日本ホスピスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ホスピスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ホスピスホールディングスは東京証券取引所グロース市場に上場し、末期がんや難病患者を対象としたホスピス住宅の提供を中心とする在宅ホスピス事業を展開しています。直近の業績では、新規施設の開設や入居者数の増加により増収を達成した一方で、人員強化の採用費や人件費の増加等により減益となっています。


※本記事は、日本ホスピスホールディングス株式会社の有価証券報告書(第9期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 日本ホスピスホールディングスってどんな会社?


同社グループは、末期がんや難病患者に対するターミナルケアに特化した在宅ホスピス事業を展開しています。

(1) 会社概要


2005年、有限会社ナースコール在宅センター訪問サービス(現ファミリー・ホスピス)として設立されました。2011年にオン・アンド・オン(現ファミリー・ホスピス)を設立し、2017年の単独株式移転により日本ホスピスホールディングスが誕生しました。2019年に東京証券取引所マザーズに上場しています。

従業員数は連結で1,108名、単体で6名です。筆頭株主は資本業務提携先である事業会社のスギホールディングスで、第2位は野村證券、第3位はDEUTSCHE BANK AG等の金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
スギホールディングス 18.99%
野村證券 9.30%
DEUTSCHE BANK AG, SINGAPORE A/C CLIENTS(NON TREATY) 4600600(常任代理人みずほ銀行) 8.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長CEOは高橋正氏が務めており、社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
高橋 正 代表取締役社長CEO ユーミーケア代表取締役、ファミリー・ホスピス代表取締役等を経て、2017年より代表取締役社長、2024年より現職。
加藤 晋一郎 取締役副社長CFO 監査法人勤務や事業会社CEO、CFO等を経て、ファミリー・ホスピス取締役を務め、2024年より現職。


社外取締役は、荒川暁(GMDホールディングス代表取締役)、田村恵子(大阪歯科大学特任教授)、冨田孝行(スギホールディングスターミナルケア推進PJリーダー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「在宅ホスピス事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) ホスピス住宅の提供


末期がん患者や難病患者に限定した賃貸住宅を提供しています。複数の看護師や介護士が24時間365日体制で常駐し、入浴や外出のサポート、個別の希望に応じた食事サービスなど、患者の苦痛を和らげ、人生の最終段階を自分らしく過ごすための緩和ケア環境を整備しています。

収益源として、入居者との賃貸借契約に基づく毎月の家賃収入に加えて、各種サービス提供による医療保険収入や介護保険収入を得ています。事業の運営は、主に連結子会社であるファミリー・ホスピスが担っています。

(2) 在宅ホスピスサービスの提供


住み慣れた自宅で療養生活を継続したい患者を対象に、訪問看護を中心とした複合的なケアサービスを提供しています。看護小規模多機能型居宅介護や居宅介護支援、訪問介護、通所介護などを組み合わせ、地域の医療・介護関係者と連携しながら包括的なサポートを行います。

収益源は、医師の指示に基づく訪問看護サービスやケアプランに基づく介護サービス等に対する、国民健康保険団体連合会からの診療報酬や介護保険料、および利用者からの自己負担金です。こちらの事業運営も、主にファミリー・ホスピスが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、ホスピス施設の新規開設を背景に売上高は右肩上がりで成長を続けています。経常利益も順調に拡大していましたが、直近では体制強化に伴う採用費や人件費の増加等により利益水準および利益率が低下し、増収減益となりました。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 60億円 79億円 99億円 121億円 142億円
経常利益 4億円 8億円 10億円 10億円 6億円
利益率(%) 6.9% 9.9% 10.4% 8.3% 3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -2億円 -1億円 -1億円 7億円 1億円

(2) 損益計算書


売上高が順調に伸長する一方で、売上総利益および営業利益は減少傾向にあります。これは、新規開設に伴う準備費用の発生や、医療スタッフ採用の強化による労務費負担が先行したことが主な要因です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 121億円 142億円
売上総利益 21億円 19億円
売上総利益率(%) 17.4% 13.4%
営業利益 13億円 8億円
営業利益率(%) 10.6% 6.0%


