ヘッドウォータース 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヘッドウォータース 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヘッドウォータースはグロース市場に上場し、AIやDXを活用して企業の経営課題を解決するAIソリューション事業を展開しています。直近の業績は、生成AI案件の好調により売上高が39.0億円と大幅な増収を達成した一方で、M&Aを含む積極的な投資負担等により当期純利益は赤字転換し、増収減益となっています。


※本記事は、ヘッドウォータースの有価証券報告書(第21期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヘッドウォータースってどんな会社?


同社グループは、AIをはじめとする新技術の社会実装に向けたソリューション開発を展開する企業です。

(1) 会社概要


2005年、東京都新宿区にてソフトウェア開発を目的として設立されました。2014年より人型ロボット向けのアプリ開発を開始し、2018年にはマルチAIプラットフォーム「SyncLect」をリリースしました。2020年にマザーズに上場し、直近の2025年にはLogTechを完全子会社化するなど事業を拡大しています。

現在の従業員数は連結で389名、単体で161名です。筆頭株主は創業者の篠田庸介氏で、第2位は水谷量材氏、第3位は楽天証券共有口となっています。

氏名 持株比率
篠田庸介 46.42%
水谷量材 3.12%
楽天証券共有口 2.93%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役は篠田庸介氏が務めています。社外取締役比率は35.7%です。

氏名 役職 主な経歴
篠田庸介 代表取締役 1989年プレステージジャパングループ入社。1999年ネットマーク(現アイソルート)設立、代表取締役社長。2005年スマートビジョンテクノロジー(現同社)を設立し、代表取締役に就任。
石澤直樹 取締役インテリジェント・テクノロジー事業本部本部長 1997年日本ブレインウェア入社。2006年同社入社。執行役員などを経て、2019年よりインテリジェント・テクノロジー事業本部本部長。
原島一隆 取締役管理本部本部長 2004年エス・アンド・アイ入社。2007年同社入社。2015年執行役員および管理本部本部長に就任。2016年より取締役。
松崎神都 取締役経営企画本部本部長 1999年キジマ技術入社。2008年同社入社。執行役員などを経て、2017年より取締役。2023年より経営企画本部本部長。
疋田正人 取締役投資戦略本部本部長 1998年エスコム入社。2006年同社入社。東忠ヘッドウォータース代表取締役社長などを経て、2024年より投資戦略本部本部長。
西間木将矢 取締役ITインキュベーション事業本部本部長 2009年同社入社。ITインキュベーション事業部SI2部部長などを経て、2022年より取締役。2023年よりITインキュベーション事業本部本部長。
稲葉雄一 取締役 1998年博報堂キャプコ入社。ブランドダイアログ代表取締役社長などを経て、2023年よりBBDイニシアティブ代表取締役社長グループCEO。
柳沢貴志 取締役 1997年NTTメディアスコープ入社。2007年ブランドダイアログ常務取締役などを経て、2023年よりRocketStarter代表取締役社長。
佐藤幸恵 取締役 2007年新日本監査法人入社。2015年佐藤幸恵公認会計士事務所所長。2023年よりBBDイニシアティブ取締役グループCFO。


社外取締役は、竹内道忠(元コクサイエアロマリン帰任)、白川篤典(ヴィレッジヴァンガードコーポレーション代表取締役社長)、大野雅樹(四谷タウン総合法律事務所代表)、伊香賀照宏(timelily代表取締役社長)、三浦謙吾(銀座高岡法律事務所設立)です。

2. 事業内容


同社グループは、「AIソリューション事業」の単一セグメントを展開しています。

同社は顧客企業の経営課題に対し、コンサルティングからAIエージェントの実装・運用、データプラットフォームの構築までを一気通貫で支援するインテグレーションサービスとプロダクトサービスを提供しています。既存のIT技術と業務コンサルティングを組み合わせ、AIやDXの導入効果を最大化する伴走型の支援が強みです。

