※本記事は、株式会社I-neの有価証券報告書(第19期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. I-neってどんな会社?
ヘアケア製品「BOTANIST」「YOLU」や美容家電「SALONIA」などの自社ブランドを展開する美容系メーカーです。
■(1) 会社概要
2007年に美容関連商品の企画・販売を目的に設立され、2015年にボタニカルライフスタイルブランド「BOTANIST」を発売しました。その後、2020年に東証マザーズ(現グロース)へ上場し、2021年にはナイトケアブランド「YOLU」を発売、2023年に東証プライム市場へ市場変更を果たしています。直近では2024年にトゥヴェール等のM&Aを実施し、事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で433名、単体で408名となっています。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の大西洋平氏の資産管理会社であるCOHであり、第2位も大西洋平氏個人、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| COH | 41.78% |
| 大西 洋平 | 10.37% |
| THE BANK OF NEW YORK 133652(常任代理人:みずほ銀行決済営業部) | 3.83% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は大西洋平氏が務めており、社外取締役の比率は71.4%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大西 洋平 | 代表取締役社長 CEO | 2005年Y.B.O設立。2007年同社を設立し代表取締役社長に就任。2024年より現職。 |
| 原 義典 | 取締役執行役員 CFO | 2007年P&G入社。2022年同社に入社し、経営管理本部長等を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、笹俣弘志(A.T. カーニー シニアパートナー)、水留浩一(元あきんどスシロー社長)、堀川健(元ポーラ・オルビスHD執行役員)、山中典子(元サントリーHD グループ監査部)、古本結子(元三菱商事 コンプライアンス・オフィサー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内事業」および「海外事業」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。
■国内事業
ヘアケアブランドの「BOTANIST」や「YOLU」、美容家電の「SALONIA」、スキンケアの「WrinkFade」など、自社開発のブランド商品を国内の一般消費者や小売店に向けて提供しています。
国内の卸売事業者を通じてドラッグストアや量販店等へ販売するほか、インターネットを活用した一般消費者への直接販売(D2C)により収益を獲得しています。事業の運営は主にI-neおよび子会社のDr.SYUWAN、Endeavour、トゥヴェール等が行っています。
■海外事業
同社が開発したブランド商品を海外の一般消費者や販売代理事業者、美容専門店、ドラッグストア等に向けて提供しており、現在は台湾・香港などの東アジア、シンガポールなどの東南アジア、および米国の市場に展開しています。
インターネットを活用した海外消費者への直接販売や、海外のインターネット販売事業者・卸売事業者を通じた販売により収益を得ています。事業の運営は主にI-neおよび子会社の艾恩伊(上海)化粧品、I-ne US等が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあり、順調な事業規模の拡大が伺えます。経常利益は2024年12月期まで増加を続けていましたが、2025年12月期は戦略的な投資等の影響もあり減少に転じています。これに伴い、直近の利益率も低下傾向にあります。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 284億円 | 353億円 | 416億円 | 450億円 | 490億円 |
| 経常利益 | 23億円 | 35億円 | 43億円 | 46億円 | 38億円 |
| 利益率(%) | 8.2% | 9.8% | 10.4% | 10.2% | 7.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 19億円 | 40億円 | 30億円 | 21億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い売上総利益も順調に増加していますが、販売費及び一般管理費が大きく増加したことにより、営業利益および営業利益率は前年度と比較して低下しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 450億円 | 490億円 |
| 売上総利益 | 240億円 | 287億円 |
| 売上総利益率(%) | 53.4% | 58.7% |
| 営業利益 | 45億円 | 39億円 |
| 営業利益率(%) | 10.1% | 7.9% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が63億円(構成比25.4%)、販売手数料が35億円(同13.9%)、荷造運賃が34億円(同13.5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内事業は、既存ブランドのリニューアルや新商品の発売、M&Aによるスキンケアブランドの伸長などにより増収となりました。一方、海外事業は中国領域での売上減少等により減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 国内事業 | 437億円 | 477億円 |
