また、海外事業は外貨建での取引が多く、為替相場の変動によって売上収益や海外企業への出資持分の評価額が変動し、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。