※本記事は、トヨクモ株式会社の有価証券報告書(第16期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. トヨクモってどんな会社?
法人向けクラウドサービスを開発し、企業の業務効率化を支援しています。
■(1) 会社概要
2010年にサイボウズの子会社として設立され、2011年に主力事業の安否確認サービスの提供を開始しました。2014年のマネジメントバイアウトにより独立した経営体制へ移行し、2020年に新規上場を果たしました。2025年にはプロジェクト・モードを子会社化し、ナレッジ管理ツール領域にも進出しています。
現在の従業員数は連結で116名、単体で85名です。筆頭株主は創業社長の資産管理会社であるナノバンクで、第2位は事業提携先であり元親会社のサイボウズ、第3位は個人の田里友彦氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ナノバンク | 45.66% |
| サイボウズ | 7.30% |
| 田里友彦 | 4.32% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼マーケティング本部長は山本裕次氏が務め、取締役における社外取締役の比率は40%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山本裕次 | 代表取締役社長兼マーケティング本部長 | 1990年野村證券入社。2000年サイボウズ入社後、取締役等を歴任。2010年同社代表取締役社長に就任。2025年より現職。 |
| 石井和彦 | 取締役経営管理本部長 | 1992年住友銀行入行。2003年サイボウズ入社後、執行役員等を歴任。2015年同社取締役に就任し、2017年より現職。 |
| 木下正則 | 取締役開発本部長 | 2013年システムズ・デザイン入社。2016年同社入社後、執行役員開発本部長を経て、2020年より現職。 |
社外取締役は、平野一雄氏(元富士通エフサス取締役執行役員常務)、矢野克尚氏(元大塚商会取締役兼常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「法人向けクラウドサービス事業」を展開しています。
■(1) 安否確認サービス
災害時に従業員等の安否確認をスマートフォンやパソコンで行うクラウドサービスです。被害状況の把握や対策指示、事前準備等の機能を備え、有事の情報共有ツールとして機能します。
利用期間に応じて毎月料金が発生するサブスクリプション型の収益モデルです。運営はトヨクモが行っており、代理店を通じた販売パートナー経由と直接販売により顧客企業へ提供しています。
■(2) kintone連携サービス
サイボウズが提供する業務アプリ構築サービス「kintone」をより便利に活用するための連携サービス群です。帳票印刷、Webフォーム作成、データ公開など、基本機能では実現できない用途を支援します。
サービスごとに設定された月額利用料を顧客企業から受け取るストック型の収益モデルです。運営はトヨクモおよびトヨクモクラウドコネクトが行っており、ライセンス販売も手掛けています。
■(3) NotePM
業務マニュアルやノウハウを一元管理できるナレッジマネジメントツールのクラウドサービスです。強力な検索機能や編集機能を備え、企業の業務属人化の解消や情報共有の効率化を支援します。
利用企業から月額利用料を受け取る継続課金型のビジネスモデルです。運営は2025年に子会社化したプロジェクト・モードが行っており、直接販売に加えて代理店を通じた販売も展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、利益は継続的に拡大しており、直近2年間では売上高も31億円から49億円へと大幅な増収を達成しています。経常利益率も30%台を維持し、高い収益性を確保しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | - | - | 31億円 | 49億円 |
| 経常利益 | - | - | - | 12億円 | 16億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | 36.9% | 33.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 4億円 | 6億円 | 9億円 | 12億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。売上総利益率は95%を超える極めて高い水準を維持しており、クラウドサービス特有の高収益構造が定着しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 31億円 | 49億円 |
| 売上総利益 | 31億円 | 47億円 |
| 売上総利益率(%) | 97.2% | 95.8% |
| 営業利益 | 12億円 | 16億円 |
| 営業利益率(%) | 36.9% | 33.0% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が13億円(構成比42%)、給料及び手当が6億円(同21%)を占めています。売上原価は主にサーバー運用に係る労務費や通信費で構成されています。
■(3) セグメント収益
同社は法人向けクラウドサービス事業の単一セグメントですが、サービス別の売上高を見ると、kintone連携サービス等が前年比で大幅に伸長し、全体の成長を牽引しています。安否確認サービスも安定的な成長を続けています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 安否確認サービス | 10億円 | 13億円 |
| kintone連携サービス等 | 21億円 | 36億円 |
| 連結(合計) | 31億円 | 49億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金を借入返済や投資に充てる「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 13億円 | 20億円 |
| 投資CF | -0.7億円 | -14億円 |
| 財務CF | -1億円 | -4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は30.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.8%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「すべての人を非効率な仕事から解放する」ことをミッションに掲げ、「情報サービスをとおして、世界の豊かな社会生活の実現に貢献する」ことを企業理念としています。一過性のブームではなく、企業文化として継続的に利用される「ITの大衆化」を目指し、IT初心者にも使いやすいクラウドサービスを提供しています。
■(2) 企業文化
顧客が「簡単」「便利」に使えることにこだわり、日常的にITツールを活用していない初心者にも分かりやすいサービス設計を重視しています。また、オンライン完結型の営業体制や個別のカスタマイズを行わない方針など、間接コストを最小限に抑えた効率的な事業運営を追求する文化が定着しています。
■(3) 経営計画・目標
有償契約数、MRR(Monthly Recurring Revenue:毎月継続して生じる収益)、チャーンレート(解約率)を重要な経営指標として掲げています。有償契約数の増加と解約率の低減によるMRRの拡大を追求し、売上高および利益を持続的に成長させることを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
安否確認サービスでは、実際の災害時と同等の負荷を検証する大規模テストの実施や、サプライチェーン全体での利用訴求を進めています。kintone連携サービスでは、上位コースの契約促進による単価向上や自治体・大企業向け販売体制の構築に注力し、NotePMではマス広告を活用した認知度拡大と代理店販売の強化を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「優れた技術を持ち、新たな価値の創造に挑戦することのできる人材を確保、育成していくこと」を重要課題としています。継続的な採用活動に加え、能力を発揮できる環境を整えるため、積極的な平均年収の向上や労働環境の整備に取り組んでいます。また、自社サービスに係る資格取得の支援など、従業員への教育研修も強化しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 33.2歳 | 3.2年 | 9,470,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は関連法令により公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、防災士保有者数(4名)、kintone認定アソシエイト保有者数(35名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) クラウドサービス市場の技術革新
インターネット業界の早い技術革新スピードへの対応が遅れ、提供するサービスの競争力が低下した場合や、想定外のシステム投資が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。エンジニアの育成やAI技術の積極採用で対応しています。
■(2) 特定サービスおよび特定取引先への依存
kintone連携サービスはサイボウズの「kintone」に依存しており、売上高全体の約6割を占めています。サイボウズとのパートナー契約が解除された場合や同サービスの競争が激化した場合に業績へ影響するリスクがあり、他サービスの拡販で依存度の軽減を図っています。
■(3) 顧客情報等の情報管理体制
クラウドサービスにおいて多数の顧客情報や情報資産を取り扱っているため、外部への情報漏洩が発生した場合には社会的信用の低下や損害賠償により業績に影響が及ぶ可能性があります。ISO/IEC 27001認証を取得し、適切な管理に努めています。



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