※本記事は、株式会社kubell の有価証券報告書(2025年12月期、2025年1月1日 ~ 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
kubellは「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションのもと、中小企業を主要ターゲットに、仕事の効率化や創造的な働き方を実現するサービスの開発・提供に取り組んでいます。ビジネスチャット「Chatwork」を中心としたプラットフォーム事業を単一セグメントとして展開しています。
単体従業員数は355名、連結従業員数は658名です。セグメントはプラットフォーム事業の1つです。
同社グループは、2025年7月に株式会社kubellパートナーと株式会社ミナジンを経営統合し、同年11月には「ペイトナー請求書」事業を譲受しました。また、セグメントをプラットフォーム事業の単一に変更しています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
kubellは、プラットフォーム事業を主軸とする企業であり、従業員の働きがいと創造性を重視する文化が特徴です。給与水準や働き方に関する具体的なデータから、同社グループがどのような環境を提供しているかを見ていきましょう。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、従業員の平均年齢が30代半ばであり、比較的若い組織構成となっています。平均勤続年数は短めですが、これは事業の成長フェーズや人材の流動性を示す傾向とも考えられます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 7,594,000円 |
| 平均勤続年数 | 2.74年 |
| 平均年齢 | 34.83歳 |
| 単体従業員数 | 355人 |
| 連結従業員数 | 658人 |
| 単体のグループ内比率 | 54.0% |
同社および一部の子会社は、確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の両方の退職給付制度を採用しています。複数事業主制度の確定給付企業年金制度に加入しており、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算できないため、確定拠出制度と同様に会計処理をしています。
なお、退職一時金の有無や支給条件、従業員ごとの会社拠出額などは、有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションのもと、従業員自身が働くことを楽しみ、創造性を発揮できる環境の実現を目指しています。優れた人材が集い、最大限に能力と創造性を発揮する職場環境を作ることで、社会への価値創出を最大化し、持続的な成長を実現する方針です。
中長期的に取り組むべき重要課題として「ミッション・ビジョンの実現にむけた11の重要課題(マテリアリティ)」を特定しています。これらは「事業を通じた社会価値の創造」「価値創造基盤の強化」「地球規模の社会課題解決への貢献」の3つのカテゴリに分類されています。
具体的には、「楽しく創造的に活躍できる人材の創出」に向けてバリューの啓発活動やエンゲージメントサーベイを実施しています。また、「新たな価値創造を実現するダイバーシティ・マネジメント」として、D&I研修受講率100%維持や従業員意識調査での肯定的回答率90%を目指すなど、多様性を強みとする組織の実現に取り組んでいます。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。連結子会社は法定開示の公表義務の対象ではないため、記載を省略しています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 8.5% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 88.89% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 66.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 67.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 251.4% |
連結子会社の法定開示
主要事業会社3社の数値のみ掲載します。
▼ (株)kubellパートナー
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 0.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 68.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 71.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 103.0% |
多様性・登用
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| D&I研修受講率 | 100.0% |
| 従業員意識調査肯定的回答率 | 90.0% |
| 人権研修受講率 | 100.0% |
育児・介護支援
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 男性育休取得率 | 100.0% |
| 女性育休取得率 | 100.0% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
kubellは、「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションのもと、中小企業を主要なターゲットとして、仕事の効率化や創造的な働き方を実現するサービスの開発・提供に取り組んでいます。同社グループは、ビジネスチャット「Chatwork」を中心としたプラットフォーム事業の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループのプラットフォーム事業は、ソフトウェアを通じた月額課金モデルの「SaaSドメイン」と、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)をオンラインで実現する「BPaaSドメイン」の2つの領域で構成されています。主力サービスであるビジネスチャット「Chatwork」は、シンプルで直感的なユーザーインターフェースと、社外の取引先とも円滑に接続できるオープンプラットフォーム型の設計が特徴です。フリーミアムモデルを採用しており、無料利用から有料プランへのアップセルやID数増加により、安定的かつ継続的な収益拡大を図っています。
