※本記事は、株式会社ACSLの有価証券報告書(第14期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ACSLってどんな会社?
同社は、独自の自律制御技術を活かし、安全・安心な国産産業用ドローンの開発と社会実装を推進しています。
■(1) 会社概要
2013年11月に千葉大学発スタートアップの自律制御システム研究所として設立されました。2018年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2021年に現在のACSLへ社名を変更しています。同年には小型空撮ドローンを受注開始したほか、2023年には米国市場への本格進出に向け子会社を設立しています。
現在の従業員数は連結で58名、単体で54名体制となっています。筆頭株主は業務提携先でもある事業会社の日本郵政キャピタルで、第2位は創業者の野波健蔵氏、第3位は投資ファンドが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本郵政キャピタル | 6.98% |
| 野波健蔵 | 6.65% |
| IGLOBE PLATINUM FUND Ⅱ PTE. LTD.(常任代理人 みずほ証券) | 4.83% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役CoーCEOは早川研介氏および寺山昇志氏が務めています。社外取締役の比率は60.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 早川研介 | 代表取締役CoーCEO(共同経営責任者) | 2012年マッキンゼー、2015年KKRを経て2017年入社。CFO等を歴任し、2025年4月より現職。 |
| 寺山昇志 | 代表取締役CoーCEO(共同経営責任者) | 日商岩井、BCG、オムロン等を経て2023年入社。COOを経て、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、静健太郎(静公認会計士事務所代表)、香月由嘉(元ポラリス・キャピタル・グループCSO)、島津忠美(元東芝室長付)です。
2. 事業内容
同社グループは、ドローン関連事業の単一セグメントで事業を展開しています。
独自の自律制御技術をコアとした産業用ドローンの開発、製造、販売を行っています。労働力不足やインフラ老朽化などの社会課題解決に向け、企業等の顧客がドローンの有用性を検証する概念検証から、用途に特化した量産機体の提供、導入後の運用支援までを一気通貫で手掛けています。
収益は主に、実証実験に伴うカスタム開発料、用途特化型機体やプラットフォーム機体の販売代金、保守や消耗品による運用支援料から得ています。加えて、国家プロジェクトへの参画による研究開発の助成金等も収益源としています。事業の運営は同社および米国やインドの子会社などが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高はプロジェクトの進捗や機体販売の動向により変動がありますが、直近では20億円台半ばで推移しています。一方、先行投資の負担が大きく各利益段階で赤字が継続していますが、構造改革によるコスト削減や国家プロジェクトの助成金等により、当期の経常赤字幅は半減しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5億円 | 16億円 | 9億円 | 27億円 | 26億円 |
| 経常利益 | -12億円 | -22億円 | -21億円 | -22億円 | -11億円 |
| 利益率(%) | -242.3% | -133.0% | -234.6% | -82.4% | -41.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -12億円 | -26億円 | -25億円 | -23億円 | -13億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期と同水準を維持しつつ、用途特化型機体の販売増や原価低減の取り組みにより、売上総利益は大きく改善しました。営業赤字は継続しているものの、研究開発費や各種費用の適正化により、営業損失幅の縮小が進んでいます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 27億円 | 26億円 |
| 売上総利益 | 2億円 | 5億円 |
| 売上総利益率(%) | 5.7% | 19.3% |
| 営業利益 | -23億円 | -18億円 |
| 営業利益率(%) | -86.4% | -70.8% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が13億円(構成比56%)、給料及び手当が4億円(同15%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFと投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業は赤字ながらも将来の成長に向けて資金調達を行い、投資を継続している勝負型の局面といえます。財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は29.1%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -19億円 | -12億円 |
| 投資CF | -0.5億円 | -0.1億円 |
| 財務CF | 17億円 | 20億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「技術を通じて、人々をもっと大切なことへ」というミッションと、「世界中の安全・安心を支える人が頼れるパートナーとなる」というヴィジョンを掲げています。ロボティクス技術の社会実装を通じ、付加価値の低い業務や危険な業務を代替し、次世代に向けた社会の進化を推し進めることを目指しています。
■(2) 企業文化
人材戦略のコンセプトとして、全ての従業員が「オーナーシップ」と「挑戦」というマインドセットを持つことを重視しています。指示を待つのではなく、自律的に考えて行動し結果に責任を持つ姿勢を求めています。また、属性や肩書によらず多様な人材が個性を発揮できるダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期的な方向性と目標を明確に示すため、中期経営方針「ACSL Accelerate FY26」を策定しています。急速かつ持続的な利益成長を目指しており、主要な経営指標として売上高、粗利、営業利益を重視しています。また、成長ドライバーのKPIとして小型空撮機体の販売金額や機体数などを設定しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
先端技術による機体進化や北米事業の本格拡大、防衛・安全保障分野への貢献などを重点戦略に掲げています。収益性の改善に向けた「選択と集中」を実施し、小型空撮機体の強みが活きる日本の政府調達や米国の点検分野、物流分野における専用機体の開発と社会実装に向けた体制構築にリソースを最適化して再投資を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な成長と中長期的な企業価値向上には人材育成が不可欠であると考え、自律的な人材の育成に取り組んでいます。また、各人がライフイベントとキャリアを両立し、主体的に生き方をデザインできるよう、男性の育児休暇取得の推奨やリモートワーク、フレックスタイム制の導入など、柔軟な働き方の環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.4歳 | 3.9年 | 7,881,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
(1) ドローンの安全性確保に関するリスク
ドローンの利活用拡大に伴い、安全性や信頼性への要求が高まっています。万が一、同社の機体が墜落し損害を与えた場合や、サイバー攻撃によりデータセキュリティが破られ不正操作等が発生した場合には、多額の損害賠償やリコール対応費用の発生、社会的信用の失墜により、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 航空法や電波法等の法規制変更リスク
ドローン事業には航空法や電波法、製造物責任法、輸出管理規制など様々な法規制が適用されます。同社は法令遵守に努めていますが、予期せぬ規制の制定や運用の厳格化が生じた場合、あるいは予定されている規制緩和が計画通りに進まない場合には、追加の対応負担や事業活動の制約が生じ、業績に影響を与える可能性があります。
(3) 部材調達の制約および価格高騰リスク
ドローン製造に不可欠な部材の供給が中断した場合や、インフレや為替変動による価格高騰が発生した場合には、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。また、地政学的リスクや経済安全保障上の要請の高まりによって輸出入規制が強化された場合、調達先の制約や納期の遅延、代替調達によるコスト増が生じるリスクがあります。



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