※本記事は、ジェイ・イー・ティの有価証券報告書(第17期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ジェイ・イー・ティってどんな会社?
半導体製造の前工程で不可欠な半導体洗浄装置の開発、設計、製造、販売を主力とする企業です。
■(1) 会社概要
2009年4月にエス・イー・エスの半導体事業を引き継ぐ形で設立されました。同年5月に同社の岡山工場等を事業譲渡により取得し、台湾や中国の現地法人を子会社化しました。2021年3月にTOKYO PRO Marketへ上場し、2023年9月に東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たしました。
従業員数は連結で275名、単体で160名です。大株主の状況について、筆頭株主は親会社が韓国企業であることに関連する証券預託機関のKOREA SECURITIES DEPOSITORY -SAMSUNGで、第2位は代表取締役CEOの房野正幸氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| KOREA SECURITIES DEPOSITORY -SAMSUNG | 66.28% |
| 房野 正幸 | 0.41% |
| 中西 弥重子 | 0.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEOは房野正幸氏です。社外取締役は3名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 房野 正幸 | 代表取締役CEO | 1981年ボーノ入社。1995年エス・イー・エスに入社し執行役員等を歴任。2009年同社設立に伴い取締役就任。2013年代表取締役社長を経て、2025年より現職。 |
| 平井 洋行 | 代表取締役専務 | 1985年エス・イー・エスに入社し常務執行役員等を歴任。2009年同社設立に伴い取締役就任。常務取締役、専務取締役を経て、2026年より現職。 |
| 増田 隆 | 常務取締役 | 1985年大都商事入社。エス・イー・テクノ取締役等を経て、2006年エス・イー・エス執行役員。2010年同社入社。2013年取締役を経て、2015年より現職。 |
| 伊藤 聡 | 取締役 | 1988年エス・イー・エス入社。FIT代表取締役を経て、2022年同社入社。経営統括本部長等を経て、2025年に執行役員CFO兼CSOに就任し、2026年より現職。 |
社外取締役は、田渕裕久(元ライフネット難波社長)、奥田哲也(奥田法律事務所設立)、深尾稔(元TAIYO上席執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体事業」および「その他」事業を展開しています。
■半導体事業
半導体製造の前工程で使用される半導体洗浄装置の開発、設計、製造、販売を主力としています。複数枚のウエハを同時に処理するバッチ式洗浄装置と、1枚ずつ処理する枚葉式洗浄装置を提供しており、韓国、中国、台湾の半導体メーカーを中心に、日本や米国の顧客にも製品を納入しています。
装置の販売や立上に関連する役務の提供、保守用部品の販売、改造、保守サービス等から収益を得ています。半導体洗浄装置の開発や製造、販売は同社が行い、海外での販売支援や保守サービス等は親会社のZEUSや海外子会社のJ.E.T. Semi-Con. International Taiwanなどが担っています。
■その他の事業
半導体関連事業以外での安定した経営基盤の構築を目指し、農産物の生産や販売などを行うアグリ事業に取り組んでいます。OSMICがフランチャイズ展開する農産物生産事業を採用し、高糖度トマトなどの生産技術の向上や品質改善を通じた事業の育成を図っています。
国内の顧客に対する農産物の販売を通じて収益を獲得しています。個別採算管理を徹底し、農地所有適格法人としてのメリットを活かして本事業の収益力および競争力を高めるため、ジェイ・イー・ティ・アグリが独立した法人として生産および販売を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年12月期から2022年12月期にかけては半導体需要の拡大により売上高と経常利益が順調に成長しました。しかし、その後は一部半導体メーカーの投資減速等の影響を受け減収傾向に転じ、2025年12月期には利益率の低い案件の計上等もあり経常損失および当期純損失を計上しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 191億円 | 234億円 | 231億円 | 193億円 | 147億円 |
| 経常利益 | 17億円 | 20億円 | 16億円 | 10億円 | -16億円 |
| 利益率(%) | 8.9% | 8.6% | 6.9% | 5.0% | -10.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 14億円 | 12億円 | 8億円 | -22億円 |
■(2) 損益計算書
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 193億円 | 147億円 |
| 売上総利益 | 40億円 | 13億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.9% | 8.8% |
| 営業利益 | 11億円 | -15億円 |
| 営業利益率(%) | 5.6% | -10.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6億円(構成比21%)、研究開発費が6億円(同20%)を占めています。売上原価(134億円)には、主に製造に要する材料費や労務費、外注費などの経費が含まれています。
