**アクリート転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態**
※本記事は、アクリートの有価証券報告書(第12期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アクリートってどんな会社?
アクリートは法人向けSMS配信事業を主力とし、AIやセキュリティ分野の独自ソリューション開発も展開する企業です。
■(1) 会社概要
2014年5月、インディゴのSMS配信事業を新設分割し設立されました。同年9月に海外SMSアグリゲーター向けサービスを開始し、2018年7月に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場しました。近年は積極的なM&Aを展開し、2024年にズノー・メディアソリューション、2025年にズノーやフォーグローブを子会社化しています。
従業員数は連結185名、単体51名です。筆頭株主は同社設立時の分割元企業の取締役らが設立したBANA1号有限責任事業組合で、第2位は同社取締役の髙瀬真尚氏、第3位はポットラックとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| BANA1号有限責任事業組合 | 18.45% |
| 髙瀬真尚 | 6.05% |
| ポットラック | 5.42% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は株本幸二氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 株本幸二 | 代表取締役社長 | 丸紅に入社し、情報・不動産本部長やアルテリア・ネットワークス代表取締役社長CEOなどを歴任。2024年3月に同社代表取締役会長に就任し、同年8月より現職。 |
| 田中優成 | 取締役副社長 | トーメン(現豊田通商)に入社後、インディゴを経て同社へ。専務取締役や代表取締役社長兼営業統括本部長などを務め、2025年3月より現職。 |
| 高瀬真尚 | 取締役社長室長 | 放送作家として活動後、ジーワン専務取締役やズノー代表取締役などを経て、2024年9月に同社取締役に就任。その後現職。 |
| 山本敏晴 | 取締役経営管理本部長 | ヒューマックスやオートバイテル・ジャパンなどを経て、ズノー取締役やホリデー取締役に就任。2024年9月に同社社外取締役となり、同年10月より現職。 |
| 飯島敬生 | 取締役 | 陸上自衛隊生徒課程入隊後、レイテックやベルウェールなどを経てズノー・メディアソリューション取締役へ。2024年9月に同社取締役となり、2025年4月より現職。 |
| 畑野裕亮 | 取締役 | ウェイズ取締役社長やクリーク・アンド・リバー社を経て、2006年10月にフォーグローブを設立し代表取締役に就任。その後同社取締役へ就任。 |
社外取締役は、諌山弘高(諌山公認会計士事務所代表)、平尾潤一(エンビット代表取締役)、佐藤公亮(フェアネス法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コミュニケーション事業」「ソリューション事業」「投資・インキュベーション事業」を展開しています。
■(1) コミュニケーション事業
SMSをはじめとするメッセージングサービスを提供しています。国内の法人向けSMS配信サービスのほか、LINEミニアプリなどのSNS系メッセージングサービス、ベトナムでの海外メッセージングサービスを展開し、さらには学校や自治体向けのメール配信サービスも手掛けています。
顧客企業から配信数に応じた料金を受け取る収益モデルです。運営は主にアクリートが行い、ベトナムでの海外配信はVietGuys J.S.C.、メール配信サービスはテクノミックスが担当しています。
■(2) ソリューション事業
AIおよびセキュリティ分野を中心に、独自のソリューション開発や事業化を進めています。音声・顔画像分析を活用した「ANOTHER AI」、学校教育向けのIoTデバイス、GPUサーバー関連事業、さらに次世代セキュリティ技術の社会実装を展開しています。
サービスの導入・利用企業等からの販売・利用料が主な収益源です。運営はアクリートおよび、米国企業との合弁会社であるForward Edge-AI Japanが共同で推進しています。
■(3) 投資・インキュベーション事業
有望な開発系やAIベンチャーへの投資を通じたインキュベーション支援を行っています。投資先の育成に加えて、広告運用等のプロモーション支援やAI技術を活用した入札情報プラットフォーム「入札王」の運営、次世代メッセージ配信プラットフォームの開発を展開しています。
顧客企業からの広告運用手数料やシステム利用料などを収益源としています。運営はズノー・メディアソリューション、ズノー、フォーグローブのグループ各社が相互に連携して行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は概ね拡大傾向にあり、特に2025年12月期は積極的なM&Aの効果などにより88億円と大幅な増収を達成しています。経常利益は2022年12月期にピークを迎え一時減少しましたが、直近では5億円台まで回復しており、増収増益基調へと転じています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 28億円 | 62億円 | 54億円 | 63億円 | 88億円 |
| 経常利益 | 5億円 | 12億円 | 3億円 | 3億円 | 5億円 |
| 利益率(%) | 16.4% | 19.0% | 5.6% | 5.2% | 6.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 8億円 | 0.9億円 | 3億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い売上総利益も増加していますが、M&Aに伴う導入コストやのれん償却費などの負担増により、販売費及び一般管理費も増加しています。結果として営業利益率は前期から微増の6.0%となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 63億円 | 88億円 |
| 売上総利益 | 16億円 | 21億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.6% | 24.0% |
| 営業利益 | 3億円 | 5億円 |
