※本記事は、株式会社ADワークスグループの有価証券報告書(第6期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ADワークスグループってどんな会社?
同社グループは、収益不動産の仕入れからバリューアップ、販売、その後の管理までを一貫して手掛けています。
■(1) 会社概要
1886年に染色業として創業し、1936年に法人化しました。1999年に事業目的を不動産関連業務へ転換し、2007年にジャスダックへ上場しました。その後、米国での事業展開や不動産小口化商品の販売を開始し、2020年4月に単独株式移転により持株会社体制へ移行して同社を設立、上場を果たしました。
同社グループの従業員数は連結で255名、単体で52名です。大株主の状況をみると、筆頭株主は同社の代表取締役社長CEOである田中秀夫氏であり、第2位は有限会社リバティーハウス、第3位は金融機関の信託口となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 田中 秀夫 | 10.76% |
| 有限会社リバティーハウス | 3.96% |
| NOMURA PB NOMINEES LIMITED OMNIBUS-MARGIN (CASHPB)(常任代理人 野村證券) | 1.81% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長CEOは田中秀夫氏が務めています。社外取締役は4名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田中 秀夫 | 代表取締役社長CEO | 西武不動産等を経て、1995年にエー・ディー・ワークス代表取締役社長に就任。2020年4月より現職。 |
| 鈴木 俊也 | 専務取締役 | リクルートコスモス等を経て、2015年にエー・ディー・ワークス入社。2023年3月より現職。 |
| 後藤 英夫 | 専務取締役CFO | 三井住友銀行やSMBC信託銀行などで要職を歴任し、2025年3月より現職。 |
| 山下 晴康 | 取締役 | 住友不動産や東京スター銀行等を経て、2016年にエー・ディー・ワークス入社。2024年3月より現職。 |
| 室谷 泰蔵 | 取締役 | NTTファシリティーズやSBIホールディングス等を経て、2017年にエー・ディー・ワークス入社。2024年3月より現職。 |
| 金子 幸司 | 取締役 | 伊藤忠商事等を経て、2013年にエー・ディー・ワークス入社。米国子会社のCEO等を歴任し、2026年1月より現職。 |
社外取締役は、関山護(元丸紅副社長)、田名網尚(元マネックス証券副社長)、粟井佐知子(元ラ・プレリージャパン社長)、染川博行(元朝日生命保険常勤監査役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「収益不動産販売事業」および「ストック型フィービジネス」を展開しています。
■(1) 収益不動産販売事業
1棟収益不動産を独自のルートで仕入れ、法的精査、用途変更、テナント入れ替え、大規模修繕などのバリューアップを施した上で、個人富裕層や機関投資家等に販売しています。また、不動産小口化商品やオフィス区分商品を全国の投資家に提供し、米国でも同様のビジネスモデルを展開しています。
収益源は、バリューアップを施した不動産や小口化商品の販売代金です。国内での運営は主にエー・ディー・ワークスが担い、米国においては複数の現地子会社が事業を推進しています。
■(2) ストック型フィービジネス
グループで保有する収益不動産からの賃料収入のほか、不動産小口化商品等を販売した後の管理運営に係る報酬を収益の柱としています。さらに、管理受託不動産のプロパティ・マネジメントや、不動産を軸とした資産運用コンサルティング、デューデリジェンスなどのサービスを提供しています。
収益源は、自社保有物件からの賃料収入や、外部オーナーおよび販売先顧客からの不動産管理手数料、各種コンサルティング報酬などです。国内の運営はエー・ディー・ワークスなどが担い、米国では現地子会社が不動産管理を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近4期間の業績をみると、売上高は右肩上がりで推移し、特に直近の2025年12月期は大幅な増収を達成しています。利益面でも増益基調が続いており、経常利益率が上昇するなど、収益性の向上が顕著に表れています。
| 項目 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 279億円 | 413億円 | 499億円 | 675億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 20億円 | 25億円 | 41億円 |
| 利益率(%) | 3.4% | 4.8% | 5.0% | 6.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 14億円 | 16億円 | 33億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い売上総利益が順調に増加しており、売上総利益率も改善傾向にあります。これに加えて、各種費用のコントロールが進んだことで、営業利益も大きく伸び、営業利益率も上昇するなど、本業での強い収益獲得力が確認できます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 499億円 | 675億円 |
| 売上総利益 | 86億円 | 121億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.3% | 17.9% |
| 営業利益 | 32億円 | 50億円 |
| 営業利益率(%) | 6.4% | 7.4% |
