※本記事は、株式会社スペースマーケットの有価証券報告書(第12期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. スペースマーケットってどんな会社?
同社は、あらゆるスペースを簡単に貸し借りできるプラットフォーム事業を主力として展開しています。
■(1) 会社概要
同社は2014年1月に設立され、同年4月に遊休不動産等を貸し借りできるマーケットプレイス「SPACEMRKET」の運営を開始しました。2019年12月に東京証券取引所マザーズ(現グロース市場)へ上場し、2023年8月には公共施設予約管理システム「Spacepad」をリリースしました。直近の2025年4月にはクルトン等の3社を子会社化し、事業基盤の強化を図っています。
同社の従業員数は連結で73名、単体で53名です。筆頭株主は創業者の重松大輔氏であり、第2位は事業会社のティーケーピーです。また、第3位には重松氏の資産管理会社であるダブルパインズが名を連ねており、創業関係者による保有割合が高い傾向にあります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 重松大輔 | 24.38% |
| ティーケーピー | 21.08% |
| ダブルパインズ | 13.79% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長は重松大輔氏が務めています。社外取締役は3名選任されており、取締役全体の50%を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 重松大輔 | 代表取締役社長 | 東日本電信電話、フォトクリエイトを経て、2014年1月に同社を設立し現職。 |
| 佐々木正将 | 取締役 | イントランス、スマイルワークス等を経て2017年1月に同社入社。2025年3月より現職。 |
社外取締役は、田中優子(元クラウドワークス取締役)、青野瑞穂(スプリング法律事務所パートナー)、藤川祐一(元GA technologies上席執行役員CFO)です。
2. 事業内容
同社グループは「スペースマーケット事業」の単一セグメントですが、主に以下のサービスを展開しています。
■(1) マーケットプレイスサービス
遊休不動産等を保有するホストと、利用を希望するゲストをマッチングするプラットフォーム「SPACEMRKET」を提供しています。対象スペースは全国に及び、会議室から映画館、廃校など多様な用途に対応しています。
収益源として、ゲストからスペース料金とゲスト手数料(5%)を受け取り、ホストからは基本手数料(30%)を差し引いた金額を支払うことで手数料収入を得ています。本サービスの運営は主に同社が行っています。
■(2) レンタルスペーストータルプロデュースサービス
不動産オーナー等に対し、家具や備品の選定・設置といったスペースの企画開発から、予約対応や清掃等の運営代行まで総合的な支援を提供しています。
収益源として、運営サポートの初期費用や、スペース利用に応じた運営代行費用(スペース料金の約10%)などを得ています。本サービスの運営は、スペースモール、クルトン、エミーナ、システリアなどの連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上高は着実な右肩上がりの成長を続けており、12.3億円から25.7億円へと規模を倍増させています。利益面については一時的に赤字を計上する期もありましたが、直近2期間は連続して経常利益の黒字を確保しており、収益力の改善と安定化が進んでいることがうかがえます。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 12.3億円 | 12.3億円 | 15.6億円 | 19.7億円 | 25.7億円 |
| 経常利益 | 0.7億円 | -1.1億円 | 1.1億円 | 1.8億円 | 2.4億円 |
| 利益率(%) | 5.4% | -9.2% | 7.2% | 9.0% | 9.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.4億円 | -1.1億円 | -1.7億円 | 1.8億円 | 2.1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は19.7億円から25.7億円へと大きく成長し、それに伴って売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率の高水準を維持しつつ、営業利益率も9.0%から9.6%へ向上しており、本業における稼ぐ力が着実に強化されています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 19.7億円 | 25.7億円 |
| 売上総利益 | 15.3億円 | 19.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 77.8% | 76.2% |
| 営業利益 | 1.8億円 | 2.5億円 |
| 営業利益率(%) | 9.0% | 9.6% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が4.8億円(構成比28%)、支払手数料が3.0億円(同18%)、給料手当が2.6億円(同15%)を占めています。また、売上原価(6.1億円)は主に人件費や地代家賃で構成されています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントであるため、事業全体としての売上推移を示しています。積極的な市場創造に向けた投資やM&Aを通じた子会社化の推進により、グループ全体の取扱高が拡大し、順調な増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| スペースマーケット事業 | 19.7億円 | 25.7億円 |
| 連結(合計) | 19.7億円 | 25.7億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出しつつ、さらなる成長に向けた積極的な投資を借入等の資金調達によって賄っている積極型の状態です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.8億円 | 0.2億円 |
| 投資CF | -0.8億円 | -2.6億円 |
| 財務CF | 0.6億円 | 4.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は26.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は24.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「チャレンジを生み出し、世の中を面白くする」をビジョンに掲げています。人々が何かにチャレンジする際に必ず必要となる「場所」を、簡単に貸し借りできるようにすることで機会を増やし、世の中を面白くしたいと考えています。これに基づき「スペースシェアをあたりまえに」をミッションとして事業を展開しています。
■(2) 企業文化
スペースには多様性を育み、集まる人の数だけ影響力を発揮する力があるという価値観を重視しています。様々なステークホルダーと連携して多様なアクションを生み出すことで、社会の持続可能性に貢献する文化が根付いており、既存の不動産を共有することで環境負荷を減らし、地域社会を支えることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
ミッションの実現を図るため、お客様へ届けた価値の合計である「全社総取扱高」を重要な経営指標としてモニタリングしています。直近では全社総取扱高の大部分を占めるGMVの成長も重要指標として位置づけています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存のマーケットプレイスサービスの成長を推進し、業界有数の掲載数とノウハウを活かしてホストへのアプローチを強化します。また、公共施設予約管理システム「Spacepad」の展開や、子会社群との連携によるレンタルスペースの用途開発・運営機能をグループ内に取り込み、ゲストの体験価値向上と事業基盤の強化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業規模の拡大にあたり、人材を最も重要な経営資源と位置づけています。社内の教育プランや人事評価制度を整備し、研修やプロジェクトを通じて優秀な人材を育成・定着させる仕組みづくりを図っています。また、地方在住や外国籍、子育て・介護世代など多様な人材が無理なく働けるよう、制度やシステムを整えています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 36.2歳 | 3.9年 | 6,862,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) シェアリングエコノミーサービス市場の動向
スペースシェア市場の堅調な成長を見込んでいますが、予測通りに市場が拡大しなかった場合には、経営計画の達成が遅れ、事業展開や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。同社は市場動向を注視し、柔軟に対応できる体制構築に努めています。
■(2) 競合他社の参入と競争激化
スペースシェアをターゲットとした競合企業が複数存在し、新規参入も想定されます。他に優れたビジネスモデルや競争力のある条件を提供する競合が現れた場合、競争の激化により同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) サービスの健全性の維持
公序良俗に反するスペース利用や知的財産権の侵害、詐欺などの法令違反行為が行われた場合、サービスに対する信頼性が低下し、ユーザー離れにつながる可能性があります。同社は利用規約の明記や監視体制の拡充により、健全性の確保に努めています。
■(4) 情報管理体制の強化
ゲストやホストの個人情報を多く保有しており、外部への情報流出や悪用が発生した場合には、企業の社会的信用や業績に重大な影響を及ぼす恐れがあります。同社は個人情報保護方針に基づく管理の徹底やISMS認証の取得など、情報セキュリティの強化を図っています。



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