販売費及び一般管理費のうち、租税公課が5億円(構成比44%)、給料及び手当が2億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは在宅ホスピス事業の単一セグメントですが、地域別の売上高を見ると、関東地区が全体の過半を占めており成長を牽引しています。また、北海道地区も新規施設のオープンにより大きく売上を伸ばしています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
北海道地区 11億円 18億円
関東地区 69億円 83億円
東海地区 32億円 31億円
関西地区 10億円 10億円
連結(合計) 121億円 142億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フローとなっています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%でグロース市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は19.4%で同市場平均を下回っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 8億円 10億円
投資CF -28億円 -5億円
財務CF 16億円 -0.5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「ホスピスの普及と推進」をミッションとし、「あなたの笑顔と尊厳をさいごまで支えます」というビジョンを掲げています。さらに、コーポレートスローガンとして「すべては笑顔のために ~ For The Smile ~」を設定し、増加する「看取り難民」を解消するために、在宅ホスピスの推進と質の高いケア環境の整備に取り組んでいます。

(2) 企業文化


利用者の「家で自由に過ごしたい」「痛み苦しみを和らげて欲しい」という両方の希望を叶えるケアを重視しています。また、「死」を忌み嫌うべきものではなく人生のゴールと捉え、人生の最終段階を各々が恐れずに迎えられる「人生の仕上げ」を支援する価値観が根底にあります。働き手に対しても、チームで支え合う組織づくりを通じて安心できる職場環境の提供を目指しています。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長による企業価値の向上を目的として、収益力を高め経営の効率化を図るため「経常利益率」を重要な経営指標と位置づけています。また、事業運営の状況を測る指標として、ホスピス施設における「提供可能室数」および「平均入居率」を重要視し、安定稼働に至った後のホスピス施設における目標平均入居率を85.0%に設定して改善に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


現在展開している北海道および三大都市圏の先進事業モデルを、2026年度より東北および九州地区へ広げ、中長期的には日本全国への普及を目指しています。新規エリア開拓に伴い、地域・行政・提携医との関係構築を進めるとともに、管理者クラスの人材確保や専門的な包括教育プログラム「ELNEC-J」等を用いたスタッフ育成を強化し、質の高いケア体制の構築を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業展開において不可欠となる看護師や介護士の適時適切な採用と配置、特に各施設の管理者クラスの確保を最重要課題としています。また、末期がんや難病ケアの高度な専門性を担保するため、経験の浅いスタッフに対してはベテラン社員によるOJTや、終末期ケアの包括教育プログラム「ELNEC-J」を活用したスキルアップ施策を積極的に推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 50.3歳 5.8年 9,098,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 71.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 92.2%
男女賃金差異(正規雇用) 97.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 115.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 看護師・介護士等の専門人材の確保難


在宅ホスピス事業の展開には、質の高いターミナルケアを提供できる看護師や介護士の確保が不可欠です。専門人材の採用が計画通りに進まない場合や、充実した研修を実施できず人材育成が滞った場合には、施設の安定した運営に支障をきたし、同社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 医療・介護報酬改定等の法的規制変更


同社の事業は健康保険法や介護保険法等に基づく指定を受けて運営しており、報酬額は定期的な制度改定の影響を直接受けます。大幅な報酬減額改定が実施された場合や、施設運営上の基準違反によって事業者の指定取消・停止等の行政処分を受けた場合には、収益基盤が揺らぎ、財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) 利用者の健康状態悪化に伴う訴訟発生


ホスピス施設では医療依存度の高い患者に対するケアを行っており、従業員の人為的なミスや不測の事態によって利用者の健康状態が悪化した場合、利用者やその家族から訴訟を提起されるリスクが存在します。訴訟対応による費用負担や同社への信頼低下が、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 施設入居者の予期せぬ逝去や退去


ホスピス施設はターミナルケアに特化している性質上、想定を上回るペースで入居者の逝去や退去が発生する可能性があります。加えて、新規開設した施設において計画通りに入居者が集まらない場合、施設の稼働率が低下し、同社グループの業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。