イーエムネットジャパン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イーエムネットジャパン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

グロース市場上場。中小企業向けを中心としたインターネット広告代理店事業を展開。検索連動型広告やSNS広告の運用からクリエイティブ制作までワンストップで提供する。直近の業績は、ソフトバンクとの協業拡大などにより増収と営業増益を達成した一方、特別損失の計上等により最終赤字となっている。


※本記事は、株式会社イーエムネットジャパンの有価証券報告書(第13期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イーエムネットジャパンってどんな会社?


インターネット広告市場に着眼し、中小企業向けを中心にデジタルマーケティング支援を提供する企業です。

(1) 会社概要


2007年に韓国EMNET INC.の日本支社として事業を開始し、2013年に日本法人として設立されました。2014年に事業譲渡を受け本格稼働し、主要プラットフォームの認定代理店として実績を蓄積しました。2018年に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場し、2021年にはソフトバンクと資本業務提携を結んで同社の子会社となっています。

従業員数は単体で130名です。筆頭株主は事業会社であり親会社のソフトバンクで、第2位は資産管理業務を行う韓国の金融機関(EMNET INC.が実質所有)、第3位も韓国の金融機関となっています。

氏名 持株比率
ソフトバンク 40.91%
KSD-MIRAE ASSET SECURITIES 20.43%
KSD-KB. 8.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山本臣一郎氏が務めています。社外取締役比率は42.8%です。

氏名 役職 主な経歴
山本臣一郎 代表取締役社長 1995年コーパック・インターナショナル入社。2010年EMNET INC.入社。2014年イーエムネットジャパン常務取締役などを経て、2016年11月より現職。
藤平大輔 取締役 1999年ソニー入社。2004年ソフトバンクBB入社。ソフトバンクの法人統括デジタルソリューション本部長やグループ法人戦略室室長などを歴任し、2021年8月より現職。
福山広樹 取締役 2007年オーバーチュア入社。ヤフー(現LINEヤフー)などで営業本部長を歴任。現在LINEヤフーやソフトバンクの要職を兼務し、2025年3月より現職。
中西優友 取締役 1999年DDI東京ポケット電話入社。ソフトバンクの財務統括や法人事業企画推進統括部長を歴任。IDCフロンティア取締役などを経て、2026年3月より現職。


社外取締役は、西村訓仁(元インフォーマ グローバル マーケット ジャパン社長)、上野正博(マナ社長)、落合出(医療法人社団ミッドタウンクリニック医師)です。

2. 事業内容


同社グループは、「インターネット広告事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

同社は、検索連動型広告(リスティング広告)や運用型ディスプレイ広告を主力とし、ソーシャルメディア広告、動画広告など多様なデジタルマーケティングサービスを提供しています。主に中小企業を顧客とし、ターゲットユーザーのペルソナ構築から媒体選定、広告運用、アクセス解析、改善までを担うほか、インハウス支援やクリエイティブ制作も行っています。

収益源は、広告主から受け取る広告掲載料および運用・制作に伴う手数料です。一人の担当者が営業から運用・改善までを一貫して行う専任制と、営業と運用を分ける分業制を敷いて顧客ニーズに対応しています。事業の運営は同社が単体で行っており、媒体費を控除した純額で収益を認識する代理人取引も含まれます。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の業績を見ると、収益認識に関する会計基準の適用以降、営業収益は概ね横ばいから増加傾向で推移しています。利益面では経常利益が減少傾向にありましたが、直近の事業年度ではソフトバンクとの協業拡大などにより増益に転じました。一方で、直近事業年度の当期利益については、経営幹部の不正行為に関連する貸倒引当金繰入額などの特別損失を計上した影響で大幅な赤字となっています。

項目 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
営業収益 15億円 14億円 13億円 16億円
経常利益 2.4億円 1.2億円 1.0億円 1.8億円
利益率(%) 16.3% 8.8% 7.9% 11.3%
当期利益 1.8億円 0.7億円 0.1億円 -4.5億円

(2) 損益計算書


損益構成を見ると、直近の事業年度では主力のインターネット広告事業における営業体制の強化や、親会社であるソフトバンクとの協業拡大が奏功し、増収となっています。これに伴い営業利益も大幅に増加し、本業の収益力は改善しています。販売費及び一般管理費については、人材投資を継続していることなどから営業費用の増加が見られます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 13億円 16億円
営業利益 0.9億円 1.6億円
営業利益率(%) 7.0% 9.8%


