バルミューダ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

バルミューダ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

バルミューダは東京証券取引所グロース市場に上場し、独自の機能とデザインを兼ね備えた家電製品の企画・開発・販売を展開するファブレスメーカーです。空調関連やキッチン関連製品を主力としています。直近の業績は、物価上昇による消費マインド低迷や米国関税政策の影響を受け、減収および営業赤字となっています。


※本記事は、バルミューダ株式会社の有価証券報告書(第23期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. バルミューダってどんな会社?


同社は、独自の機能と洗練されたデザインが特徴の家電製品を企画・開発・販売するファブレスメーカーです。

(1) 会社概要


2003年に設立され、2010年に自然界の風を再現した扇風機「GreenFan」を発売し注目を集めました。2015年にはスチームトースターを発売しキッチン家電にも参入。2020年に株式上場を果たしました。近年は小型風力発電機の研究開発や実証実験を開始するなど、新たな領域への挑戦も進めています。

従業員数は連結104名、単体104名体制で事業を展開しています。筆頭株主は創業者の寺尾玄氏で、第2位は海外の金融機関等の代理人である証券保管預振替機構、第3位は主要な販売先の一つでもあるミツバとなっています。

氏名 持株比率
寺尾玄 67.86%
KOREA SECURITIES DEPOSITORY-SAMSUNG (常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支店) 3.06%
ミツバ 1.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は寺尾玄氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
寺尾玄 代表取締役社長 2003年3月同社設立、代表取締役社長に就任。2013年に欧州子会社のManaging Director、2024年7月に北米子会社のDirector & CEOに就任。より現職。
佐藤雅史 取締役 1996年あさひ銀行入行。事業会社数社を経て2015年6月同社入社。管理本部長などを経て2023年11月取締役に就任。2025年1月に取締役コーポレート部門統括に就任。より現職。


社外取締役は、片山礼子(ミクリード代表取締役社長)、中嶋清昭(元大和証券キャピタル・マーケッツヨーロッパリミテッド社長)、森満彦(森満彦税理士事務所所長)、永井公成(法律事務所ネクシード代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「家電事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 空調関連


扇風機「The GreenFan」をはじめ、加湿器「Rain」、空気清浄機「BALMUDA The Pure」、ポータブルサーキュレーター「GreenFan C2」などの空調家電製品を企画・開発し、消費者に提供しています。自然界の風を再現する二重構造の羽根や低消費電力モーターが特徴です。

主な収益源はこれらの家電製品の販売代金です。自社工場を持たず外部に製造を委託するファブレス方式を採用しており、国内の家電量販店や海外の販売代理店を通じて販売しています。運営は同社および欧州・北米の連結子会社が行っています。

(2) キッチン関連


スチームトースター「BALMUDA The Toaster」を中心に、電気ケトル、オーブンレンジ、コーヒーメーカー、ホットプレートなどのキッチン家電製品を展開しています。独自のスチームテクノロジーや精緻な温度制御、モダンクラシックなデザインが特徴です。

主な収益源はキッチン家電製品の販売による代金です。空調関連と同様にファブレス方式で製造され、国内外の代理店や量販店などを通じて一般消費者に販売されています。運営は同社と連結子会社が担い、写真や動画等のプロモーションコンテンツも社内で制作しています。

(3) その他


空調やキッチン以外の領域として、太陽光LEDを採用したデスクライトやポータブルLEDランタン、全方位に音が広がるワイヤレススピーカーなどを展開しています。近年は海外のデザイン集団と共同開発した製品や時計なども発表しています。

これらの製品の販売代金が収益源となっています。北米での本格的な事業展開に着手するなど、グローバルブランドへの進化を目指して世界市場への展開を強化しています。事業の運営および国内外での販売促進活動は、同社および連結子会社が共同で進めています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は減少傾向が続いています。利益面でも、原材料価格の高騰や急激な為替変動の影響、さらには消費マインドの低迷等を受けて厳しい状況にあり、赤字を計上する期が散見されます。米国等の海外展開による成長を目指していますが、足元では収益性の改善が課題となっています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 184億円 176億円 130億円 125億円 101億円
経常利益 15億円 0.1億円 -12億円 0.9億円 -9億円
利益率(%) 8.0% 0.1% -9.5% 0.8% -8.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 - -21億円 0.6億円 -16億円

