※本記事は、株式会社ジェイ・イー・ティの有価証券報告書(第17期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ジェイ・イー・ティってどんな会社?
半導体製造の前工程で使用される洗浄装置の開発から販売までを手掛けるメーカーです。
■(1) 会社概要
2009年、前身となる企業の半導体事業を引き継ぐ形で設立されました。台湾、中国の子会社化を経て、2020年に韓国、2021年に農業法人の子会社を設立し事業を拡大しています。2023年には米国に子会社を設立し、同年、東京証券取引所スタンダード市場への上場を果たしました。
現在の従業員数は連結275名、単体160名となっています。筆頭株主は韓国の証券保管機関(KOREA SECURITIES DEPOSITORY -SAMSUNG)であり、第2位は創業者の房野正幸氏です。実質的な親会社は韓国のZEUSであり、同社グループと連携しながらグローバルに事業を展開しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| KOREA SECURITIES DEPOSITORY -SAMSUNG | 66.28% |
| 房野正幸 | 0.41% |
| 中西弥重子 | 0.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEOは房野正幸氏です。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 房野正幸 | 代表取締役CEO | 1995年スガイ入社。2009年同社設立に伴い取締役就任。2013年代表取締役社長を経て、2026年5月より現職。 |
| 平井洋行 | 代表取締役専務 | 1985年スガイ入社。2009年同社設立に伴い取締役就任。2015年専務取締役を経て、2026年5月より現職。 |
| 増田隆 | 常務取締役 | 2006年エス・イー・エス転籍。2010年同社入社。太陽電池部長、取締役を経て、2015年より現職。 |
| 伊藤聡 | 取締役 | 2022年同社入社。2025年執行役員CFO兼CSOを経て、2026年5月より現職。 |
社外取締役は、田渕裕久(元広島銀行監査部監査役)、奥田哲也(奥田法律事務所設立)、深尾稔(元太陽鉄工上席執行役員販売本部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体事業」および「その他の事業」を展開しています。
■(1) 半導体事業
半導体製造の前工程においてウエハの汚れを取り除く半導体洗浄装置の開発、設計、製造、販売を行っています。また、納入済み装置の改造、部品販売、保守サービスといったフィールドサービスも提供しており、主な顧客は韓国、中国、台湾をはじめとする国内外の半導体メーカーです。
収益は、半導体洗浄装置の本体販売や、顧客工場での装置立ち上げ完了時の代金、および保守用部品の販売・改造・サービス提供による手数料から得ています。事業の運営は同社のほか、台湾、中国、韓国、米国の現地子会社と連携して行っています。
■(2) その他の事業(アグリ事業)
オスミック農産物生産事業のフランチャイズシステムを採用し、農産物の生産および販売を行っています。収益力の向上や個別採算管理の徹底を目的に展開しており、国内の顧客向けにサービスを提供しています。
収益は、国内顧客への農産物の販売代金から得ています。運営は、農地所有などのメリットを活かすため2021年に設立された独立法人のジェイ・イー・ティ・アグリが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、2022年12月期から2023年12月期にかけて売上高は230億円規模で推移していましたが、2024年12月期以降は半導体市況の低迷や一部顧客の投資減速により減収基調となりました。2025年12月期は利益率の低い案件の計上や棚卸評価損等の影響により、各段階で赤字へと転じています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 191億円 | 234億円 | 231億円 | 193億円 | 147億円 |
| 経常利益 | 17億円 | 20億円 | 16億円 | 10億円 | -16億円 |
| 利益率(%) | 8.9% | 8.6% | 6.9% | 5.0% | -10.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 12億円 | 11億円 | 5億円 | -23億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い売上総利益が大きく縮小しています。一方で販売費及び一般管理費は前期比で微減にとどまっており、研究開発や事業基盤への投資負担が重くのしかかった結果、営業損失を計上する厳しい収益構造となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 193億円 | 147億円 |
| 売上総利益 | 40億円 | 13億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.9% | 8.8% |
| 営業利益 | 11億円 | -15億円 |
