※本記事は、株式会社ウィルズの有価証券報告書(第22期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ウィルズってどんな会社?
同社は上場企業と投資家を繋ぐプラットフォームの提供と、自社媒体などを用いた広告事業を展開しています。
■(1) 会社概要
2004年にインベスター・ネットワークスとして設立され、2005年に「IR-navi」をリリースしました。2015年に「プレミアム優待倶楽部」を開始し、2017年に現在のウィルズへ商号変更しています。2019年にグロース市場(旧マザーズ)へ上場し、2020年にネットマイルを完全子会社化しました。
同社の従業員数は連結で115名、単体で92名です。筆頭株主は創業者の杉本光生氏で、第2位は役員の蓮本泰之氏、第3位は代表の資産管理会社であるSUGアセットとなっています。経営陣による株式保有割合が高く、安定した経営基盤を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 杉本光生 | 30.11% |
| 蓮本泰之 | 14.00% |
| SUGアセット | 6.53% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長CEOは杉本光生氏が務めています。取締役における社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 杉本光生 | 代表取締役社長CEO | 1991年リクルートコスモス入社。インテリジェンス、アイ・アールジャパン等を経て、2004年に同社を設立し代表取締役社長CEOに就任。SUGアセット代表取締役などを経て現職。 |
| 蓮本泰之 | 専務取締役CFOコーポレート本部長 | 2001年三菱商事入社。ローソンへの出向を経て、2017年に同社常務取締役CFOに就任。2019年より専務取締役CFOを務めるほか、ロータスキャピタル代表取締役などを経て現職。 |
| 加藤正明 | 常務取締役コーポレートコミュニケーション本部 共同管掌 | 1980年小柳証券入社。アイ・アールジャパン等を経て、2000年に同社の前身となる会社を設立し代表取締役就任。2018年に同社常務取締役に就任し、2024年より現職。 |
| 山本章代 | 常務取締役コーポレートコミュニケーション本部長 | 1990年インターナショナル・コミュニケーション・ストラテジーズ入社。アイ・アールジャパン等を経て、2000年に同社の前身会社の取締役に就任。2023年より常務取締役として現職。 |
| 貝田敏明 | 常務取締役営業本部長 | 1990年野村證券入社。野村リサーチ&アドバイザリーなどを経て、2023年に同社執行役員および営業本部長に就任し、同年8月より常務取締役として現職。 |
社外取締役は、青山洋一(山洋代表取締役)、鈴木行生(日本ベル投資研究所代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「株主管理プラットフォーム事業」および「広告事業」を展開しています。
■(1) 株主管理プラットフォーム事業
上場企業と機関投資家、個人投資家をクラウド上で繋ぎ、情報の取得や交換を行えるプラットフォームを提供しています。機関投資家向けの「IR-navi」、個人投資家向けの「プレミアム優待倶楽部」、各種レポーティングを担うサステナビリティソリューションなどで構成されています。
プレミアム優待倶楽部は、ストック型のシステム利用料と株主優待ポイントの利用料が主な収益源です。IR-naviもシステム利用料を収益としています。サステナビリティソリューションでは制作物の納品時に収益を認識します。本事業は同社が運営しています。
■(2) 広告事業
自社媒体におけるWeb広告配信や、広告代理店として顧客のWeb広告活動をサポートするサービスを提供しています。また、独自のゲームエンジンを顧客のWebサイトに導入し、ユーザーの活性化やロイヤリティ向上を図るアドバタイジングゲームなども展開しています。
広告掲載期間に応じた広告収入や、ユーザーのアクションに基づく成果報酬が主な収益源です。広告代理店業務では、広告主から受け取る対価から原価を差し引いた純額を収益として認識します。本事業の運営は主に完全子会社のネットマイルが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高および各利益ともに毎期順調な拡大を続けています。主力の株主管理プラットフォーム事業における新規受注の増加や契約社数の拡大が寄与し、利益率も継続的に改善傾向にあります。継続的な成長を実現しており、安定した収益基盤を確立しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 34億円 | 38億円 | 45億円 | 51億円 | 61億円 |
| 経常利益 | 5億円 | 7億円 | 9億円 | 10億円 | 13億円 |
| 利益率(%) | 15.4% | 18.2% | 20.3% | 20.5% | 21.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 5億円 | 5億円 | 7億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
直近の損益状況を比較すると、主力のプラットフォーム事業の売上拡大により大幅な増収となっています。売上原価の増加を吸収して売上総利益も順調に伸びており、販売費及び一般管理費の増加をコントロールすることで、高い営業利益率を維持しつつ着実な増益を達成しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 51億円 | 61億円 |
| 売上総利益 | 25億円 | 28億円 |
| 売上総利益率(%) | 48.6% | 46.9% |
| 営業利益 | 10億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 20.4% | 21.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が6億円(構成比41.3%)、役員報酬が2億円(同11.2%)を占めています。なお、売上原価の具体的な金額内訳は公開されていませんが、主にプレミアム優待倶楽部の商品仕入やサステナビリティソリューション制作原価等で構成されています。
