すららネット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

すららネット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

すららネットは東京証券取引所グロースに上場し、小中高生向けICT学習教材「すらら」等のeラーニング事業を主力としています。直近の業績では、売上高が前期比微減の19億円で着地し、次世代サービス開発等への先行投資や固定資産除却損などの影響により、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しています。


※本記事は、株式会社すららネットの有価証券報告書(第18期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. すららネットってどんな会社?


eラーニング事業を中心に、教育格差の解消を目指すICT学習教材の提供とコンサルティングを行う企業です。

(1) 会社概要


2008年8月にeラーニングによる教育サービスの提供等を目的として設立されました。2010年11月に全国の学習塾・学校向けeラーニング事業「すらら」を事業承継し、MBOを実施しています。2012年に家庭学習者向け、2020年に公立小中学校向け「すららドリル」の提供を開始し、2017年12月にIPOを行いました。

従業員数は連結で104名、単体で90名です。筆頭株主は創業者の湯野川孝彦氏で、第2位は資産管理業務等を行う日本カストディ銀行(信託口)、第3位は経営陣である柿内美樹氏となっています。

氏名 持株比率
湯野川 孝彦 20.76%
日本カストディ銀行(信託口) 7.40%
柿内 美樹 6.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は湯野川孝彦氏が務め、取締役の60.0%を社外取締役が占めています。

氏名 役職 主な経歴
湯野川 孝彦 代表取締役社長 1985年日本エル・シー・エー入社。イデア・リンク代表取締役等を経て、ベンチャー・リンク常務執行役事業開発本部長を歴任。2010年10月より現職。
柿内 美樹 取締役企画開発本部長経営管理グループ長 1995年語学春秋社入社。水王舎取締役、キャッチオン取締役等を経て、2008年にベンチャー・リンク入社。同年8月より現職。


社外取締役は、小林洋光(国際企業法法務協会会長)、藤本知哉(弁護士・フクロウラボ監査役)、加藤慶(公認会計士・BEX取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「eラーニング事業」「受託開発事業」「アプリ開発事業」を展開しています。

(1) eラーニング事業


主に小中高校生向けにICT学習教材「すらら」「すららドリル」などを提供し、海外向けに「すららにほんご」「SuralaMath」を展開しています。一人ひとりの理解度に合わせて進めることができるアダプティブな学習教材であり、国内外の学習塾、学校法人、個人学習者等を顧客としています。

収益源は、導入校や個人学習者からのサービス利用料やID利用料、導入時の初期導入料です。また、学習塾等の独立開業支援や経営支援によるコンサルティングなども実施しています。事業の運営は主にすららネットが行っています。

(2) 受託開発事業


教育にかかわるコンテンツやアプリケーションなどの受託開発、およびそれに関連する保守やメンテナンスサービスの提供を行っています。顧客のニーズに応じたシステム開発などを通じて、教育現場の課題解決を支援しています。

収益源は、顧客との契約に基づく受託開発の対価、および継続的な保守・メンテナンスサービスによる運用対価です。運営は主に子会社のファンタムスティックが行っています。

(3) アプリ開発事業


ゲーミフィケーションの要素を活かした学習コンテンツを自社開発し、App Storeなどのアプリストアを通じてダウンロード利用可能な知育アプリとして提供しています。子どもたちが楽しみながら学べる環境を創出しています。

収益源は、アプリを利用するエンドユーザーからのサブスクリプション型の利用料やダウンロードに応じた収益です。こちらの事業も主にファンタムスティックが運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去4期の業績を見ると、売上高は21億円規模から直近2期で19億円規模へと推移しています。経常利益も先行投資の影響などにより減少傾向にあり、利益率は23.3%から3.8%へ低下しています。当期は特別損失の計上などにより、当期利益が赤字となりました。

項目 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 21億円 21億円 19億円 19億円
経常利益 5億円 4億円 2億円 1億円
利益率(%) 23.3% 18.3% 11.4% 3.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 3億円 0.7億円 -0.0億円

(2) 損益計算書


売上高は横ばいで推移していますが、売上総利益率および営業利益率は低下しています。これは次世代サービスに向けた開発投資や、事業基盤強化のための体制拡充による費用の増加が影響しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 19億円 19億円
売上総利益 13億円 12億円
売上総利益率(%) 64.7% 61.1%
営業利益 2億円 0.7億円
営業利益率(%) 10.9% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.4億円(構成比30%)、広告宣伝費が1.1億円(同9%)を占めています。また、売上原価は7.5億円で、売上高に対して39%を構成しています。

