土木管理総合試験所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

土木管理総合試験所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

土木管理総合試験所は、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、インフラ整備に不可欠な土質・地質調査や非破壊調査などの試験総合サービス事業を主力としています。近年は工事総合サービスやソフトウェア開発事業も展開し、直近の業績では売上高および各利益が過去最高を記録するなど、順調な増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社土木管理総合試験所の有価証券報告書(第41期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 土木管理総合試験所ってどんな会社?


同社は、インフラ整備に関わる土質・地質調査や非破壊調査などの試験総合サービスを主力とする企業です。

(1) 会社概要


昭和60年に長野県で創業し、翌年に土木管理総合試験所へと商号を変更しました。平成27年に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たし、翌年に市場第一部へ指定替えとなりました。平成30年にはソフトウェア開発を行うアイ・エス・ピーを子会社化し、近年もベトナムへの現地法人設立など事業領域と営業エリアの拡大を続けています。

現在の従業員数はグループ全体で522名、単体で434名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資産管理等を行う法人のFeel、第2位は創業者の下平雄二氏、第3位には同社の従業員持株会が名を連ねており、経営陣と従業員が一体となって企業成長を支える安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
Feel 21.76%
下平 雄二 11.16%
土木管理総合試験所従業員持株会 4.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.0%です。代表取締役社長は下平雄二氏が務めています。取締役10名のうち社外取締役は3名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
下平 雄二 代表取締役社長 昭和58年土木材料試験所入社。昭和60年中央資材検査所(現同社)設立、代表取締役社長就任。
下平 絵里加 専務取締役東京管理部門長 平成30年同社入社。マーケティング部部長等を経て、令和7年より現職。
松山 雄紀 常務取締役環境部門長兼社会インフラ部門長 平成12年同社入社。非破壊試験部部長や技術部門長等を歴任し、令和7年より現職。
笠原 竜彦 常務取締役まちづくり・防災部門長 平成20年同社入社。コンサルタント部部長等を務め、令和6年より現職。
八木澤 一哉 取締役営業本部長 平成12年同社入社。試験部部長や技術部門長、社会インフラ部門長を経て、令和7年より現職。
中島 壮弘 取締役ストラテジックIP部門長 平成17年同社入社。パートナーシップ事業部長等を経て、令和4年より現職。
中澤 健一 取締役長野管理部門長 平成31年同社入社。経理部長や長野本社管理部門長を務め、令和7年より現職。


社外取締役は、岡本俊也(弓場・岡本会計士事務所)、飯島希(一般財団法人運輸振興協会理事)、中澤悟(元みすず精工社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「試験総合サービス事業」「工事総合サービス事業」「ソフトウェア開発販売事業」および「その他」事業を展開しています。

試験総合サービス事業


土木建設工事に不可欠な土質・地質調査試験、非破壊調査試験、環境調査試験等の多種多様な調査をワンストップで提供しています。インフラ整備や防災・減災対策などにおいて、安全に構造物を施工するための重要な情報を顧客であるゼネコン等へ提供しています。

収益源は調査・試験・分析結果をまとめた報告書の対価として受け取る調査・試験・分析料です。本事業の運営は主に土木管理総合試験所が行っており、加えて子会社の沖縄設計センターやベトナムの現地法人などが各分野の調査解析業務を担っています。

工事総合サービス事業


社会インフラや一般住宅などの建設予定地における地盤調査や、調査結果に応じた最適な地盤補強・改良工事を行っています。さらに、コンクリートや鋼構造物の補強工事、土壌汚染の浄化工事など、インフラ補修から環境分野まで幅広い社会的ニーズに応える工事を提供しています。

収益源は、顧客と締結する工事請負契約に基づく地盤改良や構造物補強工事の施工完了に伴って受け取る工事代金です。インフラ老朽化関連工事を積極的に受注し、本事業の運営は土木管理総合試験所が単独で行っています。

ソフトウェア開発販売事業


土木および測量設計向けの3次元空間設計システムや、流体・温熱環境シミュレーションソフトなど、建設・製造分野の業務効率化や高度化に寄与するパッケージソフトウェアの開発・販売を行っています。BIM/CIMへの対応やAI等先進技術の連携も進めています。

収益源はソフトウェアの新規販売代金のほか、解析業務の手数料、アカウント利用料、およびシステムの保守料金です。本事業の運営は、子会社であるアイ・エス・ピーおよびアドバンスドナレッジ研究所の2社が専門的に担っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、各拠点を通じた試験機器等の販売事業を展開しています。

