※本記事は、SOLIZE Holdings株式会社の有価証券報告書(第36期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. SOLIZE Holdingsってどんな会社?
同社グループは、デジタル技術を駆使して製品開発を支援するエンジニアリングパートナーです。
■(1) 会社概要
1990年に設立され、日本でいち早く光造形による試作事業を開始しました。その後、3D CADや解析技術を用いたエンジニアリングサービスを展開し、2000年には変革コンサルティングを開始するなど事業領域を拡大しています。2024年2月に東京証券取引所スタンダード市場へ上場し、2025年7月に会社分割により持株会社体制へ移行して現在の社名に変更しました。
従業員数は連結で2,526名、単体で120名です。筆頭株主は同社従業員で構成されるSOLIZE従業員持株会となっており、第2位および第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| SOLIZE従業員持株会 | 21.08% |
| 古河未由紀 | 14.09% |
| 篠原敬一 | 6.44% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性3名、女性2名の計5名で構成され、女性役員比率は40.0%です。代表取締役社長CEOは宮藤康聡氏が務めており、社外取締役の比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宮藤康聡 | 代表取締役社長CEO | 本田技研工業、ファーストリテイリングを経て2005年にインクス(現SOLIZE Holdings)入社。人事総務部長などを歴任し2020年1月より現職。 |
| 木下和重 | 取締役 | 伊藤忠商事、日本ミシュランタイヤ等を経て2018年に同社入社。グループ財務経理部長等を歴任し2023年3月より現職。 |
社外取締役は、長坂武見(元ソニー経理部門長)、山本尚美(元資生堂クリエイティブ社長)、深田しおり(元YKK AP最高デジタル責任者)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エンジニアリング・マニュファクチャリング事業」「コンサルティング・エンジニアリング事業」「ビジネスインキュベーション事業」を展開しています。
■エンジニアリング・マニュファクチャリング事業
自動車や航空機などの製造業向けに、3D CADや解析技術を用いた製品開発支援や技術者派遣を行っています。また、保有する大型3Dプリンター等を活用し、試作品の製作から最終製品向け部品の量産、さらには3Dプリンター装置の販売や保守サポートまでをワンストップで提供しています。
収益は、顧客企業からの業務請負・準委任・派遣契約に基づく技術サービス料や、3Dプリント部品の製造販売代金、機器の販売代金から得ています。運営は主にSOLIZE PARTNERSが担い、海外の現地法人と連携しながらグローバルな開発支援体制で展開しています。
■コンサルティング・エンジニアリング事業
自動車や産業機械などの製造業から建設・金融業まで幅広い顧客を対象に、業務プロセスの可視化・数値化を通じて組織横断的な課題を解決するコンサルティングを提供しています。また、自然言語処理AIを活用したSaaS製品の提供や、自動運転向けのSDV(ソフトウェア定義型自動車)開発支援、サイバーセキュリティ対応も手がけます。
収益は、顧客企業に対するコンサルティング報酬や専門性の高いエンジニアリングの支援料、およびAI製品(SpectAシリーズ等)のシステム利用料から構成されています。事業の運営は、主にSOLIZE Ureka Technologyが行っています。
■ビジネスインキュベーション事業
製造業などで急増するソフトウェア開発の需要に応えるため、システム要件定義や第三者検証、国際規格適合コンサルティングなどを提供しています。さらに、同社独自の事業オーナーモデルを活用し、社会や産業の課題解決を目的とした新規事業の立ち上げから運営までを一貫して行っています。
収益は、顧客からのソフトウェア開発や品質保証・テスト設計に伴う技術サービス料、および立ち上げた新規事業(高齢者向け家賃保証事業や民間学童保育など)が顧客から得るサービス利用料から得ています。運営は、主に+81やフューレックス、ALQなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して拡大基調にあり、直近5期間で堅調な増収を達成しています。一方で経常利益や当期利益は、事業拡大に伴う採用強化やM&A、新規拠点設立などの先行投資負担により直近2期間で減少傾向となり、利益率は低下しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 159億円 | 178億円 | 201億円 | 227億円 | 258億円 |
| 経常利益 | 5億円 | 7億円 | 9億円 | 4億円 | 0.8億円 |
| 利益率(%) | 3.0% | 4.0% | 4.4% | 1.8% | 0.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 30億円 | 5億円 | 6億円 | 3億円 | -0.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の成長に伴い売上総利益は拡大しており、総利益率も安定した水準を維持しています。しかし、事業体制強化に向けた人件費や支払手数料などの固定費増加が利益を圧迫し、営業利益および営業利益率は大きく低下する結果となりました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 227億円 | 258億円 |
| 売上総利益 | 64億円 | 73億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.4% | 28.2% |
| 営業利益 | 5億円 | 0.9億円 |
