kubell 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

kubell 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

グロース市場に上場し、ビジネスチャット「Chatwork」を中心としたプラットフォーム事業を展開しています。SaaSとBPaaSの両輪で中小企業のDXを推進しており、5期連続の増収に加え、直近では大幅な営業増益と最終黒字転換を果たし、高成長と利益創出を両立するフェーズに入っています。


※本記事は、kubellの有価証券報告書(第22期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. kubellってどんな会社?


主力事業であるビジネスチャットを起点に、中小企業のDXを推進するITサービス企業です。

(1) 会社概要


2000年にEC studioとして創業し、2011年にビジネスチャット「Chatwork」をリリースしました。2018年にChatworkへ社名変更し、翌2019年に東証マザーズへ上場しています。その後、周辺サービス展開のためのM&Aを進め、2024年に現在のkubellへと社名変更しました。

従業員数は連結で658名、単体で355名です。筆頭株主は代表の資産管理会社であるFun&Creativeで、第2位は金融機関のBNY GCM CLIENT ACCOUNT、第3位は創業者の山本正喜氏となっています。

氏名 持株比率
Fun&Creative 48.82%
BNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD AC ISG (FE−AC)(常任代理人 三菱UFJ銀行) 4.33%
山本 正喜 4.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役兼社長上級執行役員CEOは山本正喜氏が務めています。社外取締役の比率は75.0%です。

氏名 役職 主な経歴
山本 正喜 代表取締役兼社長上級執行役員CEO 2004年にアイフラッグへ入社。2005年に同社へ入社し取締役CTOに就任。2018年より代表取締役を務め、2023年より現職。
井上 直樹 取締役兼上級執行役員CFO 1998年にアサツーディ・ケイへ入社。外資系IT企業やリクルートホールディングス等を経て、2017年に同社へ入社し2023年より現職。
福田 升二 取締役兼上級執行役員COO 2004年に伊藤忠商事へ入社。エス・エム・エス執行役員等を経て、2020年に同社へ入社し、2023年より現職。


社外取締役は、宮坂友大(Capital T代表社員)、熊倉安希子(熊倉公認会計士事務所所長)、村田雅幸(パブリックゲート代表社員)、早川明伸(弁護士法人トラスト早川経営法律事務所設立 代表弁護士)、福島史之(元港陽監査法人)です。

2. 事業内容


同社グループは、「プラットフォーム事業」を展開しています。

(1) SaaSドメイン


主力である国内最大級のビジネスチャット「Chatwork」に加え、勤怠管理や人事評価などの周辺サービスを開発・提供しています。中小企業を主要ターゲットとしており、社外の取引先や顧客とも円滑に接続できるオープンプラットフォーム型の設計によって、口コミでの効率的なユーザー獲得を実現しています。

主に利用者のID数に応じた月額または年額のサブスクリプション利用料を受領するストック型の収益モデルです。運営は同社や、子会社のkubellストレージなどが行っています。

(2) BPaaSドメイン


ソフトウェアの提供にとどまらず、経理、労務、総務などのバックオフィス業務そのものをクラウド経由で請け負うオンラインアシスタントサービス「タクシタ」などを展開しています。IT人材が不足し、自社リソースのみでのDX推進が困難な中小企業に対し、人とテクノロジーを組み合わせた業務効率化を提供しています。

主に月額固定プランや稼働時間に応じた従量課金、従業員数に応じた月額利用料などのストック型収益を受領しています。運営は主に子会社のkubellパートナーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


