KHネオケム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KHネオケム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KHネオケムは東京証券取引所プライム市場に上場し、「オキソ技術」をコアとする各種石油化学製品の製造・販売を主力事業としています。エアコン用冷凍機油原料や化粧品原料などをグローバルに展開しています。直近の業績は、基礎化学品の厳しい環境などが影響し、売上高1,150億円、営業利益112億円と減収減益の傾向にあります。


※本記事は、KHネオケムの有価証券報告書(第16期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. KHネオケムってどんな会社?


「オキソ技術」を強みに、冷凍機油原料や化粧品原料など特色ある石油化学製品を国内外へ提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は1966年に協和油化として設立され、1970年にオキソ法によるブチルアルデヒド等の大量生産を開始しました。2004年に協和発酵ケミカルへ商号変更し、2011年に日本産業パートナーズ主導で完全子会社化されました。2012年に現在のKHネオケムへ商号変更し、2016年には東京証券取引所市場第一部に上場を果たしています。

現在の体制は、連結従業員数863名、単体従業員数683名となっています。筆頭株主ならびに第2位株主は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位株主には、総合化学メーカーである東ソーが名を連ねており、同社に対して5.27%の株式を保有しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.81%
日本カストディ銀行(信託口) 8.04%
東ソー 5.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長社長執行役員は髙橋理夫氏が務めており、監査等委員でない取締役6名中3名、監査等委員である取締役3名中2名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
髙橋理夫 代表取締役社長社長執行役員 1987年協和醱酵工業入社。協和発酵ケミカル基礎化学品事業部長などを経て、2013年同社取締役・執行役員に就任。常務取締役などを歴任し、2019年より代表取締役社長・執行役員、2020年より現職。
濵本真矢 取締役常務執行役員 1985年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。同行執行役員や興銀リース(現みずほリース)常務取締役などを経て、2019年に同社入社。上席執行役員を務めたのち、2020年より現職。
藤間敏明 取締役執行役員 1998年協和醱酵工業入社。米国関連会社でのDirector等を経て、2023年同社経営企画部長に就任。執行役員経営企画部長を務めたのち、2025年より現職。
高橋功 取締役(常勤監査等委員) 1988年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)入社。同社関連会社での部長等を経て、2017年同社入社。総務部長、執行役員経営管理部長等を歴任し、2024年より現職。


社外取締役は、宮入小夜子(スコラ・コンサルトパートナー)、土屋淳(土屋インターナショナルコンサルティング代表取締役社長)、菊池祐司(東京八丁堀法律事務所パートナー)、河合和宏(元みずほ銀行執行役員)、田村恵子(あさひ法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「機能性材料」「電子材料」「基礎化学品」および「その他」事業を展開しています。

機能性材料


エアコンや冷凍庫等に使用される冷凍機油の原料や、化粧品原料等に用いられる特殊ジオール等を製造、販売しています。オゾン層破壊・地球温暖化問題に対処する環境にやさしい冷媒に適合する原料や、高い保湿性を持つスキンケア製品の原料などを提供しています。
主に国内外の潤滑油メーカーや化粧品メーカー等に製品を販売することで収益を得ています。事業の運営は同社が中心となって行っています。

電子材料


液晶ディスプレイや半導体、フォトレジストの製造に使用される、金属含有量の極めて少ない高純度溶剤を製造し、販売しています。高度な品質管理ノウハウを駆使して、最先端の製造プロセスに求められる水準を満たす素材を提供しています。
ディスプレイ材料メーカーや半導体関連メーカーへ製品を供給して対価を得ています。運営は同社のほか、受託製造・販売を担う黒金化成などが担当しています。

基礎化学品


自動車や住宅など様々な産業で使用される塗料用・インキ用の溶剤、可塑剤原料、樹脂原料等を製造し、販売しています。壁紙や床材、合わせガラス用中間膜など、人々の暮らしを支える幅広い用途の基礎素材として利用されています。
様々な産業のメーカー等に対する製品販売を通じて収益を得ています。運営は同社に加え、合弁会社であるジェイ・プラスなどが各種可塑剤の製造・販売を行っています。

その他


上記の報告セグメントに含まれない、化学品事業に付随する業務や関連サービス等を展開しています。
同社グループ内の事業活動をサポートする関連サービス等の提供を通じて収益を得ています。運営は同社および関連会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は1,100億円台で安定して推移していますが、利益面は市況や外部環境の影響を受けて変動が見られます。数年前には高い利益率を記録したものの、近年は原材料価格の高騰や需要の変動により、利益水準は落ち着いた状態となっています。今後は、高付加価値製品への注力による収益性の向上が期待されます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,171億円 1,149億円 1,152億円 1,198億円 1,151億円
経常利益 198億円 127億円 97億円 121億円 108億円
利益率(%) 16.9% 11.1% 8.4% 10.1% 9.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 132億円 77億円 69億円 80億円 77億円

