※本記事は、株式会社Orchestra Holdings の有価証券報告書(第17期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. Orchestra Holdingsってどんな会社?
デジタルマーケティングやDX支援、IP・エンタメ事業など、幅広いITソリューションを展開する成長企業です。
■(1) 会社概要
同社は2009年にクリスタライフとして設立され、デジタルマーケティング事業を開始しました。2012年にデジタルアイデンティティへ商号変更し、2016年に東証マザーズへ上場を果たしています。その後、2017年に持株会社体制へ移行してOrchestra Holdingsへ商号変更し、2018年には東証一部へ上場しました。
同社グループは、連結で1,178名、単体で40名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の中村慶郎氏で、第2位も創業メンバーで代表取締役の佐藤亨樹氏です。第3位の慶キャピタルは資産管理などを担う法人です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中村慶郎 | 17.92% |
| 佐藤亨樹 | 16.77% |
| 慶キャピタル | 8.22% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は中村慶郎氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中村慶郎 | 代表取締役社長 | 野村證券などを経て2009年に同社設立。2019年より現職。 |
| 佐藤亨樹 | 代表取締役 | 大広を経て2009年に同社設立。2019年より現職。 |
| 五代儀直美 | 取締役CFO | 野村證券、新日本監査法人等を経て2014年同社入社。2015年より現職。 |
| 鈴木謙司 | 取締役 | アビームコンサルティング等を経て2012年に同社入社。2013年より現職。 |
社外取締役は、若松俊樹(Saltus法律事務所代表)、岩井裕之(かっこ代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「デジタルトランスフォーメーション事業」「デジタルマーケティング事業」「IP・エンタメ事業」および「その他」事業を展開しています。
■デジタルトランスフォーメーション事業
同事業は、システム開発やソフトウェアテストサービスを提供するシステムソリューション、クラウドサービスの導入支援を行うクラウドインテグレーションなどを展開し、企業のDX化を支援しています。
収益は、顧客に対する技術者の時間稼働による技術提供や、開発したシステムの成果物の納品を通じた対価として得ています。運営は主にSharing Innovationsやヴェスなどの子会社が行っています。
■デジタルマーケティング事業
同事業は、運用型広告サービス、SEOコンサルティングサービス、クリエイティブサービスなど、クライアント企業のデジタルマーケティング施策に関するトータルソリューションを提供しています。
収益は、顧客企業に対するリスティング広告などの配信・運用代行や、発注に基づいた制作物の納品による対価として得ています。運営は主にデジタルアイデンティティが行っています。
■IP・エンタメ事業
同事業は、ゲームの開発・受託運営やチャットで相談できる占いサービスといったデジタルコンテンツの展開のほか、自社所属のタレント・アイドルのマネジメントなどを通じた自社IPの活用を推進しています。
収益は、パブリッシャーから受託したゲームソフトやアプリの開発対価、リリース後の保守・運営に係るサービス料として得ています。運営は主にランド・ホーが行っています。
■その他
その他事業として、タレントマネジメントシステム「スキルナビ」の開発・販売を行うSaaS事業や、ITエンジニア及びクリエーターに特化した転職エージェンシーを手掛ける人材紹介事業などに取り組んでいます。
収益は、システムの販売や人材紹介を通じたコンサルティングの対価として得ています。運営は主にワン・オー・ワンやアールストーンが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
企業のDX投資意欲の高まりやインターネット広告市場の堅調な拡大を背景に、売上収益は順調に拡大しています。利益面でも、人材投資などを進めつつM&Aの効果も寄与し、着実な増益基調を維持しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 140億円 | 158億円 |
| 税引前利益 | 13億円 | 14億円 |
| 利益率(%) | 9.4% | 8.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
売上原価の上昇が見られるものの、トップラインの伸長により売上総利益・営業利益ともに増加しています。各事業セグメントにおける需要の確実な取り込みと、継続的な事業拡大が利益成長に結びついています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 140億円 | 158億円 |
| 売上総利益 | 65億円 | 69億円 |
| 売上総利益率(%) | 46.3% | 43.8% |
| 営業利益 | 13億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 9.5% | 9.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3億円、役員報酬が3億円を占めています。
