※本記事は、HANATOUR JAPANの有価証券報告書(第21期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. HANATOUR JAPANってどんな会社?
訪日外国人向けの旅行手配、バス運行、ホテル運営をワンストップで展開する旅行プラットフォーム企業です。
■(1) 会社概要
同社は2005年9月に設立され、同年11月に第一種旅行業登録を受けて事業を開始しました。2007年には友愛観光バスを子会社化してバス事業に参入し、2013年にはアレグロクスTMホテルマネジメントを設立してホテル運営にも事業を拡大しました。2017年12月に東京証券取引所マザーズ市場(現在はグロース市場)へ上場を果たしています。近年は、2022年にTマークシティホテル金沢をオープンするなど、宿泊施設の拡充を進めています。
現在の従業員数は連結で308名、単体で105名体制となっています。筆頭株主は韓国の大手旅行会社である親会社のHANATOUR SERVICE INC.であり、第2位は同社の創業者である李炳燦氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| HANATOUR SERVICE INC.(常任代理人:みずほ証券) | 54.47% |
| 李炳燦 | 18.07% |
| セントラル短資 | 1.15% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は金尚昱氏が務めており、社外取締役の比率は11.1%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 金尚昱 | 代表取締役社長 | 2005年9月同社入社。九州営業所長、営業本部長兼FIT事業部長などを経て、2025年3月より現職。 |
| 李炳燦 | 取締役 | 1999年8月宇進設立。2005年9月同社設立 代表取締役就任。友愛観光バス代表取締役等を経て、2025年3月より現職。 |
| 柳敞淏 | 取締役 | 1999年10月HANATOUR SERVICE INC.入社。同社航空事業本部長などを経て、同社副社長供給本部長を務める。2021年3月より現職。 |
| 張瀞允 | 取締役 | 2003年11月HANATOUR SERVICE INC.入社。同社日本事業部署長を務める。2021年3月より現職。 |
| 李振鎬 | 取締役 | 2001年11月三政会計法人入社。2020年7月HANATOUR SERVICE INC.入社。同社財務本部長を務める。2023年3月より現職。 |
社外取締役は、坂本公敏(琉球ホテルマネジメントノボテル沖縄那覇取締役総支配人)です。
2. 事業内容
同社グループは、「旅行事業」「バス事業」「ホテル等施設運営事業」および「その他」事業を展開しています。
■旅行事業
韓国や東アジア、東南アジア、欧米豪地域からの訪日旅行客に向けた手配旅行業を行っており、現地のホテル、バス、レストラン、観光地のチケット等の手配業務を提供しています。また、自社運営サイト「Gorilla」を通じて、個人旅行者(FIT)向けに宿泊施設や交通パスの販売も行っています。
収益は、国内外の旅行エージェントからの委託に伴う手配手数料や、個人旅行者からの旅行商品代金から得ています。運営は主にHANATOUR JAPANが行っています。
■バス事業
インバウンド客を中心とした貸切観光バスの運行および送迎バスの運行サービスを提供しており、訪日団体旅行客や企業の報奨旅行客などを主な顧客としています。北海道、東京、大阪、九州等の各拠点で安全・快適な移動をサポートしています。
収益は、旅行会社や一般顧客からのバス貸切運賃および送迎料金から得ています。運営は子会社の友愛観光バスが行っています。
■ホテル等施設運営事業
日本全国においてTマークシティホテルなどの宿泊施設を運営し、国内外の観光客やビジネスユースの顧客に対して客室および付随するサービスを提供しています。
収益は、宿泊客やオンライントラベルエージェントからの宿泊料金などから得ています。運営は子会社のアレグロクスTMホテルマネジメントが行っています。
■その他
日本向けインバウンド旅行の手配等に必要となるソフトウェア開発やWebシステム開発、および運用保守管理業務を提供しています。グループ内のITインフラ整備やシステム高度化を担っています。
収益は、同社グループ内からのシステム開発および保守管理の受託手数料から得ています。運営は子会社のHANATOUR JAPAN SYSTEM VIETNAM COMPANY LIMITEDが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調な拡大を続けており、特に直近2期間はインバウンド需要の回復を背景に大幅な増収となっています。経常利益も売上の拡大に連動して黒字転換を果たし、その後も利益水準を押し上げています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 8.6億円 | 20.1億円 | 51.5億円 | 66.6億円 | 71.8億円 |
| 経常利益 | -19.6億円 | -14.0億円 | 7.7億円 | 16.4億円 | 19.4億円 |
| 利益率(%) | -226.6% | -69.7% | 14.9% | 24.7% | 27.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -17.4億円 | -4.9億円 | 7.5億円 | 13.5億円 | 10.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率は約80%の高い水準を維持しています。営業利益も着実に増加し、収益性の高まりが確認できます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 66.6億円 | 71.8億円 |
