テノ.ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テノ.ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テノ.ホールディングスは、東京証券取引所スタンダード市場および福岡証券取引所に上場する企業です。認可保育所や受託保育所を運営する保育事業を主力とし、介護事業や料理教室・少額短期保険を扱う生活関連支援事業も展開しています。直近の業績は、新規施設の開設や公定価格改定等の寄与により増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社テノ.ホールディングスの有価証券報告書(第11期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. テノ.ホールディングスってどんな会社?


同社は、認可保育所や事業所内保育所の運営を主力とし、女性のライフステージを支援する事業を展開しています。

(1) 会社概要


1999年に女性のライフステージ支援を目的として設立され、ベビーシッターサービス等の提供を開始しました。その後、保育所の直営や受託運営へと事業を拡大し、2015年に持株会社体制へ移行して同社を設立しました。2018年に株式上場を果たし、近年はM&A等を通じて介護事業への参入と拡大を進めています。

従業員数は連結で2110名、単体で37名です。大株主の状況は、筆頭株主が代表取締役社長の資産管理会社である夢源で、第2位が同氏である池内比呂子氏となっており、創業関係者による保有比率が高い構成です。第3位には事業会社であるカナモリコーポレーションが名を連ねています。

氏名 持株比率
夢源 32.83%
池内 比呂子 15.52%
カナモリコーポレーション 8.18%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は池内比呂子氏が務めています。監査等委員である取締役5名全員が社外取締役であり、経営の透明性を高めています。

氏名 役職 主な経歴
池内 比呂子 代表取締役社長 1981年ジャーディン・マセソンアンドカンパニー入社。1999年ドウイット設立代表取締役。2015年同社代表取締役社長に就任。複数のグループ会社代表を兼務し、西部ガスホールディングスの取締役も務める。
岡田 基司 取締役管理本部長 2002年国際証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。2005年みずほ銀行入行。2021年同社に入社し、管理本部長に就任。2022年より取締役管理本部長。グループ会社の取締役等を兼務。
一番ケ瀨 達吉 取締役 1987年福岡銀行入行。同社執行役員や熊本銀行の取締役常務執行役員等を歴任。2025年同社に入社し、グループ会社の取締役を経て2026年より同社取締役に就任。


社外取締役は、古賀光雄(古賀マネージメント総研代表取締役)、柳瀬隆志(カホエンタープライズ代表取締役会長)、大崎麻子(国際協力・ジェンダー・スペシャリストとして独立)、本郷譲(元JR九州リテール代表取締役社長)、穂束洋一(元九州債権回収取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「保育事業」「介護事業」「生活関連支援事業」および「その他」事業を展開しています。

保育事業


待機児童解消等の社会課題に対応し、認可保育所や小規模認可保育所を直営で展開しています。また、従業員の仕事と子育ての両立支援を目的として、病院や企業等の事業所内保育所、学童保育所などの受託運営も手掛けています。

主に国や自治体からの委託費等の給付や、委託企業からの業務委託費、利用者からの利用料を収益源としています。運営はテノ.コーポレーションおよびオフィス・パレットが行っています。

介護事業


高齢化による介護サービス需要や、障がい福祉分野での社会的ニーズに応えるサービスを提供しています。住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、デイサービス、児童発達支援・放課後等デイサービスを運営しています。

利用者へのサービス提供を通じて、介護保険法令に定める金額や医療保険の診療報酬に準じた利用料等を受け取ります。運営はフォルテ、飛翔、愛翔会、ウイッシュ、子育てサポートがそれぞれ担っています。

生活関連支援事業


女性やその家族の多様な困りごとを解決し、幸福な生活を送れるよう支援することを目的としています。手づくり総合教室の運営と、賃貸住宅の入居者に対して生活の安心を提供する少額短期保険商品の開発・販売を行っています。

料理教室の利用者からの講義サービス料や商品販売代金、および不動産賃貸・管理会社等を通じて販売する家財保険の保険料を収益源としています。ホームメイドクッキングとセーフティージャパン・リスクマネジメントが運営しています。

その他


女性の育児・家事・介護を包括的に支援する家庭総合サービスを提供しています。保育人材の派遣、ベビーシッターやハウスサービスの提供、保育士等養成講座の運営、結婚相談所事業、保活プラットフォームサイトの運営などを行っています。

