フルテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フルテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フルテックは東京証券取引所スタンダード市場および札幌証券取引所に上場する企業です。自動ドア開閉装置の販売から保守までの一貫サービスや、ステンレス建具の製造等の事業を展開しています。直近の業績は、大型物件の反動減や人材関連投資費用の増加等により減収減益のトレンドとなっています。


※本記事は、フルテック株式会社の有価証券報告書(第63期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フルテックってどんな会社?


自動ドアの販売から設計、施工、保守までを社内一貫体制で提供するエントランス環境の専門企業です。

(1) 会社概要


1963年に自動ドアメーカーである寺岡オートドアの北海道地区販売代理店として設立され、その後、東北や関東地区へと事業領域を拡大しました。1991年にステンレス建具の製造を行う工場を設立して製造部門を強化し、2015年に現在のフルテックへ商号変更しています。2017年に東京証券取引所市場第二部へ上場後、市場変更を経て現在はスタンダード市場および札幌証券取引所に上場しており、2024年にはワイズ・コーポレーションを連結子会社化しています。

同社グループの従業員数は連結で737名、単体で645名となっています。筆頭株主は役員の資産管理会社である有限会社ウェルマックスで、第2位は代表取締役会長CEOの古野重幸氏、第3位は従業員持株会です。

氏名 持株比率
有限会社ウェルマックス 20.87%
古野 重幸 8.76%
フルテック従業員持株会 6.26%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長CEOの古野重幸氏をはじめとする経営陣が事業を牽引しており、社外取締役比率は42.9%となっています。

氏名 役職 主な経歴
古野 重幸 代表取締役会長CEO 1980年トヨタ自動車工業入社。1988年フルテック入社。代表取締役社長等を経て2025年より現職。ワイズ・コーポレーション代表取締役社長も兼務。
古野 元昭 代表取締役社長社長執行役員 COO 1989年クボタ入社。1994年フルテック入社。東京支店長や技術本部長、代表取締役副社長等を経て2025年より現職。
田中 康之 取締役専務執行役員管理本部長兼経営企画室長 1979年北海道銀行入行。2004年フルテック入社。管理本部長や経営企画室長等を歴任し、2016年より現職。
喜多見 光彦 取締役常務執行役員東京本部長兼開発営業部長 1991年フルテック入社。宇都宮支店長や関東本部長、営業本部長等を歴任し、2026年より現職。アートテックス取締役も兼務。


社外取締役は、荒木啓文氏(元札幌商工会議所専務理事)、尾町雅文氏(尾町雅文公認会計士事務所代表)、岡崎拓也氏(岡崎拓也法律事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動ドア関連事業」および「建具関連事業」ならびに「その他」事業を展開しています。

自動ドア関連事業


ビルや店舗のエントランス等に設置される自動ドア開閉装置の販売、設計、施工、保守サービスを一貫して提供しています。施主や設計会社、ゼネコンなどを顧客とし、北海道、東北、関東地区を中心に38ヶ所の拠点網を展開しており、バリアフリーや防犯、省エネなど多様なニーズに対応する製品を取り扱っています。

自動ドア開閉装置の新規販売やリニューアル工事による販売・施工収入のほか、定期点検保守契約に基づく継続的なメンテナンス収入が主な収益源です。当事業の運営はフルテックが主体となって行っています。

建具関連事業


主に自動ドア開閉装置とセットで販売されるステンレスサッシやドア(框ドア、強化ガラスなど)の生産と販売を行っています。建物の納まりに対してミリ単位の精度が求められるなか、強度や耐風圧、耐候性などをクリアする高い品質の建具製品を設計・製造し顧客に提供しています。

ステンレスサッシ等の建具の製造・販売を主な収益源としています。事業の運営は、製造を連結子会社であるアートテックスが担い、販売はフルテックが行っています。

その他


その他の事業として、喫煙所システムの販売・設置・保守を行う環境機器事業や、入退室管理・セキュリティゲートなどを扱うセキュリティ事業、駐輪システム事業を展開しています。また、組込み系制御基板の開発や設計、製造も行っています。