営業費用のうち、給料及び手当が6.7億円(構成比46%)と最も大きな割合を占め、次いで賞与引当金繰入額が0.5億円(同4%)、退職給付費用が0.3億円(同2%)となっています。

(3) セグメント収益


同社はインターネット広告事業の単一セグメントであるため、全社の業績推移となります。直近の事業年度においては、中小企業の広告需要に不透明感があるものの、営業強化により広告代理店業の営業収益が拡大しました。さらに、資本業務提携に基づくソフトバンクへの営業収益も好調に推移し、前年同期比で大幅な増収を達成しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
インターネット広告事業 13億円 16億円
連結(合計) 13億円 16億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的となる末期型の傾向を示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -1.8億円 -1.9億円
投資CF -2.3億円 -0.2億円
財務CF -1.1億円 -1.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は前期実績で0.9%と市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も33.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、設立以来「クライアントと共に歩む企業」という企業理念を掲げています。また、「クライアント企業へのインターネット広告に関する最新の情報と広告運用の提供」と「日本のデジタルマーケティング業界における専門家の育成」という2つのビジョンを設定し、顧客のデジタルマーケティング課題の解決を通じた利益向上を目指しています。

(2) 企業文化


「Beyond the Internet Advertising」というコーポレートスローガンを掲げ、インターネット広告の枠を超えた顧客満足度の高いサービス展開を目指す文化を持っています。また、業界の課題である人材不足に対応するため、新卒を中心に積極的に採用し、短期間で即戦力となる専門家を育成する独自の教育プログラムを構築する風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


継続的な企業価値向上を達成するために、営業収益および営業利益を重要な経営指標と捉え、これらを中長期的に成長させていくことを基本方針としています。また、利益獲得の効率性を測る指標として「営業系社員の一人当たり営業収益」も重視しており、各指標の改善と向上に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


主力サービスである検索連動型広告や運用型ディスプレイ広告に加え、動画広告への注力を強化しています。この戦略の一環として生成AIを積極的に活用し、ペルソナや広告クリエイティブの自動生成により配信効率と成果の向上を図ります。また、ソフトバンクとの協業による新規顧客の開拓や、内部統制システムの実効性向上によるガバナンスの再構築も進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


業界の変化に対応するため、生成AI等の最新技術を活用できる人材の育成に投資しています。業務を通じたOJTによる実践経験と、社内勉強会や外部研修による学びの機会を組み合わせた育成環境を提供しています。また、在宅勤務とオフィス勤務の併用や柔軟な出勤時間の選択、育児休業の取得促進など、多様な従業員が長く定着し活躍できる社内環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 28.8歳 4.6年 5,095,000円


※平均年間給与は賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 48.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.0%
男女賃金差異(正規雇用) 76.8%
男女賃金差異(パート・有期) 1.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(56.3%)、男性従業員比率(43.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネット広告市場の競争激化と技術革新
インターネットビジネス業界は生成AI等の新技術の進歩や新サービスの導入が相次ぎ、変化が激しい環境にあります。同社は新技術の導入や人材確保に努めていますが、環境変化への対応が遅れた場合、サービスの陳腐化や競争力の低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定媒体運営会社への依存
同社の事業は、媒体運営会社からの広告枠の仕入れに依存しています。特にGoogle広告およびFacebook広告・Instagram広告の取次額への依存度が高く、媒体費総額の約7割を占めています。これらの企業の方針変更や契約更新の有無が、同社の事業活動に影響を与えるリスクがあります。

(3) 生成AIの利用に関連する情報セキュリティリスク
同社は生成AIを活用して業務効率化を目指しており、利用ガイドラインの策定などガバナンス強化に努めています。しかし、社会的な規制強化が進んだ場合のサービスレベル低下や、AI利用に起因する事故による営業秘密やプライバシーデータの漏洩、権利侵害が発生した場合、損害賠償や信用低下を招く恐れがあります。

(4) 経営幹部の不正と内部管理体制の強化
同社では元常務取締役CFOによる会社資金の不正送金行為が発覚し、第三者委員会による調査で内部統制等に重要な不備が確認されました。取締役会への報告ルートの見直しや監査体制の連携強化など再発防止と信頼回復に努めていますが、訴訟その他の請求が発生した場合、社会的信用や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。