| 営業利益率(%) | 2.0% | 0.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が31億円(構成比43%)、支払手数料が7億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力事業はいずれも増収を達成しています。エンジニアリング・マニュファクチャリング事業は設計開発支援や3Dソフト販売が牽引し、コンサルティング・エンジニアリング事業は変革コンサルティングやAI関連が堅調でした。ビジネスインキュベーション事業もM&A効果により売上が大きく伸長しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| エンジニアリング・マニュファクチャリング事業 | 176億円 | 188億円 |
| コンサルティング・エンジニアリング事業 | 38億円 | 46億円 |
| ビジネスインキュベーション事業 | 13億円 | 23億円 |
| 連結(合計) | 227億円 | 258億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、子会社株式の取得やソフトウエア等の取得により、投資活動で多額の支出がありました。営業活動では、売上債権の増加などが主な支出要因となりました。財務活動では、配当金の支払い等により支出となりました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3億円 | -2.1億円 |
| 投資CF | -7億円 | -22億円 |
| 財務CF | 14億円 | -1.8億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「進化を感動に」を理念とし、「システムとしての企業体へ」を使命として掲げています。人間の創造性と企業に求められる公益性を軸にデジタルテクノロジーを活用し、次世代の「ものづくり」「企業運営」「社会課題」を変革するソリューションの提供と、新たな組織・企業を生み出すことを目指しています。
■(2) 企業文化
行動規範において「誠実に向き合い期待を超えろ」「覚悟を持って自らを革新せよ」「自分初、世界初を創り続けろ」などを掲げています。既存の概念にとらわれず新しい価値を創造するアントレプレナーシップ(創造する情熱)を重視し、失敗や摩擦を恐れずに挑戦と行動を続ける組織風土を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2020年から推進する全社変革(CX)の第2フェーズ(2025年〜2033年)において、デジタルものづくりで培った実践と変革の応用による提供価値の拡大を目指しています。成長手段として従来領域と新規領域の掛け合わせやM&Aを活用し、中長期的な規模の拡大を目標として掲げています。
* 売上高400億円(2027年目標)
* 売上高1,000億円(2033年目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
既存の「実践力」と「変革力」を融合させ、顧客の開発パートナーおよび変革パートナーとしての価値創出を図ります。また、保有技術の組み合わせによる対象プロセスの拡張や、自動車産業で培った知見の他産業(エネルギー、AI、航空宇宙等)への展開、北米やアジア市場での地域拡張、積極的なM&A投資を成長手段として推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人を大切にし最大の財産(人財)と捉える」人事方針のもと、新しい事業と技術を創造する情熱を持った人材を積極的に輩出する組織づくりを進めています。採用力の強化を最重要課題とし、新卒・経験者の積極採用と同時に、多様な価値観を尊重しながら自己実現と成長機会を公平に提供する能力開発や組織開発に投資しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 44.9歳 | 10.3年 | 7,359,766円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.4% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 81.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 36.4% |
※同社単体の男性労働者の育児休業取得率については有報に実績の記載がないため「-」としています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、フルタイム労働者等の法定時間外労働時間の1人当たり月間平均(18.3時間)、月間平均の法定時間外労働80時間以上の労働者数(0人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車業界の景気や投資動向への依存
主要取引先が自動車関連メーカーに集中しているため、自動車業界の景気や開発投資の動向に業績が大きく左右されます。また、CASEなどに代表される次世代技術の進展に伴う顧客ニーズの多様化に適応しきれなかった場合、収益機会を逃し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) デジタルものづくり市場の競争激化
同社が展開する3D技術やデジタルエンジニアリング分野は、同業他社による事業強化や新規参入による競合が発生しやすい環境にあります。独自技術による付加価値提供や迅速な対応体制の構築を進めていますが、競争激化により受注の減少や単価の下落が進んだ場合、業績に影響する恐れがあります。
■(3) 最先端技術に対応できる専門エンジニアの確保
デジタル技術を核とする製品開発ノウハウを強みとする同社にとって、顧客の要求水準に応えられる優秀なエンジニアの確保と育成は不可欠です。採用市場での競争激化などにより計画通りに人材を確保できない場合や、既存人材の流出が予想を上回った場合、事業の継続や拡大に支障を来す可能性があります。



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