※本記事は、株式会社シノプスの有価証券報告書(第39期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. シノプスってどんな会社?
流通業向けAIサービスを提供し、在庫最適化と食品ロス削減に貢献する企業です。
■(1) 会社概要
1987年に画像処理装置の生産・販売を目的にリンクとして設立され、その後物流・在庫最適化システムへ事業転換しました。2006年に小売業向け自動発注システムを販売開始し、2018年にマザーズ市場へ上場しました。2019年にシノプスに社名変更し、現在は需要予測から発注までをクラウド型で提供しています。
従業員数は単体で110名です。大株主については、筆頭株主は創業者で現会長の南谷洋志氏が代表を務める南谷ホールディングスで、第2位および第3位は南谷氏の親族とみられる個人株主です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 南谷ホールディングス | 33.70% |
| 南谷 のどか | 7.53% |
| 加藤 めぐみ | 7.52% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は岡本数彦氏です。社外取締役は3名で比率は約42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 南谷 洋志 | 代表取締役会長 | 1987年リンク(現シノプス)を設立し代表取締役に就任。2017年南谷ホールディングスを設立し代表社員。2025年3月より現職。 |
| 岡本 数彦 | 代表取締役社長 | 1997年アーティフィッシャル・インテリジェンス入社。2004年シノプスに入社後、営業部長や技術部長を歴任。2025年3月より現職。 |
| 武谷 克裕 | 取締役管理部管掌 | 1992年新日本製鉄入社。マジェスティゴルフ常務執行役員CFO等を経て、2023年シノプス入社。2024年3月より現職。 |
| 畠山 隆雄 | 取締役(監査等委員) | 1986年トーマツコンサルティング入社。監査法人トーマツ等を経て、2015年シノプス入社。2018年3月より現職。 |
社外取締役は、角田吉隆(元ユニー執行役員)、木村安壽(元トーマツコンサルティング社長)、南山学(元メガスポーツ社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「sinops事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■クラウドサービス
需要予測や自動発注、店舗オペレーション改善の機能を1店舗・1カテゴリから利用できるAIサービス「sinops-CLOUD」を提供しています。小売業向けに、惣菜、日配、グロサリー、精肉などの各カテゴリに特化した機能を有し、値引きや廃棄ロスの削減、発注時間の短縮といった便益を顧客に提供します。
収益は、初期費用を抑えた月額利用料として小売業者から受け取るサブスクリプション型のモデルです。利用料にはサポートサービスも含まれており、運営は主にシノプスが行っています。
■パッケージ販売および導入支援・サポート
小売業向け自動発注システム「sinops-R6」を中心に、品揃え計画や棚割管理などのソフトウェアをパッケージとして一括販売しています。また、導入企業に対して基幹システムとの連携や運用構築を支援するサービス、日々の稼働状況の監視や問い合わせに対応するサポートサービスも提供しています。
収益は、パッケージのライセンス販売益や、システム構築時の開発・支援費用、および導入後の継続的な保守サポート費用として顧客企業から受け取ります。直接販売とパートナー企業経由の販売経路があり、運営は主にシノプスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の単体業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の売上高は右肩上がりで成長を続けており、特に直近ではクラウドサービスの拡大により順調に推移しています。経常利益率も一時的な変動はあるものの概ね15%前後の高い水準を維持しており、安定した収益基盤を確立しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 12.0億円 | 14.6億円 | 17.3億円 | 17.8億円 | 20.4億円 |
| 経常利益 | 1.6億円 | 2.2億円 | 2.7億円 | 1.5億円 | 3.1億円 |
| 利益率(%) | 13.0% | 15.4% | 15.6% | 8.7% | 15.3% |
| 当期純利益 | 1.0億円 | 1.5億円 | 2.1億円 | 1.1億円 | 2.2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の成長に伴い売上総利益も増加し、利益率も改善傾向にあります。研究開発費等のコントロールとクラウド売上高の拡大に伴う製品改善による効率化により、営業利益は前期比で大きく伸長しました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 17.8億円 | 20.4億円 |
| 売上総利益 | 7.3億円 | 8.8億円 |
| 売上総利益率(%) | 40.9% | 43.1% |
| 営業利益 | 1.5億円 | 3.1億円 |
