※本記事は、株式会社JMC の有価証券報告書(第34期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. JMCってどんな会社?
同社は、3Dプリンター、砂型鋳造、産業用CTの3つの技術を融合し、製造業をトータルサポートする企業です。
■(1) 会社概要
1992年に光造形によるモデル作製目的で設立され、1999年に3Dプリンター事業を開始しました。2006年に砂型鋳造事業へ参入し、2014年に現在のJMCへ商号を変更しました。2016年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2017年には産業用CTを用いたCT事業を新たに立ち上げています。
同社の従業員数は単体で138名です。筆頭株主は創業者であり代表取締役社長CEOを務める渡邊大知氏で、第2位は専務取締役COOの鈴木浩之氏、第3位は渡邊商事となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 渡邊 大知 | 22.86% |
| 鈴木 浩之 | 7.35% |
| 渡邊商事 | 3.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼CEOは渡邊大知氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡邊 大知 | 取締役社長(代表取締役)CEO | 1994年プロボクサーデビュー。1999年同社入社。2004年代表取締役社長に就任し、2019年より現職。 |
| 鈴木 浩之 | 専務取締役COO | 2002年エス・ケー・イー設立。2006年同社と合併し専務取締役に就任。2019年より現職。 |
| 篠﨑 史郎 | 取締役CFO | 外資系企業や投資顧問会社等で要職を歴任後、2018年同社入社。同年取締役に就任し、2019年より現職。 |
| 山﨑 浩 | 取締役CHRO | 複数企業で管理部門長や生産本部長を歴任。2023年同社入社、人事総務部長を経て2025年より現職。 |
| 山﨑 晴太郎 | 取締役CDO | 2008年セイタロウデザイン設立、代表取締役。2014年同社取締役に就任し、2019年より現職。 |
社外取締役は、長坂英樹(グローバル・トランザクション・パートナーズ代表取締役)、岡本英利(オン・アンド・オン代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「3Dプリンター事業」、「鋳造事業」、「CT事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■3Dプリンター事業
製品開発を行う顧客に向け、3Dプリンターを用いた試作品の作製および提供サービスを行っています。また、医療分野向けに心臓カテーテルシミュレーター等の自社製品の開発や販売も手がけています。
顧客企業からの試作品作製依頼に基づく受託製造費用や、医療機関・デバイスメーカーへの自社製品販売を収益源としています。これらの事業運営はすべて同社が単独で担っています。
■鋳造事業
多品種少量生産に適した砂型鋳造法を用い、自動車産業などの顧客向けに試作品から量産用部品までを作製しています。木型から鋳造、機械加工、検査までの一貫した内製化による短納期と高品質が強みです。
メーカーからの鋳造部品の受託製造による加工賃や製品代金を主な収益源としています。3次元CADデータ技術やトヨタ生産方式を活用した製造プロセスを採用しており、運営は同社が行っています。
■CT事業
産業用CTを用いた製品の非破壊検査や三次元測定などの高度な検査・測定サービスを提供しています。また、産業用CT装置本体や関連ソフトウェアの販売業務もあわせて展開しています。
製造業や学術研究機関からの受託スキャンによる検査・測定サービス料のほか、CT装置やソフトウェアの販売代金を収益源としています。当該事業の運営も同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は長期的には拡大傾向にあり、堅調に推移しています。一方、利益面では、過去数年間は高い利益水準を維持していましたが、直近の事業年度においては大型設備投資に関連する減損損失を計上した影響などから、最終利益が大幅な赤字へと転落しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 24.2億円 | 29.6億円 | 36.4億円 | 30.7億円 | 32.2億円 |
| 経常利益 | 1.5億円 | 3.8億円 | 5.3億円 | 1.2億円 | 1.0億円 |
| 利益率(%) | 6.4% | 12.9% | 14.7% | 4.0% | 3.1% |
| 当期利益 | 1.1億円 | 2.5億円 | 3.6億円 | 0.5億円 | -12.6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は微減となったものの、販売費及び一般管理費の増加を抑えたことにより、営業利益および営業利益率は改善を示しており、本業の収益力は安定的に維持されています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 30.7億円 | 32.2億円 |
| 売上総利益 | 10.2億円 | 10.4億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.3% | 32.2% |
| 営業利益 | 0.9億円 | 1.0億円 |