顧客への試験機器販売等による代金を収益源としており、専属の人員は配置せず全拠点での取り扱いとして土木管理総合試験所が運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高は70億円台で安定的に推移し、直近では77億円と増収傾向にあります。経常利益率も直近で9%台へと改善しており、赤字案件の縮減や適正な原価管理などの施策が奏功し、着実な増収増益と高収益化を実現しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 73億円 70億円 73億円 73億円 77億円
経常利益 6億円 6億円 5億円 6億円 7億円
利益率(%) 8.0% 8.0% 6.7% 8.3% 9.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 6億円 3億円 4億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も共に拡大しています。業務の自動化や外注費の抑制、試験単価の見直しなどの利益率改善施策により、営業利益率は着実に向上し、過去最高の業績を記録する安定した収益構造となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 73億円 77億円
売上総利益 29億円 30億円
売上総利益率(%) 39.0% 39.0%
営業利益 6億円 7億円
営業利益率(%) 7.9% 8.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が9.4億円(構成比41%)、役員報酬が2.8億円(同12%)、支払手数料が2.5億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の試験総合サービス事業では、土質・地質調査試験において公共および民間案件ともに受注が拡大し、増収を牽引しました。工事総合サービス事業やソフトウェア開発販売事業も堅調に推移し、すべての報告セグメントで前年を上回る売上高を計上しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
試験総合サービス事業 58億円 61億円
工事総合サービス事業 8億円 9億円
ソフトウェア開発販売事業 6億円 7億円
その他 1億円 0.3億円
連結(合計) 73億円 77億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.6%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も70.4%で市場平均を上回っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 7億円 5億円
投資CF -1億円 -2億円
財務CF -4億円 -3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人々の生活環境が豊かになることを使命とし、土・水・大気・構造物調査・測量設計等における適切な情報を土木管理総合試験所グループの総力(スピード・対応力・提案力)を挙げ、顧客に対して積極的にコンサルテーションを行う」を経営の基本理念として掲げています。生活基盤を形成する保全・整備事業に寄り添い、サステナブルな社会づくりに貢献することを社会的意義としています。

(2) 企業文化


同社は、「自ら考え、自ら変革する創造的人間であれ」という人材育成の基本理念を共有し、個々が成長できる環境構築を重視しています。ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、性別や年齢、国籍など互いの違いを受け入れ、活かし合いながら全員が実力を発揮できる多様性を尊重する職場づくりを目指しています。

(3) 経営計画・目標


安定的かつ継続的な成長を目指し、労働集約型からの脱却と事業の大型化に取り組むことで、以下の数値を目標に掲げて企業価値の最大化を目指しています。
・売上高営業利益率 8.7%以上
・1人当たり売上高 16百万円以上
また、資本コストや株価を意識した経営として、ROIC 6.0%、PBR 1.0倍を指標に設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


基幹業務である試験総合サービス事業を高収益構造へ変化させつつ、フランチャイズ店の拡大や新技術開発、新規事業の推進により事業領域を拡大させます。国土強靭化やインフラ老朽化対策への対応を加速させるため、AIやロボティクスなどの技術革新を取り入れた独自のソリューション提供に注力しています。
・AI・データ解析技術・自動化技術の活用による技術力強化
・全国の試験センターの設備投資と効率化
・ベトナム拠点を中心としたオフショア活用の拡大

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「人」が事業の根幹を担うと考え、個々の業務推進力と組織間の連携を強化し、少人数でも最大限の効果を発揮できる組織体制を目指しています。そのために、人事制度の改定による多様な働き方や福利厚生の充実、新卒・中途・外国人など多様な人材の採用強化を進め、年齢や階級に合わせた教育体系の充実を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 39.3歳 9.8年 4,337,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.4%
男性育児休業取得率 20.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 69.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 70.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共事業動向に関するリスク


試験総合サービス事業において、ゼネコン等からの発注が9割以上を占めており、公共事業への依存率が非常に高くなっています。そのため、国や地方公共団体の財政悪化や公共投資の見直しなどが行われた場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、一般民間案件の受注にも注力しています。

(2) 災害等による事業活動の阻害に関するリスク


同社の基幹業務は試験センターを中心に進められており、これらが災害などの不測の事態に見舞われた場合、試験・分析設備の破損やデータの損傷、システムのダウンなどにより事業活動が阻害される可能性があります。そのため、試験センターを全国3箇所に分散させ、リスクの低減を図っています。

(3) 燃料費、原材料等の高騰に関するリスク


世界的な原油価格や原材料の価格高騰により、燃料費や建設資材の価格が上昇し、建設現場に係る経費が増大するリスクがあります。これにより同社の業務の受注価格に影響が及び、適正価格での受注が困難となることが予想され、経営成績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。