※本記事は、Welby の有価証券報告書(第15期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. Welbyってどんな会社?
PHRプラットフォームサービスの構築および提供を通じて、患者の医療情報管理と継続的な治療支援を行う企業です。
■(1) 会社概要
2011年9月に設立され、2015年6月に徳島大学と共同で糖尿病患者向けセルフモニタリングシステムを開発しました。2019年3月に東京証券取引所マザーズに上場し、同年11月にスズケンと資本業務提携を開始しています。近年では、2023年6月にWelbyヘルスケアソリューションズを子会社として設立し、事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で44名、単体で36名です。大株主については、筆頭株主は創業者で代表取締役の比木武氏で、第2位は資本業務提携関係にあるスズケン、第3位はブライトリンクパートナーズとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 比木武 | 34.32% |
| スズケン | 20.03% |
| ブライトリンクパートナーズ | 5.43% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役は比木武氏が務めており、社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 比木武 | 代表取締役 | 1996年4月住友商事入社。楽天、メドピアを経て2011年9月同社を設立し代表取締役に就任。 |
| 中野暢也 | 取締役 | 1992年4月持田製薬入社。第一三共等を経て2023年10月同社入社。2026年3月より現職。 |
| 清水健一郎 | 取締役 | 2004年5月国立精神神経センター国府台病院入職。アボットジャパン合同会社等を経て2026年3月より現職。 |
社外取締役は、石橋太郎(オフィス・ティー・アンド・エム合同会社代表社員)、松本直也(松本直也公認会計士事務所代表)、假屋ゆう子(元鳥居薬品取締役)、平野雅史(illuminus代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、PHRプラットフォームサービス事業の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 疾患ソリューションサービス
製薬企業からの依頼を受け、生活習慣病やがんなどの特定疾患領域における患者・医療従事者向けのPHRプラットフォームを開発・運営しています。新薬上市に伴う医薬品の適正使用促進や疾患啓発を目的とするほか、臨床研究におけるPRO情報収集ツールとしても機能し、双方向のコミュニケーションによる治療継続を支援します。
プラットフォームのサービス構築費用および利用料を製薬企業から受け取る収益モデルです。開発されたアプリは主に製薬企業のブランド名で提供されますが、保守・運用やカスタマーサポートは同社が担っており、同社の売上高の約8割を占める中核的な収益基盤となっています。
■(2) Welbyマイカルテサービス
糖尿病や高血圧症など生活習慣病全般の自己管理をサポートする同社自社構築・運営のクラウドサービスです。各種測定機器との連携により日々の健康データを記録し、家族や登録医療機関とデータを共有することで、医師や専門家による継続的な治療および重症化予防のサポートを受けることが可能となります。
健康保険組合や自治体からの重症化予防ツールとしての利用料、医療関連企業からの月額利用料、医療機関からの利用料等を受け取る収益モデルです。当該サービスのプラットフォーム提供や各種基盤の普及活動は、同社および子会社のWelbyヘルスケアソリューションズが主体となって推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近の3期間で5億円から6億円台で推移しており、当期は増加に転じています。一方、継続的な事業基盤開発や普及活動への先行投資の影響もあり、各利益段階で赤字が続いていますが、当期は事業効率化の進展により赤字幅が縮小傾向にあります。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5.8億円 | 5.3億円 | 6.4億円 |
| 経常利益 | -4.4億円 | -6.6億円 | -4.5億円 |
| 利益率(%) | -76.3% | -124.2% | -71.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -5.1億円 | -8.0億円 | -5.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上総利益率は70%台という高い水準を維持していますが、成長に向けた先行投資が嵩み、営業利益は赤字となっています。ただし、当期は増収効果と費用管理の徹底により、営業赤字幅が改善しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5.3億円 | 6.4億円 |
| 売上総利益 | 3.8億円 | 4.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 72.0% | 70.6% |
| 営業利益 | -6.5億円 | -4.5億円 |
| 営業利益率(%) | -124.0% | -71.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3.6億円(構成比40%)、業務委託費が1.7億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
