ワンキャリア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ワンキャリア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するワンキャリアは、新卒・中途採用向けのキャリアデータプラットフォーム事業を展開しています。仕事選びに関する体験情報などのデータを活用し、求職者と企業のマッチングを支援しています。直近の業績は売上高76億円、当期純利益15億円と、堅調な推移を見せています。


※本記事は、株式会社ワンキャリアの有価証券報告書(第11期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. ワンキャリアってどんな会社?


新卒・中途向けにキャリアデータを公開し、企業の採用活動のDXを推進するプラットフォーマーです。

(1) 会社概要


2015年8月に東京都渋谷区で設立され、同年12月に新卒採用支援メディアの事業を譲り受けました。2021年6月に中途採用支援メディアのベータ版をリリースし、同年10月に東京証券取引所マザーズ(現グロース市場)へ上場を果たしました。2024年2月には新卒エージェントサービスを開始しています。

同社グループは連結で295名、単体で294名の従業員を抱えています。筆頭株主は創業者の宮下尚之氏で、第2位は信託業務を行う日本カストディ銀行、第3位は取締役副社長の長澤有紘氏となっています。

氏名 持株比率
宮下 尚之 56.07%
日本カストディ銀行(信託口) 7.35%
長澤 有紘 4.59%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長執行役員CEOは宮下尚之氏です。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
宮下 尚之 代表取締役社長執行役員CEO 2010年マースジャパンリミテッド入社。同年トライフ設立、代表取締役。2015年同社設立、代表取締役。2023年より現職。
長澤 有紘 取締役副社長執行役員COO 2011年イトクロ入社。2014年トライフ入社。2015年同社設立、取締役。2020年取締役副社長。2023年より現職。
北野 唯我 取締役執行役員CSO 2010年博報堂入社。2015年ボストンコンサルティンググループ入社。2016年同社入社。2020年取締役。2023年より現職。


社外取締役は、高木新平(ニューピース代表取締役)、野村有季子(長瀬産業入社)、美澤臣一(コ・クリエーションパートナーズ代表取締役)、高橋治(シティライツ法律事務所入所)です。

2. 事業内容


同社グループは、キャリアデータプラットフォーム事業を展開しています。

同社グループは、就活支援サービスやオンライン企業説明会などを提供する求人メディアと、蓄積したデータを活用して採用業務を支援する採用ソリューションからなる「採用DX支援サービス」を展開しています。新卒から中途まで幅広い求職者と、採用を行う法人が主な顧客です。

収益は、企業からの求人広告掲載料やスカウト利用料、オンライン企業説明会の配信料などから得ています。また、求職者を他のHRサービスに送客し、成果発生件数に応じた成果報酬を受け取るマーケティングアライアンス事業も行っています。これらのサービスの運営は主にワンキャリアが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社は当期より連結財務諸表を作成しています。直近の業績は、新規取引社数の拡大や既存顧客との取引継続、取引単価の上昇により各サービスの売上が堅調に推移し、高い利益率を確保しています。

項目 2025年12月期
売上高 76億円
経常利益 21億円
利益率(%) 28.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円

(2) 損益計算書


売上総利益と営業利益の推移から、収益性が着実に向上していることが伺えます。規律ある投資と継続的な費用の見直し等、筋肉質な事業運営により高い利益水準を維持しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 - 76億円
売上総利益 46億円 64億円
売上総利益率(%) - 85.0%
営業利益 13億円 21億円
営業利益率(%) - 28.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が17億円、販売手数料が5億円、広告宣伝費が4億円を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、キャリアデータプラットフォーム事業を通じて、売上高の増加と堅調な事業運営により、営業活動から潤沢な資金を生み出しています。投資活動では、事業成長に必要な無形固定資産や有形固定資産への投資を行いました。財務活動では、配当金の支払いを行う一方で、ストックオプションの行使による資金調達も実施しています。これらの活動の結果、期末の現金及び現金同等物は増加しました。

項目 2025年12月期
営業CF 23億円
投資CF -4.0億円
財務CF -0.7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「人の数だけ、キャリアをつくる。」をミッションに掲げ、キャリアに関するデータを公開することで誰もが自由に働き方を選択できる社会を目指しています。最適な仕事と巡り合える機会を創出し、求職者の人生をより豊かなものにしていくことを使命としています。

(2) 企業文化


同社は、すべての個人のキャリアに向き合い、仕事選びに関する意思決定の基準となるデータを蓄積・公開していく姿勢を重視しています。「知っていれば避けられた」採用のミスマッチを防ぐため、透明性の高いキャリアデータを求職者と企業の双方に提供し、データに基づく意思決定を支援する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


継続的な売上高増加を実現するために、売上高の対前期増加率と法人取引累計社数を重要指標と位置付けています。また、次期中期目標として以下の数値を設定し、資本効率を意識した売上高と利益のバランスの取れた成長を目指しています。

・2030年12月期 売上高 350億円
・2030年12月期 EBITDA 100億円

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の強化と新領域拡大を図り、収益基盤を強化する方針です。キャリアデータの拡充を目指すとともに、適性検査や研修などの商品ラインナップを拡充し、顧客基盤を拡大します。また、新卒採用を中心とする若年層マーケットを軸足としつつ対象を拡大し、教育や金融など採用以外の領域でのデータ利活用も見据えています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大を目指すうえで、システム開発部門や営業部門における優秀な人材の確保と育成を重要課題と認識しています。ミッションに共感する人材を積極的に採用し、入社後のオンボーディング施策を強化しています。一人ひとりが強みを活かして活躍できるよう、研修の強化や最適な人員配置を実施しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 30.9歳 2.3年 6,743,000円

※平均年間給与は賞与、株式報酬及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 35.4%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 71.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 80.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 101.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員における女性比率(42.2%)、育児休業取得率(女性)(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネット関連市場や技術革新の影響


インターネットメディア事業を主としているため、利用シーンの多様化や技術革新のスピード、検索エンジンの仕様変更などが集客や競争力に影響を与える可能性があります。また、生成AIなどの新しい技術の利用に関する懸念もあり、利用方法を誤ると同社の信頼性を毀損するリスクがあります。

(2) 景気変動と雇用情勢の影響


採用DX支援サービスは、企業の採用意欲や景気動向の影響を受けやすい特性があります。幅広い領域でのサービス提供や顧客基盤の拡大により環境変化に強い収益構造を目指していますが、人材採用需要の減退や経済情勢の変化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 他社との競合およびシステム障害


キャリアデータプラットフォーム事業領域には多数の事業者が参入しており、競合激化により差別化が図れないリスクがあります。また、大規模なアクセス増加や自然災害、不正アクセスなどによるシステム障害が発生した場合、サービス提供に支障をきたし、信用や業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。