日東ベスト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日東ベスト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の食品メーカー。冷凍食品、日配食品、缶詰等を製造・販売し、給食や外食産業向けに強みを持ちます。直近の業績は、価格改定や日配食品部門の好調により売上高559億円(前期比2.9%増)と増収でしたが、原材料価格の高騰等の影響で経常利益は5.1億円(同6.5%減)の減益となりました。


※本記事は、日東ベスト株式会社 の有価証券報告書(第87期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日東ベストってどんな会社?

業務用冷凍食品や日配食品、缶詰等を展開する食品メーカーです。学校給食や病院食等の分野で実績があります。

(1) 会社概要

1948年に日東食品製造として設立され、1968年に冷凍食品部を発足しました。1994年にグループ6社を吸収合併し、現社名の日東ベストへ商号変更しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2016年にはベトナムに子会社を設立して海外展開も進めています。

連結従業員数は1,840名、単体では1,371名です。筆頭株主は日東ベスト取引先持株会で、第2位は有限会社ウチダ・コーポレート、第3位は農林中央金庫です。取引先や創業家関連、金融機関が主要株主となっています。

氏名 持株比率
日東ベスト取引先持株会 12.81%
有限会社ウチダ・コーポレート 7.78%
農林中央金庫 5.00%

(2) 経営陣

同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表者は代表取締役会長の塚田莊一郎氏と、代表取締役社長執行役員の嵯峨秀夫氏です。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
塚田 莊一郎 代表取締役会長 1994年同社入社。生産本部長、営業本部長、代表取締役社長等を経て2025年6月より現職。
嵯 峨 秀 夫 代表取締役社長執行役員海外事業本部長 1983年同社入社。爽健亭代表取締役、同社常務取締役海外事業本部長等を経て2025年6月より現職。
内田 真帆子 取締役副社長執行役員管理本部長 2008年同社入社。健康事業部長、営業企画部長、開発本部長等を経て2025年6月より現職。
大 沼 一 彦 取締役相談役 1970年同社入社。生産本部長、代表取締役社長、代表取締役会長等を経て2025年6月より現職。
渡 邉 昭 秀 取締役常務執行役員営業本部長 1984年同社入社。東北支店長、営業本部副本部長、取締役営業本部長等を経て2023年6月より現職。
小 関 徹 取締役常務執行役員 1984年同社入社。海外事業本部付部長、経理部長、取締役経理部長等を経て2025年4月より現職。
遠 藤 雅 明 取締役常務執行役員総務人事部長 2000年同社入社。総務人事部長、取締役総務人事部長を経て2023年6月より現職。


社外取締役は、村山永(村山永法律事務所所長)、村山秀幸(村山公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容

同社グループは、加工食品(冷凍食品、缶詰、レトルトパウチ食品等)及び日配食品の製造販売を主な事業としています。

(1) 冷凍食品事業部門

ハンバーグやカツ、ミンチ等の畜肉加工品や、調理加工品、デザートなどの冷凍食品を製造・販売しています。学校給食や事業所給食、外食産業、惣菜売場など幅広い分野へ商品を提供しています。

収益は主に商品の販売による売上です。運営は、同社が製造・販売を行うほか、連結子会社の関西ベストフーズ、九州ベストフーズ、および持分法適用関連会社の日東アリマンが同社の製造委託を受けて製造を行っています。

(2) 日配食品事業部門

コンビニエンスストア向けの弁当、おにぎり、調理パン、惣菜などの日配食品を製造・販売しています。消費者のニーズに合わせたフレッシュな商品を日々提供しています。

収益は商品の販売による売上です。運営は、連結子会社の株式会社爽健亭が行っています。同社は爽健亭に対して製品・半製品・材料の売上を行っています。

(3) 缶詰事業部門等

果実や野菜の缶詰、レトルトパウチ食品、冷蔵食品等を製造・販売しています。保存性の高い商品や簡便調理に対応した商品を提供しています。

収益は商品の販売による売上です。運営は同社が行うほか、日東アリマンが同社の製造委託によりレトルトパウチ食品の製造を行っています。

(4) 海外食品事業部門・その他

海外食品事業部門ではベトナムにおいて加工食品の製造・販売を行っています。その他事業として、動物細胞の培養に関する研究や培養液の製造販売を行っています。

収益は各事業における製品販売等による売上です。海外食品事業はベトナムの子会社JAPAN BEST FOODS COMPANY LIMITEDが、その他事業は連結子会社の株式会社機能性ペプチド研究所が運営を行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は緩やかな増加傾向にあります。2023年3月期に利益率が低下しましたが、その後は売上高の伸長とともに利益額も回復傾向にあります。当期は増収ながらもコスト増の影響で経常利益は微減となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 489億円 497億円 519億円 543億円 559億円
経常利益 9億円 9億円 4億円 5億円 5億円
利益率(%) 1.9% 1.8% 0.8% 1.0% 0.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 6億円 2億円 4億円 4億円