| 営業利益率(%) | 5.6% | -10.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6億円(構成比21%)、研究開発費が6億円(同20%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメントごとの売上動向を見ると、主力の半導体事業が全体の99%以上を占めています。当期は中国ファウンドリ向けの販売台数減少や新規案件の利益率低下などの影響を強く受け、半導体事業、その他事業ともに前期と比較して売上規模が縮小しました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 半導体事業 | 193億円 | 146億円 |
| その他 | 0.4億円 | 0.3億円 |
| 連結(合計) | 193億円 | 147億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CF・財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-21.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.8%であり、いずれも市場平均を下回っています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -14億円 | 31億円 |
| 投資CF | 3億円 | -4億円 |
| 財務CF | 4億円 | -28億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「お客様第一主義に徹し、強い会社・良い会社づくりに邁進し、人を大切にし、社会貢献に努めてまいります」という企業理念を掲げています。目まぐるしく進化する技術分野において、「さらなる新技術への挑戦」と「より役立つ製品づくり」を経営の軸に据え、常に進化し続ける企業としての使命を表明しています。
■(2) 企業文化
従業員が心がけるべき信条として「クレド-未来をつくる6つの約束」を定めています。「精神」「人」「顧客」「挑戦」「迅速」「技術」の6つの柱からなり、夢と情熱を持ち、お互いを思いやりながら顧客第一主義に徹することや、常にスピードと効率を意識して新しい技術に挑戦する姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
安定かつ継続した成長を目指し、中期経営計画「Innovation 2027」を策定しています。持続的な成長を実現するため、2027年12月期に向けた具体的な財務目標として以下の数値を掲げています。
・売上高:227億円
・原価率:80.4%
・営業利益:9.5億円
・営業利益率:4.1%
■(4) 成長戦略と重点施策
特定の国や顧客への依存を避け、韓国・中国・台湾に加えて米国や日本への販売施策を進めることで売上の安定拡大を目指しています。また、次世代の戦略商品である「革新的枚葉式洗浄装置」の市場投入を急ぐとともに、外部委託の積極的な活用や設計段階からの見直しによるコスト低減に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
技術革新の激しい半導体洗浄装置業界で成長を続けるため、高度な専門技術を持つエンジニア等の中核人材の確保と育成を最重要課題と位置付けています。新卒社員の継続的な採用と早期育成に努めるほか、中堅社員の積極的な採用や海外人材の採用にも取り組み、多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 43.4歳 | 9.9年 | 6,980,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 41.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した労働者に占める女性労働者の割合(50.0%)、有給休暇取得率(38.3%)、社員一人当たりの教育研修時間数(8.9時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 半導体市場の変動とサプライチェーンリスク
半導体市場は技術革新や需給バランスの変化により好不況の波があり、需要の減少による価格下落等のリスクがあります。また、地政学的緊張や米中対立によるサプライチェーンの分断、輸出規制の強化などが生じた場合、供給制約や納期の遅延、受注取り消しが発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定顧客への取引集中リスク
同社の売上高のうち、韓国の特定の大手顧客グループに対する割合が30%以上を占めています。同顧客の大規模な設備投資計画の変更や、値引き要請による収益圧迫、さらには地政学的リスクによる投資計画への影響が生じた場合、同社の経営成績に直接的な悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 外注先への依存と生産遅延リスク
製品の生産工程の多くを外注先に委託しています。自然災害や不慮の事故による外注先の被災、あるいは規制強化等の影響で既存の外注先との契約継続が困難になった場合、生産活動が一時的に停止または遅延し、同社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 品質問題と安全保障貿易管理リスク
同社の製品は未知の領域を含む最先端技術を用いており、予期せぬ不具合が発生した場合、顧客の生産計画に支障を来し補償費用等が増加するリスクがあります。また、軍事転用可能な部品を含むため、厳格な輸出管理規制への対応に要するコストの増加や、法規制違反時に輸出制限を受ける可能性があります。



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