モダリス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

モダリス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

モダリスは東京証券取引所グロース市場に上場し、独自のゲノム編集技術を用いた希少疾患向けの遺伝子治療薬開発事業を展開しています。業績面では研究開発費が先行し、直近5期間は売上の計上がなく、経常損失および当期純損失が継続・拡大しています。今後はパイプラインの臨床移行と提携を通じた収益化を目指しています。


記事タイトル:「モダリス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」

※本記事は、モダリスの有価証券報告書(第10期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. モダリスってどんな会社?


独自のゲノム編集プラットフォーム技術を用いた遺伝子治療薬の研究開発に特化したバイオテクノロジー企業です。

(1) 会社概要


同社は2016年1月に東京で設立され、同年4月に米国マサチューセッツ州に研究開発の拠点となる連結子会社を設立しました。2019年8月に現在のモダリスへ商号を変更し、2020年8月に東京証券取引所マザーズ市場(現在はグロース市場)へ上場しました。2024年には、主力パイプライン「MDL-101」が米国で希少小児疾患指定および希少疾病用医薬品指定を受領するなど、開発を進展させています。

現在の従業員数は連結で17名、単体で3名という少数精鋭の体制です。筆頭株主は代表取締役である森田氏の資産管理会社であり、第2位および第3位には証券会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
LSIM 3.27%
楽天証券共有口 3.07%
SBI証券 2.86%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役CEOは森田晴彦氏が務めています。社外取締役の比率は高く、経営の透明性と監査機能の強化が図られています。

氏名 役職 主な経歴
森田 晴彦 代表取締役CEO 協和キリン、PwC等を経て、2006年にレグイミューン代表取締役CEOに就任。2016年1月に同社代表取締役CEOに就任し、米国子会社CEOを兼任。


社外取締役は、竹田英樹(元アステラス製薬)、ジョセフ・マクラッケン(元Roche)、嶋根みゆき(元中外製薬)、田島照久(公認会計士)、古田利雄(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「遺伝子治療薬開発事業」の単一事業を展開しています。

(1) 遺伝子治療薬開発事業


独自のプラットフォーム技術「切らないCRISPR技術(CRISPR-GNDM技術)」を用いて、希少疾患に属する遺伝子疾患に対する治療薬の開発を行っています。患者数が少なく治療薬が存在しない領域において、遺伝子を切断せずに標的遺伝子の発現をオン・オフする新しいアプローチで、クリーンかつ安全性の高い医薬品の創出を目指しています。

収益モデルは、製薬企業等と共同開発し契約一時金やマイルストン収入等を得る「協業モデル」と、自社で開発を進め特定の段階でライセンスアウトする「自社モデル」を組み合わせたハイブリッドモデルを採用しています。事業の運営は同社および米国子会社のModalis Therapeutics Inc.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間を通じて売上高の計上はなく、先行して多額の研究開発投資を行っているため、継続して経常損失および当期純損失を計上しています。当期は研究開発の進展に伴い、赤字幅が前年から拡大する結果となりました。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 - - - - -
経常利益 -12.3億円 -20.0億円 -23.5億円 -13.0億円 -21.5億円
利益率(%) - - - - -
当期利益(親会社所有者帰属) -7.4億円 -27.0億円 -23.9億円 -13.2億円 -21.5億円

(2) 損益計算書


売上高の計上はなく、研究開発費や管理部門のコストが先行して発生している状況です。当期は研究開発業務の外注費や材料費が増加したことに伴い、営業損失の赤字幅が前年から拡大しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 -13.4億円 -22.1億円
営業利益率(%) - -


販売費及び一般管理費(当期2.3億円)のうち、支払報酬が0.6億円(構成比27%)、役員報酬が0.5億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は遺伝子治療薬開発事業の単一セグメントです。現在はいずれのパイプラインも開発段階であり、製品売上やライセンス等による売上高の計上はありません。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
遺伝子治療薬開発事業 - -
連結(合計) - -

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字ですが、将来の成長と収益化に向けて新株予約権の行使等による資金調達を行い、研究開発への投資を継続している「勝負型」の局面です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -14.3億円 -21.2億円
投資CF -0.0億円 -0.0億円
財務CF 30.4億円 13.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)はデータがありませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は93.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「Every life deserves attention(すべての命に、光を)」を企業理念に掲げています。コアとなるプラットフォーム技術「CRISPR-GNDM技術」を用いた創薬により、その多くが希少疾患に属する遺伝子疾患に対して治療薬を次々と生み出し、病気のために希望を失わなくてすむ社会の実現に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


先端医療である遺伝子治療やゲノム編集に対する社会の正しい理解を促進するため、情報発信や啓発活動を重視しています。また、研究開発においてはあらかじめ設定されたスケジュールの遵守よりも、生物学的・臨床的な準備状態の最適化を優先し、データに基づいた規律ある意思決定を行う姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


医薬品の開発においては研究期間が長期間にわたるため、一般的な財務指標を目標とすることは適さないと考えています。そのため、同社は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、年間IND申請件数(うち臨床段階への移行数)、パートナーとの契約条件、自社パイプライン比率などを設定し、企業価値の向上を図っています。

(4) 成長戦略と重点施策


「協業モデル」による早期の収益獲得と、「自社モデル」による上市後の大きな収益獲得の特徴を組み合わせたハイブリッドモデルの構築を目指しています。自社技術の優位性を確保するため研究開発体制や知財ポジションを強化するとともに、国内外の製薬企業や製造・販売パートナーとの連携を広げ、より多くのターゲットに対する創薬を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


研究開発分野における専門的な知識と技能を持った優秀な人材の確保と育成を重視しています。世界中の製薬会社が集まる米国ボストンエリアに研究開発拠点を置き、博士号取得者等の高度な研究人材へのアクセスを高めています。多様な人材が活躍できる人事制度やフレックスタイム制度、株式報酬制度の導入など、働きやすい環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 37.0歳 1.4年 6,137,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新薬開発の不確実性と副作用リスク

医薬品の開発には長い年月と多額の費用を要し、臨床試験で有用な効果が確認できない場合や予期せぬ副作用が発現する可能性があります。承認取得の遅延や開発中止となった場合、投じた資金が回収できなくなり、同社グループの業績に重大な影響を及ぼす恐れがあります。

(2) 特定のパートナーへの依存リスク

同社の事業は独自の創薬技術に基づきますが、開発した候補品は製薬会社等のパートナーと共同研究やライセンス契約を結んで進められます。パートナーの経営方針の変更や経営環境の悪化等により契約が期間満了前に終了した場合、事業収益計画に大きな影響を与える可能性があります。

(3) 知的財産権を巡る競合リスク

ゲノム編集領域は世界中の企業や研究機関による激しい競争状態にあります。同社が依存する基本特許等のライセンス契約が継続できなくなるリスクや、第三者の知的財産権に関する係争が生じるリスクがあり、これらが同社の事業展開や競争優位性に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 資金調達と先行投資に伴う財務リスク

同社のような創薬ベンチャーは多額の研究開発資金を必要とし、先行投資の期間が長期に及びます。安定的な収益源を確保するまでの期間において、必要なタイミングで十分な資金調達を実施できなかった場合、事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。