※本記事は、株式会社I-neの有価証券報告書(第18期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. I-neってどんな会社?
ボタニカルライフスタイルブランド「BOTANIST」や美容家電「SALONIA」等を展開するビューティーカンパニーです。
■(1) 会社概要
2007年に設立され、2012年にヘアアイロン『SALONIA』、2015年に『BOTANIST』を発売し成長しました。2020年に東証マザーズへ上場し、2023年には東証プライム市場へ区分変更しました。2024年10月には株式会社Artemisおよび株式会社トゥヴェールを子会社化するなど、M&Aによる事業拡大も進めています。
連結従業員数は434名、単体では407名です。筆頭株主は同社代表取締役社長の資産管理会社である株式会社COHで、第2位は代表取締役社長の大西洋平氏です。第3位は資産管理業務を行う信託銀行が保有しています。創業社長とその関連会社が過半数の株式を保有するオーナー系企業としての側面を持ちます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| COH | 42.49% |
| 大西 洋平 | 18.59% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 12.89% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性2名(監査等委員含む)の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長 CEOは大西 洋平氏です。社外取締役比率は66.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大西 洋平 | 代表取締役社長 CEO | 2007年3月に同社を設立し代表取締役社長に就任。以後、関連会社の役員を経て、2024年1月より現職。 |
| 原 義典 | 取締役執行役員 CFO | 2007年にP&Gジャパン入社。同社やシンガポール拠点でファイナンス業務に従事。2022年にI-neに入社し、経営管理本部長等を経て2024年3月より現職。 |
社外取締役は、笹俣弘志(A.T. カーニー シニアパートナー)、堀川健(元ポーラ・オルビスホールディングス執行役員)、山中典子(公認会計士)、古本結子(元三菱商事法務部)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内事業」および「海外事業」を展開しています。
■国内事業
自社開発したヘアケア製品、美容家電、スキンケア等のブランド商品を展開しています。主要ブランドには「BOTANIST」「SALONIA」「YOLU」「DROAS」などがあります。ドラッグストアやバラエティショップなどの小売店に加え、インターネットを活用した直販も行っています。
収益は、卸売事業者を通じた小売店・量販店への卸売販売による売上と、ECサイトを通じた一般消費者への直接販売による売上で構成されています。運営は同社のほか、連結子会社の株式会社Dr.SYUWAN、株式会社Endeavour、株式会社Artemis、株式会社トゥヴェールが行っています。
■海外事業
中国、台湾、香港等の東アジアや、シンガポール、マレーシア等の東南アジア、米国において、自社ブランド商品の販売を行っています。各国の市場特性に合わせ、オンラインおよびオフラインでの展開を進めています。
収益は、海外の一般消費者へのインターネット直販による売上や、現地の販売代理店、小売店への卸売販売による売上で構成されています。運営は同社のほか、連結子会社の艾恩伊(上海)化粧品有限公司(清算手続き中)、I-ne US Co., Ltd.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けており、第14期の約234億円から第18期には450億円へと倍増近くまで拡大しています。利益面では、経常利益も順調に増加傾向にあり、利益率は概ね10%前後で安定して推移しています。当期利益については、第17期に関係会社株式売却益による一時的な増加がありましたが、それを除けば堅調な推移を見せています。
| 項目 | 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 234億円 | 284億円 | 353億円 | 416億円 | 450億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 23億円 | 35億円 | 43億円 | 46億円 |
| 利益率(%) | 5.9% | 8.2% | 9.8% | 10.4% | 10.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 17億円 | 14億円 | 40億円 | 31億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。販管費も増加していますが、売上高の伸長に伴い営業利益は増加しました。営業利益率は10.2%と前期と同水準を維持しており、効率的な経営が継続されています。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 416億円 | 450億円 |
| 売上総利益 | 222億円 | 240億円 |
| 売上総利益率(%) | 53.4% | 53.4% |
| 営業利益 | 44億円 | 46億円 |
| 営業利益率(%) | 10.5% | 10.2% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が52億円(構成比26.7%)、荷造運賃が27億円(同13.8%)、販売手数料が27億円(同13.6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内事業は、主力ブランドの堅調な推移や新商品の投入、M&Aによる新規ブランドの加入により増収増益となりました。海外事業も売上高は伸長しましたが、営業損失が継続しています。全社費用等の調整額が増加しており、全体の利益率に影響を与えています。
| 区分 | 売上(2023年12月期) | 売上(2024年12月期) | 利益(2023年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内事業 | 405億円 | 437億円 | 68億円 | 80億円 | 18.3% |