疾患ソリューションサービスは案件の長期化等の影響で減収となったものの、Welbyマイカルテサービスは基盤提供案件の大型化や子会社化に伴う売上貢献により大幅な増収を記録し、全体としての売上高を押し上げています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 疾患ソリューションサービス | 4.1億円 | 3.4億円 |
| Welbyマイカルテサービス | 1.2億円 | 3.0億円 |
| 連結(合計) | 5.3億円 | 6.4億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはマイナス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスとなっており、本業は赤字ですが将来の成長に向けて借入や資金調達で積極的な投資を継続している「勝負型」のキャッシュ・フロー状況です。財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は20.9%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -6.0億円 | -3.3億円 |
| 投資CF | -2.4億円 | -1.1億円 |
| 財務CF | 7.0億円 | 4.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「Empower the Patients」を事業ミッションとして掲げています。患者や医師などの医療従事者、製薬企業や医療機器メーカー、自治体などの医療業界を取り巻くステークホルダーとともに共同でサービスの開発・運営を行い、個人中心の医療の実現に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
従業員一人ひとりが高い専門性と成長志向を持ち、自律的にキャリア構築や能力開発ができる仕組みと挑戦できる環境を構築しています。社名に由来する「Well-being(身体的、精神的、社会的に健康な状態)」の実現に向け、やりがいのある仕事に活力をもって挑戦し、多様で柔軟な働き方を推進する文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、高い成長性および生産性をもって収益に結びつけ、継続的に成長していくことを経営上の目標としています。収益性と成長性などの各経営指標のバランスを重視し、外部環境に左右されない財務基盤を構築することで企業価値の向上を図っており、具体的には売上高と営業利益を重要な指標と位置づけています。
■(4) 成長戦略と重点施策
PHRプラットフォームサービスおよびデータポータビリティプラットフォームサービスに経営資源を集中させる方針です。各疾患領域でのサービスメニューを拡充し、未開拓領域への提案活動を強化するとともに、他社サービスや医療機器等と連携できる基盤の構築を進め、「医療×デジタル」の価値を高めて持続的な成長を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
雇用形態を問わず優秀な人材の確保と、組織体制の強化を推進しています。ダイレクトリクルーティングや専門人材紹介会社を活用した採用チャネルの多様化を図るとともに、貢献意欲が高くミッションにコミットする人材には責任あるポジションへの登用やプロジェクトアサインを通じて、自己成長の機会を積極的に提供しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.5歳 | 3.7年 | 7,408,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は常時雇用する労働者が300人以下であり、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 医療・ヘルスケア市場の動向
同社の売上高は医療・ヘルスケア関連分野に依存しているため、制度改革や市場成長の停滞が事業に影響を及ぼす可能性があります。また、主要顧客である製薬企業のグローバルな再編や戦略方針の変更に伴い、既存顧客による契約見直しが要求されるリスクがあります。
■(2) PHR市場における競争激化
患者の自己管理支援アプリ領域において、最適なユーザー体験や特色あるサービスの提供で競争力の向上を図っています。しかし、高い知名度や顧客基盤を持つ同業他社による模倣や、資本力・専門性を有する新規参入企業の登場により競争優位性が低下し、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 要配慮個人情報・セキュリティ管理
患者の重要な医療・健康データを取り扱うため、情報セキュリティマネジメントシステム等の認証を取得し対策を講じています。しかし、国内外の個人情報保護法制の変化への対応コストや、万が一の個人情報漏洩・システム障害等が発生した場合には、企業の信用失墜や損害賠償等により業績に重大な影響を及ぼす恐れがあります。
■(4) 新規事業・基盤拡大への先行投資
PHRプラットフォームや保険者向けソリューションは、開発コストや医療機関への普及活動などの先行投資が必要な事業です。中長期的な収益基盤の拡大を見込んで投資を継続していますが、これらが想定通りの成果やユーザー獲得に結びつかなかった場合、事業計画および業績に影響を及ぼす可能性があります。



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