■(3) セグメント収益
事業セグメント別の売上動向を見ると、主力の株主管理プラットフォーム事業が全社売上の大半を占めており、プレミアム優待倶楽部の契約社数増加やIR-naviの堅調な受注を背景に順調な増収を牽引しています。一方で広告事業は、自社媒体Web広告におけるアクセス減少等の影響を受け、やや減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 株主管理プラットフォーム事業 | 48億円 | 58億円 |
| 広告事業 | 3億円 | 2億円 |
| 連結(合計) | 51億円 | 61億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金で借入金の返済や事業投資を賄う「健全型」の傾向を示しています。潤沢な営業キャッシュ・フローを基盤に、システム開発などの成長投資と株主還元をバランス良く実行しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11億円 | 14億円 |
| 投資CF | 8億円 | -4億円 |
| 財務CF | -4億円 | -7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は35.6%で市場平均を大幅に上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も53.5%で市場平均を上回っています。高い収益性と強固な財務基盤を両立させています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、『MAXIMIZE CORPORATE VALUE』をスローガンに、「上場企業と投資家を繋ぐことにより効率的な資本市場の実現と上場企業の企業価値最大化を支援すること」をミッションとして掲げています。世界中の上場企業や投資家がクラウド上で情報の取得や交換を行うことで効率的な資本市場が形成されると考え、このミッションの実現に向けて事業を展開しています。
■(2) 企業文化
人材戦略や経営方針から、同社は専門性の高い人材の確保と育成を重視し、従業員各人が積極的に挑戦できる環境を整える文化を持っていることがわかります。役割等級制度に基づき期待役割や権限を明確にすることでやりがいを提供し、経営会議による厳正な人事評価を通じて人材の成長と定着を図っています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、より高い成長性や収益性を確保するために、売上高成長率と営業利益率を重要な経営指標として重視しています。中期的に目指す経営指標として、以下の具体的な数値目標を掲げています。
* 売上高成長率:20.0%以上
* 営業利益率:20.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社グループは、個人投資家向けの「プレミアム優待倶楽部」や機関投資家向けの「IR-navi」の拡販、サステナビリティソリューションの提供強化を成長戦略に掲げています。上場企業と株主の対話促進や個人投資家の投資活性化に向けて企画営業やシステム開発体制を強化し、他社との販売提携も推進してプラットフォームのシェア拡大を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、既存サービスの商品知識に加えて株式市場の理解を深め、新たな顧客ニーズを発掘できる人材の確保と育成を重要課題としています。専門性の高い人材の採用に加え、OJTによる早期戦力化や現役の資本市場参加者を招聘した座学での教育を実施しています。また、性別や年齢を問わず多様な人材がやりがいを持って働ける組織の構築を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 39.7歳 | 3.3年 | 6,285,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 23.6% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
※同社および連結子会社は公表義務の対象でないため、育児休業取得率および男女の賃金差異に関する有報への記載はありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) プレミアム優待倶楽部の利用に伴う業績変動
同社の収益は、主に上場企業の株主が株主優待ポイントを商品に交換した時点で計上されます。そのため、顧客企業の決算月やポイント交換の時期が特定の四半期に集中しやすく、業績に季節変動が生じる傾向があります。新規顧客の開拓により業績の平準化を図っていますが、ポイント利用の偏りが同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競合の出現と技術革新に伴う競争激化
同社が属するIRコンサルティング業界は参入障壁が低く、常に競合のリスクが存在します。これまでに築いたノウハウや教育システムにより優位性を保ち、継続的なシステム改修を行っていますが、競合他社による革新的な技術の出現やサービス品質の向上により競争環境が激化した場合、同社グループの事業や業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 通信網の障害やシステムトラブル
同社が提供するサービスはインターネット通信網に大きく依存しています。想定外のアクセス集中によるサーバーの過負荷、重大なバグ、自然災害などによりシステムが停止するリスクがあります。クラウド上での分散管理やシステムの冗長化、不正アクセス対策等の予防策を講じていますが、万一重大な障害が発生した場合には安定的なサービス提供が困難となる恐れがあります。
■(4) 個人情報やインサイダー情報の管理
事業の特性上、多数の顧客企業に関する機密情報や個人情報、未公表の重要事実(インサイダー情報)を取り扱っています。プライバシーマークやISO/IEC27001認証の取得、仮想環境上での厳格な業務フローなど情報セキュリティ対策を徹底していますが、何らかの理由で情報漏洩が生じた場合、社会的信用の失墜や損害賠償により業績に影響を及ぼす可能性があります。



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