※本記事は、株式会社ジェイ・イー・ティの有価証券報告書(第16期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ジェイ・イー・ティってどんな会社?
半導体製造の前工程における洗浄装置の開発・製造・販売を主力とし、バッチ式洗浄装置で高いシェアを持つ企業です。
■(1) 会社概要
2009年に設立され、エス・イー・エス株式会社の半導体事業を譲り受ける形で事業を開始しました。2020年には韓国現地法人を設立して製造体制を強化し、2021年にTOKYO PRO Marketへ上場しました。その後、2023年9月に東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たし、同年10月には米国現地法人を設立するなど、グローバル展開を加速させています。
2024年12月31日現在、従業員数は連結で293名、単体で169名です。筆頭株主は、親会社である韓国のZEUS Co., Ltd.(実質保有者)であり、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。同社はZEUSグループの一員として、韓国市場等での強固な顧客基盤を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| KOREA SECURITIES DEPOSITORY -SAMSUNG | 66.28% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 1.37% |
| 楽天証券 | 0.83% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEOは房野 正幸氏が務めています。社外取締役比率は約43%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 房野 正幸 | 代表取締役CEO | 1995年エス・イー・エス(現同社前身)入社。同社設立時より取締役を務め、2013年代表取締役社長に就任。2025年1月より代表取締役CEO兼CTO。 |
| 平井 洋行 | 専務取締役 | 1985年エス・イー・エス入社。同社設立時より取締役を務め、2013年常務取締役を経て2020年9月より現職。韓国子会社理事長を兼任。 |
| 増田 隆 | 常務取締役 | 1985年大都商事(現ダイトロン)入社。エス・イー・テクノ常務等を経て2010年同社入社。2019年3月より現職。台湾および上海子会社董事長を兼任。 |
| 伊藤 聡 | 取締役CFO | 1988年三協エンジニアリング入社。FIT代表取締役を経て2022年同社入社。経営統括本部長等を経て2025年3月より現職。 |
社外取締役は、田渕 裕久(元広島銀行美鈴が丘支店長)、奥田 哲也(奥田法律事務所設立)、深尾 稔(元TAIYO上席執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 半導体事業
半導体製造の前工程で使用される洗浄装置の開発、設計、製造、販売を行っています。主力製品は、多数のウエハを同時に処理する「バッチ式洗浄装置」と、1枚ずつ精密に洗浄する「枚葉式洗浄装置」です。特にバッチ式では高い世界シェアを有し、顧客ニーズに合わせたカスタマイズ対応を強みとしています。
装置の販売に加え、納入済み装置の改造、保守用部品の販売、保守サービス等のフィールドサービスから収益を得ています。運営は主にジェイ・イー・ティおよび韓国の製造子会社J.E.T. Korea Co., Ltd.が行っており、台湾や中国の現地法人が販売支援やアフターサービスを担っています。
■(2) その他
株式会社OSMICがフランチャイズ展開する「オスミック農産物生産事業」を採用し、高糖度ミニトマト等の農産物の生産・販売を行っています。半導体事業の変動を補完し、安定した収益基盤を構築することを目的としています。
農産物の販売により収益を得ています。運営は主に連結子会社の株式会社ジェイ・イー・ティ・アグリが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2023年12月期までは売上高・利益ともに拡大傾向にありましたが、直近の2024年12月期は減収減益となりました。半導体市場の設備投資需要の変動を受けやすい傾向にありますが、過去5期間全体で見ると一定の利益水準を確保しています。
| 項目 | 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 126億円 | 191億円 | 231億円 | 250億円 | 179億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 17億円 | 19億円 | 24億円 | 7億円 |
| 利益率(%) | 5.2% | 8.9% | 8.2% | 9.8% | 3.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 10億円 | 14億円 | 16億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上高が減少し、それに伴い各利益段階でも減益となっています。売上総利益率および営業利益率も低下しており、固定費負担の影響や製品構成の変化などが収益性を圧迫した形となっています。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 250億円 | 179億円 |
| 売上総利益 | 55億円 | 37億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.2% | 20.8% |
| 営業利益 | 26億円 | 8億円 |