SaaSドメインでは、ビジネスチャット「Chatwork」に加え、企業のバックオフィス業務やDXを支援する周辺サービスを提供しています。BPaaSドメインでは、IT人材が不足する企業向けに、経理・総務・労務・採用などのノンコア業務をオンラインアシスタントサービス「タクシタ」や人事労務領域に特化した「MINAGINE 労務アウトソーシング」として請け負っています。これらのサービスは、Chatworkのプラットフォーム基盤を活用することで顧客獲得コストを抑え、効率的なビジネスモデルを構築しています。
収益は、SaaSドメインにおける有料プランの利用者数に応じた月額または年額の定額利用料、およびBPaaSドメインにおける月額固定プラン、稼働時間に応じた従量課金、従業員数に応じた月額利用料、スポット業務手数料など、ストック型の収益モデルを主体としています。当連結会計年度の売上高は、SaaSドメインが約83.4億円、BPaaSドメインが約11.9億円となっており、SaaSドメインが事業の中心を担いつつ、BPaaSドメインも大きく増加しています。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの過去5期間の業績推移を見ると、売上高は継続的に増加傾向にあります。経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は、直近の2025年12月期において黒字に転換しました。特に経常利益は、前連結会計年度の75百万円から当連結会計年度には4.6億円へと大きく改善しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 33.7億円 | 45.9億円 | 64.9億円 | 84.7億円 | 95.3億円 |
| 経常利益 | △7.1億円 | △7.2億円 | △6.9億円 | 75百万円 | 4.6億円 |
| 経常利益率 | △21.1% | △15.6% | △10.6% | 0.9% | 4.8% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | △7.5億円 | △6.8億円 | △6.2億円 | △11.7億円 | 2.2億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | △20.05 | △17.11 | △15.45 | △28.59 | 5.14 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高(連結)は、前期からほぼ横ばいの水準で推移しています。一方、従業員1人あたり営業利益(連結)は、前期の0.2百万円から当期は0.7百万円へと増加しており、収益性の改善が見られます。これは、事業拡大に伴う売上高の増加と、営業利益の成長率が売上高の成長率を大きく上回ったことによるものと考えられます。
| 指標 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 14.6百万円 | 14.5百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 0.2百万円 | 0.7百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループは、本業で安定した資金を創出しつつ、将来に向けた成長投資も積極的に行っています。これにより、財務基盤の安定性と事業拡大の両立を目指している状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの自己資本比率は前期から増加し、非製造業のプライム市場平均を上回っています。ROE(自己資本利益率)もプライム市場平均を上回る水準を示しており、効率的な経営が行われていることがうかがえます。手元資金である現金及び預金も増加しており、事業運営の安定性を支える財務基盤が構築されている状況です。
| 指標 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 16.0億円 | 20.0億円 |
| 自己資本比率 | 26.1% | 29.9% |
| ROE(自己資本利益率) | - | 12.0% |
| 現金及び預金 | 29.1億円 | 34.6億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループのキャッシュフローを見ると、本業の稼ぎを示す営業活動によるキャッシュフローは、当期に9.4億円の収入となりました。これは主に税金等調整前当期純利益の計上や減価償却費の計上、契約負債の増加によるものです。投資活動によるキャッシュフローは、無形固定資産の取得や事業譲受による支出が主な要因となり、5.9億円の支出となっています。
この結果、本業で得た資金で投資を賄い、残った資金を示すフリーキャッシュフローは3.5億円の収入となりました。財務活動によるキャッシュフローは、長期借入金の返済による支出が長期借入れによる収入を上回ったことなどにより、1.6億円の支出となっています。これらの資金の流れから、同社グループは本業で安定的に資金を創出しつつ、将来の成長に向けた投資も継続しており、雇用や給与の安定性、そして事業の成長性が期待できる財務状況にあることがうかがえます。
| 項目 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 14.8億円 | 9.4億円 |
| 投資CF | △6.5億円 | △5.9億円 |