(2) 損益計算書

直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。営業利益率は1.0%と前年からわずかに上昇しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 543億円 559億円
売上総利益 91億円 93億円
売上総利益率(%) 16.7% 16.7%
営業利益 5億円 6億円
営業利益率(%) 0.9% 1.0%


販売費及び一般管理費のうち、運搬費が29億円(構成比33%)、給料及び手当が20億円(同23%)を占めています。売上原価では、材料費が売上原価の約6割を占めています。

(3) セグメント収益

冷凍食品部門と日配食品部門がともに増収となりました。特に日配食品部門は前年比6.7%増と好調です。その他部門も増加しており、全体として売上規模が拡大しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
冷凍食品部門 430億円 430億円
日配食品部門 88億円 94億円
缶詰部門 12億円 12億円
その他製品部門 5億円 5億円
その他 14億円 17億円
連結(合計) 543億円 559億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社のCFパターンは「健全型」です。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態を示しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 36億円 0.5億円
投資CF -10億円 -16億円
財務CF -5億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.4%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は、食品産業の分野において広く社会に貢献し企業価値の向上に努め、永続と繁栄を図ることにより、株主をはじめとする関係者の期待に応えることを経営の基本方針としています。この方針に基づき、消費者が快適な食生活を実現するための食材を提供することを任務としています。

(2) 企業文化

同グループは、「食品産業の分野において広く社会に貢献し、永続と繁栄のもとに企業を構成する人々の理想を実現する」という社是を掲げています。企業行動規範に基づく事業活動を通じて、持続可能な社会の発展と地球環境の保全に貢献し、全てのステークホルダーと存在意義を共有する企業を目指しています。

(3) 経営計画・目標

同グループは、2023年度に次期中期計画「Reborn & Growing 2028 (2024-2028)」を策定しました。2028年度までに連結経常利益20億円以上の達成とその継続を目標とし、営業活動の強化や生産性の向上に全社一丸となって取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策

安全・安心な商品の供給体制やコンプライアンス体制を強化しつつ、ニーズを捉えた新商品開発に努めます。具体的には、技術力強化による高度な品質の実現、重点分野・注力商品群の明確化による冷凍食品部門の立て直し、組織・業務の見直しによる組織力強化、人材育成による人的資本向上、サステナビリティの確保を基本戦略として実行しています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社は、人材の「材」は「財」であると認識し、多様性がもたらす可能性や補完性を考慮して人的資本への投資を進めています。「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」を掲げ、多様な人材が活躍する働きがいのある企業、ワークライフバランスと生活の質の向上に取り組む企業を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.2歳 13.7年 4,539,012円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.4%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.6%
男女賃金差異(正規雇用) 63.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 87.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役員・執行役員の割合(13.0%)、正規雇用労働者全体としての中途採用比率(72%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品の安全性のリスク

食品の製造・販売において、食の安全性に関わる問題や異物混入、表示間違い等が発生した場合、製品の回収や損害賠償、取引停止等の事態を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は品質マネジメントシステムの認証取得や専門部署の設置により対策を講じています。

(2) 顧客企業の動向に関するリスク

顧客企業の経営方針の変更や経営状態の悪化、M&Aによる企業再編等があった場合、同グループの販売状況に影響が生じる可能性があります。これに対し、顧客企業との関係強化や新規顧客の開拓、品質向上による差別化に取り組んでいます。

(3) 競争激化に関するリスク

同業他社や外食産業、食品宅配事業者など多様な競合が存在し、資金力や商品開発力等で同社より優れている場合があります。競争の激化は業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は市場ニーズの把握や高付加価値化による差別化、生産性向上等で対応しています。

(4) 原材料等の調達及び価格変動リスク

家畜の疾病、異常気象、為替変動、国際情勢の変化等により、原材料や燃料の調達困難や価格高騰が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は情報収集や代替調達先の確保、価格転嫁や製品リニューアル等の対策を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。