5期連続で増収を達成しており、トップラインの力強い拡大が続いています。利益面ではプラットフォーム拡大に向けた先行投資により経常損失が続いていましたが、直近の2025年12月期には大幅な増益を達成し、親会社所有者帰属の当期利益も黒字転換を果たしました。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 34億円 46億円 65億円 85億円 95億円
経常利益 -7億円 -7億円 -7億円 1億円 5億円
利益率(%) -21.1% -15.6% -10.6% 0.9% 4.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -7億円 -6億円 -2億円 -18億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の85億円から当期は95億円へと順調に拡大しています。売上総利益率も約70%と高い水準を維持しており、販売費及び一般管理費の増加を吸収して営業利益は前期の1億円から当期は5億円へと急拡大し、収益性の向上が確認できます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 85億円 95億円
売上総利益 58億円 66億円
売上総利益率(%) 68.2% 69.5%
営業利益 1億円 5億円
営業利益率(%) 1.2% 5.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が24億円(構成比40%)、支払手数料が7億円(同11%)、広告宣伝費が5億円(同7%)を占めています。また、売上原価の主な内訳(単体ベース)は、サーバー費用などの経費が14億円(構成比73%)、労務費が5億円(同28%)となっています。

(3) セグメント収益


単一セグメントであるプラットフォーム事業において、SaaSドメインとBPaaSドメインの両方が成長を牽引しています。特にBPaaSドメインはクロスセル施策の奏功やグループ会社の経営統合効果により、前期比で大幅な売上増を達成しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
SaaSドメイン 78億円 83億円
BPaaSドメイン 7億円 12億円
連結(合計) 85億円 95億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 15億円 9億円
投資CF -7億円 -6億円
財務CF -0億円 -2億円


健全型
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

企業の収益力を測るROEは12.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は29.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションのもと、人生の大半を過ごすことになる「働く」時間において、ただ生活の糧を得るためだけでなく、一人でも多くの人が楽しく自由な創造性を存分に発揮できる社会の実現を目指して事業を展開しています。

(2) 企業文化


同社は「Integrity Driven(チーム・顧客・社会に対して誠実に)」をバリューの一つとして掲げています。社会に価値を創造し続け、持続的に成長するために、法令遵守にとどまらず、すべてのステークホルダーに対して誠実な組織となることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


2026年度を最終年度とする中期経営計画を推進し、中小企業No.1 BPaaSカンパニーの確立と、あらゆるビジネスの起点となるビジネス版スーパーアプリとしてのプラットフォーム化を中長期的な目標として掲げています。

・2024~2026年連結売上CAGR30%以上の成長
・2026年度連結売上高150億円
・2026年度EBITDA15~22.5億円
・2026年度EBITDAマージン10~15%

(4) 成長戦略と重点施策


プロダクト主導の成長戦略(PLG)を推進してユーザー基盤を拡大させるとともに、経理や労務などのBPaaS事業へのクロスセルを加速させます。同時に、オペレーションの型化や生成AIの徹底活用を進め、人とテクノロジーの融合による生産性および収益性の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


SaaSおよびBPaaSの両輪で事業を成長させるため、高度なプロダクト開発を担うエンジニアや、専門性の高いオペレーション人材、AI人材の確保と育成を重視しています。教育・研修体制を充実させるとともに、多様性を強みとする組織文化の浸透を通じて優秀な人材の定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 34.8歳 2.7年 7,594,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.5%
男性育児休業取得率 88.9%
男女賃金差異(全労働者) 66.8%
男女賃金差異(正規雇用) 67.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 251.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) フリーミアムモデルの有料化停滞

主力サービスの顧客獲得は無料プランが起点ですが、無料の範囲内で完結するライトユーザーの割合が増加し、管理機能などの付加価値による有料プランへの移行が想定通りに進まない場合、事業成長や収益拡大が遅れ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合の台頭と競争力低下

SaaS市場やBPaaS市場は参入障壁が比較的低く、国内外の多様な企業との競争が激化しています。AI等の技術革新への対応が遅れ、独自のネットワーク効果といった同社のプラットフォームの競争優位性が損なわれた場合、価格競争に巻き込まれるリスクがあります。

(3) 大規模なシステム障害と情報漏洩

多数の企業の機密情報や個人情報を取り扱うインフラとしての側面を持つため、通信トラブルやサイバー攻撃による大規模なシステム障害、または情報流出が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜を招き、事業継続に甚大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。