イーエムネットジャパン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イーエムネットジャパン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イーエムネットジャパンは東京証券取引所グロース市場に上場し、運用型を中心としたインターネット広告事業を展開する企業です。直近の業績では、代理店業の営業強化や親会社のソフトバンクとの協業拡大により増収増益を達成しましたが、元役員の不正行為による特別損失計上の影響で最終赤字を計上しています。


※本記事は、株式会社イーエムネットジャパン の有価証券報告書(第13期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イーエムネットジャパンってどんな会社?


インターネット広告の戦略から運用・分析・改善までをワンストップで支援する企業です。

(1) 会社概要


同社は、韓国のオンライン広告代理店であるEMNET INC.の日本支社から事業譲渡を受ける形で、2013年4月に設立されました。その後、2018年9月に東京証券取引所マザーズ市場(現・グロース市場)へ上場しています。2021年6月にはソフトバンクによる株式の公開買付けを通じて、同社の連結子会社となりました。

従業員数は単体で130名です。筆頭株主は親会社であり事業提携先でもあるソフトバンクで、第2位は以前の親会社である韓国のEMNET INC.が実質的に所有する口座となっています。

氏名 持株比率
ソフトバンク 40.91%
KSD-MIRAE ASSET SECURITIES(常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支店) 20.43%
KSD-KB.(常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支店) 8.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山本臣一郎氏が務めており、社外取締役比率は約43%です。

氏名 役職 主な経歴
山本臣一郎 代表取締役社長 1995年コーパック・インターナショナル入社。ダブルクリック等を経て2010年EMNET INC.入社。2014年より同社常務取締役等を歴任し、2016年11月より現職。
藤平大輔 取締役 1999年ソニー入社。2004年ソフトバンク入社。2021年よりソフトバンク法人統括デジタルソリューション本部本部長等を兼任し、2021年8月より現職。
福山広樹 取締役 2007年オーバーチュア入社。LINEヤフー等を経て2025年3月より現職。ソフトバンクの法人統括デジタルマーケティング本部広告事業統括部長等を兼任。
中西優友 取締役 1999年DDI東京ポケット電話入社。ソフトバンク等を経て2026年3月より現職。ソフトバンクの財務統括経営企画本部法人事業企画推進統括部長等を兼任。


社外取締役は、西村訓仁(元インフォーマ・グローバル・マーケット・ジャパン社長)、上野正博(元ダブルクリック社長)、落合出(医療法人社団ミッドタウンクリニック医師)です。

2. 事業内容


同社グループは、「インターネット広告事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

インターネット広告事業


検索エンジンに表示される検索連動型広告(リスティング広告)や運用型ディスプレイ広告、ソーシャルメディア広告などを提供しています。顧客企業のペルソナ構築から仮説立案、最適な媒体選定、日々の運用やアクセス解析に至るまで、広告効果を最大化するためのPDCAサイクルを一貫して支援しています。

主な収益源は、広告主から受け取る広告掲載料から媒体運営会社(GoogleやLINEヤフーなど)へ支払う媒体費を控除した代理店手数料や、広告クリエイティブの制作費、インハウス支援のコンサルティング費用などです。事業の運営は、イーエムネットジャパン単体で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


収益認識基準の変更が反映された直近4期間の推移を見ると、営業収益は13億円から15億円台で推移しています。経常利益は一時減少したものの、当期は大幅な増益に転じました。一方、当期は元役員の不正資金流用に伴う引当金等の特別損失を計上した影響で、最終赤字となっています。

項目 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
営業収益 15億円 14億円 13億円 16億円
経常利益 2億円 1億円 1億円 2億円
利益率(%) 16.3% 8.8% 7.9% 11.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 0.7億円 0.1億円 -4億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、営業収益は前期比で増加傾向にあり、それに伴って営業利益も大きく増加しています。親会社であるソフトバンクとの協業拡大などが収益の成長に寄与しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業収益 13億円 16億円
営業利益 0.9億円 2億円
営業利益率(%) 7.0% 9.8%


営業費用(14億円)のうち、給料及び手当が7億円(構成比46%)を占めており、専門性の高い人材の確保・育成に対する投資が主なコスト要因となっています。

(3) セグメント収益


同社はインターネット広告事業の単一セグメントであるため、売上全体が当該事業によるものです。当期は、中小企業向けの広告需要に一部弱さが見られたものの、代理店業の営業強化やソフトバンクとの協業拡大により、営業収益が大きく増加しました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
インターネット広告事業 13億円 16億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CF、投資CF、財務CFのすべてがマイナスとなっており、本業・投資・財務いずれも現金が流出している末期型の状態です(※ただし当期は元役員の不正資金流用や関連する引当金設定等、特殊要因が強く影響しています)。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -2億円 -2億円
投資CF -2億円 -0.2億円
財務CF -1億円 -1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されていませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


設立以来、「クライアントと共に歩む企業」という企業理念を掲げています。また、「クライアント企業へのインターネット広告に関する最新の情報と広告運用の提供」と「日本のデジタルマーケティング業界における専門家の育成」という2つのビジョンを掲げ、顧客の利益向上を図る戦略的パートナーとしての役割を追求しています。

(2) 企業文化


コーポレートスローガン「Beyond the Internet Advertising」のもと、インターネット広告事業以外の新たなビジネスも展開し、顧客満足度の高いサービスを追求する文化があります。また、変化の激しい業界環境に対応できるよう、社員が自らの意思で専門知識や最新情報を吸収し、自由な発想力を獲得できる環境づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


継続的な企業価値向上を達成するため、中長期的に成長させていく基本的な経営指標として「営業収益」および「営業利益」を掲げています。また、利益獲得の効率性を測る指標として「営業系社員の一人当たり営業収益」を重視しており、これらの指標の継続的な改善・増加に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


主力である検索連動型広告や運用型ディスプレイ広告に加え、ソーシャルメディア広告や需要が高まる動画広告への注力を強化します。特に、生成AIを活用した広告クリエイティブの自動生成やペルソナの自動生成を積極的に進め、サービスの効率性と成果の両立を目指します。また、ソフトバンクとの協業による新規クライアントの開拓を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業成長の要である人材の確保と定着を最重要課題と位置づけ、新卒を中心に積極的な採用を行っています。業務経験と定期的な全社勉強会などの研修を組み合わせた育成プログラムを提供し、生成AI等の最新デジタル技術を活用できる人材を育成します。また、在宅勤務や時差出勤、時短勤務制度の導入により、柔軟な働き方を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 28.8歳 4.6年 5,095,000円

※平均年間給与は賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 48.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.0%
男女賃金差異(正規雇用) 76.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 1.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新と市場環境の変化

インターネット広告業界は生成AIなどの新技術の進歩が早く、これらへの対応が遅れた場合、サービスの陳腐化や競争力の低下を招く恐れがあります。また、景気後退やインフレ等により広告主が広告投資を抑制した場合、収益に直接的な影響が及ぶ可能性があります。

(2) 特定の媒体運営会社への依存

同社の事業はGoogleやMetaなどの主要な媒体運営会社からの広告枠の仕入れに大きく依存しており、上位2社で媒体費総額の7割以上を占めています。これらの企業による事業方針の変更や契約更新の内容によっては、事業活動や業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 法的規制と情報セキュリティ

広告内容に関連して「景品表示法」や「薬機法」等の法規制に抵触するリスクがあり、審査体制の不備によって信用失墜を招く可能性があります。また、顧客の個人情報の漏洩や、生成AIの活用に伴う外部への情報漏洩・権利侵害事故が発生した場合、損害賠償請求等の対象となるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。