ビートレンド転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、ビートレンド株式会社の有価証券報告書(第27期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ビートレンドってどんな会社?
同社はBtoC企業向けにSaaS型CRMプラットフォームを提供し、顧客管理や販促活動を支援しています。
■(1) 会社概要
同社は2000年3月に設立され、同年11月に現在の社名へ変更してメールマーケティングサービスを開始しました。2014年6月にスマートフォンアプリの会員証サービスなどを実現するプランをリリースし、事業を拡大しています。2020年12月には東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)へ上場を果たし、2023年5月には連携システムを取りまとめたパートナープログラムを開始しています。
従業員数は61名です。筆頭株主は同社取締役の永山隆昭氏で、第2位は創業者の井上英昭氏、第3位は金融商品取引業者のSBI証券となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 永山 隆昭 | 47.40% |
| 井上 英昭 | 15.86% |
| SBI証券 | 4.34% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は井上英昭氏です。取締役における社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 井上 英昭 | 代表取締役社長 | 1984年日本ディジタルイクイップメント入社。日本オラクル等を経て2000年3月に同社を設立し代表取締役社長に就任。 |
| 澤田 瑞樹 | 取締役技術、営業統括管掌 | 2006年9月同社入社。技術本部長等を経て、2017年9月に取締役技術管掌に就任。2026年1月より営業統括管掌。 |
| 宮下 省吾 | 取締役企画、営業企画・アライアンス管掌 | 2005年10月同社入社。営業本部営業部長、企画本部長等を経て2023年3月に取締役に就任。 |
| 永山 隆昭 | 取締役 | 1987年日本アイ・ビー・エム入社。サンブリッジ設立等を経て、2000年4月に同社取締役に就任。2010年12月より現職。 |
社外取締役は、雨宮雄一(元ローソンエンタテインメント代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「betrend事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) CRMサービス
消費者向けビジネスを展開する飲食店や小売店などに対し、多様な情報送受信や情報分析が可能なCRMソフトウエアプラットフォーム「betrend」をSaaS型で提供しています。顧客情報を活用したスマートCRMサービスと、メール配信に限定したメールマーケティングサービスの2つに大別されます。
月額定額課金に加え、会員数や通信料に応じた従量料金、店舗毎課金を組み合わせた年間契約を基本とし、継続的に収益を得るストック型のビジネスモデルです。運営は同社が行っています。
■(2) カスタマイズサービス
サービス導入企業に対して、既存システムとの連携や顧客ニーズに合わせた独自のシステム構築など、導入時に必要となるカスタマイズのためのシステム開発を提供しています。
開発費や初期費用のほか、会員登録時のユーザー認証等に利用するSMS配信の都度課金などをワンショットの収益として受け取ります。運営は同社が行っています。
■(3) その他サービス
スマートCRMサービスの周辺領域として、会員データを活用したDM(はがき等)の印刷・納品サービスや、決済機能を利用する顧客企業を決済会社に取り次ぐサービスなどを提供しています。
印刷会社への発注に伴う収益や、決済会社への取り次ぎによる紹介手数料を都度獲得するモデルとなっています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が概ね同水準で推移している一方で、利益面は変動が見られます。特に当期は売上高が維持されたものの、人材やインフラ等への積極的な成長投資を行った影響で各段階損益が赤字に転落しました。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 11億円 | 11億円 | 11億円 | 12億円 | 12億円 |
| 経常利益 | 0.9億円 | 1億円 | 1億円 | 0.8億円 | -0.8億円 |
| 利益率(%) | 8.5% | 13.5% | 9.1% | 6.9% | -7.0% |
| 当期純利益 | 0.6億円 | 1億円 | 0.7億円 | 0.6億円 | -1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年と同水準で推移しましたが、売上原価の増加により売上総利益は減少しました。また、成長基盤の強化に向けた各種投資の実行により販売費及び一般管理費が膨らみ、営業損失を計上しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 12億円 | 12億円 |
| 売上総利益 | 6億円 | 5億円 |
| 売上総利益率(%) | 53.0% | 47.0% |
| 営業利益 | 0.8億円 | -0.8億円 |
| 営業利益率(%) | 6.9% | -7.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3億円(構成比43%)、役員報酬が0.7億円(同12%)を占めています。売上原価については、外注費が2億円(構成比32%)、仕入高が2億円(同27%)、システム利用料が1億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のCRMサービスは、新規案件の獲得や既存顧客のオプション利用により増収となりました。一方でカスタマイズサービスは、新規導入時のシステム開発需要が一服し減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| CRMサービス | 9億円 | 10億円 |
| カスタマイズサービス | 2億円 | 2億円 |
| その他サービス | 0.1億円 | 0.1億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態(積極型)です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1億円 | 0.2億円 |
| 投資CF | -1億円 | -1億円 |
| 財務CF | -0.2億円 | 0.0億円 |
財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.7%でグロース市場の平均(製造業63.5%、非製造業43.3%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「私たちは、顧客価値を創造するプラットフォームを提供し続けることで、社会に貢献します。」を経営理念として掲げています。消費者が所有するモバイル環境を中心に事業を推進し、実店舗を持つ法人向けに最適な環境を提供することを社会的役割として捉え、顧客と消費者の双方に価値をもたらす仕組みの構築を目指しています。
■(2) 企業文化
人材が輝くことで競争力が高まり、持続的な企業価値の向上に寄与すると考えており、ダイバーシティの促進や福利厚生・健康経営の充実に取り組むなど、多様な人材が活躍できる環境整備を重視する企業文化がうかがえます。また、自社で企画からサポートまで一貫して行う体制を整えています。
■(3) 経営計画・目標
2024年から2026年の3年間を対象とした中期経営計画において、「変わりゆく社会において顧客と共に成長するため、これまで培ってきた経験と実績にさらに磨きをかけ、より大きなバリューを提供する。」ことをBetrend VISIONと定めています。
・2026年度ARR(年間経常収益):11.0億円
■(4) 成長戦略と重点施策
将来の収益成長を確実にするため、パートナー企業との協業強化によるリード獲得や、ノーコードツールの活用を通じた案件期間の短縮・受注率向上を図ります。また、アンケートサービス等の提供による客単価の向上や、海外展開への準備、企業間ESG連携クラウドサービスなどGX(脱炭素)領域の新規事業展開を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本経営の拡充を経営の重要課題と位置づけ、成長に向けた組織拡大を推進しています。既存社員の生産性向上や新しいリーダーシップの育成を促進し、人事教育制度の再構築、外国人や女性の活躍といったダイバーシティの促進、福利厚生や健康経営の更なる充実に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 38.9歳 | 6.7年 | 6,570,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は規定による公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) インターネット技術の急速な変化への対応
生成AIや高速通信などの最新インフラへの適応が持続的成長に不可欠です。これらの技術革新に適時に対応できない場合や想定以上の費用がかかる場合、事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は外部技術を柔軟に活用し投資効率の最大化を図っています。
■(2) マーケティングSaaS市場における競合激化
同事業領域は参入企業が多く競争が激しい環境にあります。新規参入企業が独自のAI技術などでBtoBtoC向けCRM領域に参入し、価格競争などが発生して十分な差別化が図れない場合、経営成績に影響を与えるリスクがあります。
■(3) システム障害及びサイバー攻撃リスク
インターネットを介した24時間365日稼働のサービスを提供しているため、想定外のシステム障害や高度なサイバー攻撃によるサービス停止・情報漏洩が生じた場合、顧客の解約や事故対応コストの増加を招くおそれがあります。



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