(2) 損益計算書


売上高は前年と比較して減少していますが、製造コストの低減や適切な価格設定により、売上総利益率は改善しています。一方、海外戦略への投資を継続したことで販売管理費が増加し、営業赤字となりました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 125億円 101億円
売上総利益 39億円 33億円
売上総利益率(%) 31.2% 32.7%
営業利益 0.1億円 -9億円
営業利益率(%) 0.1% -8.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が7億円(構成比17%)、広告宣伝費が7億円(同16%)、試験研究費が3億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


各カテゴリーにおいて、流通在庫の適正化を目的に出荷を抑制した影響などにより、前年を下回る売上となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
空調関連 21億円 16億円
キッチン関連 95億円 80億円
その他 8億円 6億円
連結(合計) 125億円 101億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、運転資金や設備投資、借入金返済等の資金需要に対し、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入、新株発行等で資金を調達しています。

営業活動では、仕入債務の減少や棚卸資産の増加により、資金の使用となりました。投資活動では、有形固定資産の取得による支出が主な要因です。財務活動では、短期借入金の純増加により、資金を獲得しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 13億円 -6億円
投資CF -2億円 -4億円
財務CF -10億円 3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「卓越した創意工夫と最良の科学技術によって、どこにもなかった素晴らしい方法を創出し、人々の役に立つ」という企業理念(The Vision)のもと、家電という道具を通して、素晴らしい体験を社会にお届けすべく事業活動に取り組んでいます。これらの活動が株主価値および企業価値の最大化につながると考えています。

(2) 企業文化


「礼節・誠実さ・道徳を重んじることができるプロフェッショナルの集団であるべき」という価値観に基づき、多様な人材の採用と登用に取り組んでいます。専門性の高さだけでなく、カルチャーフィットするかどうかを重視し、お互いの価値観を理解しながら挑戦意欲を醸成する文化を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


成長性、収益性および効率性向上を重視した経営が必要と認識しており、企業価値向上のための重要な経営指標として「海外売上高比率」と「売上総利益率」を掲げています。中長期的な成長、収益力の向上および堅実な経営基盤の構築に邁進し、黒字転換を目指す計画です。

(4) 成長戦略と重点施策


世界の顧客層を前提としたビジネスモデルへシフトするため、「グローバルブランドへの進化」を中長期の経営戦略として掲げています。具体的には、米国での本格的な事業展開や、世界市場に向けた新製品の開発を推進しています。また、製品カテゴリー、展開地域、販売チャネルの多様化を加速させ、事業ポートフォリオの分散と収益機会の拡大を図る施策に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「今までにない新しい価値を創造し、お客様に素晴らしい体験をお届けする」というミッションに共感する優秀な人材の採用・育成・定着を重要視しています。教育研修制度の整備や1on1ミーティングによる対話を通じた育成に加え、ライフステージに合わせた働き方を支援するリモートワークや時短勤務制度など、社内環境の整備にも積極的に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 43.0歳 4.5年 8,143,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 150.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には女性管理職比率および男女賃金差異の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品開発とサプライチェーンへの依存


独自の機能・デザインを有する新製品の開発遅延や、市場に受け入れられないリスクがあります。また、同社は自社工場を持たないファブレスメーカーのため、すべての製品を外部の製造委託先から仕入れており、原材料価格の高騰やサプライチェーンの混乱が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外販売代理店への依存


同社は韓国などの海外販売代理店を通じた製品展開を行っており、各代理店における販売戦略の変更や取扱いの停止が生じた場合、売上に影響を与えるリスクがあります。さらに、各国の政治的・社会的な混乱や新たな法的規制、為替変動なども、海外展開における重大な不確実性となります。

(3) 事業体制と有能な人材の確保


新製品開発や事業拡大に向け、機構設計やソフトウェア設計など高度な専門性を有する人材の確保と育成が不可欠です。しかし、人材獲得競争が激化する中で十分な人材を確保できない場合、成長に支障をきたす恐れがあります。また、創業者の寺尾玄氏への経営依存度が高い点も、事業運営上のリスクとして挙げられています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。