| 営業利益率(%) | 2.9% | 3.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2.1億円(構成比23%)、役員報酬が1.3億円(同14%)を占めています。また、売上原価のうち、当期製品製造原価において製造経費が14.0億円(同62%)、労務費が6.5億円(同28%)を占めています。
■(3) セグメント収益
3Dプリンター事業は医療向けシミュレーターや試作出力サービスが好調で増収となりました。鋳造事業もEV関連や大型試作案件の獲得により売上を伸ばしています。一方、CT事業は装置販売の低調などにより減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 3Dプリンター事業 | 6.3億円 | 7.6億円 |
| 鋳造事業 | 19.5億円 | 20.8億円 |
| CT事業 | 4.9億円 | 3.7億円 |
| 連結(合計) | 30.7億円 | 32.2億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金の範囲内で設備投資や借入金の返済を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。本業での安定した資金創出力をもとに、将来に向けた投資と財務体質の改善をバランスよく進めている優良な状態といえます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.3億円 | 6.7億円 |
| 投資CF | -2.1億円 | -1.7億円 |
| 財務CF | -2.0億円 | -4.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「MADE BY JMC」を企業理念に掲げ、「ものづくりに知性を。」をビジョンとしています。この理念には、製造業における同社の強固なブランドを確立し、先頭に立って日本の製造業を変えていくという強い想いが込められています。製造方法や枠組みに縛られず、時代にふさわしい価値を創造することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、すべてのステークホルダーの利益を尊重し、革新的な製品やサービスを提供して顧客満足度を最大化することを使命としています。法令や社会的規範を遵守するだけでなく、高品質とスピードを両立したサービスの迅速な提供、快適で働きやすい職場環境の整備、知的財産の保護など、公正かつ倫理的に事業を行う文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標について、具体的な数値目標は特段定めていません。しかし、中長期的な視点で強固な経営基盤を確立するため、売上高、営業利益、営業利益率の3つの指標を重視した経営管理を行っており、持続的な成長に向けた取り組みを推進しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
3Dプリンター事業では、ハイエンド装置の積極的な活用と医療向けカテーテルシミュレーターのラインナップ拡充を図ります。鋳造事業では、EV化に伴う大型試作部品の需要増加に対応し、生産拠点の拡張や量産体制の効率化を進めます。CT事業では、新たな分野での検査需要を発掘し、技術の普及と市場の開拓に注力する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、変化する事業環境に最適な企業構造を保ち、長期的な成長を担保するために、優秀な人材の確保と育成を急務と位置づけています。3Dプリンター、鋳造、CTの各事業や、製造と営業の部門を横断して活躍できる「ゼネラリスト型人材」と、特有の技術や知識に長けた「職人型人材」の両面を中長期的視野で育成する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 38.9歳 | 5.6年 | 4,755,948円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.6% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、男女賃金差異に関する有報への記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 試作品需要の変動リスク
自動車メーカー等の開発予算の圧縮や、試作品を作らずにCAD上のみで検証を行う「試作品レス」の手法が主流となった場合、試作品の作製ニーズが低減する可能性があります。同社は量産領域への拡張や、参入障壁の高い大型鋳造品の提案力を強化することでリスクの緩和を図っています。
■(2) 特定経営者への依存リスク
同社の事業は、代表取締役社長CEOの渡邊大知氏および専務取締役COOの鈴木浩之氏の経営判断や業務執行に強く依存しています。両名のいずれかが離職するなどの不測の事態が生じた場合、事業展開や業績に影響が及ぶ可能性があるため、組織体制の整備や権限移譲を進めています。
■(3) 機密情報の漏洩リスク
新製品開発に関する顧客の機密情報を日常的に取り扱うため、情報の漏洩が発生した場合、信用失墜による受注減少や損害賠償による多額の費用が発生する恐れがあります。同社はネットワークやサーバーの厳重なセキュリティ管理と、従業員への定期的な教育を通じて機密保持レベルの向上に努めています。



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