(3) セグメント収益


主力であるeラーニング事業が全体の売上の大半を占めていますが、当期はわずかに減収となりました。一方、受託開発事業およびアプリ開発事業は規模は小さいものの、前年から売上を伸ばしており、教育現場のニーズに合わせたサービス拡充が進んでいます。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
eラーニング事業 19億円 18億円
受託開発事業 0.2億円 0.5億円
アプリ開発事業 0.3億円 0.4億円
連結(合計) 19億円 19億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。営業活動によるキャッシュ・フローは、eラーニングサービスの契約数堅調に伴う運転資金を調達しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、コンテンツ・システムの開発費等に充当されています。財務活動によるキャッシュ・フローは、必要に応じた金融機関からの借入や新株発行等により、最適な方法で資金調達を行っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 4億円 2億円
投資CF -4億円 -5億円
財務CF -0.5億円 -0.5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「教育に変革を、子どもたちに生きる力を。」を企業理念に掲げています。新しい学習体験を届ける事業活動を通じ、「大人になっても役に立つ真の学力」と「努力をすれば結果が出るという自信」を得られる機会の提供を目指しています。貧困や障がい、世界中の教育格差という社会課題をテクノロジーで解決することを自らの使命としています。

(2) 企業文化


同社は、教育にまつわる社会課題を解決するというミッションの実現に向け、差別化された商品・開発力と現場で教育課題の解決を主導するコンサルティング力を掛け合わせた独自の価値提供を重視しています。提供価値の最大化を人的資本経営の最上位目標として掲げ、専門性の高い人材の能力発揮や、部門横断でのコラボレーションを促進する文化を育んでいます。

(3) 経営計画・目標


具体的な数値目標は有価証券報告書内に記載されていませんが、同社は「不登校」「発達障がい」「低学力」「貧困」の4つの社会課題の解決を掲げています。持続的な事業成長と社会的価値創出の両立を基本方針とし、2026年4月には次世代デジタル学習サービス「Surala-i」のリリースを予定するなど、コンテンツのさらなる拡充を計画しています。

(4) 成長戦略と重点施策


EdTech市場の競争が激化する中、同社は新たな技術への迅速な適応と開発体制の構築を重点施策としています。次世代サービス開発を含む将来成長に向けた投資を継続し、社内開発スタッフの技術向上、生成AIの利活用・業務のDX化推進、ビッグデータを活かした商品開発に取り組んでいます。また、海外市場における実証事業や多言語対応教材の展開を通じたグローバル化も推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人」を提供価値の源泉と位置づけ、1.一人ひとりの能力発揮(採用・育成)、2.コラボレーションの促進(組織開発)、3.働きがい・働きやすさの担保(社内環境整備)の3つを柱としています。ITエンジニアやマーケティング人材の採用・育成を強化するほか、専門職種の評価制度や柔軟な異動制度を構築し、多様化するキャリア観に対応する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 38.4歳 3.7年 5,494,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 40.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 101.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(非正規雇用労働者) -


※正規および非正規労働者の男女賃金差異は有報には記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(51.5%)、管理職における女性登用率(40.0%)、全社研修実施数(2回)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業界環境の変化とEdTech市場の鈍化


GIGAスクール構想や生成AIの普及により市場は緩やかに拡大していますが、少子化による教育市場全体が縮小した場合や、市場ニーズの成長が著しく鈍化した場合には、同社グループの事業および業績に影響を与える可能性があります。

(2) 競合他社との競争激化


EdTech分野での新規参入企業や既存の同業他社との競争が激化しています。顧客の流出やコストの増加、また技術革新や生成AIへの対応が遅れた場合には、競争優位性が低下し業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 新サービス開発および設備投資負担


中長期的な成長に向けた新サービスの開発やシステムインフラへの設備投資を継続していますが、追加開発によるコスト増加や、想定した収益が得られずに減損損失が発生した場合には、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 情報管理とシステム障害


インターネットを通じてサービスを提供しているため、サイバー攻撃や自然災害などによるシステム停止リスクが存在します。また、顧客や従業員の個人情報の漏洩が発生した場合には、社会的信用の失墜につながるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。