ユミルリンク転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、ユミルリンクの有価証券報告書(第28期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ユミルリンクってどんな会社?
メッセージングプラットフォーム「Cuenote」を展開し、企業のデジタルコミュニケーションを支援するIT企業です。
■(1) 会社概要
1999年7月にWebシステム制作請負を目的として設立されました。2003年にメール配信ASPサービス(現Cuenote FC)の提供を開始し、2009年に製品を「Cuenote」ブランドに統一しました。2011年にアイテック阪急阪神が親会社となり、2021年9月に東京証券取引所マザーズへ上場しています。直近では2024年にROCを子会社化し、SNS関連事業にも進出しました。
従業員数は連結で163名、単体で141名です。筆頭株主は事業会社のアイテック阪急阪神で、過半数の株式を保有する親会社となっています。第2位は資産管理業務を行う外国法人、第3位は創業時からのメンバーであり代表取締役社長である清水亘氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アイテック阪急阪神 | 51.82% |
| USBK NA JP I&W TS(常任代理人 三菱UFJ銀行) | 12.10% |
| 清水 亘 | 6.81% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は清水亘氏が務めています。社外取締役は3名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 清水亘 | 代表取締役社長 | 1992年仏光堂入社。2001年パイプドビッツを経て2002年に同社入社。Forcast事業部統括や開発本部長などの要職を歴任し、2008年3月より現職。 |
| 小林幹彦 | 常務取締役 | 1983年阪神電気鉄道入社。不動産事業本部開発営業室部長や阪神ステーションネット代表取締役会長等を経て、2019年3月に同社常務取締役に就任し、現在に至る。 |
| 渡邉弘一 | 取締役 | 2001年日本テクノ開発入社。2005年同社入社後、セールス本部営業企画部シニアマネージャーやマーケティング本部ゼネラルマネージャー等の要職を歴任し、2018年3月より現職。 |
| 高比良実 | 取締役 | 1995年キャリアスタッフ入社。2006年えむぼまを経て、2012年に同社入社。カスタマー本部ネットワーク部シニアマネージャーなどを経て、2020年3月より現職。 |
| 斎田誠 | 取締役 | 1993年阪神電気鉄道入社。2000年にアイテック阪神へ出向し、同社マルチメディア事業本部長や常務執行役員インフラソリューション事業本部長などを歴任。2023年3月より現職。 |
社外取締役は、鏑木祥介(イノテック常務執行役員)、菊川泰宏(元兼松エレクトロニクス社長)、伊達有希子(新千代田総合法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループはメッセージングソリューション事業の単一セグメントであるため、主要なビジネスモデルごとに事業を展開しています。
同社グループは、消費者のエンゲージメント向上を目的とした法人のマーケティング・コミュニケーション活動を支援するメッセージングプラットフォーム「Cuenote」シリーズを開発・提供しています。主力製品である「Cuenote FC」は、数百万件から数千万件の大規模な宛先にもメールを高速配信する性能を持ち、販売・来店促進や自治体の緊急速報など幅広い用途で利用されています。
収益モデルは、自社開発ソフトウェアをクラウドサービスとして提供するSaaS形式と、顧客環境に構築するソフトウェア形式の2種類があります。SaaSの収益は初期設定売上と毎月の利用料によるサブスクリプション型で構成されます。運営は主にユミルリンクが行っており、子会社のROCがSNS運用代行などの事業を手掛けています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近2期間の業績を見ると、売上高は着実な成長を続けており、当期は30.5億円に達しています。経常利益も6.4億円から6.7億円へと増加傾向にありますが、のれんの減損損失を計上したことなどにより、当期利益は前期を下回る結果となりました。全体として、本業の収益力は堅調に推移しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 26.7億円 | 30.5億円 |
| 経常利益 | 6.4億円 | 6.7億円 |
| 利益率(%) | 23.9% | 22.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4.8億円 | 3.6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い、売上総利益も順調に増加しており、当期は19.9億円となっています。売上総利益率は65%を超える高い水準を維持しています。また、積極的な投資や人員増強を行いながらも、営業利益率は22.0%と高水準を確保しており、SaaSビジネス特有の安定した高収益体質が表れています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 26.7億円 | 30.5億円 |
| 売上総利益 | 18.0億円 | 19.9億円 |