■(3) セグメント収益
同社グループは半導体事業を単一の報告セグメントとして展開しており、売上の大部分を占めています。直近では中国ファウンドリ向け装置の販売台数減少などにより主力事業が減収となり、アグリ事業などのその他事業も規模は小さいながら減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 半導体事業 | 193億円 | 146億円 |
| その他 | 0.4億円 | 0.3億円 |
| 連結(合計) | 193億円 | 147億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
キャッシュ・フローの状況は、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなる「健全型」です。本業で得た資金で設備投資を行い、借入金の返済を進めている状態を示しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -14億円 | 31億円 |
| 投資CF | 3億円 | -4億円 |
| 財務CF | 4億円 | -28億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-21.4%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も49.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は企業理念として「お客様第一主義に徹し、強い会社・良い会社づくりに邁進し、人を大切にし、社会貢献に努めてまいります」と掲げています。技術進化の激しい分野に身を置く企業として、「さらなる新技術への挑戦」「より役立つ製品づくり」を軸に進化を続けることを存在意義としています。
■(2) 企業文化
同社は、従業員が心がけるべき信条として「クレド(未来をつくる6つの約束)」を定めています。「精神(一歩踏み出すこと)」「人(お互いを思いやり信頼し合う)」「顧客(顧客第一主義に徹する)」「挑戦」「迅速」「技術」という6つの価値観を重視し、組織の行動様式として共有しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は安定かつ継続した成長を目指し、中期経営計画「Innovation 2027」を策定しています。2025年の業績結果と事業環境を考慮して計画が見直され、2027年12月期における財務目標を以下のように掲げています。
* 売上高 227億円
* 原価率 80.4%
* 営業利益 9.5億円
* 営業利益率 4.1%
■(4) 成長戦略と重点施策
特定の国や顧客への依存を避け、韓国、中国、台湾に加え、日米等の新規市場での拡販を図る方針です。次世代戦略商品として革新的な枚葉式洗浄装置の開発を推進し、他社との差別化を図ります。また、外部委託の活用や設計の見直しを通じたコスト削減により、利益率の改善に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「企業は人なり」の考えのもと、毎年新卒社員を継続して採用し、新たな中堅社員の確保にも積極的です。高度な専門技術を持つエンジニアの確保と早期育成を重視し、インターンシップの実施や海外人材の採用に努めています。また、新たな人材教育システムを含む人事制度を導入し、人材の早期戦力化を図る方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 43.4歳 | 9.9年 | 6,980,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 41.6% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員一人当たりの教育研修時間数(8.9時間)、採用した労働者に占める女性労働者の割合(50.0%)、有給休暇取得率(38.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 半導体市場の変動と地政学リスク
半導体市場は需給バランスの悪化による価格下落など好不況の波があり、急激な需要変動が業績に影響する可能性があります。さらに、米中対立や輸出規制強化などの地政学リスクにより、サプライチェーンの分断や供給制約が生じ、受注取消や納期遅延などが発生するリスクがあります。
■(2) 特定顧客への取引集中
同社の売上高は、特定の韓国大手半導体メーカーグループへの依存度が高く、取引が全体の30%以上を占めています。同社グループの大規模な設備投資計画の変更や大口受注に対する値引き要請、あるいは地政学リスクに伴う投資計画の遅れ等が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 研究開発の遅延
最先端の半導体洗浄技術や乾燥技術等の研究開発に継続して取り組むことで競争力を維持していますが、技術革新のスピードは速く、未知の分野の開発技術も多く存在します。想定外の技術的課題による新製品の投入遅れや、第三者の特許権等との抵触による紛争が発生した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 外注先への依存と生産拠点集中
同社は製品の生産を岡山県の本社工場に集中させており、多数の重要工程を外注先に委託しています。地震などの自然災害や不慮の事故により本社工場や外注先が被災した場合、あるいは協力会社の生産能力逼迫や輸出規制による影響を受けた場合、生産活動が遅延・停止し、財政状態に影響を与えるリスクがあります。



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