※本記事は、アルーの有価証券報告書(第23期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アルーってどんな会社?
人材育成事業を主力とし、教室型研修からeラーニングまで企業の組織課題を解決するサービスを提供しています。
■(1) 会社概要
同社は2003年に人材育成サービスの提供を目的に設立されました。2006年に現在のアルーへ社名を変更し、2018年に東証マザーズに上場しました。2019年にクラウド型eラーニングシステム「etudes」事業を譲受したほか、近年はクインテグラルなどを子会社化し事業規模を拡大しています。
現在、同社グループの従業員数は連結で198名、単体で153名です。筆頭株主は創業者の落合文四郎氏で、第2位は同氏の資産管理会社であるフォーティーシクサーズ、第3位は個人の新井友行氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 落合文四郎 | 31.45% |
| フォーティーシクサーズ | 17.34% |
| 新井友行 | 3.92% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は落合文四郎氏が務めており、社外取締役の比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 落合文四郎 | 代表取締役社長 | 2001年ボストン・コンサルティング・グループ入社。2003年同社設立より現職。 |
| 池田祐輔 | 取締役執行役員 | 2001年A.T.カーニー入社。同社設立時より取締役。各事業部長を経て現職。 |
| 稲村大悟 | 取締役執行役員 | 2002年朝日監査法人入所。2006年同社入社。コーポレート部長等を経て現職。 |
社外取締役は、西立野竜史(元ボストン・コンサルティング・グループ・現NEUTRON社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「人材育成事業」の単一セグメントのもと、複数のサービスを展開しています。
■(1) 法人向け教育
新人・若手や管理職向けに、独自のカリキュラムに基づくビジネススキル研修やマインド研修、またアジア各国の拠点と連携したグローバル人材育成研修やオンライン英会話サービスを提供しています。国内外の官公庁や民間企業を対象に、アセスメント等による育成成果の可視化や職場での定着までを支援しています。
研修プログラムごとに法人顧客と契約を締結し、研修の実施対価として収益を得ています。運営は主にアルーや子会社のクインテグラルなどが担当し、外部の認定講師も起用して顧客のニーズに合わせた納品マネジメントを行っています。
■(2) etudes
数人から数十万人まで利用可能なクラウド型eラーニングシステム「etudes」を提供しています。PCやスマートフォンなど様々な端末からインターネットを介して多彩な教材の配信が可能であり、使いやすさを追求したラーニングマネジメントシステムとして多種多様な形での研修提供を実現しています。
システムの月額利用料や保守運用サービスなどのプラットフォーム提供による継続的な課金に加え、顧客の要望に応じたコンテンツ制作物の納品によって収益を得ています。当事業の運営はアルーが行っています。
■(3) その他(海外教室型研修)
海外の現地法人向けに、日本人駐在員や現地従業員を対象とした教室型研修を提供しています。アルーの教室型研修を基にした独自のカリキュラムを用い、専門チームが市場や顧客企業のニーズに合わせたカスタマイズや、組織課題に対する総合的なサポートを行っています。
法人顧客との契約に基づき、研修の実施対価として収益を得ています。運営は中国の艾陸企業管理諮詢やシンガポールのALUE SINGAPORE PTE. LTD.など、海外の連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が堅調に拡大を続けており、当期は過去最高の36億円を突破しています。一方、利益面は積極的な事業投資などの影響で前期に一時的な赤字を計上しましたが、当期は利益創出構造への転換やM&Aの効果が寄与し、大幅な黒字回復を果たしています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 24.0億円 | 27.7億円 | 30.3億円 | 30.9億円 | 36.4億円 |
| 経常利益 | 2.8億円 | 2.3億円 | 0.8億円 | -0.7億円 | 3.6億円 |
| 利益率(%) | 11.7% | 8.2% | 2.8% | -2.2% | 9.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.8億円 | 1.7億円 | 0.6億円 | -1.0億円 | 2.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益も拡大して粗利率は改善傾向にあります。また、前期の営業赤字から当期は黒字へと大きく改善しており、事業成長に必要な投資に絞り込むなどの機動的なコスト管理が奏功しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 30.9億円 | 36.4億円 |
| 売上総利益 | 18.3億円 | 22.8億円 |
| 売上総利益率(%) | 59.4% | 62.6% |
| 営業利益 | -0.6億円 | 3.5億円 |