(2) 損益計算書


売上高は前期と比べて減少したものの、売上総利益率はわずかに改善しています。しかし、販売費及び一般管理費等の増加により、営業利益と営業利益率はやや低下する結果となりました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,198億円 1,151億円
売上総利益 253億円 249億円
売上総利益率(%) 21.1% 21.6%
営業利益 122億円 112億円
営業利益率(%) 10.2% 9.8%


販売費及び一般管理費のうち、運送費が43億円(構成比32%)、給料が13億円(同10%)、容器包装費が12億円(同9%)を占めています。また、売上原価の内訳では材料費が797億円(構成比81%)、経費が142億円(同15%)と大部分を占めています。

(3) セグメント収益


機能性材料や電子材料は需要の拡大を捉え、堅調な売上推移と高い利益率を維持しています。一方、基礎化学品は中国での供給過剰による安価な海外品の流入や国内の住宅着工の伸び悩みなど構造的な要因により、減収および大幅な減益となり、全体の業績を下押しする結果となりました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
機能性材料 559億円 567億円 111億円 109億円 19.2%
電子材料 120億円 123億円 24億円 27億円 22.0%
基礎化学品 512億円 454億円 20億円 9億円 2.0%
その他 7億円 7億円 1億円 1億円 17.7%
調整額 - - -33億円 -34億円 -
連結(合計) 1,198億円 1,151億円 122億円 112億円 9.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

KHネオケムは、営業活動により潤沢な資金を生み出し、事業基盤を強化しています。投資活動では、将来の成長に向けた設備投資を実施しました。財務活動では、株主還元や自己株式取得を通じて、資本構成の最適化を図っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 70億円 138億円
投資CF -89億円 -46億円
財務CF -6億円 -96億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


企業使命として「「化学の力」で、よりよい明日を実現する。」を掲げ、様々な産業分野に特色のある高品質な化学製品を提供することを主方針としています。また、経営姿勢として「確かな技術と豊かな発想で、夢を「かたち」にする。」を据え、持続可能な社会に貢献することで、自社も持続的に企業価値を向上していくサステナブル経営を推進しています。

(2) 企業文化


行動指針として「「新たな一歩」を踏み出して、さらなる高みに挑戦する。」、安全指針として「自分を守る、仲間を守る。」を定めています。また、「挑戦し、やれば報われる」をキーワードに、年齢や年次によらない職務価値と成果に基づく実力主義の組織風土を醸成しています。多様な人材がいきいきと働ける環境づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


「VISION 2030 ~世界で輝くスペシャリティケミカル企業~」を策定し、国内で化学業界トップクラスの利益率を目指しています。2025年度からの第5次中期経営計画では「新たな成長ステージへ」を基本方針とし、以下の数値目標を掲げています。

* 期間累計連結営業利益 449億円
* 期間累計連結EBITDA 653億円
* ROE 15%

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略として「稼ぐ力の強化」「将来への布石」「経営基盤の強化」の3つを推進しています。環境、ヘルスケア、エレクトロニクスを戦略ドメインに設定し、冷凍機油原料や高純度溶剤などの世界シェア拡大を図ります。また、海洋生分解性樹脂などの新規事業の事業化や、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進による生産性向上、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを加速させています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を成長の原動力と位置付け、「多様な人材が活躍し、成果を最大化する企業風土の醸成」をテーマに掲げています。ジョブ型の人事制度導入による「適所適財」の配置や、選抜型研修による将来の経営幹部候補の早期育成を進めています。また、キャリア自律意識の醸成や多様な働き方を支援する両立支援制度の整備を通じて、変化に強い組織づくりを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.8歳 14.8年 7,320,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.2%
男性育児休業取得率 104.7%
男女賃金差異(全労働者) 80.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 65.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総合職に占める女性社員比率(13.7%)、採用者(3年未満)の離職率(14.4%)、年次有給休暇取得率(88.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原燃料価格と為替の変動


同社はプロピレンやエチレン等を主要原材料とし、LNG等を原燃料としています。これらはグローバルな経済活動と連動しており、原油価格や需給バランス、為替相場の影響を受けやすくなっています。これらの価格が急激に変動した場合や高騰が長引いた場合、製品価格への転嫁が遅れることで収益性に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定原料・資材の調達依存


特定原料や資材について、製造拠点の立地条件や運搬・貯蔵方法の制約から、特定の仕入先に依存する場合があります。仕入先での事故や災害、事業見直しによる統廃合などにより、長期間にわたる供給不足や停止が発生した場合、同社の生産活動に支障をきたし、経営成績に影響を与えるリスクがあります。

(3) 気候変動と環境規制への対応


気候変動に伴う異常気象による操業への悪影響のリスクや、脱炭素社会に向けたカーボンプライシング(炭素税等)の導入による財務負担増加のリスクがあります。また、排出量取引制度などの環境規制への対応において、想定通りに排出枠を確保できない場合や追加取得が必要となる可能性があり、事業運営に影響を及ぼす恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。