■(3) セグメント収益
デジタルトランスフォーメーション事業とIP・エンタメ事業が大幅な増収増益を牽引しています。デジタルマーケティング事業は売上収益が微増にとどまり減益となりましたが、全体としては安定した収益基盤を維持しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| デジタルトランスフォーメーション事業 | 68億円 | 76億円 | 5億円 | 7億円 | 8.8% |
| デジタルマーケティング事業 | 56億円 | 57億円 | 20億円 | 19億円 | 32.4% |
| IP・エンタメ事業 | 9億円 | 18億円 | 0.3億円 | 1億円 | 3.3% |
| その他 | 8億円 | 9億円 | -0.7億円 | -0.4億円 | -4.9% |
| 調整額 | -1億円 | -2億円 | -11億円 | -12億円 | - |
| 連結(合計) | 140億円 | 158億円 | 13億円 | 14億円 | 9.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 14億円 | 10億円 |
| 投資CF | -4億円 | -12億円 |
| 財務CF | -10億円 | 4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.0%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も41.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、企業ビジョンとして「創造の連鎖」の実現を掲げています。デジタルマーケティング事業やデジタルトランスフォーメーション事業、IP・エンタメ事業など、成長が見込まれる市場において事業領域を継続的に拡大・展開していくことで、持続可能な社会の構築に寄与し、社会的意義を果たしていくことを目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献することが持続可能な社会の構築に寄与し、結果として持続可能な成長や企業価値の向上につながると考えています。また、多様な属性や才能を持つ人材を積極的に採用し、性別や年齢に関係なく誰もがやりがいを持って働けるダイバーシティを推進する文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、中長期的な事業拡大と収益率向上による企業価値および株主価値の向上を目指しています。総合的な経営効率の評価基準として、「親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)」を重要な経営指標と定めており、あわせて売上高、営業利益および売上高営業利益率を重視して資本効率を意識した経営を実践しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
M&Aによる事業拡大や新規事業への投資を中心に、成長分野へ積極的に挑戦し続ける方針です。デジタルトランスフォーメーション事業では優秀なIT人材の確保・育成による開発体制の拡充を進め、デジタルマーケティング事業ではAI活用など新技術に対応したサービスで市場需要を取り込みます。IP・エンタメ事業では自社IPの積極的な活用を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、高付加価値なサービスを提供し顧客満足度を高めるため、優秀な人材の確保と育成が不可欠だと考えています。入社時のオリエンテーション研修や業務に必要な知識習得に向けたセミナーなどを通じて、一人ひとりに合った教育を実践し、チームを構成する個々人の才能を伸ばす取り組みを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 39.0歳 | 4.9年 | 5,724,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.7% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 96.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新技術への対応リスク
同社グループが属するIT分野やデジタルマーケティング業界では、AIの活用など技術革新が絶え間なく行われています。新技術や新サービスの開発への対応が遅れた場合、競争力が低下するリスクがあります。また、これらに適時に対応するため多大な投資が必要となった場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 優秀なIT人材の確保・定着リスク
今後の事業展開や競争力向上のためには、専門性を有する優秀な人材の確保・定着と育成が重要です。しかし、少子高齢化を背景としたIT人材不足が深刻化するなか、計画通りの人材確保が進まない場合や社外への流出が生じた場合、事業規模拡大の制約となり、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 媒体運営会社への依存リスク
デジタルマーケティング事業は、取引の性質上、媒体運営会社からの広告枠の仕入れに依存しています。良好な取引関係の維持に努めていますが、媒体運営会社との関係に変化が生じ、顧客にとって最適な広告枠の調達が困難になった場合、同社グループの事業活動や業績に影響を及ぼすリスクがあります。



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