| 営業利益率(%) | -2.1% | 9.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が9.5億円(構成比49%)と大きな割合を占めています。また、売上原価においては、外注講師費が4.4億円(同37%)、労務費が4.1億円(同35%)を占めており、人材育成という事業特性を反映したコスト構造となっています。
■(3) セグメント収益
主力サービスである法人向け教育は、新人導入研修の大型案件受注や子会社化の影響で大きく売上を伸ばしています。etudes事業も単価向上の効果により堅調に推移しましたが、海外教室型研修は一部子会社での受注低調により減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 法人向け教育 | 25.4億円 | 30.6億円 |
| etudes | 3.7億円 | 4.4億円 |
| 海外教室型研修 | 1.8億円 | 1.4億円 |
| 連結(合計) | 30.9億円 | 36.4億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態にあります。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.4億円 | 5.4億円 |
| 投資CF | -2.2億円 | -0.7億円 |
| 財務CF | 0.8億円 | 0.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.6%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も58.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「夢が溢れる世界のために、人のあらゆる可能性を切り拓きます。- all the possibilities -」というMissionを掲げています。あらゆる人の可能性を信じ、それを切り拓くサポートをする存在として、様々な業界や企業で活躍する人材を人材育成事業によって支援することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
「育成の成果にこだわる」ことをテーマに、個人のエネルギーの湧出と会社の方向性に向けて協働することを重視しています。「価値を創り出す意思」と「人」を根幹に据え、チームとして多様性を受容しながら、一つの組織としての連帯感を持つ文化の醸成を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
「アジア人材育成No.1となる、事業創造と人づくりで継続成長するグローバル企業」というVisionを掲げ、お客様に支持される事業によって継続的に成長することを目指しています。翌連結会計年度の数値目標として以下を掲げています。
・売上高:39.3億円
・売上高成長率:8.2%
・営業利益:4.1億円
・営業利益率:10.4%
■(4) 成長戦略と重点施策
利益創出構造への転換と企業価値向上に向けて、大企業向けのソリューション強化やLMSプラットフォームの利用促進によるetudes事業の拡大に注力しています。また、熟達した社員の関与を深めるトータルコンサルティングを通じて顧客単価の向上を図るとともに、人材育成領域や周辺事業におけるM&Aを推進し、グループシナジーを最大化しながら非連続な成長を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
個人のエネルギーの湧出と会社の方向性に向けた協働の両立により提供価値を高めることを人的資本経営の基本戦略としています。「個々人と組織としての仕事の熟達」「長く働ける環境づくり」「組織ぐるみで育てる文化づくり」「チームとして価値創造する文化づくり」の4つを方針とし、一人ひとりが物心両面で安心して働ける環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 39.2歳 | 5.8年 | 7,040,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 22.0% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 70.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 88.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合の激化
社会人を対象とした人材育成や教育研修事業には多数の企業が参入しており、品質や価格競争が激化しています。ニーズに合わせたカスタマイズ力や現場での定着支援という同社の優位性が維持できなくなった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外関連サービスのリスク
アジア圏を中心に海外派遣研修や現地向けの教室型研修を展開しています。安全確保や危機管理体制を講じていますが、所在国でのテロや自然災害、法令改正など外部環境の急激な変化が生じた場合、事業継続が困難となる可能性があります。
■(3) 講師・コーチの確保
高品質な研修を提供するためには、スキルと経験を備えた講師や、英会話指導ができる優秀なコーチの確保が不可欠です。雇用情勢の変化や報酬水準の上昇などにより求める人材を確保できなくなった場合、サービス提供に支障をきたす恐れがあります。



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