Sharing Innovations 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Sharing Innovations 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Sharing Innovationsは東証グロース市場に上場し、システムやクラウド等の導入支援を行うデジタルトランスフォーメーション事業、占いアプリ等を展開するプラットフォーム事業を主軸としています。直近の業績は売上高が前期比減収となり、利益面でも減益となる厳しい結果となりました。


※本記事は、株式会社Sharing Innovationsの有価証券報告書(第18期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Sharing Innovationsってどんな会社?


システム開発とクラウド導入支援、および占いアプリの運営を主軸とし、企業のDXを推進しています。

(1) 会社概要


2008年に設立され、2014年の占いアプリ「ウラーラ」提供開始や、2017年のOrchestra Holdingsの完全子会社化を経て成長してきました。その後、M&Aや事業譲受を通じてシステム開発・クラウドインテグレーション体制を強化し、2021年に東京証券取引所マザーズに上場しました。

現在、グループ全体で212名、単体で193名の従業員を抱えています。筆頭株主は事業会社であるOrchestra Holdingsで、第2位はSBI証券、第3位は個人の芝井敬司氏となっています。

氏名 持株比率
Orchestra Holdings 71.50%
SBI証券 5.70%
芝井敬司 2.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は信田人氏、代表取締役会長は栁径太氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
信田人 代表取締役社長 1999年に日本電信電話(現NTT)に入社。KDDI等を経て、2022年に同社執行役員に就任。2023年に取締役を経て、2024年3月より現職。
栁径太 代表取締役会長 1992年にアクセンチュアに入社。複数企業を経て2014年にデジタルアイデンティティ(現Orchestra Holdings)に入社。2020年6月より現職。
西田祐 取締役CFO 2009年に富士通に入社。ハイアス・アンド・カンパニー等を経て、2022年に同社執行役員コーポレートマネジメント本部長に就任。2023年3月より現職。


社外取締役は、上村紀夫(エリクシア代表取締役)、水谷健彦(JAM代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルトランスフォーメーション事業」および「プラットフォーム事業」を展開しています。

デジタルトランスフォーメーション事業


システム開発やアプリ開発を行うシステムソリューションと、Salesforceなどを中心としたクラウドサービスの導入支援を行うクラウドインテグレーションを提供しています。幅広い業種の企業を顧客としており、技術革新に合わせた柔軟な開発を行えることが強みです。

クライアントからシステム開発の請負や準委任契約による開発支援に対する対価、およびクラウドサービスの導入支援による手数料を受け取ります。運営は主に同社、インタームーブ、Coznet、SHARING INNOVATIONS VIETNAMが行っています。

プラットフォーム事業


占いを主要カテゴリーとしたスマートフォン向けのネイティブアプリの企画・開発・運営を行っており、一般のスマートフォンユーザーを顧客としています。主要サービスである「チャットで話せる占いアプリ-ウラーラ」等を通じてサービスを提供しています。

ユーザーからアプリ内での占い鑑定にかかる鑑定料や占いコンテンツ販売による課金収入を受け取るモデルです。継続的な収益獲得が可能なサービスとして位置づけられており、運営は主に同社およびG clefが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は50億円前後で推移していましたが、当期は減収となりました。利益面でも経常利益や当期純利益の増減が激しく、全体として収益性の確保が課題となっています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 45億円 52億円 51億円 52億円 45億円
経常利益 3.8億円 1.7億円 1.3億円 2.4億円 0.9億円
利益率(%) 8.6% 3.3% 2.5% 4.6% 2.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.5億円 0.7億円 0.4億円 1.3億円 0.1億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益も減少傾向にあります。売上総利益率は21.3%から20.0%へ、営業利益率は4.6%から2.3%へと低下しており、原価や販売費及び一般管理費のコントロールが重要視される局面です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 52億円 45億円
売上総利益 11億円 8.9億円
売上総利益率(%) 21.3% 20.0%
営業利益 2.4億円 1.0億円
営業利益率(%) 4.6% 2.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.0億円(構成比25%)、減価償却費が1.2億円(同15%)を占めています。また、売上原価においては、外注費が24億円(同68%)、労務費が10億円(同28%)と大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


主力のデジタルトランスフォーメーション事業は、人員の再配置などによる影響もあり減収となりました。また、プラットフォーム事業も売上高が微減となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
デジタルトランスフォーメーション事業 47億円 41億円
プラットフォーム事業 4.2億円 4.0億円
連結(合計) 52億円 45億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、積極型(営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態)となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 2.7億円 1.1億円
投資CF -441万円 -0.4億円
財務CF 174万円 0.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「テクノロジーと人の力を通じて、イノベーションを起こし続ける」ことをミッションとして掲げています。世の中の社会課題に向き合い、企業や消費者が新たな価値創造へチャレンジするにあたり、テクノロジーを通じてその実現を支援し、持続的な発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、ミッション達成の最重要キーを「人」と考え、4つの「コアバリュー」を定めています。国籍、年齢、性別等にとらわれない多様性の確保を重視し、これらの価値観に基づいた採用活動や社内環境整備に取り組んでいます。従業員一人ひとりが高い壁に挑み続け、成長を追い求める組織風土の醸成を推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中長期的な事業拡大と収益率向上による企業価値および株主価値の向上を目指しています。重要な経営指標として売上高、売上総利益、営業利益、営業利益成長率を掲げており、特に営業利益成長率については、クラウドインテグレーションが属する国内クラウド市場の年間平均成長率と同程度の成長を目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


デジタルトランスフォーメーション事業においては、成長市場であるクラウドインテグレーション領域で積極的に事業拡大を図るため、AIやデータ分析など新技術に対応できるエンジニアの採用・教育を強化します。また、プラットフォーム事業では、占いアプリ等の既存サービスを継続運営して安定的に収益を生み出しつつ、新たな事業機会の模索を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成方針として、「コアバリュー」に基づき全社の階層別・選抜型教育を実施するとともに、事業部門での専門スキル研修などキャリア開発を行っています。また、毎月社員サーベイを実施し、多様な人材が働きやすい社内環境の整備や、離職防止に向けたコンディションの可視化とケアに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 36.6歳 5.8年 4,879,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 22.2%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 80.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.2%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 68.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グループ全体の全従業員に占める外国籍社員の割合(7.1%)、全従業員に占める女性管理職の割合(3.8%)、男性の平均勤続年数に対する女性の平均勤続年数割合(87.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新への対応


同社グループが展開するインターネット・IT業界は技術革新が絶え間なく行われており、AIの活用等による変化が激しい環境にあります。新技術や新サービスへの対応が遅れた場合、競争力の低下や対応費用の増加により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 優秀なIT人材の確保と定着


デジタルトランスフォーメーション事業は技術的専門性を持つエンジニアによって支えられているため、優秀な人材の確保と定着が重要課題です。少子高齢化や理系離れにより採用競争が激化しており、計画通りに人材を確保できない場合や離職が増加した場合には、事業拡大に支障を来すリスクがあります。

(3) 法的規制への対応と法的リスク


事業運営にあたり、労働者派遣法、下請法、消費者保護法、個人情報保護法など多岐にわたる法的規制を受けています。これらに抵触する事態や法令違反が発生した場合、行政指導や損害賠償、企業イメージの悪化が生じ、業績に重要な影響を与える可能性があります。

(4) 委託先管理およびプロジェクトの採算悪化


システム開発において、要件の変更や不測の事態により追加コストが発生したり、納期遅延・不具合による損害賠償が生じたりするリスクがあります。また、外部協力企業へ業務を再委託する際、適切なプロジェクト管理が行われないと品質低下を招き、社会的信用を損なう恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。