| 営業利益率(%) | 8.7% | 15.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.4億円(構成比25%)、役員報酬が1.0億円(同17%)を占めています。売上原価では、労務費が6.0億円(構成比51%)、経費が4.7億円(同40%)を占めており、ソフトウェア開発と運用に係る人件費やインフラ通信費が主要なコスト構造となっています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントで事業を展開しており、クラウドサービスの導入店舗数やアカウント数の増加が全体の売上成長を牽引しています。既存顧客へのアップセル・クロスセルが奏功し、ストック収益が拡大しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| sinops事業 | 17.8億円 | 20.4億円 |
| 連結(合計) | 17.8億円 | 20.4億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型に該当します。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.2億円 | 3.9億円 |
| 投資CF | -2.1億円 | -1.0億円 |
| 財務CF | -1.2億円 | -1.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.9%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「われわれは在庫に関わる"人"、"もの"、"金"、"時間"、"情報"を最適化するITソリューションを提供し、限りある資源を有効活用することで、広く社会に貢献する。」を基本理念として掲げています。また、「世界中の無駄を10%削減する」というビジョンを設定し、小売業・卸売業・製造業における流通三層の在庫を最適化することで社会や環境への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、基本理念の実践のために「行動指針」を定め、法令や社会倫理の遵守を全ての役職員の行動規範としています。多様な人材が最大限に能力を発揮できるよう働きやすい職場環境づくりを推進しており、プロフェッショナル人材の育成と労働生産性の向上を重視する文化を醸成しています。また、健康経営宣言を策定し、ハイブリッドワークなど柔軟な勤務スタイルを取り入れています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中長期的な成長の土台として以下の経営指標を掲げ、事業拡大に伴う組織体制の強化を目指しています。
* シェア率(売上高400億円以上の小売業に対する導入比率)の拡大
* ARR(年間経常収益)の向上
* 売上高および営業利益の持続的な成長
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、流通業向けAIサービスのシェア拡大と付加価値向上を重点施策としています。食品スーパー向けの需要予測型自動発注サービスに注力し、新規顧客の獲得と既存顧客へのアップセルを進めます。また、食品バリューチェーン全体を最適化するプラットフォームの構築や、小売業の人的資源を最大化するAIサービスの展開を通じて、将来の非連続的な成長に向けた投資を継続します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、中長期的な企業価値向上のために多様なプロフェッショナル人材の獲得と育成を最重要課題と位置づけています。働きやすい職場環境の整備に努め、ハイブリッドワークの推進や柔軟な勤務スタイルの確立、育児や介護のための制度を充実させています。また、社内リーダー層への幹部教育や人事評価制度の整備を通じて、優秀な人材が定着し最大限の能力を発揮できる組織づくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 36.3歳 | 4.8年 | 6,687,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.1% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
同社は公表義務の対象ではないため、有報には一部項目の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報の流出やシステム障害リスク
同社のクラウドサービスは外部のサーバーインフラを利用しており、自然災害やサイバー攻撃等によりシステムが停止するリスクがあります。また、取り扱う機密情報が流出した場合、損害賠償や企業イメージの低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 需要予測ロジックの精度に関するリスク
自動発注サービスにおいて需要予測ロジックに誤りが発生し、異常な発注勧告データをユーザーに提供した場合、顧客の発注業務に重大な支障をきたす恐れがあります。継続的な精度向上や異常時の手動発注切り替えなどの対策を講じていますが、復旧に時間がかかった場合は損害賠償の対象となるリスクがあります。
■(3) 既存ユーザーの継続率低下リスク
同社の事業成長には、サブスクリプション型サービスにおける既存顧客の継続利用と単価向上が不可欠です。しかし、競合他社に対する競争力の低下やサービスへの満足度低下により、解約率が想定を上回った場合やクロスセルが計画通りに進まない場合、将来の収益基盤に悪影響を及ぼす可能性があります。



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