※本記事は、KIYOラーニング株式会社の有価証券報告書(第16期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. KIYOラーニングってどんな会社?
同社は、個人向けオンライン資格講座や法人向け社員教育クラウドを展開するEdTech企業です。
■(1) 会社概要
2008年に個人向け資格取得支援サービス「通勤講座」(現スタディング)を開始し、2010年にKIYOラーニングとして法人化しました。2017年には法人向け社員教育クラウド「エアコース」の提供を開始し、2020年に株式上場を果たしました。近年は転職支援や出版事業など新規領域にも進出しています。
現在の従業員数は単体で118名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の綾部貴淑氏で、第2位は事業会社のビジョナル、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 綾部 貴淑 | 40.08% |
| ビジョナル | 5.93% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は綾部貴淑氏が務めています。社外取締役が選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 綾部 貴淑 | 代表取締役社長 | 1996年日本オラクルに入社。2003年にアイエイエフコンサルティングに入社し、2010年1月に同社を設立して代表取締役社長に就任し現職。 |
| 星野 真幸 | 取締役CHRO・コーポレート本部長 | 東レ、ベネッセコーポレーションを経てウイングアーク1stで人事部副部長等を歴任。プレミアアンチエイジングを経て2023年に同社へ入社し現職。 |
社外取締役は、植野和宏(植野和宏公認会計士事務所所長)、赤松平太(第一中央法律事務所所属弁護士)です。
2. 事業内容
同社は「キャリア支援プラットフォーム事業」および「人的資本活用プラットフォーム事業」を展開しています。
■(1) キャリア支援プラットフォーム事業
個人の資格取得やキャリア形成を支援するサービスを提供しています。主要サービスであるオンライン資格講座「スタディング」は、スマートフォン等ですきま時間を使って効率的に学べる仕組みが特徴です。ビジネスパーソン向けを中心に多数の資格講座を展開し、忙しい社会人の学習をサポートしています。
収益は、個人の受講者がコース購入時に支払う受講料が主な源泉です。また、資格取得後の転職を支援するダイレクトリクルーティングサービス「スタディングキャリア」では、採用企業からの成功報酬を得るモデルを採用しています。本事業の運営は同社が行っています。
■(2) 人的資本活用プラットフォーム事業
企業の人的資本活用を包括的に支援するサービスを提供しています。主力となるのは法人向け社員教育クラウド「エアコース」で、各種の社員教育コースが受け放題で受講できるほか、自社独自の教育コースを簡単に作成・配信する機能を備え、企業の採用や育成を総合的にサポートしています。
エアコースは、初期費用がかからず利用ユーザー数に応じて月額利用料金を企業から受け取るSaaS型のサブスクリプションモデルを収益源としています。また、企業独自の教育動画制作サービスや法人向け生成AIサービスの提供なども行い、多様なニーズに対応しています。本事業の運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して力強い成長を続けており、5年間で約2倍以上に拡大しています。利益面では一時的に積極的な広告投資や採用強化等による先行投資で赤字となった期もありましたが、直近は増収増益基調に回帰し、収益性の向上が進んでいます。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 23億円 | 28億円 | 38億円 | 45億円 | 50億円 |
| 経常利益 | 1億円 | -2億円 | 1億円 | 2億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | 6.5% | -6.4% | 3.7% | 4.8% | 6.0% |
| 当期利益 | 1億円 | -2億円 | 1億円 | 2億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の順調な拡大に伴い、売上総利益も増加しています。原価率は低く高い粗利率を維持しており、販売費及び一般管理費を吸収して営業利益率の改善が進み、増益を達成しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 45億円 | 50億円 |
| 売上総利益 | 38億円 | 42億円 |
| 売上総利益率(%) | 85.9% | 83.5% |
| 営業利益 | 2億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | 4.8% | 6.0% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が22億円(構成比56.2%)、給料及び手当が10億円(同24.5%)を占めています。売上原価のベースとなる当期総製造費用のうち、経費が8億円(構成比88.0%)、労務費が1億円(同12.0%)を占めています。
■(3) セグメント収益
個人向け資格取得事業と法人向け教育事業のいずれも順調に売上を伸ばしています。特に法人向け教育事業は、受け放題コースの拡充や企業ニーズを取り込んだことで着実に成長しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 個人向け資格取得事業 | 39億円 | 42億円 |
| 法人向け教育事業 | 6億円 | 8億円 |
| その他 | - | 0.1億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4億円 | 7億円 |
| 投資CF | -1億円 | -1億円 |
| 財務CF | -0.2億円 | - |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「学びを革新し、誰もが持っている無限の力を引き出す」をミッションに掲げ、人間が本来持っている能力を最大限に引き出す支援を使命としています。また、「世界一『学びやすく、わかりやすく、続けやすい』学習手段を提供する」というビジョンのもと、人材育成の新たなスタンダードとなることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、学習を単なる「勉強」ではなく、「人や組織が今までできなかったことをできるようにする手段」と捉える価値観を重視しています。常に顧客目線を心掛け、世の中の早い変化に適応し、変化をチャンスとして捉えて活かすための学習体験を、テクノロジーの力で革新し提供することを大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は持続的な成長と企業価値向上を目指し、全社的な経営指標として売上高と営業利益を重視しています。個人向け事業では現金ベース売上高および新規有料登録会員数を、法人向け事業では売上高、契約企業数、平均解約率をKPI(重要業績評価指標)に設定し、事業運営を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期的な成長に向け、既存事業の強化とプラットフォーム展開による収益源の多様化を推進しています。具体的には、AIや受講データを活用した個別最適化による個人向け資格取得市場でのシェア拡大や、法人向けクラウド「エアコース」の機能拡張による企業の人材育成支援の強化、技術革新への積極的な投資を掲げています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、ミッションに共鳴する優秀な人材の適時採用と、持続的な成長を支える人材育成を強化しています。自社サービスである「スタディング」や「エアコース」を活用した学習支援、社内勉強会の実施など教育投資を推進しています。また、経営陣との1on1や定期的なサーベイを通じ、社員のエンゲージメント向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 39.0歳 | 3.0年 | 7,494,041円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 20.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
※同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、有報には男女賃金差異の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合環境の激化
eラーニング市場の拡大に伴い、既存事業者によるオンライン講座の拡充や新規参入が活発化しています。同社は独自の「ラーニング・テクノロジー」の強化に取り組んでいますが、巨大資本等の参入により競争力が低下した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 急速な技術革新への対応
AIをはじめとする技術革新のスピードが速く、市場環境も急激に変化しています。同社は自社サービスへのAI活用を推進していますが、技術革新が予想を超えて加速し、適時なサービスアップデートや人材確保が困難となった場合、業績に影響する可能性があります。
■(3) 情報セキュリティとシステム障害
インターネットを介してサービスを提供しており、受講者の個人情報や動画コンテンツなどの重要情報を保有しています。自然災害やサイバー攻撃等による予期せぬシステム障害の発生や、不正アクセスによる情報漏洩が起きた場合、社会的信用の失墜を招き、業績に影響を及ぼすリスクがあります。



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