記事タイトル:「AI CROSS転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」
※本記事は、AI CROSS株式会社の有価証券報告書(第11期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. AI CROSSってどんな会社?
企業向けメッセージングプラットフォームの提供と、AIを活用したコミュニケーションの高度化を支援する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2015年3月に設立され、同年6月にSMS双方向配信プラットフォームなどの事業を承継しました。2018年に現在のAI CROSSへ社名変更し、2019年には東証マザーズ(現グロース市場)へ上場を果たしました。2025年10月にはロウプを子会社化し、マーケティング領域の支援を強化しています。
現在の連結従業員数は86名、単体では59名です。筆頭株主は事業会社のIBIサーチで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業者の岡部典子氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| IBIサーチ | 15.26% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.53% |
| 岡部 典子 | 4.50% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性3名、女性2名の計5名で構成され、女性役員比率は40.0%です。代表取締役CEOは原田典子氏(戸籍上の氏名 岡部典子)が務めており、社外取締役比率は40.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 原田 典子 | 代表取締役 | SAPジャパンやAOSテクノロジーズを経て、2015年に同社代表取締役に就任。アスコットやインテージホールディングス等の社外取締役も兼務。 |
| 菅野 智也 | 取締役 | 富士ソフトを経て、2015年に同社入社し営業部長に就任。2019年より同社取締役。ロウプ取締役も兼務。 |
社外取締役は、仙石実(南青山ホールディングス代表取締役等)、松永暁太(ふじ合同法律事務所弁護士等)です。
2. 事業内容
同社グループは、「Smart AI Engagement事業」および「マーケティングソリューション事業」を展開しています。
■Smart AI Engagement事業
SMSやRCSなどのメッセージングチャネルとAI技術を組み合わせ、企業と顧客のコミュニケーション高度化や業務効率化を支援するプラットフォームを提供しています。また、ノーコードAI分析ツール「Deep Predictor」なども展開しています。
主にBtoCビジネスを営む国内外の事業者から、初期カスタマイズ料や配信通数に応じた月額利用料を受け取ります。各携帯電話事業者と直接契約を結んで配信ルートを確保しており、運営は同社が行っています。
■マーケティングソリューション事業
企業と顧客の接点全体を見据え、広告企画やプロモーション、クリエイティブ制作、マーケティングリサーチからメディア開発まで、一貫したコミュニケーション設計を支援しています。
クライアント企業からマーケティング戦略の立案や施策実行に係る対価を受け取ります。同事業の運営は、2025年10月に連結子会社化したロウプが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は順調に拡大を続けており、当期は41.5億円に達しました。経常利益も成長基調にあり、3.7億円を計上しています。利益率も8%台後半から10%程度で安定的に推移しており、堅調な事業成長が伺えます。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 24.2億円 | 33.1億円 | 32.5億円 | 37.1億円 | 41.5億円 |
| 経常利益 | 2.5億円 | 2.2億円 | 2.9億円 | 3.3億円 | 3.7億円 |
| 利益率(%) | 10.5% | 6.6% | 8.9% | 8.8% | 8.8% |
| 当期純利益 | 3.4億円 | 1.0億円 | 1.6億円 | 1.5億円 | 1.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い、売上総利益も前年から増加しています。M&Aなどの積極的な事業展開を進めつつも、売上総利益率および営業利益率は前年と同水準を維持しており、効率的な収益確保がなされています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 37.1億円 | 41.5億円 |
| 売上総利益 | 13.3億円 | 15.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 35.9% | 37.2% |
| 営業利益 | 3.4億円 | 3.7億円 |
| 営業利益率(%) | 9.0% | 8.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.7億円(構成比32%)、業務委託費が1.4億円(同12%)を占めています。売上原価については、通信利用料が22.8億円(構成比91%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力であるSmart AI Engagement事業は、SMSの配信数拡大やAI技術を組み合わせた統合型ソリューションの提供により、増収増益を達成しました。当期から新たに連結対象となったマーケティングソリューション事業も順調に利益を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| Smart AI Engagement事業 | 37.1億円 | 40.1億円 | 8.8億円 | 10.5億円 | 26.2% |
| マーケティングソリューション事業 | - | 1.4億円 | - | 0.1億円 | 9.2% |
| 連結(合計) | 37.1億円 | 41.5億円 | 3.4億円 | 3.7億円 | 8.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金を元に、借入も活用しながら積極的な投資活動を行っている「積極型」の状況です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.4億円 | 1.5億円 |
| 投資CF | -0.2億円 | -3.2億円 |
| 財務CF | -0.1億円 | 4.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.2%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「Smart Work, Smart Life~人生のいい時間をつくりつづける。」をミッションに掲げています。企業と顧客の双方向のコミュニケーションを分析・開発し、顧客の課題解決を支援するとともに、誰もが簡単に高精度な予測分析を実現できる仕組みを提供することで、日本全体の生産性向上を目指しています。
■(2) 企業文化
AIを活用してコミュニケーションの次元を高めることを重視し、組織力・営業力・開発力の向上に努めています。多様な働き方を追求する「ダイバシティ推進室」を設置するなど、従業員に魅力的な労働環境を提供し、ミッションやバリューを深く浸透させることで、優秀な人材が自律的に挑戦し成長できる組織文化を構築しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、「中期経営計画 AIX2027 2025~2027(連結)」に基づき、メッセージングサービスのプラットフォーム提供から、AIと掛け合わせたマーケティングソリューション提供へのモデル転換を推進しています。経営目標としては、収益性と効率性の拡大に伴う企業価値の向上を掲げ、特に「売上高営業利益率」を重要な経営指標として重視しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力であるメッセージングサービスをさらに進化させ、「CXツールへのSMSの進化」「レベニューモデルの進化」「パートナービジネスの拡大」を推進しています。また、ロウプの子会社化によりマーケティング領域の戦略立案から施策実行までの一貫支援を強化し、M&Aやベンチャー投資により市場シェアを拡大することで成長を加速させていきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本を重要な経営基盤と位置づけ、社員のエンゲージメント向上を最重要課題としています。組織の活性化を担う専門部門「Employee Relations」を新設し、データに基づく施策立案やモニタリングを実施しています。また、リファラル採用やダイレクトリクルーティングに注力し、候補者ごとの最適化を通じて優秀な人材の獲得に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 38.6歳 | 3.3年 | 9,789,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ビジネスコミュニケーション市場の動向
同社が属するSMS配信等の市場は成長を続けているものの、一部企業による寡占状態にあります。市場の成長スピードが想定より鈍化した場合や、新規参入等によって現在の市場シェア構成が急激に変化した場合には、同社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競合他社との競争激化
国内外において、メッセージングサービスやAI関連サービス、マーケティングソリューション事業を展開する多数の競合他社が存在しています。同社は独自の技術力やノウハウを活かしたサービス開発を進めていますが、競争環境がさらに激化した場合、事業の優位性が低下し、収益確保に影響が生じるリスクがあります。
■(3) 特定の取引先・仕入先への依存
同社の売上高のうち特定の主要顧客への依存度が一定割合を占めており、当該顧客の経営方針変更等により取引が縮小するリスクがあります。また、SMS配信においては主要な携帯電話事業者4社と直接契約を結んでおり、送信単価の引き上げや契約継続に支障が生じた場合には、事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 技術革新への対応遅れ
AI技術などの関連業界は技術革新が頻繁に行われており、変化が非常に激しい環境にあります。同社は常に新しい技術要素を取り入れる努力を行っているものの、新技術の開発や導入が遅れたり、想定外のシステム投資が必要となった場合には、提供するサービスの競争力低下を招くリスクがあります。



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