※本記事は、株式会社ポピンズの有価証券報告書(第10期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ポピンズってどんな会社?
ファミリーケア事業から保育施設の運営まで、働く女性のライフステージをフルラインで支援する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1987年3月にジャフィサービスとして設立され、同年10月に初の事業所内保育所を開設しました。1993年4月に法人向け在宅保育サービスを開始し、1996年にポピンズコーポレーションへ商号変更後、シルバーケア事業にも参入しました。2016年10月に持株会社体制へ移行し、2020年12月に上場を果たしています。
現在の従業員数は連結で3,222名、単体で56名です。筆頭株主は創業者の資産管理会社であるスピネカで、第2位は創業者の轟麻衣子氏、第3位は光通信KK投資事業有限責任組合となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| スピネカ | 40.55% |
| 轟 麻衣子 | 13.52% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合 | 5.02% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長グループCEOの轟麻衣子氏が率いています。社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 轟 麻衣子 | 代表取締役社長グループCEO | メリルリンチインターナショナル等を経て、2010年より同社顧問に就任。2024年より現職。 |
| 田中 博文 | 取締役専務執行役員CFO兼CCO | ドイツ証券等を経て、田中公認会計士事務所代表に就任。2025年より現職。 |
| 田村 篤司 | 取締役執行役員COO | 楽天グループ執行役員や楽天モバイル取締役副社長等を経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、村上臣(元ヤフー執行役員)、小峯力(中央大学教授)、平山景子(元NTTドコモ等)、蒲地正英(公認会計士)、木南麻浦(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファミリーケア事業」「エデュケア事業」「プロフェッショナル事業」および「その他」事業を展開しています。
■ファミリーケア事業
ナニー(教育ベビーシッター)やベビーシッターによる在宅保育サービス、高齢者向け在宅ケアのシルバーケアサービス、家事支援サービスを提供しています。働く女性やその家族が主な顧客です。
利用時間に応じた料金を顧客から受け取る収益モデルです。ナニーサービスやシルバーケアサービスはポピンズファミリーケアが、ベビーシッターサービスはポピンズシッターが運営しています。
■エデュケア事業
認可保育所、認証保育所、事業所内保育所、学童保育施設、インターナショナルスクールなどをフルラインで運営しています。多様なニーズを持つ保護者や法人、自治体が顧客となります。
自治体からの施設型給付や委託料、法人からの業務委託料、利用者からの保育料などを収益源としています。施設の運営はポピンズエデュケアが行っています。
■プロフェッショナル事業
乳幼児教育のノウハウを活かし、保育士や子育て支援員向けの研修、海外研修、調査・研究サービスを提供しています。自治体、企業、個人などが主な顧客です。
自治体からの委託料や受講者からの受講料などを収益源としています。教育研修や調査研究の運営はポピンズプロフェッショナルが行っています。
■その他
保育士の有資格者を派遣・紹介する人材サービス、不妊予防ポータルサイトや企業研修などの不妊予防事業、ペットケアサービスなどを提供しています。
派遣先や紹介先の保育事業者などから手数料を受け取ります。人材サービスはウィッシュが運営し、不妊予防事業はポピンズファミリーケア、ペットケアはポピンズシッターが運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
表示期間において売上高は一貫して増加傾向にあり、順調に事業規模を拡大しています。経常利益は一時的に減少した時期があったものの、直近2期間は再び増益基調に転じ、利益率も5%台を維持して安定した収益力を示しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 247億円 | 263億円 | 289億円 | 317億円 | 344億円 |
| 経常利益 | 16億円 | 14億円 | 13億円 | 16億円 | 18億円 |
| 利益率(%) | 6.5% | 5.2% | 4.5% | 5.0% | 5.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 6億円 | 6億円 | 6億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の成長に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。売上総利益率と営業利益率も前期から改善しており、コストコントロールと事業の効率化が進んでいることが伺えます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 317億円 | 344億円 |
| 売上総利益 | 66億円 | 75億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.8% | 21.8% |
| 営業利益 | 16億円 | 18億円 |
| 営業利益率(%) | 5.0% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が15億円(構成比27%)、租税公課が10億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のエデュケア事業が全体の売上を牽引しており、施設数の拡充などにより着実に成長しています。また、ベビーシッターやシルバーケアの需要増を受けたファミリーケア事業も大きく売上を伸ばし、全社の増収に貢献しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| ファミリーケア事業 | 66億円 | 81億円 |
| エデュケア事業 | 240億円 | 253億円 |
| プロフェッショナル事業 | 6億円 | 7億円 |
| その他 | 5億円 | 4億円 |
| 連結(合計) | 317億円 | 344億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 18億円 | 15億円 |
| 投資CF | 6億円 | -4億円 |
| 財務CF | 9億円 | -19億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.9%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.1%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「働く女性を 最高水準のエデュケアと介護サービスで支援します。」をミッションとして掲げています。創業以来、働く女性の支援を続け、社会課題の解決を事業成長のエンジンと捉え、社会的価値と経済的価値を両立する経営を推進しています。「エデュケア」とは教育と保育を組み合わせた独自の理念です。
■(2) 企業文化
サービスポリシーとして「寄り添うように」「慈しむように」「信頼に足るように」「妥協しないように」を定めています。お客様の心の声を感じ、愛情と敬意に満ちた確かなサービスを提供し、果てしなき質の向上に挑み続けることを重視しています。多様な人材が活躍できるダイバーシティ&インクルージョンも推進しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年12月期を最終年度とする「中期経営計画2030」を策定し、高い成長性と資本効率の規律の両立を目指しています。魅力的な社員の採用・育成とテクノロジーの活用により生産的な働き方を実現します。
・営業利益30億円以上
・ROE15%
■(4) 成長戦略と重点施策
ライフステージに応じた切れ目のないサービスラインナップで働く女性を支援し、最高水準の品質維持向上を図ります。安定的なエデュケア事業を基盤とし、ニーズの高いファミリーケア事業を成長ドライバーとしてポートフォリオ経営を推進します。また、DX投資やM&Aなどを通じて事業領域の拡大とプラットフォーム機能の強化を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を「宝」と位置づけ、「働きがい」「成長」「待遇」が好循環するサイクルを最重要戦略としています。女性管理職比率の高い多様な人材が多角的な教育プログラムを通じてプロフェッショナルとして習熟する体制を構築し、評価・報酬制度や待遇の抜本的な見直しも進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 45.7歳 | 4.3年 | 8,069,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 42.9% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 51.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 32.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 72.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(約77%)、女性取締役比率(30.8%)、顧客満足度(98.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 少子化や待機児童数の変動
少子化の進行により児童数が減少した場合、ナニーやベビーシッター、保育施設の利用ニーズが減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。一方で、女性の就労率上昇等により潜在的な待機児童数は高止まりすると見込んでおり、多様なニーズへの対応を進めています。
■(2) 国や自治体の政策・制度変更
ベビーシッター利用支援事業や介護保険法、保育所の許認可や補助金など、国や自治体の方針や法的規制が同社グループの事業基盤に大きく関わっています。これらの制度が縮小・変更された場合、事業成長や業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 人材の確保と育成の難航
保育士やベビーシッター、ケアスタッフなど、サービス運営に不可欠な人材の獲得競争が激化しています。予定した人材の確保に遅れが生じた場合や、稼働状況が想定を下回った場合、施設の運営やサービス提供に影響を及ぼす可能性があります。



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