| 海外事業 | 13億円 | 12億円 |
| 連結(合計) | 450億円 | 490億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業による営業CFの獲得に加え、定期預金の取り崩し等による投資CFのプラスを活用し、借入金の返済などの財務活動を進める改善型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.4億円 | 41億円 |
| 投資CF | -104億円 | 8億円 |
| 財務CF | 92億円 | -36億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.0%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も49.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
Missionとして「We are Social Beauty Innovators for Chain of Happiness 私たちは、美しく革新的な方法で、“幸せの連鎖”が溢れる社会の実現に挑戦し続けます。」を掲げています。商品を通じて顧客に幸せな体験を届けることで、社会や地球環境、従業員などステークホルダー全体に広がる幸せの連鎖の最大化を目指しています。
■(2) 企業文化
Missionを追求するために3つの価値観(Values)を定義し、「Innovate(常識にとらわれずアイデアを出す)」「Commit(大胆な目標に粘り強く挑む)」「Respect(感謝・謙虚・利他のマインドを持つ)」を掲げています。さらに、顧客を「ボス」と呼び顧客視点を徹底する「ボス目線」などの8つの行動指針(Credo)を設けています。
■(3) 経営計画・目標
事業拡大および企業価値向上を示す指標として、売上高、営業利益率、EBITDAマージンを重要な経営指標と位置付けています。2026年度には売上高の再成長加速に向けた大規模な戦略的投資を実施予定であり、一時的に営業利益率が減少する想定ですが、2027年以降の回復基調および高収益化を目指して経営を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力ブランドのシェア拡大に加え、独自のブランド開発モデル「IPTOS」を活用したスピーディーな新商品投入や新規カテゴリーへの参入を推進しています。また、海外戦略として米国を重要市場と位置づけ販路拡大を図るほか、M&Aを通じた新たな強みの獲得やブランドポートフォリオの最適化を進め、持続的な成長に向けた戦略的投資を実行しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
競争優位の源泉を「人材」と位置付け、「多様な人材が活動・活躍できる環境作り」「人材の可能性を最大限引き出す機会の提供」「企業カルチャーの浸透」の3つを重要戦略として推進しています。柔軟な働き方の導入、競争力のある報酬水準の実現、1on1ミーティングの積極推奨などにより、従業員のモチベーション向上と次世代経営人材の育成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 36.7歳 | 4.7年 | 7,122,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 33.3% |
| 男性育児休業取得率 | 73.0% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 68.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 130.0% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員のウェルビーイングの実現を測る幸せ指標のTOP2比率(50%以上)、年1回以上の従業員のボランティア参加割合(80%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定のブランドへの依存及び競争の激化
「BOTANIST」や「SALONIA」などの主力ブランドにおいて、同業他社や新規参入による競争が激化しています。顧客の嗜好変化などにより主力ブランドへの支持が低下し市場シェアが変動した場合、同社グループの財政状態および経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 新製品開発およびポートフォリオ運営について
継続的な成長に向けて新製品の開発・市場投入を進めていますが、顧客ニーズの変化や競合他社の類似商品投入等により、新製品の販売が当初の想定を下回る場合があります。また、開発案件の中止等により想定した製品投入が実現しない場合、投資効率が低下し業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 原材料調達について
商品の原材料である天然油脂や石油関連原料の価格は、世界景気、地政学的リスク、為替などの影響を受けます。急激な価格変動による原価の上昇や、サプライチェーンの混乱による調達トラブルが生じた場合、商品の安定供給に支障をきたし業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 特定の製造委託先への依存について
主力ブランドの製造において、特定の製造委託先や協力工場での生産への依存度が高まっています。委託先の経営方針の変更や経営悪化、供給能力の低下が発生した場合、代替の製造先を確保するまでに一時的な在庫不足等を引き起こし、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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