収益源は、システム開発や導入支援に伴うプロジェクト収益に加え、汎用AIプラットフォーム「SyncLect」のライセンス提供やクラウド利用料などの月額課金型収益から構成されています。事業の運営は、同社およびヘッドウォータースコンサルティングなどの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は4期連続で拡大しており、特に直近は生成AI需要を背景に大きく伸びています。一方、利益面では積極的な投資負担等により当期は赤字に転じています。

項目 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 15.7億円 23.2億円 29.1億円 39.0億円
経常利益 1.1億円 1.0億円 3.6億円 1.3億円
利益率(%) 6.8% 4.2% 12.5% 3.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.5億円 0.6億円 1.5億円 -0.1億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な成長に伴い売上総利益も増加していますが、人件費等の先行投資がかさみ、営業利益は減少傾向となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 29.1億円 39.0億円
売上総利益 12.4億円 17.3億円
売上総利益率(%) 42.7% 44.4%
営業利益 3.1億円 2.3億円
営業利益率(%) 10.6% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6.5億円(構成比43.2%)、人材募集費が1.8億円(同11.9%)、支払手数料が1.5億円(同10.2%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社はAIソリューション事業の単一セグメントであるため、全社売上高の推移となります。生成AI案件等の好調により、大幅な増収を達成しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
AIソリューション事業 29.1億円 39.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ヘッドウォータースのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益や仕入債務の増加等により資金を獲得したものの、売上債権及び契約資産の増加や法人税等の支払額により、使用超過となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や関係会社株式の取得による支出により、大幅に使用超過となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加により、資金を獲得しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 1.4億円 -0.4億円
投資CF -2.1億円 -20.9億円
財務CF 0.1億円 19.1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「新技術の社会実装を通じて世界を変革する」ことをミッションに掲げています。AIやデータ活用をはじめとする先端技術をいち早く捉え、単なる研究にとどまらず、社会課題や企業課題の解決につながる実用的な形で社会に実装し、企業価値を向上させることを基本方針としています。

(2) 企業文化


技術とビジネスの双方を理解し、事業創造を担うビジネスエンジニアの育成を重視しています。エンジニアが顧客の業務現場に近い位置で協働し、課題把握からシステム設計・運用定着までを一体的に支援する独自の開発手法「X-Tech FDE」を通じて、顧客に伴走する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、生産性を向上させ安価かつパフォーマンスの高いサービスを提供することで原価を抑えつつ売上高を拡大していくため、「売上総利益率」を最も重要な経営指針として位置付けています。

(4) 成長戦略と重点施策


「生成AI」を最重要分野と位置付け、マルチモーダルAIやXRソリューションの開発を探求しています。また、ロイヤルクライアント化による顧客の最適化を通じてLTV(顧客生涯価値)と収益性の向上を図るとともに、M&A後の事業統合(PMI)を円滑に進め、優秀な人材の確保と育成に注力していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業を永続的に行うため、多様な属性・採用背景を持つ人材を積極的に確保し、AIエンジニアとして育成することに注力しています。福利厚生や給与制度の改善に加え、フレックス勤務や在宅勤務といった多様な働き方を後押しし、様々な人材がやりがいを持って働ける組織構築に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 35.2歳 4.4年 5,588,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 先端技術の業務フィットに対する課題


AI市場は急速に拡大していますが、顧客の期待値と実際の技術的限界にはギャップが生じる場合があります。進化を続ける技術を現場で実用的に活用・フィットさせられず、技術革新のスピードに対応できなくなった場合、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 開発工数の増加による採算性悪化


システムの受託開発において、仕様の大幅な変更や予期せぬ不具合の発生などにより、当初想定した品質が確保できなくなる場合があります。これにより開発工数が増加し、納入予定日の遅延や採算性の悪化が生じた場合、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 専門人材の確保と育成


同社の基幹事業は知的労働集約型であり、専門技術や知識を有するエンジニアや営業担当者の確保・育成・定着が不可欠です。採用の強化や離職防止策に取り組んでいますが、必要な人材が十分に確保できない場合、事業展開や業績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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