※本記事は、アクリートの有価証券報告書(第12期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アクリートってどんな会社?
法人向けSMS配信サービスのパイオニアであり、AIやセキュリティ領域への事業多角化を進めています。
■(1) 会社概要
2014年にインディゴのSMS配信事業を分割し設立されました。2018年に東証マザーズへ上場し、2022年にはベトナムのVietGuys J.S.C.を取得して海外展開を推進しています。直近ではズノー・メディアソリューションやズノー、フォーグローブなどを子会社化し、AIやセキュリティ分野へ事業領域を拡大しています。
筆頭株主はBANA1号有限責任事業組合で、第2位は同社取締役の高瀬真尚氏、第3位はポットラックです。同社グループの従業員数は連結で185名、単体で51名となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| BANA1号有限責任事業組合 | 18.45% |
| 高瀬真尚 | 6.05% |
| ポットラック | 5.42% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は株本幸二氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 株本幸二 | 代表取締役社長 | 1983年丸紅に入社し、情報・不動産本部長などを歴任。アルテリア・ネットワークス代表取締役社長CEOを経て、2024年3月にアクリート代表取締役会長に就任。同年8月より現職。 |
| 田中優成 | 取締役副社長 | 1993年トーメンに入社。インディゴを経て2017年にアクリートへ入社。セールス・マーケティング部門長を務め、2019年に代表取締役社長へ就任。2024年8月より現職。 |
| 高瀬真尚 | 取締役社長室長 | 1985年に放送作家として活動を開始。ジーワン、ズノーなどの設立を経て、ズノー・メディアソリューション代表取締役に就任。2024年9月にアクリート取締役に就任し、同年12月より現職。 |
| 山本敏晴 | 取締役経営管理本部長 | 1988年ヒューマックスに入社。オートバイテル・ジャパン等を経て2012年にズノー取締役に就任。2024年にアクリート社外取締役となり、同年10月より現職。 |
| 飯島敬生 | 取締役 | 1986年に陸上自衛隊に入隊。レイテック等を経てズノーに入社し、2014年にズノー・メディアソリューション取締役に就任。2024年9月にアクリート取締役へ就任し、2025年4月より現職。 |
| 畑野裕亮 | 取締役 | 1998年にウェイズを設立。クリーク・アンド・リバー社を経て、2006年にフォーグローブを設立し代表取締役に就任。2025年より現職。 |
社外取締役は、諌山弘高(諌山公認会計士事務所代表)、平尾潤一(インディゴ取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、コミュニケーション事業、ソリューション事業、投資・インキュベーション事業を展開しています。
■コミュニケーション事業
国内でのSMS配信サービスをはじめ、海外アグリゲーター経由のSMS配信やLINEミニアプリなどのメッセージングサービス、学校・自治体向けのメール配信サービスを提供しています。主に企業から一般ユーザーへの連絡・通知手段として利用されています。
収益源は配信通数に応じたサービス利用料などで、事業の運営はアクリートおよびテクノミックス、ベトナム子会社のVietGuys J.S.C.が行っています。
■ソリューション事業
AIやセキュリティ分野を中心に、独自ソリューションの開発と事業化を進めています。音声・顔画像分析を活用した「ANOTHER AI」や教育向けIoTデバイス、次世代セキュリティ技術の展開などを行っています。
企業や自治体などからカスタマイズサービス提供料やシステム販売による対価を受け取ります。運営はアクリートや、米国企業との合弁で設立したForward Edge-AI Japanなどが行っています。
■投資・インキュベーション事業
有望なAIベンチャー等への投資と事業育成支援を行うとともに、グループ各社と連携し、広告運用や入札情報のデータ構造化などマーケティング支援サービスを提供しています。
顧客企業からのプロモーション支援料やプラットフォーム利用料を収益源としています。事業の運営はズノー・メディアソリューション、ズノー、フォーグローブが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は概ね拡大傾向にあり、直近では87.9億円と大幅な増収を達成しています。経常利益は一時的に落ち込んだ時期もありましたが、足元では回復基調にあり、利益水準も向上しています。事業の多角化とM&Aの推進が売上の成長に寄与していることが伺えます。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 28.3億円 | 61.9億円 | 54.3億円 | 63.5億円 | 87.9億円 |
| 経常利益 | 4.6億円 | 11.8億円 | 3.1億円 | 3.3億円 | 5.3億円 |
| 利益率(%) | 16.4% | 19.0% | 5.6% | 5.2% | 6.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.4億円 | 8.4億円 | 0.9億円 | 2.5億円 | 4.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で大きく伸びており、売上総利益率も安定して推移しています。増収効果により営業利益も増加し、営業利益率は前期から改善しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 63.5億円 | 87.9億円 |
| 売上総利益 | 15.6億円 | 21.1億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.6% | 24.0% |
| 営業利益 | 3.3億円 | 5.3億円 |
