※本記事は、株式会社スタメンの有価証券報告書(第10期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. スタメンってどんな会社?
「人と組織の力」と「テクノロジーの可能性」を活かしたエンゲージメント向上支援サービスを展開しています。
■(1) 会社概要
2016年1月に設立され、同年8月に創業事業「TUNAG」の開発を開始しました。2017年4月にエンゲージメントプラットフォーム「TUNAG」を正式リリースし、2020年5月にはオンラインコミュニティプラットフォーム「FANTS」の提供を開始しました。同年12月に東京証券取引所マザーズに上場しています。
従業員数は連結で198名、単体で164名です。筆頭株主は創業者の大西泰平氏であり、第2位も創業に関わる加藤厚史氏です。第3位には資産管理業務等を行う海外金融機関が名を連ねています。経営陣と創業メンバーが安定した資本基盤を維持しながら、事業の拡大を推進しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大西泰平 | 17.94% |
| 加藤厚史 | 13.67% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC | 10.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性3名、女性2名の計5名で構成され、女性役員比率は40.0%です。代表取締役社長執行役員CEOは大西泰平氏が務めており、社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大西 泰平 | 代表取締役社長執行役員CEO | 大広、ユニクロ等を経て2016年に同社取締役に就任。副社長執行役員COO等を経て、2023年より現職。スタジアム等の取締役も兼任。 |
| 中谷 奈緒美 | 取締役執行役員CAO | エイチ・アイ・エスを経て2018年に同社入社。コーポレート本部管理部長、取締役常勤監査等委員等を経て、2024年より現職。スタジアム等の取締役も兼任。 |
| 植松 あゆ美 | 取締役(常勤監査等委員) | 有限責任あずさ監査法人を経て2022年に同社に入社し、公認会計士事務所を開所。2024年より現職。他社の社外取締役も兼任。 |
社外取締役は、村瀬敬太(弁護士)、藤田豪人(ROBOT PAYMENT執行役員COO)です。
2. 事業内容
同社グループは、エンゲージメントプラットフォーム事業等のサービスを展開しています。
■従業員エンゲージメント事業(TUNAG)
企業のエンゲージメント向上を支援するプラットフォーム「TUNAG」を提供しています。組織の現状を可視化するサーベイ、専属スタッフによる社内制度の設計支援、そして運用を促進するクラウドツールをワンストップで展開し、企業と従業員、従業員同士の相互信頼関係の構築を支援しています。
クラウド上で提供するサービスの対価を利用期間に応じて受領するサブスクリプションモデルを採用し、アカウント数に応じた月額利用料を主要な収益源としています。同事業の運営はスタメンが主体となって行い、業種・業態を問わず利用企業数を順調に拡大し、安定したストック収益基盤を構築しています。
■コミュニティエンゲージメント事業(FANTS)
「TUNAG」の組織運営ノウハウを拡張し、プロスポーツチームやタレント、クリエイターなどの幅広いコミュニティ向けにプラットフォーム「FANTS」を提供しています。オンラインサロンの開設に必要な入退会や課金、投稿管理機能のほか、デジタルコンテンツの単発販売機能も備えています。
従来のレベニューシェア型からサブスクリプション型の料金体系へ移行し、継続的な利用を前提とした契約形態へ変更したことで、月額利用料等を安定的な収益源としています。事業の運営は2023年に設立された子会社のスタジアムが担い、意思決定の迅速化とさらなる事業展開を進めています。
■クラウドセキュリティサービス(Watchy)
企業のデジタルトランスフォーメーションと多様な働き方に対応するため、クラウドセキュリティサービス「Watchy」を2023年2月より提供しています。社用PCの管理・監視を通じて、IT資産管理や情報漏洩対策、労務管理などをサポートし、情報システム担当者が不在の企業でも簡単に利用できるサービスです。
本サービスも「TUNAG」や「FANTS」と同様にサブスクリプションモデルを採用し、継続的な月額利用料を収益の柱としています。運営はスタメンが行っており、既存のIT資産管理にはないシンプルさと手軽さを強みに、新たなSaaS事業として収益基盤の多層化と強化を目指しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近4期間の業績は、売上高が13億円から38億円へと力強い右肩上がりの成長を続けています。経常利益も1億円から3億円へと順調に拡大しており、サブスクリプション型の安定した収益基盤を背景に、成長投資を行いながらも着実な増益基調を維持しています。利益率は7%から10%の範囲で推移し、売上規模の拡大と高水準のストック比率が全体の成長を牽引しています。
| 項目 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 13億円 | 19億円 | 27億円 | 38億円 |
| 経常利益 | 1億円 | 2億円 | 2億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | 10.2% | 8.7% | 8.4% | 7.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1億円 | 1億円 | 2億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い売上総利益も21億円から28億円へと拡大しています。売上総利益率は70%台の高水準を維持しており、SaaS事業特有の高い収益性を示しています。積極的な事業展開による費用増や投資を吸収しつつ、営業利益も2億円から3億円へと増益を達成しました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 27億円 | 38億円 |
| 売上総利益 | 21億円 | 28億円 |
| 売上総利益率(%) | 77.6% | 73.4% |