販売費及び一般管理費のうち、販売仲介手数料が17億円(構成比24%)、給与手当が14億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の収益不動産販売事業では、物件価値の向上施策が奏功したことや、不動産小口化商品が金融機関等の提携ネットワークを通じて好調に推移したことにより、大幅な増収を牽引しました。一方、ストック型フィービジネスは、一時的な要因等もあり売上は減少しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 収益不動産販売事業 | 443億円 | 624億円 |
| ストック型フィービジネス | 56億円 | 51億円 |
| 連結(合計) | 499億円 | 675億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、不動産担保融資を軸とした資金調達により、好調な仕入活動を支えています。
営業活動では、収益不動産販売事業の好調により利益を計上したものの、棚卸資産の取得や税金等の支払いで資金が減少しました。投資活動では、系統用蓄電所の取得により資金が減少しました。財務活動では、借入金や社債の発行による収入が返済や配当金の支払いを上回り、資金が増加しました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17億円 | -60億円 |
| 投資CF | -3億円 | -13億円 |
| 財務CF | -12億円 | 89億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「ワクを超えるしなやかな発創で、世界を色鮮やかに染め直す。」という存在意義を「北極星(パーパス)」として掲げ、ビジョンには「富の循環を創出し、誰もが心に火を灯せる社会をつくる」を据えています。不動産価値の再創造を通じて社会インフラである既存不動産の潜在的価値を引き出すことを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は事業価値の源泉を人財であると認識し、「多様な人財の能力発揮と組織力強化」をマテリアリティの一つに定めています。全社横断的で自由闊達なコミュニケーションが可能な組織風土の醸成と、従業員一人ひとりが自律的に挑戦できる機会の提供を重視しており、称賛・感謝と挑戦行動の好循環を基礎とした組織文化を構築しています。
■(3) 経営計画・目標
第2次中期経営計画(2024年12月期〜2026年12月期)において、最終的なアウトプット指標であるEPS(1株当たり当期純利益)を毎期10%以上高めることを目指しています。また、自己資本利益率(ROE)の30%程度の維持や、ノンアセット事業シェアの中長期的な30%達成などをモニタリング指標として設定しています。
* 2026年12月期目標:売上高77,000百万円
* 2026年12月期目標:営業利益4,300百万円
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的な企業価値向上のため、事業ポートフォリオの最適化と拡張を推進しています。主力の一棟再販事業の力強い成長を維持しつつ、オフィス区分事業の本格展開を前倒しで進め、成長市場でのシェア獲得を目指します。また、ノンアセット事業を含めた新規事業の創出や、ブランディングの本格化による顧客流入チャネルの強化にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人的資本への投資が持続的な成長に不可欠であるとし、従業員エンゲージメントの向上に注力しています。人事ポリシーや評価・報酬制度の改定、管理職層のマネジメント研修を通じて、多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境を整備し、一人ひとりの自律的かつ創造的な活動を促進する方針を採っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 41.6歳 | 5.0年 | 8,593,000円 |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 54.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 58.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 14.4% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率の目標(30%)、正社員の離職率(前年比9ポイント低下)、管理職層へのマネジメント研修時間(約1,900時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気動向や金利上昇等による不動産市況変動リスク
不動産業界は経済情勢の影響を受けやすく、借入金の支払利息増加や不動産価格の下落圧力が懸念されています。想定以上の資産価値下落や売買需要の低下が生じた場合、同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 資金調達環境の悪化リスク
同社は収益不動産の仕入れ等のために金融機関からの借入を積極的に行っています。特定の金融機関への依存は避けていますが、計画通りの資金調達ができない場合や市場金利の上昇による支払利息の増加が生じた場合、資金調達力が低下し事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 専門人材の確保と代替リスク
同社の事業は専門性の高い知識と経験を有する人材によって成り立っています。特定の幹部人材や中枢を担う人材が業務遂行困難になり適切な代替ができない場合、あるいは採用市場における競争力低下により必要な人材を確保できない場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。



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