| 売上総利益率(%) | 67.3% | 65.1% |
| 営業利益 | 6.4億円 | 6.7億円 |
| 営業利益率(%) | 23.9% | 22.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が5.5億円(構成比42%)、広告宣伝費が1.1億円(同8%)を占めています。売上原価については、技術者及びSNS製作者増員による労務費やSMS配信増に伴う通信費などが増加要因となっています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえる状態です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6.0億円 | 5.0億円 |
| 投資CF | -1.5億円 | -1.9億円 |
| 財務CF | -億円 | -2.7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「価値の高い情報サービスの創造と提供を通して社会に貢献し、常に期待される企業を目指す。」という企業理念を掲げています。この理念のもと、デジタルコミュニケーションを通じた法人のマーケティング活動をテクノロジーとサービスで支援し、消費者や社員等とのエンゲージメント(つながり)を向上させることを社会的意義として事業を展開しています。
■(2) 企業文化
同社は、「技術と情熱をもってお客様に楽しさと満足を提供するサービスを創造するとともに、社員一人ひとりの個性を尊重し社員の成長を支援する。」という企業指針を定めています。公正で透明性の高い経営に取り組むことを基本姿勢とし、事業活動を通じてステークホルダーと良好な関係を築きながら、持続可能で豊かな社会の実現に貢献する文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な成長と企業価値の向上を目標としており、主な経営指標として「売上高」「営業利益」「営業利益率」を重視しています。また、ストック型ビジネスであるSaaS事業の特性から、事業規模の拡大と経営の効率性を高めるための客観的な指標として、「期末月の定期契約額(月次経常収益)」と「メールサービスの解約率」の推移を重要なKPIとして管理しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「SaaS事業成長」と「顧客価値向上」を通じて健全な事業拡大を目指しています。多様化するコミュニケーション手段を統合的に管理するプラットフォーム化を進めるとともに、開発力の強化や基盤設備の増強に継続的に取り組んでいます。また、サービスの認知度向上に向けたプロモーション活動や、ガバナンス強化による企業価値の維持・向上も推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、高度な配信ソフトウェアやネットワーク基盤の運用を支える技術力は人材力であると位置づけ、多様な専門技術に精通した優秀な人材の獲得と育成を経営の重要課題としています。従業員一人ひとりの個性とスキルを尊重し、資格取得支援などの教育・研修機会を充実させることで個人の成長を支援するとともに、状況に応じて柔軟な働き方が選択できる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 40.3歳 | 7.6年 | 6,528,520円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 22.2% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※労働者の男女の賃金差異については、女性活躍推進法の公表項目として選択しなかったため、有報には記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(35.5%)、女性の育児休職取得率(100%)、育児休業後の復職率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定製品への依存と競争激化
同社の売上高は、主力製品であるメール配信システム「Cuenote FC」が過半を占めています。SaaS市場への新規参入障壁は必ずしも高くなく、資金力やブランド力を有する競合他社との間で価格競争が激化した場合には、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、新機能の開発やSMS配信サービスの拡大でリスク低減に努めています。
■(2) 技術革新への対応と人材確保
インターネット事業領域は変化が激しく、新技術の開発や導入が頻繁に行われています。技術革新への適時な対応ができない場合、サービスの競争力が低下する恐れがあります。また、少子高齢化やIT人材獲得競争の激化により、必要な技術者の確保が計画通りに進まない場合や人件費が高騰した場合も、事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) システムトラブルと情報管理
同社のサービスはインターネット経由で提供されており、通信障害、機材の故障、プログラムの不具合、サイバー攻撃などによりサービスが停止した場合、顧客からの信用低下や業績への悪影響が生じます。さらに、サービス内で扱う個人情報や機密情報が漏洩した場合、損害賠償請求や企業イメージの悪化につながるリスクがあるため、セキュリティ対策を強化しています。



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