| 営業利益率(%) | 5.2% | 6.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が5億円(構成比33%)、役員報酬が1億円(同9%)を占めています。売上原価は67億円で、大部分が通信事業者からの仕入高となっています。
■(3) セグメント収益
主力事業であるコミュニケーション事業は、厳しい価格競争の中においても配信通数の増加により安定した成長を維持しています。新たに本格稼働に向け準備を進めるソリューション事業や投資・インキュベーション事業においては、積極的な事業拡大により売上は増加したものの、先行投資の負担により営業損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| コミュニケーション事業 | 58億円 | 65億円 | 6億円 | 11億円 | 17.5% |
| ソリューション事業 | 4億円 | 12億円 | -0.3億円 | -0.3億円 | -2.8% |
| 投資・インキュベーション事業 | 1億円 | 11億円 | 0.0億円 | -0.2億円 | -1.6% |
| 連結(合計) | 63億円 | 88億円 | 3億円 | 5億円 | 6.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期のキャッシュ・フローは営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、一時的に営業CFがマイナスとなっているものの、将来成長に向けた投資活動とそれに伴う資金調達を積極的に行っている「勝負型」の局面にあると言えます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2億円 | -5億円 |
| 投資CF | -1億円 | -6億円 |
| 財務CF | -5億円 | 9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.5%となり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「超情報化社会におけるコミュニケート・プラットフォームカンパニー」の実現を目指しています。社会変化とともに現れる前例のない課題やDX化など激変するデジタル社会において、メッセージング手段を用いた社会課題の解決策を提供していくことを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
「セキュリティ×コミュニケーション×行動変容」を軸に、メッセージングを単なる送信手段ではなくコミュニケーションサービスとして再フォーカスし、新たな可能性を追求する姿勢を重視しています。多様な価値観を受け入れ、新たな価値を生み出す風土を醸成するため、他業種からの中途採用を含めた多様な人材の確保と育成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2025年2月に発表した中期経営計画「2025-2027」において、「SMS単一事業展開からの脱却」をテーマに掲げています。成長性指標である売上高対前年比率や、収益性指標である営業利益およびその対前年比率を重視しており、継続的な企業価値の向上を目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力であるSMS事業の顧客基盤を活用しつつ、RCSやSNSメッセージ市場など多様なメッセージングチャネルとの連携を強化しています。さらに、生成AIや耐量子計算機暗号(PQC)をはじめとするAI・セキュリティ分野の新サービス開発や、戦略的M&Aを含めた企業体制の再編による「収益構造改革」を重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な成長や企業価値向上のため、人材を最も重要な経営資源と位置付けています。高度な専門的知識や経験を有する多様な人材の確保・育成を目指し、各部門・職種に沿った人事評価制度の構築やeラーニングを用いた従業員教育を展開しています。さらに、在宅勤務や積立有給休暇制度など柔軟な働き方を実現する環境整備も進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.5歳 | 3.9年 | 6,728,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 29.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 8.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 54.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 54.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | - |
※同社は男性臨時雇用者がいないため、パート・有期労働者の男女間賃金格差を記載しておりません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) SMS配信市場の競争激化と単価下落
SMS配信サービス市場は利用用途の拡大により成長していますが、競合他社との価格競争により販売単価が下落傾向にあります。新規参入企業の増加によって競争がさらに激化した場合や、迷惑SMSの横行により配信の信頼性が損なわれた場合、事業の成長や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 携帯電話事業者や海外アグリゲーターへの依存
SMS配信サービスの提供には主要な携帯電話事業者との直接接続契約が前提となっており、契約内容の変更や送信単価の引き上げが生じた場合、事業運営に影響を与えます。また、海外SMSアグリゲーター向けゲートウェイサービスにおいても、顧客企業の動向や独自参入などにより収益が左右されるリスクがあります。
■(3) 情報セキュリティとシステム障害
顧客企業が保有する個人情報や機密情報を扱う事業の特性上、ランサムウェアや不正アクセス、人為的過失等によって情報漏洩が発生した場合、損害賠償や信用の失墜を招く恐れがあります。また、大量配信の負荷や自然災害等によるシステム障害の発生も、ブランドイメージの低下に直結する重大なリスクとして認識されています。



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