| 財務CF | △15百万円 | △1.6億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 8.3億円 | 3.5億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、主力のビジネスチャット「Chatwork」の収益に連結売上高の大部分を依存している状況です。そのため、当該サービスにおいて想定を超える市場環境の変化や競争力の低下等が生じた場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、SaaS市場及びBPaaSを含むBPO市場においては、多様な企業が参入しており、競争が加速しています。価格競争の激化や競争力の低下が生じた場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは今後の事業展開及び規模の拡大に応じて人材の確保及び育成を進める方針です。しかしながら、人材が機動的に確保できない場合や、急な従業員の減少等があった場合には、事業運営及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
kubellは、「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションを掲げ、人々の働き方を豊かにすることを目指している会社です。テクノロジーと人の力を融合させ、社会に新たな価値を創造する企業風土を大切にしています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションを掲げています。人生の大半を占める「働く」時間において、生活の糧を得るだけでなく、一人でも多くの人が楽しく、自由な創造性を発揮できる社会の実現を目指しています。仕事の効率化や新しい働き方を実現する製品・サービスの開発・提供に取り組んでいます。
また、中期経営計画では、2026年までに中小企業No.1 BPaaSカンパニーのポジションを確立することを目標としています。長期的には、中小企業市場における圧倒的なシェアを背景に、あらゆるビジネスの起点となるビジネス版スーパーアプリとしてプラットフォーム化していくことを目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは「Integrity Driven(チーム・顧客・社会に対して誠実に)」をバリューの一つに掲げています。コンプライアンスを超えて、すべてのステークホルダーに誠実な組織となることを目指す価値観です。
「楽しく創造的に活躍できる人材の創出」を重要課題とし、従業員自身が「働くことを楽しみ、創造性を発揮できる」環境の実現を重視しています。多様な価値観や属性を持つ人々が集まり、「楽しく働くこと」を通じて新たなイノベーションを創出するため、多様性を強みとする組織の実現を目指しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、BPaaS事業の拡大における人とテクノロジーの融合による生産性向上を課題としています。生成AIやSaaS等のテクノロジーを活用し、業務プロセスの効率化・自動化を推進しています。
また、社会的なインフラとしての側面を持つサービス提供のため、セキュリティと内部管理体制の継続的な向上に取り組んでいます。専任組織による監視体制の整備や内部管理体制の強化を推進しています。
さらに、優秀な人材の確保と育成も重要な課題です。SaaS及びBPaaS事業の成長を担う人材の確保と、教育・研修体制の充実、組織文化の浸透を図っています。事業領域の拡大に伴うグループ・ガバナンスの強化も重点テーマです。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
kubellは監査等委員会設置会社として、取締役会の監査・監督機能の強化とガバナンスの充実を図っています。経営の公正性、透明性及び効率性を高める体制を構築しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
kubellの株主構成を見ると、筆頭株主は株式会社Fun&Creativeであり、同社の代表取締役である山本正喜氏も上位株主として名を連ねています。これにより、創業家や関連会社が経営に一定の影響力を持つ資本構成となっています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| Fun&Creative | 48.82% |
| BNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD AC ISG (FE−AC)(常任代理人 三菱UFJ銀行) | 4.33% |
| 山本 正喜 | 4.24% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は8名(男性7名・女性1名)で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役兼社長上級執行役員CEOは山本正喜氏が務めています。社外取締役比率は62.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山本 正喜 | 代表取締役兼社長上級執行役員CEO | 2004年4月株式会社テレウェイヴ入社。2005年4月同社入社、取締役CTO。2023年10月同社代表取締役兼社長上級執行役員CEOより現職。 |
| 井上 直樹 | 取締役兼上級執行役員CFO | 1998年4月株式会社アサツーディ・ケイ入社。2017年11月同社入社、CFO兼コーポレートサポート本部長。2023年10月同社取締役兼上級執行役員CFOより現職。 |
| 福田 升二 | 取締役兼上級執行役員COO | 2004年4月伊藤忠商事株式会社入社。2020年4月同社入社、執行役員兼事業推進本部長。2023年10月同社取締役兼上級執行役員COOより現職。 |
社外取締役は、宮坂友大氏(Capital T合同会社代表社員)、熊倉安希子氏(熊倉公認会計士事務所所長・常勤監査等委員)、村田雅幸氏(パブリックゲート合同会社代表社員・監査等委員)、早川明伸氏(弁護士法人トラスト早川経営法律事務所代表弁護士・監査等委員)、福島史之氏(元港陽監査法人・監査等委員)です。
同社は監査等委員会設置会社であり、取締役会の監査・監督機能の強化とガバナンスの充実を図っています。社外取締役は、専門的な知見に基づき、独立した客観的な視点から経営に対する助言や監督を行っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
kubellの役員報酬は、固定報酬、短期的な業績連動報酬、中長期のインセンティブとしての株式報酬により構成されています。株主利益と連動した報酬体系とすることで、持続的な企業価値向上へのインセンティブとして機能するよう設計されています。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。