| 営業利益率(%) | 5.2% | 6.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が5.3億円(構成比33%)、役員報酬が1.4億円(同9%)を占めています。また、売上原価のうち、仕入高が41.7億円(構成比92%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力であるコミュニケーション事業が安定した成長を牽引する中、ソリューション事業や投資・インキュベーション事業が大きく売上を伸ばしています。特に新規子会社の連結効果などにより、新規事業領域の売上構成比が急拡大しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| コミュニケーション事業 | 57.6億円 | 65.1億円 |
| ソリューション事業 | 4.5億円 | 12.0億円 |
| 投資・インキュベーション事業 | 1.4億円 | 10.8億円 |
| 連結(合計) | 63.5億円 | 87.9億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、SMS配信サービス等の事業活動から生み出されています。投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の成長に向けたサービス開発やM&A、新事業領域への研究開発等に充てられています。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己資金及び金融機関からの借入等により、これらの事業活動に必要な資金を調達しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2.1億円 | -5.0億円 |
| 投資CF | -1.0億円 | -5.8億円 |
| 財務CF | -4.7億円 | 9.3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
アクリートは「超情報化社会におけるコミュニケート・プラットフォームカンパニー」の実現を目指しています。社会変化とともに現れる前例のない情報社会の課題や変革、DX化に伴う激変するデジタル社会において、解決策を提供していくことを成長ドライバーと認識し、「セキュリティ×コミュニケーション×行動変容」を軸に、SMSをはじめとしたメッセージ手段を用いた社会課題解決への取り組みを推進しています。
■(2) 企業文化
アクリートは、激変するデジタル社会において、メッセージングを単なる配信手段ではなくコミュニケーションサービスとして再フォーカスし、新たな可能性を追求する姿勢を重視しています。また、多様な企業との提携やM&Aを通じてグループ各社が相互に補完し合う体制を強化し、シナジーの最大化を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中期経営計画[2025–2027]において「SMS単一事業からの脱却」を掲げています。AIテクノロジーを活用した事業の構築や、海外企業との提携・協業を行うなどの事業国際化を進めることで、多様なメッセージサービス展開への挑戦と、AI技術を含む独自のソリューションによる収益構造改革を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「ハード・アンド/プラス・サービス」を継続展開し、生成AIサービスの取り扱い開始することで、関連・協業可能な事業領域の拡大に取り組みます。また、RCS(リッチコミュニケーションサービス)やSNSメッセージ市場など、より幅広く顧客ニーズに対応することで新たな市場を開拓し、独自のマーケットのシェアを確保することが重要な成長戦略であると位置づけています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な価値観を受け入れ、新たな価値を生み出す風土を醸成するため、他業種からの中途採用を行い幅広い人材を対象とした採用活動に取り組んでいます。また、各部門・職種に沿った人事評価制度の構築や、社内でのeラーニング等を用いた情報セキュリティや個人情報保護等を中心に従業員教育を展開しており、中長期的な人材育成に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.5歳 | 3.9年 | 6,728,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 29.0% |
| 男性育児休業取得率 | 8.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 54.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 54.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) SMS配信市場の変化と競争激化
SMS配信サービス市場は成長を続けているものの、新たな法的規制の導入や技術革新による代替サービスの普及などにより、市場が想定通りに発展しないリスクがあります。また、市場拡大に伴う新規参入企業の増加によって競争が激化した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 携帯電話事業者との契約継続
同社は国内の主要な携帯電話事業者4社と直接接続契約を締結してSMS配信サービスを提供しています。これは事業活動の前提となる重要な契約であり、何らかの事情により契約の変更や継続が困難となった場合、同社の事業運営および業績に重大な影響を与える可能性があります。
■(3) 情報セキュリティとシステム障害
顧客企業の個人情報や機密情報を扱う事業性質上、情報セキュリティ体制の強化に努め、ISO等の認証を取得しています。しかし、不正アクセスや人為的ミスによる情報漏洩が発生した場合、損害賠償や信用の失墜を招く恐れがあります。また、大規模なシステム障害が発生した場合も同様に事業に影響を及ぼす可能性があります。



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