| 海外事業 | 11億円 | 13億円 | -7億円 | -7億円 | -55.2% |
| 調整額 | - | - | -17億円 | -27億円 | - |
| 連結(合計) | 416億円 | 450億円 | 44億円 | 46億円 | 10.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、短期の運転資金を自己資金および短期借入金で調達し、長期の運転資金や設備投資は長期借入金や新株発行で賄う方針です。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上等があったものの、法人税等の支払いや売上債権の増加等により、前連結会計年度と比較して減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社株式の取得や定期預金の預入等により、使用額が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加等により、獲得額が増加しました。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12億円 | 0.4億円 |
| 投資CF | 25億円 | -104億円 |
| 財務CF | -2億円 | 92億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「We are Social Beauty Innovators for Chain of Happiness(私たちは、美しく革新的な方法で、“幸せの連鎖”が溢れる社会の実現に挑戦し続けます。)」をMissionに掲げています。商品を通じて顧客に幸せな体験を届け、喜びや笑顔を生み出すとともに、雇用や利益創出に努め、ステークホルダー全体に広がる幸せの連鎖の最大化を目指しています。
■(2) 企業文化
Missionを追求するために大切にしたい3つの価値観を「Values」(Innovate、Commit、Respect)として定めています。また、具体的な行動指針として「ボス(顧客)目線」「Ownership」「In-N-Output」「最上志向」「Speedful」「Feedback is a Gift」「Knowledge & Share」「Do the Right Thing」の8つの「Credo」を掲げ、これらを軸とした組織運営を行っています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、事業拡大および企業価値向上を示す重要な経営指標として、売上高成長率、営業利益率、EBITDAマージンを位置付けています。また、長期ビジョンの達成に向け、2028年から2030年を目途に以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:1,000億円
* EBITDAマージン:14%
■(4) 成長戦略と重点施策
「ブランド創出力」「OMO(Online Merges with Offline)」「IPTOS(独自の商品開発モデル)」を強みに、継続的な成長を目指しています。主力であるヘアケアカテゴリーではシェア拡大と商品ラインナップの拡充を図り、美容家電では中高価格帯商品や新カテゴリーへの展開を進めます。また、スキンケア等の新規領域やM&Aを通じた事業拡大、およびアジア・米国を中心としたグローバル展開を推進することで、ブランドポートフォリオの確立を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
グローバル展開を含む成長推進のため、人材への投資を最重要視しています。Missionに共感し熱意ある人材の採用・育成を強化するとともに、従業員がモチベーション高く働ける環境や仕組みを整備しています。具体的には、多様なバックグラウンドを持つ人材の採用、オンライン会議やフレックス勤務等の柔軟な働き方の推進、評価と報酬の連動性向上、次世代経営人材の育成会議の実施などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年12月期 | 35.8歳 | 4.6年 | 6,914,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 36.5% |
| 男性育児休業取得率 | 11.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 57.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、課長職にしめる女性従業員の割合(51.4%)、部長職以上にしめる女性従業員の割合(21.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定のブランドへの依存及び競争の激化
主力ブランドである「BOTANIST」「YOLU」「SALONIA」の売上構成比が高く、これらの市場での競争激化や消費者の嗜好変化により支持が変動した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。ブランドポートフォリオの構築や知的財産権の確保によりリスク分散を図っています。
■(2) 経済情勢及び市場動向の変化に関するリスク
収益の大部分を日本国内およびアジア地域で得ているため、同地域の経済情勢や個人消費動向の影響を受けます。特にヘアケア、ボディーケア、スキンケアカテゴリーの市場動向の変化は業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 原材料調達に関するリスク
製品に使用する天然油脂や石油関連原料の市場価格変動や、供給トラブルによる調達難のリスクがあります。原価低減施策や製造委託先の分散、サプライヤーとの協働により、影響の軽減と安定調達に努めています。
■(4) 安全性及びリコール発生等の品質リスク
商品の品質・安全性には万全を期していますが、予期せぬ品質不良やリコールが発生した場合、損害賠償請求やブランドイメージの毀損により業績に影響を及ぼす可能性があります。品質保証部による管理体制の構築や発売前の安全性試験実施などで品質維持・向上に努めています。



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