| 営業利益 | 2億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | 8.3% | 7.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が9億円(構成比35%)、広告宣伝費が7億円(同30%)を占めています。事業拡大に伴う人材採用やプロダクト開発体制の強化、および認知拡大に向けたマーケティング活動への積極的な投資が行われていることが分かります。
■(3) セグメント収益
同社グループは、エンゲージメントプラットフォーム事業の単一セグメントのため、サービスごとの収益を開示していません。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
スタメンは、コミュニティエンゲージメント事業における「FANTS」のサブスクリプション型への移行や顧客層拡大により、収益基盤の安定化と強化を図っています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上や未払金の増加があったものの、売上債権の増加や法人税等の支払いにより、前年同期から大きく減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の払戻しや差入保証金の回収収入があった一方で、差入保証金や有形固定資産の取得による支出がありました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入があったものの、配当金の支払いと長期借入金の返済による支出がありました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.9億円 | 0.0億円 |
| 投資CF | -3.1億円 | -0.3億円 |
| 財務CF | -0.4億円 | 0.4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「一人でも多くの人に、感動を届け、幸せを広める。」という理念のもと、「人と組織の力」と「テクノロジーの可能性」を活かしたサービスを展開しています。変化の激しい時代においても、自己変革を恐れず、多様な事業領域に挑戦することで、企業としての社会的意義を果たすことを目指しています。
■(2) 企業文化
ビジョン「人と組織で勝つ会社(Win as One)」のもと、3つの行動指針「Get Things Done(やり遂げる)」「Buff the Team(チームにバフを)」「More and Better(より良く、より早く)」を軸にしています。成果へのこだわりや挑戦、変化適応力、チームの一体感などを大切にしながら、継続的な企業価値向上に取り組む文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
持続的な成長を目指していくため、主な経営指標として売上高、営業利益を特に重視しています。また、事業の多くがSaaS・サブスクリプション型のビジネスモデルであるため、以下のKPI(重要業績評価指標)を重要指標として運営を行っています。
・利用企業数・運営コミュニティ数
・利用企業・運営コミュニティの平均月額収益
・売上高ストック比率
■(4) 成長戦略と重点施策
国内市場において売上高成長率の最大化を最優先とし、「TUNAG」と「FANTS」の顧客基盤拡大を推進します。また、企業向けとコミュニティ向けの異なる市場を開拓し、グループで培ったノウハウを活かした多面的な収益拡大を図ります。
・早期のARR(年間経常収益)50億円突破
・新規契約獲得力とアライアンスの強化
・技術革新への対応とデータ活用
・事業ポートフォリオの多層化による収益基盤強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な事業継続と拡大に対応できる人材の採用を継続し、組織体制を整備することを重要課題としています。多様な価値観や経験を有した人材が集まり、相互に信頼しながら最大限のバリューを発揮できる組織を目指し、社内のエンゲージメントを高めて社員が早期に活躍できるよう、環境構築と自己研鑽の支援に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 32.1歳 | 1.8年 | 6,634,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金等を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.7% |
| 男性育児休業取得率 | 71.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 194.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(69.1%)、女性労働者の育児休業取得率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経営環境の変化
働き方改革やデジタルトランスフォーメーション推進といったIT投資マインドが減退するような場合には、顧客企業の新規契約数の減少などを引き起こし、同社グループの財政状態や経営成績、キャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 技術革新への対応
生成AI等の新たなテクノロジーの台頭によりソフトウェア開発の障壁が下がり、市場環境が急激に変化するサービスの陳腐化リスクが顕在化しつつあります。技術革新の変化に適時かつ適切に対応できない場合や、システム投資等に多くの費用を要する場合、業績に影響を与えるおそれがあります。
■(3) 競合の新規参入
人事領域においてクラウドサービスを提供する競合企業が増加しています。AI技術を活用したスタートアップ企業等により代替サービスが低コストかつ短期間で開発され、予期しない競合の登場や価格競争の激化を招いた場合、新規契約数の減少や解約数の増加につながる可能性があります。
■(4) 情報管理体制の漏洩リスク
業務に伴い顧客やその従業員に関する個人情報を含む多数の情報資産を取り扱うため、情報セキュリティマネジメントシステム等の認証を取得し管理体制を強化しています。しかし、何らかの理由により重要な情報資産が外部に漏洩した場合には、社会的信用の失墜や損害賠償責任の発生を招くリスクがあります。



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