| 売上総利益 | 52.0億円 | 57.2億円 |
| 売上総利益率(%) | 78.1% | 79.7% |
| 営業利益 | 17.3億円 | 20.0億円 |
| 営業利益率(%) | 26.0% | 27.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7.7億円(構成比20.6%)、支払手数料が5.9億円(同15.8%)、賃借料が5.2億円(同14.0%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ホテル等施設運営事業とバス事業が売上を伸ばしており、特にホテル事業は稼働率の向上と客室単価の上昇が寄与しています。旅行事業は前年と同水準で堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 旅行事業 | 30.0億円 | 29.3億円 |
| バス事業 | 8.7億円 | 9.9億円 |
| ホテル等施設運営事業 | 27.9億円 | 32.6億円 |
| 連結(合計) | 66.6億円 | 71.8億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 18.3億円 | 19.7億円 |
| 投資CF | -3.8億円 | -8.8億円 |
| 財務CF | -8.9億円 | -13.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は34.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「世界の旅行者に“安全”で“感動的”な旅行(体験)を提供し、人々を幸せにすることを通して、世界平和に貢献する」ことをミッションとして掲げています。旅行事業を基盤に訪日旅行市場におけるインフラ整備を進め、同社グループでワンストップサービスを提供する事業展開を目指しています。
■(2) 企業文化
安全確保を社会的使命と考え、運行管理や日常的な車両点検により安全な運行に万全を期す文化があります。また、コンプライアンス経営の重要性を認識し、従業員への教育を継続して行うなど、コーポレート・ガバナンスの強化や適法な事業運営を重んじる風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
日本の旅行会社のリーディングカンパニーを目指すという長期ビジョンの実現に向けて、全社および各事業の売上高と営業利益を継続的に成長させることを重視しています。資本コストや株主還元を意識し、WACC(加重平均資本コスト)を上回るROIC(投下資本利益率)を維持することで、持続的な企業価値の向上を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
旅行、バス、ホテルの3事業の連携をシステム開発により高度化し、受注機会と収益性の最大化を図る「旅行プラットフォーム企業」を目指しています。個人旅行(FIT)商品の拡大に向けた自社ポータルサイト「Gorilla」の強化や、東南アジア・欧米等の新規マーケット開拓、バス事業の稼働率平準化などを重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な発展のために優秀な人材の確保と育成を重要視しています。リーダー人材やDX人材の育成・確保を進めるとともに、育成プログラムの体系化や権限委譲を通じた自律的な業務推進、社内コミュニケーションの活性化を図り、社員のモチベーションと生産性を高める方針を掲げています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 33.8歳 | 3.6年 | 4,199,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 56.3% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 82.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 64.0% |
※男性育児休業取得率の「-」は、対象期間において取得対象者となる従業員が無いことを示しています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況および国際情勢の変動リスク
国内外の景気動向、為替や燃料価格の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、戦争・紛争、感染症の流行、大規模な自然災害、外交関係の悪化等により訪日外国人客が減少した場合、同社グループの財政状態に影響を与えるおそれがあります。
■(2) 情報システムの障害に関するリスク
宿泊施設や観光地のチケット等の販売予約管理において、自社開発システムおよび親会社が運用するシステムを活用しています。通信ネットワークやプログラムの不具合、サイバー攻撃等による重大なシステム障害が生じた場合、業務に支障をきたし修復費用が発生するリスクがあります。
■(3) 親会社との関係に基づくリスク
韓国のHANATOUR SERVICE INC.が議決権の過半数を有する親会社であり、同社グループは親会社が募集する訪日ツアーの日本国内手配を行っています。親会社グループの経営方針や取引条件の変更、またはブランド毀損が生じた場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 乗務員等の人材確保に関するリスク
バス事業やホテル運営において、乗務員や優秀な営業・運営人材の確保が重要となっています。雇用情勢の変化等により、求める人材や労働力の確保が計画通りに進まない場合、事業活動に支障をきたすリスクがあります。



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