| 営業利益率(%) | 10.5% | 4.4% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が6億円(構成比22%)、給料手当が5億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
半導体事業が売上の大部分を占めており、同事業の減収が全社の業績低下に直結しています。その他事業(アグリ事業)の規模は限定的です。
| 区分 | 売上(2023年12月期) | 売上(2024年12月期) |
|---|---|---|
| 半導体事業 | 250億円 | 178億円 |
| その他 | 0億円 | 0億円 |
| 連結(合計) | 250億円 | 179億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「救済型」のキャッシュ・フロー状態です(本業赤字を資産売却+借入で補填)。
なお、本業の営業CFマイナスは主に前受金の減少によるものであり、投資CFのプラスは定期預金の解約によるものです。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -12億円 | -14億円 |
| 投資CF | 1億円 | 3億円 |
| 財務CF | -3億円 | 4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.6%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「お客様第一主義に徹し、強い会社・良い会社づくりに邁進し、人を大切にし、社会貢献に努めてまいります。」という企業理念を掲げています。技術進化の激しい分野において、「さらなる新技術への挑戦」「より役立つ製品づくり」を軸に進化し続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
従業員が心がけるべき信条として「クレド(未来をつくる6つの約束)」を定めています。「精神(一歩踏み出す)」「人(お互いを思いやる)」「顧客(感動を与える)」「挑戦(姿勢を大切にする)」「迅速(スピードと効率)」「技術(継承と育成)」の6項目を行動指針としています。
■(3) 経営計画・目標
2024年12月に策定した中期経営計画「Innovation 2027」において、安定・継続した成長を目指し、最終年度の数値目標を設定しています。
* 2027年12月期目標
* 売上高:275億円
* 営業利益:30億円
* 営業利益率:10.9%
■(4) 成長戦略と重点施策
2025年および2026年を新製品の種まきと新組織の足固め期間と位置づけ、主力市場(韓国・中国・台湾)での新製品「BW3500」の拡販や、日本・北米市場での事業展開を推進します。また、次世代戦略商品として新型枚葉式洗浄装置の開発に注力し、原価低減策として設計見直しや内製化に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
技術革新の激しい半導体洗浄装置業界において成長を続けるため、高度な専門技術を持つエンジニア等の確保と育成を必須としています。新入社員の定期採用や早期育成に加え、国内外での優秀な人材不足に対応するため、インターンシップや海外人材の採用など積極的な採用活動を継続しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年12月期 | 43.3歳 | 9.6年 | 7,270,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.8% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 54.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 63.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 44.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 半導体市場変動による影響
半導体市場は技術革新や需給バランスにより大幅な成長と一時的な縮小を繰り返す特徴があります。予期せぬ市場縮小が起きた場合、顧客からの受注キャンセル、納期延期による売上期ずれ、在庫増加、顧客の財務悪化による貸倒れ等が発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定顧客への取引集中による影響
売上高に占めるSamsung Electronics Groupへの割合が高く(2024年12月期は32.4%)、同社グループとは長年の良好な関係にありますが、同社の設備投資計画の変更や大口受注に対する値引き要請等があった場合、業績に影響が出る可能性があります。
■(3) 研究開発による影響
洗浄技術等の最先端技術について継続的な研究開発を行っており、新製品の早期市場投入が競争力の源泉となっています。しかし、研究開発の遅延により新製品の投入タイミングが遅れた場合、競争力が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 安全保障貿易管理に関する影響
製品や部品の輸出において外国為替及び外国貿易法等の規制を遵守する必要がありますが、法改正や規制強化、経済安全保障政策の強化により顧客が制裁対象となった場合、輸出制限やリードタイムの長期化等が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。特に米国の対中規制動向は重要です。



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