各機器やシステムの販売、設置、保守サービスによる収入が主な収益源です。環境機器や駐輪システム事業の運営はフルテックが行い、組込み系制御基板の開発・製造は連結子会社のワイズ・コーポレーションが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は概ね右肩上がりで推移してきましたが、当期は大型物件の反動減などによりわずかに減収となりました。経常利益も売上高の拡大に伴い回復傾向にありましたが、当期は人材関連投資費用やシステム稼働費用の増加を吸収できず減益となっています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 115.1億円 119.4億円 127.8億円 138.1億円 135.7億円
経常利益 6.7億円 1.6億円 5.0億円 6.8億円 5.3億円
利益率(%) 5.8% 1.4% 3.9% 4.9% 3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 4.0億円 0.7億円 2.2億円 4.9億円 0.8億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、採算管理の徹底等により売上総利益は増加し、総利益率は改善しました。一方で、昇給や採用力強化に向けた広告宣伝費、新システム関連のコスト増により営業利益は減少しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 138.1億円 135.7億円
売上総利益 46.5億円 47.3億円
売上総利益率(%) 33.7% 34.9%
営業利益 6.1億円 4.6億円
営業利益率(%) 4.4% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が16億円(構成比37%)、システム関連費用等を含むその他が14億円(同33%)、賃借料が4億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


自動ドア関連事業は保守契約の増加等により増収となったものの、採算性の低い長期工事やコスト上昇により減益となりました。一方、建具関連事業は大型物件の反動減等で減収でしたが、工場稼働率の改善や選別受注の徹底により利益を伸ばしています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
自動ドア関連 86.7億円 84.4億円
建具関連 40.4億円 43.9億円
その他 8.6億円 9.8億円
連結(合計) 135.7億円 138.1億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは末期型に該当し、本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的な状況を示しています。ただし、当期の営業CFマイナスは、下請法対応に伴う支払サイト短縮化による仕入債務の減少が主な要因です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 7.5億円 -8.7億円
投資CF -0.7億円 -2.2億円
財務CF -5.0億円 -0.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「豊かになるための集団」「負けてたまるかの拡大発展」「顧客に密着する経営」「新製品新事業の開拓」「会社は永続するもの」という5つの経営理念を掲げています。これらをベースに、建物に不可欠となった自動ドアの販売を核として、安全で快適なエントランス環境を創造する企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、経営理念にもある通り、持続可能な社会への貢献と持続的な企業価値向上の好循環を追求する「ゴーイング・コンサーン(会社は永続するもの)」の精神を重視しています。全てのステークホルダーから信頼され必要とされる企業を目指し、販売からアフターサービスまで社内一貫体制で提供する姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2030年に目指す姿として「下請け型企業から技術開発型販社への転換」を掲げる「Vision 2030」を策定しています。また、その達成へのファーストステップとして、2025年から2027年の中期3ヶ年経営計画を推進しています。

* 売上高:200億円(2030年目標) / 162億円(2027年目標)
* 経常利益:20億円(2030年目標) / 11億円(2027年目標)
* ROE:10%以上(2030年目標) / 9.2%(2027年目標)

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「新商品・新サービスの開発」「収益構造の改革」「事業領域の拡大」「積極的なM&Aの実施」を成長戦略に掲げています。ストック市場であるリニューアルやメンテナンスを利益の源泉と位置づけ、首都圏での需要深掘りやエントランス周りのリノベーション事業への本格参入によりトータルリニューアルを推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、営業から保守サービスまでを正社員による社内一貫体制で提供することを強みとしており、人材の確保と育成を持続的な成長に不可欠な課題と位置づけています。多様な人材が活躍できるよう、昇給や健康経営の推進を通じて働きやすい職場環境を整備し、人材定着率とエンゲージメントの向上を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.3歳 13.7年 6,015,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.2%
男性育児休業取得率 43.8%
男女賃金差異(全労働者) 81.0%
男女賃金差異(正規雇用) 81.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 61.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、月平均所定外労働時間(23.5時間)、女性管理職人数(5名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の市況変動の影響


建具関連事業の主要原材料であるステンレスやスチール等の鉄鋼材料価格が高騰し、製品価格へタイムリーに転嫁できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社グループは仕入先の分散化等による原材料の安定供給に努めることで、リスクの軽減を図っています。

(2) 自然災害及び事故等の発生による影響


地震等の自然災害や火災・停電等の事故により、生産設備や拠点が機能不全に陥った場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対応するため、事業継続計画(BCP)を策定し、自然災害の発生等を想定したリスク管理体制の整備を進めています。

(3) 人材の確保・育成リスク


同社グループは正社員による社内一貫体制を強みとする一方で採用難が深刻化しており、人材の確保や育成が計画通りに進まない場合、事業の持続的な成長に影響を及ぼす可能性があります。優秀な人材を確保するため、知名度向上の施策継続や職場環境の改善に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。