アディッシュ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アディッシュ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するアディッシュは、ソーシャルメディアの投稿監視やスタートアップ向けのカスタマーサクセス支援などを行うカスタマーリレーション事業を展開しています。直近の業績は、売上高が順調に推移し営業利益と経常利益が黒字転換したものの、最終赤字が続いており収益性の改善が急務です。


※本記事は、アディッシュ株式会社の有価証券報告書(第12期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アディッシュってどんな会社?


ソーシャルメディアの投稿監視とカスタマーサクセス支援を軸としたカスタマーリレーション事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社は2014年10月にガイアックスからの新設分割により設立されました。2020年3月に上場を果たし、同年8月には現在の主力であるスタートアップ向けのカスタマーサクセス支援サービスの提供を開始しました。その後もカスタマーサクセス人材の紹介サービスや、BPaaS化支援などの新規事業を順次展開し、事業領域を拡大しています。

アディッシュの従業員数は連結で439名、単体で299名です。筆頭株主は創業者の江戸浩樹氏で、第2位はかつての親会社であり現在は主要株主であるガイアックス、第3位は事業会社のコロプラとなっています。

氏名 持株比率
江戸浩樹 10.84%
ガイアックス 6.90%
コロプラ 5.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役は江戸浩樹氏が務めており、社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
江戸浩樹 代表取締役 2004年ガイアックス入社。2011年GaiaX Asia Corporation設立、同代表取締役。2014年アディッシュ設立、同代表取締役社長に就任し現職。
石川琢磨 取締役 2009年クレスコ・コミュニケーションズ入社。2012年ガイアックス入社。2014年アディッシュ取締役に就任し、2015年アディッシュプラス代表取締役に就任し現職。
久保芳和 取締役執行役員財務企画本部長 1988年ジェスコ入社。2016年エス・エス・イー入社。2017年アディッシュ入社。2024年に取締役執行役員財務企画本部長に就任し現職。


社外取締役は、澤博史(元データセクション代表取締役社長兼CEO)、高橋理人(元楽天常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「カスタマーリレーション事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) グロース支援サービス


スタートアップの成長を支援するカスタマーサクセス総合支援や、ソーシャルアプリの利用者からの問い合わせに代行対応するカスタマーサポートサービスを提供しています。

顧客企業からコンサルティング費用や運用リソースの提供対価を受け取る収益モデルです。同社やアディッシュプラスなどが国内外で多言語対応のサービスを展開しています。

(2) アダプション支援サービス


インターネット上の投稿を24時間体制で監視するモニタリングや、学校向けのネットいじめ対策コンサルティング、企業のソーシャルメディア活用を支援するフロントサポートなどを提供しています。

顧客である企業や学校からシステム利用料やコンサルティング費用を受け取る収益モデルです。同社やアディッシュプラスが連携し、チャットボットやAIを用いた炎上対策サービスなども提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では先行投資などの影響により赤字の期間が見られましたが、直近では経常利益が黒字に転換し、収益性の改善の兆しが見え始めています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 30億円 34億円 35億円 36億円 37億円
経常利益 0.7億円 1.1億円 -1.7億円 -1.2億円 0.2億円
利益率(%) 2.4% 3.2% -4.9% -3.3% 0.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.4億円 0.5億円 -2.3億円 -1.5億円 -0.2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率も高水準を維持しています。営業利益についても、継続的な事業拡大とコストコントロールにより黒字転換を果たしています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 36億円 37億円
売上総利益 9.6億円 9.9億円
売上総利益率(%) 26.8% 26.8%
営業利益 -1.3億円 245万円
営業利益率(%) -3.7% 0.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が3.8億円(構成比38%)、業務委託費が0.5億円(同5%)を占めています。

(3) セグメント収益


グロース支援サービスは新規顧客の獲得により売上が順調に拡大しています。一方、アダプション支援サービスは微減となり、全体としては増収を維持している状況です。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
グロース支援 23.9億円 25.5億円
アダプション支援 11.8億円 11.2億円
その他 0.2億円 0.3億円
連結(合計) 35.9億円 37.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、本業で生み出したキャッシュを設備投資や借入金の返済に充てる健全型のキャッシュ・フローパターンを示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -1.9億円 0.1億円
投資CF -0.2億円 -0.3億円
財務CF 2.2億円 -0.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は最終赤字のため算出できませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「つながりを常によろこびに(Delight in Every Connection)」をミッションに掲げ、「As In Your Hometown」というビジョンの実現を目指しています。インターネットを通じた社会が、利用者にとって健全で心地よい「居場所」となるよう貢献することを存在意義としています。

(2) 企業文化


DE&I基本方針を定め、人材の多様性を活かしたキャリア形成を推進しています。また、有志の従業員が参加し、リモートワーク等の勤務制度の策定や従業員同士のコミュニケーションの場を提供する委員会制度を設け、エンゲージメント調査を通じて風通しの良い組織運営を重視しています。

(3) 経営計画・目標


カスタマーリレーション事業がストック型ビジネスモデルであると認識し、契約獲得数の増加及び契約保有数に対する解約率を意識しています。企業価値の増大を目指し、「売上高」と「経常利益」を重要な経営指標としています。

* 2026年12月期 売上高目標:41億円
* 2026年12月期 営業利益目標:0.7億円
* 2026年12月期 経常利益目標:0.7億円

(4) 成長戦略と重点施策


ユーザーサポートからカスタマーサクセスへと支援体制を転換し、スタートアップ企業の成長を支援します。また、SDGsやソーシャルグッドに関する社会テーマに沿った新規サービスの開発やM&Aなどを通じて、新たな収益基盤の創出を図ります。さらに、AIやRPAを活用した業務プロセスの効率化と自動化を推進し、生産性の向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材獲得競争が激化する中で、企業理念に共感し高い意欲を持った人材の確保と育成を重要課題としています。社員の紹介による採用促進や、社員が自身のキャリアを構築できるようなタレントマネジメントに取り組むとともに、多様な働き方を選択できる環境整備と採用活動の高度化を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 33.9歳 4.4年 4,326,360円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.9%
男女賃金差異(正規雇用) 81.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 88.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、指導的地位に占める女性比率(14.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネット関連サービス市場の動向


同社グループはインターネット関連サービス市場を主たる事業領域としており、将来においてインターネットに代わる新たなサービスが提供され、利用機会が減少した場合、事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合の参入と新技術への対応


今後も成長が期待される市場のため、新たな競合企業の参入や、新技術を用いた低コスト・高品質なサービスが登場し、同社の対応が遅れて提供するサービスが不適応化した場合、競争力が低下するおそれがあります。

(3) 契約の突発的な解約リスク


サービス提供先との契約は原則6か月ごとで、3か月前の通知により解約が成立します。同社の意思に関わらず突発的な解約が発生する可能性があり、収益性の高い取引先の解約が多発した場合は業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。