派遣先企業からの人材派遣料、個人利用者からのベビーシッター・ハウスサービス等の利用料、講座受講料などを収益としています。これらの事業は主にテノ.コーポレーションが運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、新規施設の開設やM&Aを通じた事業規模の拡大により、売上高は継続的な成長を遂げています。一方で利益面は先行投資や減損損失の計上等により一時的に赤字となる年度もありましたが、直近では増収効果や公定価格の改定等が寄与し、大幅な増益による黒字回復を果たしています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 115億円 121億円 146億円 160億円 181億円
経常利益 5億円 2億円 2億円 2億円 6億円
利益率(%) 4.0% 1.3% 1.3% 1.1% 3.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 1億円 1億円 1億円 -5億円 1億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で堅調に拡大しており、売上総利益率も改善傾向にあります。事業規模の拡大に伴い売上原価や販管費も増加していますが、増収効果が経費増を上回り、営業利益は前期から大幅に増加し、収益性の向上が確認できます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 160億円 181億円
売上総利益 24億円 30億円
売上総利益率(%) 14.9% 16.4%
営業利益 2億円 6億円
営業利益率(%) 1.2% 3.5%


販売費及び一般管理費(23億円)のうち、給料及び手当が6億円(構成比26%)、採用費が3億円(同14%)を占めており、労働集約型事業としての人的投資が費用の中心となっています。

(3) セグメント収益


主力の保育事業は公定価格の改定や新規受託の獲得により増収増益を牽引しています。第二の柱である介護事業はM&A効果と新規開設により売上が大きく伸長し、黒字転換を果たしました。一方、生活関連支援事業は料理教室や少額短期保険の顧客減により減収となりましたが、経費削減により赤字幅は縮小しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
保育事業 122億円 136億円 8億円 12億円 9.1%
介護事業 11億円 20億円 -0.7億円 0.5億円 2.6%
生活関連支援事業 24億円 23億円 -0.9億円 -0.5億円 -2.0%
その他 2億円 2億円 - 0.1億円 3.5%
調整額 - - -5億円 -6億円 -
連結(合計) 160億円 181億円 2億円 6億円 3.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


キャッシュ・フローの状況を見ると、営業活動で得た資金の範囲内で投資を行い、さらに借入金の返済にも充てている「健全型」のパターンを示しています。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も17.3%で市場平均を下回っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 7億円 10億円
投資CF -9億円 -5億円
財務CF 5億円 -2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念として「私たちは、女性のライフステージを応援します。」「私たちは、相手の立場に立って考えます。」「私たちは、コンプライアンスを推進します。」「私たちは、事業を通して社会貢献致します。」を掲げています。女性が育児や介護をしても働き続けられる社会を目指し、「手の」ぬくもりで安心する社会を創造するという創業からの想い(Purpose)を社名に込めています。

(2) 企業文化


女性のライフステージ支援を根幹とし、たくさんの選択肢の中から「より私らしく」と願う女性たちに対してサービスを提供することを事業コンセプトとしています。また、対人援助における「人のぬくもり」を大切にしつつ、多様性を尊重して他者と協力しビジョン実現に貢献できる人材や、自ら考え判断し行動できる自律型人材を育成するプロフェッショナル集団としての文化を重んじています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「tenoVISION2030」のもと、最終年度の2030年12月期には連結売上高300億円、営業利益率5%以上の達成を目指しています。その実現に向けた「中期経営計画(2026年~2028年)」では、最終年度の2028年12月期に以下の目標を掲げています。

* 売上高:232億円
* 営業利益:9億円

(4) 成長戦略と重点施策


保育事業では、専門性の高い保育実践を通じて「選ばれ続ける園」としての質を追求し、学童保育の受託拡大も図ります。また、介護事業を第二の柱へ成長させ、将来的には全世代をサポートする「ワンストップの多世代支援体制」を構築します。さらに、AIやDXによる業務プロセス省力化を徹底し、収益性の抜本的な強化による強靭な財務構造の確立と、M&Aによる周辺領域への事業拡大を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


労働集約型の事業特性から、保育士や介護士等の優秀な人材の確保と定着を最重要課題と位置付けています。多様な働き方のためのキャリアパス設計、研修機会の拡充によるスペシャリスト育成、人事評価制度の見直し等を通じた総合的な処遇改善を推進しています。また、保育園と本部が一体となり職員の働きがい向上に取り組む「チームエンゲージメントセンター(TEC)」を立ち上げ、定着率向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.5歳 4.5年 5,217,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 36.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 45.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 少子化による市場縮小リスク


同社は主に0歳児から5歳児を対象とした保育サービスを展開しています。少子化が急速に進行し、保育市場が著しく縮小した場合には、運営する施設への入所児童数の減少を招き、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 保育・介護人材の確保と定着


各種サービスの提供には、保育士、調理師、看護師、介護士等の専門的人材が不可欠です。人材紹介会社との取引拡大や自社採用の強化を進めていますが、施設数の増加に対して人材確保が追い付かない場合、事業計画の達成が困難となり、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 保育・介護施設における許認可の取消等


運営する保育所や介護施設は、児童福祉法や介護保険法等に基づき行政機関からの許認可等を受けています。安全管理の徹底やコンプライアンス推進に努めていますが、万が一法令違反や重大な事故等により改善命令や許認可の取消等を受けた場合、事業運営が制約されるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。